「生活」「移住」と言っても色々なパターンがありますが、ここでは
オーストラリア現地で生計を立てて住むということを中心にして話を進めたいと思います。
以下、法的にも現実的にも最もネックになるであろう
現地で適法に働く という点に焦点を絞って書いていきます。
さて、移住プロセスが完了するには、
@、いかにして日本から離れるか(→意思決定、退職、親族関係、年金その他の公的処理)
A、いかにしてオーストラリアに適法に滞在するか(ビザの問題)
B、いかにしてオーストラリアで生計を立てるか(就職・起業・資産運用の問題)
という、大きな3本柱があります。
(1)については、各自それぞれにダンドリをたてて戴くとして、一般に問題なのは(2)と(3)でしょう。順次書きます。
もっとも、個人的には一番大変だったのは(1)でした。特に仕事関係で、数十件もの継続案件を抱えながら徐々に整理し、引き継ぎうる状態にもっていくのに、やっぱり1〜2年くらい掛かりました(最初は絶対無理!と思ったくらい)。
第一の関門 : VISA(ビザ)
ビザというのは入国許可証のことで、その国に入る入場券みたいなものです。
まず、ビザの大原則を知ってください。
原則としてその国に利益をもたらす人にしかビザは与えられない →この部分をもう少し詳しく読む
利益の度合が明確で直接的なほど簡単にくれます。観光ビザのように「お客さん」の場合は、現地に金を落としていくだけの福の神のような存在ですので、「いらっしゃいませ」と非常に簡単にくれるわけです(ETASという形で簡略化されてます)。同じように、留学などの学生ビザについても、授業料というお金を落としてくれるわけですから比較的簡単ですね。
逆に「来ないで欲しい」と言われているのは、その国に不利益をもたらす人達です。
どこの国でも同じですが、端的には地元民の職や公的秩序を乱す不法移民であり、不法就労者。西ヨーロッパ諸国なんか年がら年中この問題で紛糾してますが、ドドドと低賃金の外国人労働者がやってくるので現地の人間は職に就けないから問題だというわけです。
あとやり玉にあげられるのは、「福祉狙いの偽装家族」のようなパターンで、一人に永住権を与えてしまえば、その人間を頼って親類縁者(と称する者)が大挙して押しかけ、「福祉金をタカりに来てる」などという表現で言われてたりします(多分にオーバーで下世話な報道なのだが)。しかも、オーストラリアの場合、デ・ファクト(籍は入れてないけど事実上の婚姻関係)というカテゴリーがあったりするから、永住権/市民権保持者が配偶者として名前だけ貸すビジネスやらその手続を請け負う業者やらがいるらしいです。
上記は極端な例ですが、オーストラリア当局から見れば、「オーストラリアで働きたい」という人は潜在的に上記の危険があるわけです。つまり、
国民の職を奪うという問題と公的扶助のタダ乗り問題。だから「ダメ」というのが基本的な姿勢です。で、本来ダメなんだけど、一定の範囲で「限定解除」しましょうとなっているわけで、ビザの交付条件というのは限定解除条件でもあるわけです。
限定解除項目(各種ビザのカテゴリー)は、上にあげたリスクがないことをどう証明するかによって決まってくるのでしょう。
ビザの原理原則を知ること
原理原則論は、即戦力やリアルタイムの情報ではないのでまどろっこしい思いを持たれるかもしれません。しかし、原理原則を理解している方が結局は役に立ちます。数学でも、出来ないヤツ(僕ですけど)に限って公式をベタ覚えしようとするけど、本当に出来るヤツはその場で原理から公式を導き出せます。「なんでそうなるか?」を知ってる人間は間違えない。
ビザでも同じ事です。リアルタイムのポイント計算がどうのというのは、数あるサイトで幾らでもできますが、そこで仮に結論が出たとしても、ビザの規定なんかしょっちゅう変わってるから、明日もその計算でいける保証なんか何処にもないです。とりわけ永住権は思い立ってから現実にゲットするまで、早い人でも数ヶ月、平均すれば数年がかりのプロジェクトになります。したがって今日現在しか通用しない情報を断片的に得ることは、一見実戦的に見えつつ、ぜーんぜん実戦的ではないです。原理を知っていれば、応用も自由自在にきくし、また予想もかなり的確に立てられます。こっちの方がずっと実戦的です。
ということで、ここでは
「なぜこういう条件だと永住権をくれるのか?」「なぜこうも規定がコロコロ変わるのか?」という原理部分に力点を置いて書きます。
そして次章以降では、
「永住権や移住など、あなたが幸福になるための数ある手段の一つに過ぎない」という大局的視点を書きます。永住権ゲット=成功なんてほど人生はシンプルな○×ゲームではない。事実、苦労して永住権を取ったはいいけど、しばらくして日本に帰る人もまた沢山います。でもって帰国したら失敗かというと、又そういうものでもないです。永住権という「はじめに手段ありき」という発想からスタートすると、容易に「手段の目的化」という失敗パターンにハマりがちです。「五目並べだと思いこんでいたら、実は囲碁だった」というゲームの本質の誤解は避けるように。これは
「永住権を取りましょうゲーム」ではないです。「あなたが幸福になりましょうゲーム」です。
永住権取得の概要まとめ
改正に改正を繰り返すのでこのページもかなり入り組んできました。かなり複雑なエリアですので、先に概略を書きます。
二大ルート
日本人に関する限り、ルートは大きく2つにわかれます。
(1)仕事系 (Skill Stream)
(2)家族(結婚)系 (Family Stream)
他にも「政治亡命」「難民」系もありますが、さしあたって日本人には関係ないでしょう。
↑上の表は、
Essay859:2016-17年度 オーストラリア永住権DATA速報で引用した最新統計からのグラフです。
これを見てわかることは、仕事系2:家族系1くらいの割合であり、仕事系の中でも独立移住(スポンサーなし)とスポンサー系(雇用者・政府指名)があると。
細かな分析を省略していえば、平均的な日本人がオーストラリアの永住権を取る場合、
雇用者指名か結婚永住が二大ルートであると思われます。独立移住は以下にも述べますが、年々難しくなってます。実数は変わらないけど、世界レベルでライバルが増えているし、職域の偏りと英語点とのマッチングなど難しい部分があります(自動車整備など手に職系は取りやすいのだけど、今度はIELTS6点の最低基準を満たせないとか)。
結果的に見ても、最近の在豪日本人永住権取得者の多くはこの2つではないかと思われます。その昔は独立移住がまだ易しかったので、取得者も多かったのですけどね。
まず独立移住の査定、次に補完
しかし、段取りとしていえば、リーチ一発即取得の独立移住は魅力的なので、永住をお考えであれば、まずビザの代行業者さんなどに査定してもらうことをおすすめします。最初から無理だと諦めてたら、あとになって「あの時やっていれば取れたのに!」というのがわかって悔しい思いをしたりしますし。
