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2008.10/24初稿〜逐次改訂
世界経済の動向とオーストラリアへの留学、ワーホリについて
もともと本稿は、2008年のリーマンショック当時、渡豪を考えている皆さんに対し関連するレベルで綴ったものです。以後、刻々と状況が変わり、変わるごとに補充を重ねて来ました。
あれから時は流れて10年以上、結局、リーマンショックの問題構造(金融経済の暴走と世界的なバブル)はなんら改められてないし、いつまた同じことが繰り返されないとも限りません。このページも、リーマンショックが終わったらさっさと削除しようと思ったのですが、問題状況が全然変わらないので削除する機会を逸したままになってます。
2008年9月、アメリカのサブプライムローン問題をきっかけに世界の金融に激震が走りました。それに続く世界経済不況(日本では「リーマン・ショック」と呼ばれている)によって、オーストラリア留学等についても影響がありました。円豪ドル相場が乱上下したし、倒産する学校や留学エージェントもあったし。
その後、リーマンショックという一時的な影響は少なくなりましたが、それを引き金にして欧州、アメリカそして日本の経済情勢は不安定になったままです。そうかと思うと中国の成長も鈍化したり、それがまたフィードバックのようにヘロヘロな先進国の経済に鈍痛を与えたりもしています。これら情勢の展開に伴って改定しているうちに、最初は一時のトピック的なこのアーティクルも、だんだんと「世界経済と留学」という大風呂敷な話になってしまいました。
そんな「世界経済」なんて大それたことを考えなければ留学は出来ないのか?といえば、いや、出来ます。ご心配なく!
でも、
知っておいた方が得です。なぜなら日本国内の就職状況ですら世界経済の影響を受けて激しい勢いで変わりつつあるからです。また「海外体験」「語学力」ということが、今まで以上に実際的な大きな意味を持つようになってきています。これまでは留学やワーホリというと、「ホリデー」という語感が示すようにどこかしら趣味的で遊興的なニュアンスがありましたが、今はもう「就活アイテム」「人生を組立てるツール」方向にシフトしています。
1.何が起きたのか?世界経済危機とは何だったのか?
以下に述べるのは、世界経済危機に関する一般的な説明であり、月日が経つにつれ”歴史的経過”でしかなくなっていきます。この際、順次事柄を正確に理解したい方のみ「続きを表示させる」をクリックして読み進んでください。
サブプライム・ショック(リーマンショック)
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今回の世界経済危機の発端となったサブプライム問題は、実は2005年時点から発生しており、2007年の6月にアメリカのベアスターンズ傘下のヘッジファンドが破綻して世界的に大騒ぎになってます。このときは、今と同じように世界中の中央銀行が資金注入を行い、初期のパニックは抑え込まれました。しかし、サブプライムは「ウィルス」「時限爆弾」などと呼ばれるほど経路が複雑で、実態が見えず、感染した機関が破綻するまでのタイムラグがあるといわれていました。
このあたりのカラクリであるRMBSやCDO、CDSについては、2007年8月の
サブプライムローン・ショックで僕なりにまとめていますので、ご興味のある方はどうぞ。
しかしこのあたりは複雑な金融工学の話なので、経済や金融に明るい人でないと中々ピンときにくい領域です。2007年のサブプライム・ショックのときも、メディアで大騒ぎしたものの経済面に留まり、2008年末のように派遣村がどうのという社会面までは届いてませんでした。「なんか、エライことのようね」と皆が思い出したのが2008年の9-10月くらいで、それでも円高為替以外は、あんまりピンと来なかったでしょう。株式相場が総崩れになりましたが、それでも株やってる人は国民全体からすれば一部ですので「ふーん」くらいの人が多かったでしょう。それが年末に向けて派遣社員の解雇が増えるに従って、徐々に迫ってきたという感じでしょう。
景気というのは、そんなに一夜にして全てが変わるものではないです。日本の90年代バブル崩壊をリアルタイムにビジネス現場で体験した身で言えば、バブル崩壊から1年ほど経過してから「バブル」という日本語が新たに出現し、皆が言い出しています。それまでの日本語に「バブル」なんて言葉はなかったですから(あっても「お風呂の泡」とか文字通りの意味だけ)。ただ、このタイムラグの1年で、日本列島で壮大なババ抜きが行われ、今から思えば信じられないような高額でワンルームマンションを買わされた人も沢山いました。
今にしてみれば、2007年のサブプライムショックがバブル崩壊で、それが一般に浸透するのに1年かかったという感じでしょうか。ただ、それでもまだまだ浸透するには時間がかかるでしょう。2008年の年末・クリスマスがパッとしないなとか、年が越せないと言われ始めたあたりから徐々に実感的に広まり、年明け以降徐々に倒産とか失業が増え、「ウチ、大丈夫かな」と我が身に引き替えて心配になるのは2009年中期以降になると予想されたし、実際2009年10月以降になって日本は景況感は一気に悪化し、デフレ宣言などが出されています。
