シドニー現地での食生活に関するコーナーです。
最初に執筆した時点(1998年頃)に比べれば今昔の感がありすぎるくらいあるのですが、この間の変化について書いておきます。なぜなら、この変化の延長線上に2011年の現状があるからです。
まず、日本食材をとりまく状況です。最初に書いた98年とかそのくらいの時期に比べれば、日本食材をはじめとするアジア系食材は大きな広がりを見せています。日本食材も相対的に安くなってきたでしょう。ただその理由は、現地に暮らす日本人が増えたからでは「ない」です。現地在住の日本人の数は、詳しくは知りませんけど、そんなに増えていないんじゃないかな。永住希望者は増えているらしいけど、留学生やワーホリさんの数は減ってますし、長引く日本の不況で、日本企業の撤退、駐在員の方々の帰国などの要素がありますから、プラマイゼロ(or マイナス)じゃなかろうかと思います。
つまり、日本食材が求めやすくなった原因は、日本人以外のところにあります。つまり、中国人がやたら増えたこと、その中国人の間で日本食が好まれて食べられるようになってきたこと、中国人以外にもアジア食がどんどんオーストラリアに浸透していったこと、という「日本食を好む外人(というのもヘンですね=日本人以外の人)」のおかげだと思います。実際、シドニーの日本料理店は信じられないような勢いで増えています。ニセコや長野で日本スキーをエンジョイしたオージーが、そこで知った居酒屋システムに感激し、こちらに輸入しているケースも増えてます。"SAKE"なんたらという「サケバー」形式ですね。僕の知ってるオージーも居酒屋にハマって、居酒屋に行くためだけにまた日本に旅行したいとか言ってます。
次に、日本食材がリーズナブルに手に入るようになったと入っても、それは昔と比べての話であり、現在でも「全てがあるわけでない」「行くところに行かないと無い」という基本的状況は変わっていません。だから、合理的に代用品を探そうか、自分で作ってしまおうとか、そのあたりのものの考え方は同じだと思います。むしろ、モノが乏しい頃の方が必死に考えていたから、逆にバリエーションが広くなってたという部分はあったと思います。「絶対に売ってない」と思うとムキになって開発したろうと思いますが、適当にあってしまうと、「ちょっと高いけど買えばいいや」となったり、あるいは「別にそこまでして食べなくても...」ってな具合になってしまうように思います。自分自身そういう傾向がありますし、それだけに昔のサバイバル精神豊かだった頃のコンテンツは、今改めて読んでみると中々新鮮だったりします。
変化の第二点は、オーストラリアはもう14年連続で経済成長しています。世界経済危機も先進国の中ではかなり上手いこと逃げてますし、景気が良く、それゆえオージーも金回りがよくなり、物価もガンガンあがってます。10年前に比べたら、肉も野菜も信じられないくらいに上がってます。レストランの値段もしかりで、その昔は一人20-30ドルでそこそこ立派なものが食べられたのですが、今ではその値段だったらかなりリーズナブルでしょう。一食一人200ドルクラスのレストランが結構流行ってたりするのが、前回改訂時の2006年、そして2012年現在のオーストラリア人の金持ち度であります。「シドニーの安くて美味しい店紹介」の基本書ともいうべき”Cheap Eat”という本が毎年刊行され、”チーピーズ”の愛称でオージーに親しまれていましたが、いつのまにか名前が、"Sydney Eats with cheap eat"になってしまいました。つまり、「必ずしも安くなくてもいい」というコンセプトの変化があるわけです。
この時代背景を反映しているのか、「安くて美味しいレストラン」が少なくなってきています。かつて美味しかったレストランも、しばらくすると人手に渡ったのか、いきなり味が落ちてたりします。こちらではビジネス(営業)の売買が盛んです。日本に比べたらかなり気軽に譲渡できますし、流行ってないレストランを買って、流行らせて客を増やした時点で高く売ってしまうという傾向があります。そのため、いったい何軒のレストランを失ったことでしょう。レストラン紹介も全然UPDATEしてないから、たまにはしなきゃねーとか思ってたのですが、こうも変遷が激しいとおっかなくて出来なくなりました。ただ、それでも頑固として昔の味とリーズナブルさを守ってる素晴らしい店もあります。
ただ、いずれにせよ、「安くて豊かな食生活」を営もうとしたら、以前にも増して、知識と技術と根性が必要になっていると思います。
そのあたりを改訂に反映させられたらいいなと思います。
なお、シドニーにおける食の基本、ベーシックな部分は
「生活体験マニュアル第5章食事編」でやってます。レストランでの注文の仕方とか、飲茶の食べ方とか、サンドイッチの注文の仕方とか、そこらへんのことですね。こちらもあわせてご覧ください(こちらはまだ10年以上前のままだ、、、ああ、こじんまりしたHPにすればよかった)。