次に独立移住は無理だった場合、その理由が単に英語点だけ、ないし英語点を上げたらクリアできるなら必死に英語をやるべきです。速攻留学してIELTS6点(では難しいだろうから7とか8)を目指すべしです。日本で地道にやってても、仕事しながらだと効率悪いし、時間をかけているうちに年齢点が下がってパーになったら元も子もないです。また退職して英語勉強に時間をかけすぎても、今度はキャリアの有効期限が切れてしまう(過去○年以内というやつ)。基本的に永住権に年齢点という要素がある以上、常に「時間との戦い」になるのですが、この場合は特にそうです。
英語点だけでは無理な場合、オーストラリアで就労ビザ(457=TSSビザ)をとり雇用者指名に成り上がるというパターンになります。ただし、この就労ビザ自体が難しいので、まずワーホリや留学で来て、英語を身に着けつつ、現地のアルバイトから始まり、出世魚的にグレードアップしていき、スポンサードしてくれる雇用者を見つけて就労ビザをゲットし、雇用者指名に至るというのがわりとスタンダードな流れです。
あるいは独立移住でも、日本から即取得は無理でも、現地で働いて現地職歴点を重ね、同時に英語点も積み上げていくうちに、「数え役満」みたいにゴールするケースもあります。
一方、二人に一人は結婚ビザですので、それを狙うのも十分にアリなんですけど、多くの場合は「同時並行」「自然発生」でもあります。
全てが両立しうる
細かな事は第三章以下の戦略論に譲りますが、最初に知っておいていただきたいのは、
発想をフレキシブルにすることです。幾つかのルートがあるといっても、理系/文系みたいにAを取ったらBは取れないという関係ではなく、全てが両立しうるし、同時並行に進むということです。実例でいえば、現地で頑張って働いて自力で独立移住のレベルまで上がっていく過程で、誰かと運命の出会いをしてしまって、どっちでも永住権が取れるんだけど、早い方がいいやで結婚永住にしたとか。
こう考えると分かりやすいかな、永住権というのは、
「オーストラリアで十分に人生をやっていけるだけの実質」があれば与えられることです。その「実質」の中には、当然ながら「不自由ない英語力」も入ります。また生計を立てるための「仕事」も入ります。仕事も、単に就労しているだけではなく、現地の国民(オーストラリア人)に「是非この人に居て欲しい」と言わせるだけの実質(スポンサード)がいると。一方、結婚ビザがあるのも、既にオーストラリアの人生が始まっているのだから、追認的に与えられるようなものといえます。
要は、
人生の基本要素=「生活力(言語、就労)」と「出会い(雇用者 and/or パートナー)」です。これはオーストラリアに限らず、日本だってどこだって、同じことでしょう。その実質をオーストラリアで積み上げること。最初はなんにもありませんから、とにかく現地で四苦八苦して生きていくことからドラマが始まり、さまざまな局面で良い出会いがあり、学び、向上し、充実していくなかで、一定レベルまで達したら「ずっと居てよーし!」と「正会員認定=永住権」が付与されると。
だとしたら、何をどの順番に身につけるか?出会うか?は、多分に人生の偶然です。決めてかかってどうなるものでもありません。また事柄の性質上、「時間がかかるもの」と「時間は関係ないもの」があります。語学は努力の積み上げ以外にありませんから、時間がかかります。ざっと3年くらいはかかると思います。しかし、パートナーとの出会いは、一瞬で恋に落ちたりするし、待ってても中々来なかったりするかもしれないし、時間は関係ないです。よき雇用主との出会いもまた同じでしょう。
つまり時間をかけるべきもの=時間さえかければ良く、計画性に馴染む要素と、時間は関係ない偶然性という要素がごちゃ混ぜになっているから難しくもあり、面白くもあります。それは人生の難しさと面白さにストレートにつながります。要するに
"That's how life goes"(人生なんかそんなもんだよ)です。
永住権の話をしていると、不可避的に人生(戦略/哲学)論になっていくのは、ある意味では当然です。また、人生論レベルで考える必要があるのは、それは
大局観や戦略眼につながるからです。ゴールまでの道筋で事情変更があっても、柔軟機敏に対処できる「ふくらみ」のあるプランが立てるために。
さて、以下、各永住権の細かな部分を解説しますが、これまでの改正過程や分析なども含めて書いてますので、かなり複雑です。一般的には以上の「まとめ」だけ読んでおけば十分だと思います。あとは個別に研究したい方のための参考資料としてごらんください。
そしてプラクティカルな結論をいえば、ここから先は
ビザの専門家にお金払って聴いたほうが早いですよ。
永住権取得までの道のりは、自分の状況も変化するわ、規定もコロコロ変わるわで、まるで水上スキーをやりながら水上のマトを射撃するようなものです。それだけにリアルタイムの情報、それも徹底的に正確な情報が必要です(可能ならば将来の予測も)。そして実行にあたっては、ミリ単位に精密な設計図が必要です。といって、自分で調べてても限界あります。専門のプロの方(できれば複数)にしっかり査定してもらうべきでしょう。
プロの助力の必要性
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リアルタイムのビザ情報は、
オーストラリア大使館や
移民局のホームページが総本店です。しかし前者は概括的すぎるのと、後者はあまりに膨大で、クリック&リンク迷宮に入り込み、結局なんのこちゃか結論がよう分からんことになりがちです。この種の情報というのは、パソコンと同じで、サードパーティの方が親切で分かりやすいです。だから、ビザ代行業者さんに聞いたほうが良いよと。実際、業者さんのホームページの方が親切で分かりやすいです。シドニーにも日本人がやっている業者さんがいくつかありますので、ご覧になったらいいと思います。老舗では
NBCA、
スタッフソリューションあたりがあげられるでしょう。英語でよければ
ACCACIAというところが一番ビビットに解説してくれています。
ビザの専門業者さんは、無料相談などもやっているようですが、出来ればキチンと自分達のプロフィールなどの詳細なデーターをまとめて、料金を払って査定してもらうべきです。料金といってもそう大したことないでしょうから(査定だけだったら1−2万円くらいじゃないかな)、投資する価値はあると思いますよ。何が難しいかというと、何百とある業種/職種の中から、自分の場合はスキル点何点なのかの判定であり、またその時々のオーストラリアで高度に求められている職種に該当するかの判断です。これは職業別電話帳のように細かく、見てて頭が痛くなりますし、素人が読んで理解して当てはめられるものではないです。また何度も述べているように、年がら年中変わります。移民局に登録している専門の業者さんの場合、移民局主宰のセミナーが年に何度かありますし、また「近い将来こう変わるよ」という事前告知もなされますから情報が早いです。また、経験豊富な実務家ならではのカンみたいなものもあるでしょう(この点はあんまりうるさく言われないけど、ここは厳しく審査されるという=税務署の審査と同じ)。