なんでこんなタイムラグがあるのか?それは不況というのはドミノ倒しだからです。
そもそもアメリカの二流どころの住宅ローンの破綻というローカルな話が、なんで「100年に一度」とまで騒がれる大事に発展したのか?ですが、そこが”金融工学”と言われるユエンです。細かい仕組みはともかく、住宅ローンなど貸付金債権を有利な投資先として商品化し、それをデパートの福袋のように詰め合わせ(ポートフォリオ)にして売り出したのですね。貸し倒れの危険のある債権や安全確実な債権について、そのリスクを高等数学を駆使して数値化し、値付けしてガンガン売り出し、皆(投資機関)もガンガン買い、ちょっとでも値が高くなったらガンガン転売する。これを猛烈な高速回転でやると。借金して株やら証券などの投資物件を買い、その投資物件を担保にしてまた金を借りて投資し、その投資物件を担保にして、、、というレベリッジです(テコの原理)。儲かるときは、市場で僅か1ドル上がっただけも莫大な利益を生みます。読んだだけの話ですが、数千億という途方もない資金をコンピューターを使って自動的に取引するという手法もあったらしいです。世界中のあらゆる情報をインプットし、それを独特の解析手法で数式化し、「○○の値段が○○ドル下がったら○○を○○万ドル買う」という形でプログラミングし、ほとんど1秒単位で数億円の取引を24時間やり続けていたという。確かに、まあ、「利益の極大化」という目的においては、合理的なやり方かもしれません。
こういった金融バブルに浮かれまくって世界の(主としてウォール街などアメリカの)金融機関が、鬼のように投資ゲームをやってました。投資総額は天文学的数値になってました。それでも儲かるからやる。儲かって儲かって笑いが止まらないってな感じでイケイケで邁進する。だから、潰れたリーマンの日本支店でも、30歳の社員に年収3000万円とかリアリティのない給与が払われたりしていたわけです。
それがサブプライムローンの破綻が相次ぎ、高等数学を駆使してはじき出した筈のリスク値以上にコケだしてから話はおかしな方向にいきます。デリバティブのような高等技法を使ってなかったら、一定のエリアの住宅ローンを損金処理すれば済む話でした。確かに損はするけど、範囲も限定されたし、対処もしやすい。しかし、福袋のようにごちゃ混ぜにし、さらにその福袋を集めてまた別の福袋に入れ、さらにそれを、、、という具合にやってるので、投資機関も自分が持ってる投資商品のうちにどこにどれだけサブプライムのダメ債権が入ってるかわからない。「過去1年で食べたニンジンを全て思い出せ」と言ってるようなもので、とてもじゃないけど分からない。だから「ウィルス」とか「時限爆弾」と言われました。
そうこうしているうちに食中毒のようにサブプライム菌に当たって、健全な大金融機関が突然死のように破綻するというショッキングが出来事が起き始めたのが2007年のサブプライム・ショックです。このときも大騒ぎして一気にもみ消したつもりだったのですが、サブプライム毒は各機関の投資案件の裏側でガン細胞のように密かに進行し、ついに2008年9月になって、毒が回ったアメリカの名だたる金融機関が総倒れ状態になりました。「くるかくるか」とヒッチコック状態でビビって待ってただけに、市場は一気にパニックになり、株価は急落、「えらいこっちゃ!」という騒ぎになります。この”密かなガン進行”が2007年から08年の1年間のタイムラグです
ここまでだったら、まあ、アメリカのリッチな金融機関がやりすぎて大火傷をしたくらいのことなのですが、これが一気に信用収縮(クレジットクランチ)を起こしかねず、世界経済が突然死するかもしれなくなってから、各国首脳が髪を振り乱して火消しに走り、ガン首揃えて連日会談することになります。信用というのは「お金を貸すこと」です。返してくれると”信用”するからこそお金というものは貸せるのですが、いつ何時、どこの金融機関がサブプラムウイルスにとりつかれて寄生獣のようにバタンと倒れるか分からないのですから、おっかなくてお金が貸せない状態になります。しかし、お金や金融というのは経済の血液のようなもので、ある日を境に流れなくなったら即死してしまいます。そうなったら連鎖反応で世界中大パニックになりますから、各国首脳は信用を取り戻すため、「国が税金ブチこんででも絶対に潰させない」という毅然とした姿勢を見せてパニックを押さえ込もうとしたわけです。
なぜ、「百年に一度」と言われていたのか?〜「時代の気分」
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しかし、上の説明だけだったら、単なる普通の不況と大差ないです。ではなぜ、「百年に一度」とか「世界史の転換点」などと大仰に語られたのでしょうか?