それに無料相談でやれるのは限界がありますし、どうしても概括的な話になります。一家で移られて、現地の学校にいったり、ビザのためのまた別の学校や大学にいったりしながら、最後の最後で、「あなたの場合は例外にひっかかるからダメよ」と言われてしまったら、それまでの費用と労力が無駄になります。おそらく数千万単位の損害になるかもしれません。僕の知人も一家四人でやってきて永住権を取るために頑張っておられた方がいましたが、これまでに2000万くらい遣ったと言ってました。最高に調べて、努力していてもなかなか取れない永住権です。また、案外ひょこっと取れてしまうのも永住権です。出来ることは全てやるというくらいの意気込みで考えておかれるといいでしょう。
これは弁護士としての僕の経験でもあるのですが、向こうもプロですから、プロというのは1円でも貰ったら「絶対に嘘は言えない」という凄いプレッシャーがかかるのですよ。分からんところは調べなければならないし。これが無料だったら「さあ、いろいろなケースがありますからねー」で誤魔化せるんですよ。そんな一般論的なアドバイスを幾ら聞いても意味ないです。やっぱり自分の具体的事情に合わせて、可能な限り正確な答が欲しいし、そのプレッシャーをかけるためにも、積極的に払った方がいいです。結局は得だと思います。
ということで、インターネットサーフィンをして、
僕のような素人がチョロチョロ書いてる情報を断片的に集めて、それだけで一生にかかわる決断をされるのだけはお止めになった方がいいと思います。ありったけの全知全能を尽くして完璧を期してください。そのなかでもグランドデザインは設計図そのものですから、いい加減な噂や希望的観測で作らないように。
また、余裕があれば、複数の業者さんに聞いてみたらいいです。ビザの見通しはそんなに数学的にビシッと出てくるものではなく、曖昧なグレー領域があります。移民局の担当者がそこをどう判断するか?という「見通し」です。この見通しが楽天的な人と、悲観的な人がいて、それが回答に微妙に影響するのですね。ですので、客観的に把握するためにも、何件かに聞いてみるのは意味のあることだと思います。立体的にも理解できますし。
あと、多少なりとも払って一回そうやって見てもらったら、正規のクライアントになりますし、顧客名簿に載ります。だから、あとで追加でものを聞くときに便利です。ちょっとした学生ビザのことでも「わからんから、聞いちゃえ」ってやりやすいんです。「いつもお世話になってます、田村ですけど」で話が通じるので楽ですし、向こうも粗略に扱えないでしょうし、またデーターもあるので正確に答えてくれるでしょう。
猫の目のように変わる規定〜過去の「ハシゴ外し」の実例
永住権取得の条件は、時の政策判断でコロコロ変わります。これはもう本当に「いい加減にしろ」と言いたくなるくらい変わります。
→続きを表示させる
かなり昔の話で恐縮ですが、こういう実例がありました。
オーストラリアの輸出産業の柱になるのは大学などの教育産業です。そのときの連邦政府の大学への補助金カット政策により、大学経営は留学生頼みになっており、この大学経営を支援するために、2年以上ビジネス学校や大学に通った場合永住権が取れるという新卒者永住権ルートも作られました。
これは最終的には技術独立移住永住になるのですが、そのための難関条件である「実務経験」が、オーストラリアの学校に通うことで補助されるものです。例えば、2年間オーストラリアの学校(これも条件があるが)に通えば、18か月暫定的にオーストラリアに滞在して仕事をすることが出来(新卒者一時滞在ビザ)、この期間に必要とされる実務経験を積んで独立移住を申請する。またオーストラリアが必要としている職業リスト(MODL=Migration Occupations in Demand List)に載っていた場合、15点のボーナス点を獲得することが出来ました。
このMODLルートが、その時点で皆に愛用されていたオーストラリア永住への近道であり、「調理師や美容師の学校にいって永住権を取る」というルートでした。実務経験免除そのものよりも、MODLのボーナス点15点というのが非常にデカかったわけです。どだい120点というボーダーが超人的なので、かなり出来る人でも「あと5点足りない」で涙を飲んでたところ、一気に15点ボーナスというのは途方もないわけです。ただし、これも楽ではなく職業関連の学校に通学した後、査定機関TRA(Trade Recognition Australia)に技術査定を受けるのですが、そのためには「900時間の実務経験」が要求されたりします。しかし、MODL点を使えば学歴が無くとも、年齢が高くても、永住権ゲットの道が開かれていました。
以前の更新の時、「しかし、これも景気が変わったり、政権が変わったりしたらどうなるかわかりません。あくまで一過性の政策であるということを頭に入れておいてください」と書きましたが、やはり懸念したとおり、2010年2月、このMODL制度そのものが全廃になってしまいました。で、どうなるの?というと、新職業リスト(SOL)が5月頃に発表になり、職業数は大幅に削減されました。が、独立移住永住権申請の基礎構造そのものは変わってません。ただ、これまでのような大きな抜け道は無くなったということです。
この種のビザ規定の改廃は決して珍しいことではありません。
MODLの前にも、オーストラリアの大学に1年以上通ったらスキル点免除という特典を作っていたのですが、2003年からいきなり1年が2年に引き伸ばされてます。これは、他人事ながら「ひどいことするな」と思いましたね。二階に登って梯子を外されるようなものですからね。実際、そういう目にあった知人も何人も知ってます。さらに、会計士やIT関連が持てはやされたと思ったら、そうでもなくなったり。これも僕の知人ですが、日本で臨床医をやっていたけど、オーストラリア滞在時には医師過剰だということで、医者の職業点はなんとゼロ、もう端的に「来るな」ということです。仕方なしに大学で会計学をやってましたが、やはり途中で馬鹿馬鹿しくなって帰国してしまいました。ところが2010年になったら、医師が足りないということで、医師だったら優遇的に永住権が取れるようになってます。
ここまで180度手の平を返されると、ほんと馬鹿馬鹿しくなりますが、しかし、見方を変えればそれだけ時の政府が経済動向にビビッドに反応しているということでもあります。今回のMODL廃止についても、MODL制度そのものがオーストラリア社会で多大な批判を浴びてました。僕らがそうするように、世界中の人がオーストラリア通学や資格取得を「永住権のため」と割り切ってやっており、こういう制度を設けたけど優秀なシェフが増えたという現実もなく、永住権を取得した大半の者が別の仕事をしているのが実情だったりします(ネパール人がやり玉にあがってましたね)。さらに「実務経験900時間」をアコギな雇用者から逆手に取られ、無給ないしは時給200円とかの奴隷状態で働かされている実態などもオーストラリア現地の新聞でセンセーショナルに書かれたりしていました。
ただ、これによってオーストラリアの教育産業、とくにビジネス学校が儲かっていたのは事実でして、実際同じビジネス学校でも永住権につながるコースは倍くらい高かったですもんね。今回のMODLの改廃は時代の趨勢とはいえ、業界には打撃でした。特に、それまで急増していたインド人学生がオーストラリアで不快な目にあったということで、インド内部での政府やマスコミの反オーストラリア熱は高まっており、インド人学生の減少が懸念されてましたから学校業界はダブルパンチになり、実際にもこの種のビジネス学校がかなりの勢いで倒産しました。
永住権獲得に燃えて通学していた人にとっては、またしてもハシゴを外されたわけで、「相変わらずヒドいわ」と思ったりもするのですが、でも、何度も言うように別にヒドくはないのですね。オーストラリア政府はあくまでオーストラリア人のための存在しているわけで、別に蛇頭でもなんでもないんだから、入国希望者のニーズに応じる義理はないです。その時々のオーストラリアの国情に合わせて政策決定していくだけのことであり、永住を希望する者がそれに合わせていかねばならないのは原則でしょう。そしてそれはいつの時代においてもそうだったのですから。
2010年5月に発表された職業リスト=SOL(Skilled Occupation List)の改定では、それまでの400種類以上の職業が180種余に大幅に削減されました。詳細は移民局のサイトで分かるのですが、細かすぎて何がなんだかって感じでしょう。専門家の助力が必要だと思います。職業リストの改廃は毎年やられていますし、シーリング(職業別受入れ人数)の調整も毎年やられてます。
オーストラリアの人口は急増しており、その増加率はインドや中国すらをも越えると言われます。ということは人口過剰になり、近い将来「もう要らん」という日がくるんじゃないかという気もしますし、アメリカのように純粋に抽選ということになるかもしれません。今から10年以上前を振り返れば、「あの頃は楽だったんだよね〜」とか言ってますけど、今から10年後には又現在を振り返って、同じ事を言ってるだろうという気がします。
各永住権の説明
★技術独立永住権(Skilled Independent Visa) とポイントテスト
永住権の種類は、事業関連、雇用主指名、スポンサー付技術独立、州スポンサー付、地方都市、配偶者、親族呼び寄せ、、などなど、様々な種類があり、また時とともに目まぐるしく変わります。
しかし、数ある永住権の中でも、雇用者や自治体などスポンサーがなく、呼び寄せてもらう親族もおらず、お土産にもっていく事業などもなく、純粋に独立独歩、裸一貫で勝ち取る王道の永住権がこの
技術独立永住権(Skilled Independent Visa)です。
「若くて、英語もできて、職にも困らないだけの技能を身に付けている者」であることが証明されれば、オーストラリアにそれほど迷惑はかけないだろうし、起業して現地の人間を採用してくれるかもしれないから、まあ良いでしょうということで与えられるカテゴリーです。5年毎に更新手続きするだけで、あとは「勝手にやんなはれ」でうるさく干渉されず、誰の顔色を窺わなく済みますので、取れるものなら取りたいビザです。
しかし、それだけに取るのは難しい。
@年令点、A英語点、B職業点の3つの観点から点数をはじきだし、総合○点以上なら合格というポイントテスト方式になってますが、総合ボーダーラインや各種の配点が猫の目のように変わるわ、この世に無数にある職業をいかにランク付けするかの職業点配点がブラックボックスになっているわで、「これなら大丈夫」という判定は専門の業者さんでもないと中々予想がつかないです。一応目安となる職業リストもありますけど。
ただ大筋の傾向として言えるのは、(1)学歴に制限はないものの実際には高卒より上の資格がないとダメ、(2)実際に職務経験がないとダメ、(3)18歳から45歳までの年齢にあり
(この年齢リミットはビザにより時期によりよく変わる)、(4)職業点の採点は、役職名ではなく具体的に何をやってきたかという実戦スキルが重視される、(5)唯一短時間の努力で向上できるのが英語点でIELTSテストで6.0以上はマスト(出来れば7点が欲しい)、などです。ただこれも色々細かな「ボーナスポイント」やらの修正があります(後述)。
永住権のボーダーラインは、ほぼ一貫して難しくなっています。僕らのとき(1995年取得)は100点で、今から思えば「牧歌的な時代」でした。さらに昔は現地で観光ビザに切り替えようとしたら、係官が間違えて永住権を印刷してしまい「いいから、貰っておきなよ」という超牧歌的な”伝説”も聞いたことがあります。そんな「おとぎ話」は遠い昔のことになり、100点のボーダーがドンと115点に上がり(途中一回110点まで下がったが、また115点になり)、そして2006年3月以降なんと120点まであがりました。115点にしたときも「難しすぎて非現実的」と批判されて下げたくらいなのですが、オーストラリアは移民先として世界的に人気が高いので、ボーダーを上げてもそれでもやっていけるということでしょう。
この傾向は現在に至るまで続いており、BRICsの躍進など世界の人々の教育水準や就職機会が増えるにつれ、ハードルを上げても上げても、それでも優秀な人々は掃いて捨てるほどいるということです。まさにメガ・コンペティション(大競争)の時代です。
2011年7月からは新しいポイントテストが、翌2012年7月からはスキルセレクト制度が導入されました。詳細は後述しますが、職業点のカウント方法が大幅に変わったので、ボーダーも変わって60点になりました。また、年齢点が若干ゆるくなる反面、英語点がさらに厳しくなりました。上に即して言えば、(1)学歴については基本的には同様、(2)職務経験の重要性が以前よりも高くなり、(3)18歳から49歳までの年齢にあり、(4)職業点の採点は、役職名ではなく具体的に何をやってきたかという実戦スキルが重視される、(5)英語点でIELTSテストで6.0以上は最低限の条件になり(それ以下だと申請すら出来ない)色々細かな「ボーナスポイント」やらの修正があるのは同様です。
僕もこれまで、十数人、あるいは何十人という永住権取得者 or 希望者の方とお話ししてきましたが、やっぱりそれなりに皆さん苦労されています。若くて+十分スキルがあって(しかもオーストラリアで評価されて)+英語力バッチリという”三冠王”も、いないことはないですけど、少ないです。なんせスキルを身に付けるまでに若くなくなってしまうし、スキルを身につけている間は忙しくて英語を勉強しているヒマがなかったりします。かといって、留学して英語をやってるうちに、スキル点が無くなってしまうとか(例えば過去○年中○年その職業に従事していること、などという条件もあったりしますから)、あちらを立てればこちらが立たずというのが基本的な状況だと思います。
2019年11月 永住権発行数減少と地方活性化のためのビザ変更
2019年にオーストラリアは、永住権年間総数19万から16万に減少し、かつ地方を活性化させるために、従来の地方ビザに代えて491/494ビザを新設しました(移民局の広報解説ページは
ここです)。
ただし、他の箇所でたびたび触れてますが、僕の私見としては、政治的パフォーマンスに過ぎないと思ってます。