一つは単純に規模が途方もなく大きいからです。過去に何度も不況はありましたし、世界大恐慌もありました。しかし、世界恐慌と同じかそれ以上と言われるのは、昔は存在しなかった金融工学によって、レバリッジの上にレベリッジをかまして、、という、元金1億円で100億円とか1000億円の投資ゲームをやっていたから、損失額がべらぼうに巨大になってることです。各国政府は必死になって公的資金を注入して、集中治療室にいる第一ドミノの金融機関を救済しましたし、アメリカでは第二ドミノのビッグ3の自動車会社を救おうとしました。いかんせん赤字額が途方もない。こんなに援助してたら政府すらも共倒れになるという。また、景気刺激策(=なんとか皆にお金を使ってもらおうとする)のために、やれ減税はするわ、公共投資はやるわ、交付金などバラマキをするわで、前代未聞の巨額のレスキュー・パッケージを組んでいます。まず、このスケールが桁外れだというのが一つ。
しかし、単に量的な問題だけではなく、質的な問題もあります。
「なんでこんなことになったの?」と遡っていけば、レーガン&サッチャー(+中曽根)の80年代の新自由主義経済ってやつにたどり着きます。おりしも計画経済のソ連が断末魔の状態にあり、「ほら、人間社会に真の活力を与えるのは資本主義であり、市場なのだ」ということで、資本主義・市場経済の勝利が高らかにうたわれ、市場に任せておけばいいんだ、政府がグチャグチャ介入しなくても市場には自動バランス修正機能がついてるから大丈夫なんだ、市場を信じて小さな政府に徹し、つまらない規制は撤廃しようという流れです。以来30年、クリントン政権も、小泉政権も、みな基本的にこの路線を踏襲してきました。
しかし、資本主義といえども万能ではなく強烈な副作用があります。また資本主義というのはほっておけば金持ちはより金持ちに、貧乏人は相対的により貧乏になる二極ゲームですから、当然の帰結として貧富の格差が広がります。「金が儲かればそれが正義」という拝金的風潮を生み出し、ギャンブル同然の金融活動が広まります。金融工学を駆使したマネーゲームが一概に悪いわけではないし、投資は健全で必要な経済活動なのですが、あまりにも極端なところまでいってしまった。その大きな揺れ返しが来ているということですね。
例えば真面目にコツコツ公務員をやったり、夜も寝ないで修行に明け暮れていても、せいぜい年収500万円かそこら、あるいはもっと低い。それなのに、ワケのわからない帳簿上の操作で会社を買収したり転売したり、デリバテイブやら何やらで年収3000万、社長になったら年収数十億。「なにか間違ってないか?」という気分は結構世界の皆にあったと思います。実際、新自由経済&グローバリゼーションの30年で良い思いをしたのはごく一握りのエリートだけで、普通の庶民の実質所得はかえって減っているという話もあります。「これが人類の理想状態なのか、本当にこれでいいのか?」と。この状況を称して「社会なき経済」と言う人もいます。気の早い人は「資本主義の終焉」などと言ってたりするわけで、18世紀の産業革命以来足並みを揃えて発展してきた資本主義が終わるというなら、なるほど「世界史の転換点」でしょう。また、百年に一度の曲がり角でもあるでしょう。
もう一つ、第二次大戦後、なんだかんだ言って世界はアメリカがリードしてきました。特にソ連崩壊後、唯一の超大国になってからはその傾向が顕著で、アメリカ発の新自由主義経済というルールを世界に押しつけていたわけですが、イラク、アフガンの混迷に加えて、今回の経済危機を引き起こした張本人になったことで、「アメリカの時代は終わった」という人もいます。
付言すれば、世界経済危機が起きようが起きまいが、世界規模での「時代の気分」というのは、ここ10年でかなり変わってきていると思います。地球の温暖化や環境問題について皆が関心を持つようになりました。西欧社会でも東洋哲学などのニューエイジ系の発想やスピリチャルな事物が広がっています。自分の肉体をコントロールするという肉体改造にもハマります。日本はアンチメタボの痩身美白、西欧ではマッチョな肉体と微妙にベクトルは違うけど、鏡に写した自分を見る時間が長くなってきている。これらの現象で通奏低音のように鳴っているのは、メチャクチャ努力して一番になって、この世の富をかっさらって、贅沢三昧のゴージャスな生活をすることが、昔ほど”ドリーム”ではなくなってきたという点です。いや、一方ではプロセスをすっ飛ばしてその”結果”だけを追い求めるセレブブームなんかもあるので一概には言えないのだけど、そうやって社会的に”成功”することが、昔ほど”立派なこと”だとは思われなくなってきた。そりゃ本音の部分では誰だってそうなりたいし、羨ましいでしょう。でも、無条件で尊敬されるか?いうと微妙。モテまくってる同性に対する視線みたいなもので、羨ましいけど、尊敬はしないという。
オーストラリアでも、十数年にわたるバブル景気で、「強欲こそが美徳」という風潮もありました。が、一方では、「それでいいのか」という動きもあり、確かに給料は上がったけど物価もあがり、勤務時間も通勤時間も長くなり、ファミリー・ヴァリューも薄らぎ、「所得は増えたけど幸福は減った」という評論もありました。デカい4WDはこちらでもガンガン売れてますが、同時に「公道で最も憎まれている車」でもあります。このご時世にガソリンを馬鹿呑みし、排気ガスを撒き散らす車に乗るということ自体、環境意識に乏しいアホという見方もされます。実際、経済危機以前から大型車の売り上げが減り、小型車が逆に伸びています。また、自転車通勤を始める人もかなり増えています。
陳腐なフレーズでいえば物質文明から精神への回帰、清く慎ましやかで、内面的価値を重視するという一種のピューリタニズムのようなものが段々強くなってきているということです。ロハスなんかもそうでしょう。今回の世界経済危機も、「ほらみろ!」という受け止められ方をしている部分も感じますね。いろいろな評論を読んでみても「大変だ!」と騒ぎながらも、どこかしら「ザマみろ」「当然じゃ」という冷淡さが透けて見えたりして。歴史の転換点という意味では、そういう大きな流れもあるのでしょう。まあ、誰でも言ってることですけど。