なぜなら、オーストラリアの経済は、なんだかんだいって結局移民、あるいは海外の力によるところが大きいからです。海外からのお客さんから儲けるビジネスモデル。伝統的には観光、そして留学生(教育)です。鉄鉱石ブームでバブってた頃は中国の鉄鉱石爆買いでしたし(それも終わったけど)、オーストラリアの不動産がバブっているのも、中国やインドなど海外富裕層の資産逃避のための買いあさりが原因の一つと言われています。
また、オーストラリアが多くの留学生やワーホリをひきつけているのも、それが永住権に至る道筋だからであり、いわば「移民で食っている」ことになります。その移民も、ハードルが年々高くなってることで、来る人は本国のエリートで富裕な人が多く、オーストラリアに住んでくれれば優良な顧客になります。要するに、質の高い移民は「消費者の輸入」でもあるのです。企業においても、雇用すべき人材プールに優秀な人材が入ってくることは歓迎でしょう。
だから国や財界としては基本、移民を歓迎するのが本音ではないか。よりどりみどりで優秀な消費者・人材を輸入できるなら、その方がいいからです。ただし、それは先に住んでいる国民や、既に永住権をとっている人達(いわゆる既得権)にとっては、都市圏は混雑する一方だし、不動産はありえないくらい高くなるし、就職しようにも優秀なライバルが増えてもらったら困ります。ゆえに国民的な意識としては、あんまり増えないで欲しいって声になって出てきます。
政治家としては、どちらの声にも配慮しなくてはならず、結果、「すごいことをやってるようだが、実質的にはあんまり意味ない」ような「やってる感パフォーマンス」にならざるをえないのではないか、というのが僕の意見です。
実際、過去において永住権発行数19万とかいっても、移民局の処理能力の限界もあるのか、実際には16万くらいしか発給されていないのですから、16万になっても別に大差ないわけです。でも、そう言うとすごく削減したようなニュアンスを与えます。
地方移住奨励ビザも趣旨はわかるのですが、意外と条件が厳しい。指定された地方で3年間も働かないといけませんし、最低年収(けっこう高い)をクリアしないと年数カウントされません。そしてどのような現実的な手続きやるのかは各州に丸投げですし、各州政府もノミネートやスポサードの細かな条件や、現在の進行状況を広報するわけでもないです。さらに、地方活性とかいいながら、指定されている「地方」は、結局大都市以外全部であり、パースや、成長著しいゴールドコーストまで指定されるという話もあり、それなら皆大都市近辺で頑張ってしまうわけで、あまり意味ないようにも思います。
まだ2019年11月から始まったばかりですので、ここしばらくは経過観察が必要だと思います。
詳細は、
Regional work visas ほか、各サードパーティ(民間の移民代行業者)の解説や記事参照。
2020年01月時点のポイントテストの内容
移民局本家の189(独立移住)のポイントテーブルにあります。
でも、こういうのはお役所の説明よりも民間企業の方が上手でして、検索すればいくらでも出てきます。"Australian Permanent resident point test 2020"などで調べるといいです。
例えば、
ここなんか分かりやすいです。
概要はそんなに変わってないのですが、
(1)年齢点 18-24歳(25点)、25-32(30)、33-39(25)、40-44(15)
(2)英語点 Competent(IELTS6=PTE50など他多数)0点、Proficient(IELTS 7)10点、Superior(IELTS 8)20点
(3)オーストラリア外での職歴点
3年未満はゼロ点、3-4年で5点、5-7年10点、8-10年15点
(4)オーストラリア国内での職歴点
1年未満ゼロ点、1-2年5点、3-4年10点、5-7年15点、8-10年20点
(5)教育・学歴
博士号20点、学士・修士15点、ディプロマ&その他職業資格10点、
(6)オーストラリア国内での通学歴
ディプロマ以上をオーストラリア国内の学校で受講したら5点
(7)科学技術系ボーナス(Specialist education qualification )
ITなど指定領域の指定コース(修士か博士)で2年(92週)やると10点
(8)婚姻関係(ここはちょっと変わった)
独身だったら10点、オーストラリア国民か永住者と結婚したら10点、配偶者が職業リストにのってる職域スキルを持ち&IELTS6点以上で&45歳未満だったら10点、配偶者がスキルはないけどIELTS6点だったら5点
(9)その他
NAATTI(国家認定通訳翻訳)とか田舎の学校いってたら5点とかそんなの
2020年時点の足切りポイントは65点ですが、実際には65点では通らないと言われてます。
このサイトによると、点数が高い方が審査期間が短く(すぐにインヴィテーションが出る)、85-95点取れたら1-2ヶ月、75-85で8-9ヶ月、70点だとダメな可能性が出てきて、65点ではまあ無理という感じらしい。ま、これも一応の目安でしかないですが。
2017年04月〜追補
いわゆる457と呼ばれる労働ビザが、名称変更も含めて「多少」改正されました。
その詳細については、テクニカルに長くなるので、別項で書いた
Essay828:457ビザを始めとするビザ改正案について
をご参照下さい。ここで簡単に要旨だけ書いておくと、
→MORE
(1)ビザ関連の名前が変わる(こんなのどうでもいいです)
457ビザ→Temporary Skill Shortage (TSS) ビザ
SOL(Skilled Occupations List)→MLTSSL(Medium and Long-term Strategic Skills List)
CSOL(Consolidated Sponsored Occupation List)→STSOL(Short-term Skilled Occupations List)
(2)職業リストから多くの職が除去された(しかし私見によればどれだけ影響があるかは疑問)
(3)英語、年齢、費用など細かなところで厳しくなった
(4)2017年04月19日から2018年3月までに段階的に実施していく(457の名称が変わるのも18年03月)
関連して、457ビザではありませんが、雇用者指名(ENS/186)・地方移住(RSMS/187)も変わります。
2017年07月01日以降 英語点がIELTS6になる、年齢制限50歳は457から昇格するパターンには当面維持されるが(ただし2018年03月からは45歳に)、457すっ飛ばしてダイレクトに永住申請をやる場合には既に45歳に引き下げられています。
名称が変わった+職業リストが圧縮されたというのがメジャーな改正点のように見えますが、実は英語点や年齢点が一番キツイところかもしれません。雇用者指名は457からの「成り上がり系」、地方(RSMS)は地方のゆるさを利用したいわば「裏口系」みたいなもので活用されていたのですが、そこがキツくなった。
457ビザの英語点はIELTS5.0ですが、そこから186にジャンプアップして王手をかけるところが難しくなっている。一つは英語点が6点になったこと。もう一つはオーストラリアでの滞在期間と職務経験期間が2年から3年に伸びることです。また、銀リスト(CSOL=STSOL)の457が2年しか出ないことを考えると、457に行く前にオーストラリアに滞在して、IELTS6を狙えるくらいの英語力をつけることと、同種職業をゲットして早く現地での職業期間を増やすことが大事なのかなーという気がしますね。つまり457に行くまでの露払いのような前提作業が必要になるのかなーという。
ただし、こんな数年がかりのスキームをやってる間に、また法律が変わる可能性も高いでしょう。でも大きなところはブレてなくて、「英語と仕事が出来る(見つけられる)人」を求めているのは変わらないので、細かな戦略云々よりも骨太に地力をつけるほうが良いのかなーとも思います。
2015年07月更新時の追補
新ポイントテストもスキルセレクトとEOIシステムもほぼ定着したようですし、永住関係のビザの流れも徐々に整ってきているようです。
なお、こういうのは本家よりも出来のいいサードパーティのサイトの方が良かったりするのですが、例えば
ここなどの方が、本家よりもよっぽど綺麗にまとめてくれています。移民局の方で永住関係のビザを一覧表にしてまとめてくれてますので、キャプチャーして整形して、適宜日本語訳もつけて以下に示します。本来の頁は、
Skilled visas for Australia comparison chartsにあります。
永住関係ビザ関係の比較表
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2015年に作ったものですけど、2018年でも大まかな考え方は変わりません(上の457ビザ改正にともなって多少は変化ありますけど)。
表がダラダラと縦長なので半分に切って並べましたが、それでもデカイので小さく表示させてます。クリックして大きくしてみてください。
大きく2つに分ければ永住権リーチかけられる189(独立永住権)、186(雇用者指名)、187(地方指名)、190(政府指名)の各永住権と、それに至る前提段階である最大4年までの暫定ビザである457、489ビザにわかれるでしょう。189独立永住権は王様みたいなリーチ一発系ですけど、それだけに条件が厳しい。これが難しいなら、186-190あたりを模索し、さらにすぐには無理なら457や489でチャンスを伺うという感じになるでしょう。
この表だけ見ててもなんのこっちゃ?って思われるでしょうが、あとは後述の各項目を見ていってください。
簡単に書いておくと、スキルの範囲にSOLとCSOLがあります。SOLは"Skilled Occupations List(技術職業リスト)"でCSOLはそれに"Consolidated"がくっついて付帯エリアも含みます。実戦的にいえばSOLは少しだけ、CSOLは沢山です。沢山ある方が攻めやすいのですが、その代わり州政府や雇用者にノミネートやスポンサードしてもらう必要があります。ANZSCOというのはオーストラリアとニュージーランドに共通した職業リスト(四桁の統一番号が振ってある)です。
一般論としてみると、地方(リージョナル)にいくと緩くなりますよね。要するに地方活性化であり、田舎の村おこし目的です。田舎といっても、オーストラリアの場合、シドニー周辺(New CastleとWoollongong含む)、メルボルン、ブリスベン、ゴールドコースト以外は全部田舎扱いですけど。職業リストでも人気のある職業は応募者も多いし競争率も激しそうです。逆に手の職系の現場仕事は後述の受け入れ予定人数(シーリング)も大きい。
これは何を意味するかといえば、地元オーストラリア人に人気の職業やエリアは、もうオージーで埋まってるから移民に来てもらう必要もないわけけど、逆にオージーに不人気なエリアや職業は狙い目だってことですね。だから地方の、手に職系を狙っていくと、条件もそれだけにゆるくなっていきます。職業リストの範囲も、英語レベルも、ひいては50歳という年齢ですらも例外的に認めましょうなんて余地も残しているくらいですから。
就労ビザ(457ビザ)について
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前提段階となるビザでよく使われるのが「457ビザ」でしょう。
これはいわゆるビジネス(労働)ビザですけど、オージーだったら誰もがスポンサーになれるわけでは勿論なく、スキルエリアも限定があり、最低でも年収約540万円払い、英語(IELTS5で良いけど〜ちなみに英語テストはIELTSのほか、TOEFLiBT、OETそれにケンブリッジ試験も入りました(ただしFCEではなくCAE)。
Which English language tests are accepted by the Department?参照。
これだけでも結構たいへんなので、さらにその前提段階があります。
Temporary Work (Short Stay Activity) visa (subclass 400) 〜3ヶ月まで
Temporary Work (Long Stay Activity) visa (subclass 400) 〜2年まで
Training and Research visa (subclass 402) 〜2年まで
Special Program visa (subclass 416) for the Seasonal Worker Program 〜4−6ヶ月
Graduate visa (subclass 485) 〜18ヶ月 or 2-4年
これらのビザは、期間が短い分だけ取りやすく、次のステージに進むためのステップストーンに使われるのですが、進めなかったらそこで終わりでもあります。また、低賃金の外国人労働者を搾取する場合に利用される場合もあり、年がら年中新聞ネタにもなってます。例えば
”Dodgy employers investigated over 'exploitation' of 457 visa holders”など。
ポイントテストそのものは、下記の2011年改正時から2018年現在まで変わってないようです。これもわかりにくいので、サードパーティのサイトで見た方がよっぽどわかりやいすです(例えば
ここ)。
Occupation Ceilings=職業別受け入れ予定人数
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2015年07月に15-16年のOccupation Ceilings=職業別受け入れ予定人数(詳しくは後述↓)が発表されています(
Skill Selectメイン頁の"Occupation Ceilings"というタブ。これを見てると、移民局が何を考えているかが大体わかると思います。需要の高い職種はシーリング(受け入れ予定数)が多いし、そうでない職種はぼちぼちです。
ところで、この分析をしているビザ代行業者さんのサイト(英語)があって、