不況の連鎖 第一次ドミノ倒し
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ここまでは金融経済のレベルの話で、実体経済までいきません。銀行とかファンドなどの金融機関や、そこに預けていた投資家が火だるまになっただけです。また、日本は十数年前のバブルの後遺症をまだ引きずっていたのが幸いして、この種の金融火遊びをそれほどやっていませんでしたから、この時点では殆ど無傷といって良いでしょう。しかし、金融という血液に障害が発生すれば身体がマトモで済むわけもなく、金融経済→実体経済へという不況の拡大が起きます。これが不況のドミノ倒しであり、ドミノが倒れるための第二のタイムラグが生じます。
まず危険な火遊びをしていた金融機関はグランドゼロ(爆心地)にいたのでケシ飛びます。次に影響を受けるのは、投資的な意味合いを多く含む経済活動、、、典型的なのが不動産ですね。特に値上がり期待の投機・投資物件は、皆がイケイケでいく=右肩上がりの値上がり期待を前提にして動いていますから、ここがコケたら一気に値崩れを起こします。そうなると不動産を買おうという人が少なくなりますからマンション不況が起き、マンションを建設して転売している不動産や建設会社が打撃を被ります。同時に建築資材を作ったり、売ったりという会社も被害を受けます。
また、これまで羽振りのよかった高給サラリーマンが会社が倒産して消滅したり、消滅しなくてもリッチ層の極楽気分が急転直下で冬の津軽海峡のようになりますから金持ち御用達の商品が売れなくなります。典型的な例は高級車ですね。アメリカでは(オーストラリアもだけど)、住宅ローンと連動した消費ローンがありました。住宅ローンを返済すると返済した分また別のものが買えたり、車のローンと住宅ローンを一本化させてくれるとか。数千万とか数億の住宅を買ってる人にとっては車なんか高々数百万で不動産売買の印紙代くらいものでしかなく、気が大きくなってるもんだから、この際ベンツやBMWに乗り換えようかなってなもんです。だから高級車がガンガン売れた。トヨタなんかレクサス売りまくってかなり美味しい思いをしました。それが一気に巻き戻しになりますから、高級車や大画面TV、高級家具などの金持ち用の高額商品が売れなくなります。日本の場合、リッチな世界市場に売りまくっていたお家芸の自動車業界、家電業界が先陣を切って影響を被ります。要するに世界の金持ちが一時的に落ち込んだから高級品が売れなくなるわけです。
加えて急激な円高があります。これまで世界の投資機関は、タダ同然の安い金利の日本からお金を借りて、海外に投資していたわけですね。円キャリー取引ってやつです。だって日本から3%で借りて、ピーク時に8%ほどあったオーストラリアの定期にいれてるだけで丸儲けですもんね。皆が円を借り、借りた円を投資先のドルや外貨に替える=市場では円を売る人が多くなる→円安で推移していたわけですが、「投資なんか止め止め!」ってムードになったから、皆が円を返しにきた。皆が円を買うから円高になるということです。こう円高になると、今度は円そのものが新たな投資対象になったりもします。これと好対照なのが高金利や不動産バブルで投資先になっていたオーストラリアで、皆が投資から手を引くからオーストラリアドルが売りまくられ、豪ドル安になってます。
円高は自動車産業などの輸出産業にとっては致命的です。こんなに3割も4割も円高になったら、売っても売っても儲からない。100万円で売って利潤が20万というペースでやっていて、3割円高になったら70万円しか入ってこないわけですから赤字です。かくして、日本の自動車産業は、売れないわ、売ったところで赤字だわという泣きっ面に蜂状態になります。この厳しい状況を乗り切るため、自動車&家電など輸出産業界では生産計画の大胆な下方修正をし、工場の操業を短縮、あるいは閉鎖します。派遣社員や期間工などの非正規労働者の首切りが始まります。ついには雇用にもメスを入れるようになったわけで、これが08年年末の派遣村の背景事情です。
第二次ドミノ倒し
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このあたりから次のドミノが倒れ始めます。巨大な輸出企業がビンボーになることで、数千・数万という単位で存在する下請企業や関連企業にも影響が走ります。また、減産体制においては、設備投資=新たに工場を新設するとか、工作機械を新規購入するというムードもグッと冷え込みます。09年1月のドミノ移動地点は、大体このあたりだったでしょう。例えば2009年1月23日付報道によると、「粗鋼400万トン減産 下半期、過去最大規模」などという記事がありました。
こうなると失業したり給与減額で可処分所得が減る層が加速度的に増えていきます。将来給料が上がらないどこか下がるかも、さらにクビや倒産するかもという不安が広がると、皆の財布の紐が堅くなります。これまでだったら使うべきお金を使わなくなる。例えば忘年会は予算ダウンにするとか、社員旅行は取りやめとか、服もカバンも買うのを見送りとか、CDも本も買わないとか、外食をやめて自炊しようとか。この影響によって次のドミノが倒れ始めます。売り上げが落ちた観光地、外食産業、出版、、、と、輸出関連に限らずありとあらゆる業種に不況の波紋が広がっていきます。増殖期ですね。正味僕らが「不況だ」と身に染みて実感するのはこの時点だと思います。
もっとも、08年以降メディア報道の激しさは、ちょっと情報先行しすぎではないかと思われるくらいです。そのため現実に自分の収入が全然減ってない層(日本人の大部分はまだそうだと思う)も、気分的に萎えてしまって財布の紐がコマ結び状態になったりして、益々不況を加速し、結果的に自分達の首を締めているということになります(実際に09年10月以降そうなっている)。