2015-16 Occupational Ceilings for Skilled Migration Released、非常によく分析されています。去年どれだけ採用されたか(invitarionをもらって永住権ゲットできたか)まで書かれていますし興味深いです。よく見ていくとシーリングは沢山あるのに数%しか埋まっていない職種も多いです。例えば自動車の電気関係の技術者は1000人枠なのですけど実際に採用されたのはわずか7名。ナースはシーリング1万人を超える巨大エリアですけど、採用されたのは20%以下です。Production Managers(生産管理者)なんか、3000人の採用枠にわずか4人です。
なお、この年のトピックは、会計士が半減(5478→2525)でしょう。シーリング100%採用率なんだけど、「もう要らん」ってことでしょうか。IT系もシーリング100%でフル採用なんだけど、それほど減らされてはいません(微増もある)。でも応募者が殺到しているってことで狭き門ではあるのでしょうね。
サードパーティですが、
2017-18年のシーリングの発表、さらに17年7月のスキルセレクトのラウンドの結果を合わせて考察しています。
概略は、従来のメインエリアの受入数がドーンと増加しています。Accountantsはほぼ2倍のほか、Industrial, Mechanical and Production Engineers、Software and Applications Programmers,ICT Business and Systems Analystsなど。ただし、その分「楽になった」「狙い目」だと思うのは早計で、これらのエリアはあまりにも応募者が多く、途方もないハイレベルになっており、スキルセレクトの足切りポイントも75点とか70点など「ありえない」レベルになってます。60点取るだけも大変なのに75点とかどんなんじゃ?と。それを緩和する目的もあって、上限を上げたのだと思います。
それ以上に、「実際の所どうなの?」という現状の問題があります。
例えば上に述べたシーリングでも、1000人予定になっていながら、実際に採用(invitation)されている人は非常に少ないケースもあります。これをどう読み解くか?です。応募者が全然居らずに手をあげたら即当選できる楽勝エリアなのか、それとも応募者は沢山いるけどスポンサーになってくれそうな人が全然いないから見込みのないダメ職種なのか、もう天地の差があります。このあたりの実情チェックも要るわけで、こればっかりは労働市場やビザ給付状況をコンスタントに見ている人でないと分からないと思います。
2011年7月から改正されたポイントテストの算定
2010年11月に永住権審査の新方式が発表になりました。施行は11年7月から行われています。今回の改訂はかなり抜本的なものです。基本コンセプト(オーストラリアにとって有為な人材を求める)は変わらないのですが、その採点方式がガラリと変わりました。
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なお、独立技術移住に関する動向は、
What's New? Recent Changes in General Skilled Migrationでチェックできます。
比較表
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改正前(旧法) |
改正後(2011年07月以降) |
年齢点
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18〜29歳 30点
30〜34歳 25点
35〜39歳 20点
40〜44歳 15点
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18〜24歳 25点
24〜32歳 30点
33〜39歳 25点
40〜44歳 15点
45〜49歳 0点
※若ければ良いというものではなく、また機械的5歳刻みでもなくなった。24−32歳という広いレンジに最高点を配し、〜39歳と〜24歳とを同列に配するなど、実際の職業経験、ベテランを優遇するようになった。結果的に30代の人にも十分なチャンスが廻ってきたことになる。
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職業・学歴点 |
職歴
職種とキャリアによってA〜Cのカテゴリがあり、60点、50点、40点と配点されている。
A:学士以上の学位 or 専門的研修を必要とする資格を保持している事が要求される職業。
B:学士号レベルを要求される一般職。必ずしも専門訓練を必要とはされない
C:ディプロマ or アドバンス・ディプロマレベルの資格を要求される職業。
その上で、
Aにつき申請の過去4年間のうち3年以上の実務経験があると10点
Bについて4年中3年以上の実務経験があると5点のボーナス加点が与えられる。
オーストラリアで過去4年に6か月以上就業→5点というボーナス加点もある。
これに加えて、オーストラリアで特に求められている職種(MODL)には15点ボーナスという大きなバイパスがあったのだが、これは2010年早々に廃止されているのは上述のとおり。
オーストラリアでの学歴
オーストラリアで2年以上のフルタイムコースを修了し、Diplomaなど各種専門資格、学位などを取得→5点
オーストラリアで学士号レベルを取得(実質3年以上)→10点
オーストラリアで2年以上就学し博士号を取得→15点
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ここが最大に変わったところで、まず、職歴を乱暴に3カテゴリーに分割するのではなく、オーストラリア国内外での実際の職業経験と学歴とをしっかり見ようとしています。すなわち、
海外での職歴
申請日から遡って過去10年以内にオーストラリア国外で申請職種での職歴がある場合、
3年以上ある場合→ 5点
5年以上→10点
8年以上→15点
8年以上→20点
オーストラリアでの職歴
申請日から遡って過去10年以内にオーストラリア国内で申請職種の職歴が、
1年以上ある場合→ 5点
3年以上→10点
5以上→15点
学歴点
オーストラリアの教育機関、または海外の教育機関で、
博士号を取得→20点
学士号(Bachelor)レベルを取得→15点
オーストラリアの教育機関(だけ)からDiploma以上、あるいは(Certificate III or IV)を取得→10点
その他、「海外でApprenticeship(徒弟修行)を修了していた場合→10点」というのもあります。
オーストラリアで 最低2年間の就学をすると(資格の有無にかかわらず) 5ポイントというボーナスもあります。
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英語点 |
IELTS5点で15ポイント、6点で20ポイント、7点だとボーナス加点が貰えた。
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IELTS6点はマストであり、6点取っても配点はゼロ!