そしてこの連鎖反応が続くと、グルリと円環をえがいて無間地獄に陥ります。自動車・家電不況→関連企業不況→その他の業種不況→だから車やTVの買い換えも控える→自動車・家電さらに不況→関連企業さらに不況、、、という。これがいわゆる「不景気」「不況」といわれるカラクリです。
第三次ドミノ倒し
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金融経済(第一次)→実体経済(第二次)に続き、第三次に波及するのは「基礎体力」だと思います。国家財政の健全さや国内企業の競争力が試されるようになる。
財政面でいえば、第一次の金融破綻を抑え込むために各国政府は天文学的なお金を火消しに投入しました。さらに第二次の景気対策にもドカドカお金を使います。要するに市場や民間の損を政府がひかっぶってくれたわけで、そうなると今度は国家財政そのものがヘコみます。これらの対策が功を奏して景気が回復し、また税収が伸びていけばめでたしめでたしですが、そのハードルは高いし、どんなに上手くいったとしても、そうなるまでにタイムラグがある。
ということで今度は国家財政がピンチになる形で第三次ドミノが倒れ始めます。ヨーロッパの中でも国家の体力が乏しいギリシャをはじめてPIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)がヤバいという話になりました。借金まみれの赤字財政が問題だということですね。欧州の場合、統一通貨ユーロをもつEUの結束度が試されるということで、問題は経済から政治に移行しつつあるという見方もあります。
しかしこれはヨーロッパという対岸の火事ではなく、日本にも飛び火するという観測もあります。国家財政の赤字度でいえば日本はギリシャの比ではないからです。日本政府の債務は対GDP比でいえば227%という世界最悪状態です(ギリシャですら113%程度)。それでもパニックにならないのは日本の国債の95%は日本人が買っており、自分が自分に借金しているようなものだから大丈夫ということです。しかし、それも無限に続くわけもなく、このまま借金が増え続け、国民の預貯金総額を超えてきたら国内消化ができなくなり(特に団塊世代が受け取りを開始する2012年あたり)、それを転機に一気に国債が暴落するという説もあります。真否はともかくとして、経済危機が蔓延することで国家の体力が試されるということです。
基礎体力が試されるのは国家だけではなく民間企業も同様です。不況が長期化するにつれ、体力のない企業から順に潰れていきます。ここで、企業経営の健全度、また将来の成長性、国際競争力などの諸点からガシガシとふるいにかけられていくということです。
発端は事故によって大怪我を負うようなもので、そのケガの度合いによって死ぬところは死ぬという金融レベルでの影響があり(第一次)、そのためにいろいろな内臓疾患が発生するという病気になり(第二次)、さらに長期にわたる療養をしている間に、基礎体力のないものから闘病生活に破れて没していくという第三次に至るということなのでしょう。
なんで日本が不況になるの?
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08年から09年にかけて世界各国首脳が集まって初動の火消しを必死にやったおかげで、初期の大パニックを抑え込むことは成功したと言えます。2009年中期頃から、「景気は底を打った」「回復基調にのった」という明るい言葉もマスコミ紙面でチラホラ見かけるようになりました。人々のマインドを上向きにさせる「大本営発表」的な要素もあるだろうから、皆も半信半疑であったのですが、2009年末になってくると、ほぼ確実に峠を越えたと思われるような状況になっていきました。
最初はもう爆死寸前でしたが、一気に集中治療→経過観察を経て、回復基調に乗ったと。過ぎてしまえば、09年中期以降は反転攻勢で再び景気は良くなっています。別項でも述べましたが、オーストラリアに関して言えば、初動の大規模な刺激策が功を奏し、先進国では最も上手に切り抜けた国として世界的に評価されています。数%の上昇を見込んでいた失業率も過ぎてしまえば1%も上がりませんでした。それどころか景気回復を通り越えてインフレ懸念のために09年10月から翌年4月までの7か月間に、なんと立て続けに5度も公定歩合を上げてます。一旦落ち込んだ不動産市況も09年終了時にはむしろ上昇しています。
とはいいつつ、世界が病み上がりであることに変わりはなく、上に書いたように第三次レベルの波及も懸念もされています。危機以前の健康体というわけにもいかないでしょう。しかし、全般的に言えば2年前の無茶苦茶な状況=先進諸国の主要金融機関がガンガン潰れていく”この世の終わり”みたいな状況=に比べたらギクシャクしながらも立ち直りかけている。結局のところ、100年に一度規模の大クラッシュが起きたのは事実ですが、世界の基礎体力も知らないうちにかなり強くなっていたのでしょうね。世界恐慌の頃に比べれば、中国、インド、ロシア、ブラジルというBRICs諸国をはじめとして体力のあるプレーヤーが増えてきていますし。
ところが!世界が峠を越え、回復に向けて徐々に力強く歩き出したまさにその頃(2009年秋頃)、なぜか日本ではデフレ宣言が出され、不況の二番底に向けて不気味に沈下を始めたかのように報道されています。不思議ですね。なぜここにきて、最も傷が浅い筈の日本だけが沈まねばならないのか?そもそも本当に沈んでるの?という疑問があります。
興味のある人は、
ESSAY 440/不思議な日本の不況〜本当に不況なの?なんでそうなの?
ESSAY 441/不思議な日本の不況(2)〜いわゆる「日本はもうダメだ」論の検証。ホントに?
ESSAY 442/不思議な日本の不況(3)〜内需と外需、雇用不安、グローバル化など
をごらん下さい。
一言で要約すると、日本以外の世界は、「危機は終わった」「大丈夫だ」とカラ元気のような強気な発言をし続けているうちに実態が追いついてきて本当にそうなってしまった。対照的に日本の場合は、「もうダメかも」とか皆で言いあっているうちに本当に病気になってしまったという。「病は気から」と言いますが、まんまその通りの展開です。でもって、第一幕、第二幕で弱気のためにモタモタしているうちに、国家財政や日本企業のグローバル競争力など基礎体力が試される第三幕になってしまったというところでしょうか。
2012年の状況と震災後の日本 (2012年記)
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世界経済でいえば、経済危機の余韻は地下で不気味にくすぶり続けているだろうと思います。また、ギリシアやスペインなどの欧州の国家財政もヘロヘロのままでしょう。アメリカもここ数年、経済的には四苦八苦しています。日本はといえば、累積する財政赤字と少子高齢化という厳しいメインフレームがドンと存在しています。いわゆる先進諸国はどこも大変です。が、2008年の経済危機という突発的な事態は時間が経つごとに解消され、その代わり、国々がもともと抱えている問題点が浮き上がってきた、という構図でしょう。
また、経済危機があったからといって、より大きな世界的なトレンドであるグローバリゼーションが止んだわけではありません。むしろ加速されているでしょう。中国、インドなどのBRICs諸国の台頭はほぼ確定的になり、より安い人件費と生産費、より広大で美味しい市場を求めて国際企業がしのぎを削るという図式です。これは先進諸国の市民にとっては一般にキツイ状況です。安い国に工場(+職)が移転するから、先進国では恒常的に空洞化が起き、職はどんどん減っていくし、お金の巡りも悪くなる。なにしろグローバリゼーションそのものが先進国から発展国への富の移転を意味するのですから、先進国にとっては原理的にあんまりイイコトないです。
もっとも先進国の大企業は、国内労働者の首を切って、海外で安く生産し、それを世界で売りさばいたり、国内に安価な製品を逆輸入して売ったりして儲けますから、最終的な利潤はブーメランのように本社のある先進国本国に入ってきます。しかし、それで潤うのは莫大な役員報酬を貰っている一部のCEOなどエリート層だけだったりして、一般庶民は失業するわ、給料上がらないわ、デフレで苦戦するわでいいとこなしです。つまり、二極分化がどんどん激しくなっていく。普通に真面目にやっていた中流層が没落していく。格差社会化は何も日本の専売特許ではないです。オーストラリアも数字上は景気良いのですが、それもこれも中国が鉄鉱石を買ってくれるからであり、社会本体のフレームとしては結構暗鬱で、陽気なオーストラリア人も内心では穏やかではないです(
Essay 521:変わりゆくオーストラリア人の自画像。
とか何とか書いているうちに、世界経済危機のパート2(GFC2)が始まるとか、イギリスで暴動が起きるなどしています(
ESSAY 527:斜陽貴族の戦略とGFC2、
ESSAY 528:イギリス暴動について思うこと)。
しかし、嘆いていたって話が進まない。環境が変わったときになすべきことはたった一つ、「適応」です。
大企業においては、中産階級の凋落により日々やせ細っていく国内市場よりも、日々拡大していく海外市場を狙うでしょう。中小企業もその波に乗れるところは乗る。日本と海外との連携が密になれば、海外で働く日本人や日本で働く(優秀な)外国人も増えるし、その間を媒介するビジネスも新規に立ち上がっていくでしょう。一方、新たに豊かになった国々からはニューリッチ外国人が日本にお金を落としてくれるでしょう。また時代がこうなれば、経済的成功よりも精神面に比重をおいた生き方を好む人も増え、それもまた新たなビジネスになるでしょう。他にも山ほどありますが、それらを柱として全産業が再配置をし、必死に「適応」していくようになると思います。
一方、各国政府においては、グローバリゼーションによる富の偏在(階層化)を中和するために所得の再配分が求められるでしょう。が、あんまりやりすぎるとそれを嫌って企業が外に出て行ってしまうのでその加減が難しい。また、経済危機を乗り越えるために緊急避難的に大規模な救済をやったこともんだから、これが段々各国家の財政負担としてのしかかってきます。そのうえ高齢化や国内所得の低下のために生活保護その他の支出が益々増える。苦しいところですが、これも「適応」。
さて、東北大震災後の日本経済です。マイナス要素としては、地震そのものの被害の他、救援費用その他でもともと破綻寸前だった国家財政がさらに悪化するという長期的な問題があります。まあ、財政赤字も1140兆を越えてますから(リアルタイムには
ここを参照)、このくらい借金がふくらむと今更ちょっとばかり増えても大勢に影響はないという喜んでいいのか悲しんでいいんだか分からない状況もあります。それに赤字国債を国内で消化できるうちは問題ないという人もいます。このあたりは諸説入り乱れてます。
プラス要因としては復興需要です。神戸地震の時もかなり景気を支えてくれましたし、今回もあれだけの被害を復旧しようというのですから、それだけの景気にはなるでしょう。そのあたりのプラスとマイナスがないまぜになって、未だによく見えてきません。
見えにくくしている大きなツイスト要素は原発問題でしょう。問題点を分ければ、@放射能とA電力不足で、前者は福島県をはじめとする復興の遅れや放射能汚染による危惧(特に食品関係)によって長期的損失を招き、それが景気と国庫負担に跳ね返るという構図です。また、海外からの客足にも影響する。しかし、これらは1年半経過時点で「喉元過ぎれば〜」的になってます。少なくとも観光客数はリバウンドしてきました。ただ、食材や生活環境、ひいては日本という居住環境に関する不安指数みたいなものは、人それぞれだと思います。喉元過ぎて気にしない人は気にしないし、気にする人は気にする。電力不足(節電)はより見えにくい形で経済に影響を与えます。もともとが海外流出を考えて浮腰だった各企業が、電力不安→操業不安で一気に海外に出ていき、空洞化がさらに加速され、失業を産み、景気を悪化させるという問題もあります。
結局、原発部分が巨大なブラックボックスになっているのでよう分らん、というのが相変わらずの結論でしょう。そもそも今後も原発を稼働存続させるのかで、大袈裟に言えば国論二分の意見対立があります。
ただし、仮に地震も原発も何も起きなかったとしても、財政赤字+グローバリゼーション+少子高齢化という絶対条件は何も変わらないわけですから、今回の地震でそのトレンドが加速されるのか、減速されるのかといえば、まあ加速されるだろうな、とは思います。
震災や原発という一時的&国内的なフレームは、時の経過とともに相対的に影響力が減ってきて、結局はグローバル化や世界経済という大きなフレームがよく見えてきている。街角の景況感も、結局は円高/円安〜株高という点に引っ張られています。
例えば、2012年3月頃から一瞬円安・株高に転じた時期がありましたが、何故そうなるか?といえば、欧州危機のギリシア前線で各国が必死になってフタをし、アメリカの雇用状況が向上したという事情が、海外投資家の食指を動かし、一時的に回避・塩漬けにしていた日本円を再び引き出す(円を売る)動きがあったから円安になり、それを好感して日本株価も多少は持ち直し、さらにそれを好感して日本の街角景気に薄日が、、、というメカニズムです。だから、ギリシャ不安が再燃すればまた逆コースをたどり、スペインが本格的に飛び火すればまた不安になるという。2012年中期以降、かつてないくらいヨーロッパの動静がビビットに世界経済に影響を与えています。フランスやギリシャの選挙結果なんか、ちょっと前まで遠い世界の出来事でした。それがここまでいちいち東京市場を一喜一憂させている。
なお、震災後一年で、企業や就職のグローバル化はかなり進んできています。詳しくは
3−3:世界と日本のメガトレンドと将来のキャリアに随時関連記事をスクラップしているので参照されたいのですが、ちょっと前には「近未来の予想」というニュアンスだったものが、わずか1年もしないうちに「デフォルト設定」化しつつあり、「なにを今更」みたいな感じになっているという。このあたりの進展は滅茶苦茶早いです。
2013-14年の状況
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2012年12月の総選挙で自民党が政権に返り咲き、2013年7月の参院選でまた自民が勝って「ねじれ解消」になりました。「アベノミクス」ということで、お札をバンバン刷ってドンドコ景気対策をやるんだと言ってますが、その是非はともかくとして、事柄は国家という枠組みをはるかに超えています。
それは大きな渦潮や海流に流されている船のようなものです。
船内の職員人事が変わろうが、船内でぱーっと宴会をやろうが、一等船室を豪華に確保するために二等船室を半減して三等に押しやろうが、大きな海流に流されていうという客観的事実それ自体は何ら変わらない。
2009年総選挙で民主党が大勝して政権交代をしたときは、自民党は存続すら危ぶまれるほど衰退しましたが、2012年の総選挙では真逆な結果になり、今度は民主党の存続が危ぶまれています。いっとき大きな盛り上がりを見せた橋下維新勢力も、2012年に石原元都知事と組んだあたりからキャラがぼやけはじめ、2013年07月の従軍慰安婦発言をキッカケに支持率が急降下し、ついに分離。まるで「平家物語」を早送りでみているような激しい栄枯盛衰があり、ゆれもどしがあり、またゆれもどしがあります。国論二分の原発問題も、2012年夏にはあれだけ節電だのと騒いでいたことも、2013年夏にはあまり聞かれなくなりました。まさに「喉元すぎれば」です。
しかし、それもこれも日本という極東の島内事情にすぎず、世界視点で見た場合、日本国内の政治状況は一切無視しても構わないと思います。なぜなら日本の動向で世界が動くならまだしも、今は日本政府の動向で動くのは海外投資家筋の動き程度でしかなく、政治的な影響力はほとんど無いといって良いからです。
一方経済面では、最先端の部分では世界経済の海流に対応して激しく変わっています。隆盛をほこったソニー、パナソニックや三洋など日本家電は、大量のリストラで身軽になりつつあるとはいえ、前途は多難。パナソニックは家電メーカーというよりは住設メーカーや自動車部品メーカーとしての存続方向ですし、シャープは台湾の鴻海やらサムソンと提携するとかしないとかで経営再建中ですが、2014年8月現在でまだ有利子負債が1兆円もあり、パイオニアを売却したり。
一方、これまでの世界的なトレンドも徐々に深化、実体化していっています。
例えば新興国に行けばいいんだというシンプルな話ではなく、それぞれにカントリーリスクはあり、それぞれに浮き沈みはあることが明瞭になってきています。海外進出したけど大失敗でしたって話もチラホラ聞こえてくるでしょう。海外進出すればいいってもんでもなく、行き方やノウハウが重視されるようになる(当たり前だけど)。
また、中国国内のギクシャクや成長鈍化、BRICKsの一翼を担いオリンピックもサッカー世界大会の招致にも成功して「その次」だったブラジル、さらにBRICKs後の本命といわれているトルコでも大規模な民衆デモが起きて情勢不安定になっています。先日のNewsweekでは、BRICKsの次にくるのは、実はモザンビークとタンザニアだと(どちらも猛烈に経済成長している)と書かれていました。
一方、欧州ではここ数年相変わらずで、ギリシアなど貧乏親戚に援助しまくって破綻を防いでいますが援助疲れや嫌気もさしています。アメリカは、ブッシュ時代にイラクとアフガンに喧嘩を売って盛り上がっていたのが一転し、経済ダメダメになっていたのが、今度はシェール革命(これまで採掘できなかった石油が採れるようになった)で、資源問題を解決し、長期安定に転化しつつあるように見えます。が、内部事情は相変わらず、失業率が下がろうとも、結局は正社員が非正規化してパート職が伸びているから数値面では良くなってるように見えるだけでもあります。日本でも非正規雇用が全体の4割近くを占めるようになっています。
そこへもってきて2014年のウクライナ危機で米露対決ムードになって制裁合戦をやってますが、アメリカ主導の世界支配も思うように進まず、逆にロシアや中国などBRICKSがBRICK投資銀行を作ってIMF体制やドル通貨制度に揺さぶりをかけたり、そうかと思うとここ数年ケニアで始まったmPesoという銀行の存在を無用のものとする決済が静かに広がったり、一方ではWOS運動の一つの方向性としてシェアリング経済が先進国から世界各地に広がったり、これまでの世界の常識的なフォーマットが徐々に変わろうとしています。
このように、表面的な浮き沈みやゆれもどしはあり一筋縄ではいかないのですが、大きな流れそのものは全然変わってないと思います。というか時と共によりそのフレームワークが鮮明になってきているということでしょう。
2017年以降の状況
2008年のリーマンショックの影響は、10年経過した現在においても尚も続いていると思います。というか、結局対処できないままその場しのぎの対症療法(金融緩和)を続けているうちに世界的にバブルが膨れ上がって、もうどうしようもなくなっているという状態だと僕は思います。
そのメカニズムを簡単に言えば、金融崩壊しそうだから緊急輸血的市場に大量のお金が流れ込んだ→その資金を「有利に運用」する世界の金融ファンドらが必死に投資先を探した→実体が伸びてなくても「上がりそう」という投機と思惑だけで投資が集中し、集中するから実際にも値が上がるということで、実体と相場とがどんどん遊離していったということです。
結果として世界の超金持ちは投資リターンで益々裕福になったのだが一般市民は置いてけぼりを食らったままなので、どんどん格差が広がった。実際、アメリカの市民は、リストラやホームレス、フードスタンプ(食糧配給)、新卒者の奨学金地獄、デトロイトなどの破産自治体など決して好調であるわけないのに、株式は史上最高値を更新とか言ってますよね。日本でも「いざなぎ」景気を超えた、バブルを超えた、企業業績は最高とかいってますが、皆さんの実感はどうでしょうか?経済上の数値と、実体とがかけ離れてきて、もう定着している。実体の裏付けのない資産(株や不動産)価値の上昇=バブルですが、もうここまできたら今さら止められないって感じじゃないかと思います。
それに加えて、リーマンショックとはまた別の、もっともっと根本的で長期的な問題が露呈してきています。
(1)少子高齢化
これは日本だけではなく先進国どこも同じです。多くの若い人達で少ない高齢者を支える原理でやっていたのが、人数が逆転すればコケるのは当然。医療、福祉、年金などこれから膨大にお金がかかるから、帳尻を合わせるために国もせっせと増税やら支給減少やらしますが、それがまた景気を悪くするという悪循環。昔から分かってたことですけど、昔はまだ先の話と知らんぷりできたけど、もうそれも出来なくなってきた。
(2)先進国の沈下
そもそもなんで先進国が先進してられたのかといえば、植民地時代の搾取の蓄積、戦後の人口爆発の人口ボーナス、科学技術商業の先進性ですが、今はいずれも賞味期限切れになってきてます。それに代わって、中国インドその他の国々が追いかけてきています。
(3)科学技術とグローバリズムが墓穴を掘っている点
今の先進技術は、ITやグローバル化ですが、これもやればやるほど、自国の産業は空洞化し、AIやロボットで職は減るという、先進すればするほど一般市民にとばっちりが来る矛盾
(4)政治の迷走
人々はこの閉塞状況の不満を政治にぶつけるのですが、政治とて解決案があるわけでもない、でも支持率は取らないといけないで、人気取りのポピュリズムに走ったり、戦争有事を演出して話題そらしを図ったり、ダッチロール化していきます。マスコミもネットの影響で食えなくなっているから、政治による利権保護を頼みに劣化します。
とまあ、暗くなるような話なのですが、だからこの10-20年、世界の感度のいい連中は、脱資本主義、貨幣経済ということで新しいフレームを構築しようとしているのでしょう。こと日本経済に話を限定すれば、今や世界で儲かるのは経済的に伸びている発展途上エリアで頑張ることでしょう。日本企業も海外では頑張ってるところも多いですしね。
もうひとつは、2015年あたりから顕著になりましたが、豊かになってきた途上国の皆さんが海外旅行(日本旅行)を楽しもうという日本人が昔やってたことをやりだしたので、訪問外国人が爆発的に増えていることです。これから先、日本国内で一番伸びていくのはこのエリアじゃないかなと思います。
(グラフは【2017年】日本の旅行収支・訪日外国人数推移をグラフ化(1996年〜)という記事からキャプってたもの。
ということで、今どきワーホリや留学をやるメリットとしては、英語や外国人慣れを武器にして、これから伸びていく外国人訪問者市場で活躍することじゃないかと思います。
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