6点取れないと申請すら出来ない。
7点で10点、8点で20点の加点ボーナスが貰える。
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その他加点事由 |
英語以外の主要言語(日本語を含む)で学士号を取得しているか、その言語によって一定レベル以上のNAATIの資格を持っている→5点
配偶者も最低条件を満たしている→5点
オーストラリアの指定地域に2年以上居住→5点
などなど
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配偶者や指定地域などは原則そのままだが、日本人に関して一番大きな変化は、単に日本の大学を卒業(学士号)をしていただけで与えられた言語ポイント5点が無くなった点でしょう。NAATIレベルでないと加点されない。
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目立った改正点は、
@、年齢点が弾力的になり、若さよりも「働きざかり」を重視するようになった。
※最高レンジ18〜30歳が24〜32歳になり、33〜39歳は18〜24歳と同じ配点ということで、今までのように「30 or 34歳過ぎたらもうダメ」ではなく、ゆっくり時間をかけて攻略できるようになったのは朗報だと思います。また、制限44歳が49歳まで引き上げられています。
A、英語点の超重視
※IELTS6点がボトムラインで、それ以下だったら受けることも出来ないというのはメチャクチャ厳しいです。死に物狂いで英語やるべし、です。しかし、7点取ったら10点加点というのは、予想ボーダー65点を考えたらかなり美味しい(現行120点)。日本での職歴5年以上と配点が同じなのだからいかに英語点が重視されているかが分かる。
B、職業、学歴点が広範囲になった
これまでの松竹梅みたいな乱暴な3段階カテゴリーではなく、実際にどれだけ働いてきたかをきめ細かく見ようとしている。また、海外での職歴と、オーストラリア国内での職歴を平等に見ようとしている。年齢点が楽になったので、こちらでじっくり働いて永住権申請という目も出てきたことになる。
学歴についても、オーストラリア国内外を問わず実質重視になっている。またオーストラリアでじっくり学校に通ってもそれなりにご褒美加点が貰えるので、バランスは取れている。
総じて言えば、これまでのMODLのような「抜け道」「裏技」を無くし、ちゃんと頑張ってる人をちゃんと評価しようとしているように思われます。その「ちゃんと」の内実として、性急に年齢で落とさず期間にゆとりを与えていること、国内外を問わず見ようとしていることは「楽になった」面と言えますが、同時に「本気で使い物になる英語でなければお呼びでない」という厳しさもあります。また、「これさえやってれば大丈夫」という永住権パターンを潰し、総合力で勝負という感じですね。
ボーダーは60点ということになってますが、難しさそのものは変わらないような気がします。仮に当時の僕だったらどうなるか自分で採点してみたのですが、5点ほど足りないので、日本でもう2年弁護士を続けるか、こちらに来て通学期間を延長して石にかじりついてもIELTS7点を狙うか、ですね。多分後者を選んだと思う。住みもしないで永住するかなんか決められるわけがないし、2年やってる間に規制が変わったらアウトだし。それに過去7年中5年の職歴だったら2年の猶予があるし、年齢も39歳まではいけるし、攻略しやすい気もしますが、まあ、そこは人それぞれでしょう。
ちなみに職歴については改正前後を問わず
SOL(Skilled Occupation List=オーストラリアの専門職業リスト)(
別窓)に載っていることが前提になります。そして、地域スポンサーとの併用で各州によってこのリストの内容が微妙に違ったり、小刻みに改正されていることから、ボーダー近辺の人はこのあたり細かな戦略を立てることが必要でしょう。いずれにせよ、別欄でも書いたようにプロにご相談なさることが必要でしょう。
でもって、この改正すらどうなるか分かりません。猫の目のように変わる。そもそも現政権(ギラード政権)だってハングパーラメントで首の皮一枚残した綱渡り政権ですから、いつまた政権交代が起きて、ガラリと変わるかわかりません。もっとも、今回の改正はかなり「王道」を行っているので、仮に政権が変わっても、何か特殊な政策でも打ち出さない限りこのままじゃないかな?という気もしますが、それは単に僕個人が今ふと思ってるだけのこと。
Skill Selcet=EOI→Invitation=参加・招待というけっこう残酷な予選システム
概要
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2012年7月から「審査のやり方」に関する手続規定が変更され、新たに
Skill Selectという方式が採用されています。
Skill Selectのオフィシャルページ
これまでは、まず永住権申請のための必要なポイントを稼ぎます。やれIELTSを受けて6点以上の証明書をゲットするとか、これまでの仕事の証明書を揃え、それを審査してもらうとか。で、必要なポイントまで揃ったら、全部添付して申請=「リーチをかける」わけです。ところが、新システムになると、リーチをかける前にもう一つステップが増え、オーストラリアにおいて自分が就業を希望する(自分の職歴キャリアに関連する)エリアを選定し「ココでお願いします」と申し出ることになります。
この申し出のことを、
Expression of Interest (EOI) と命名されてます。「興味があることの表明」です。これはインターネットで申請します。そして各職業エリアで審査が行われ、「うん、この人はいいな」と目に止まった人に
、invitation(招待状)を発行します。そして
首尾良く招待状をゲットした人だけが、次のステージ(永住権の本申請)に進めるというわけです。言わば
本選に入る前に予選・予審があるようなものです。
なお、雇用者指名永住権や州政府スポンサー永住権申請者のデーターについては、オーストラリアの雇用主や州政府はアクセスして見ることができ(自分のスキル情報の公開の指定はできる)、さらに「この人が欲しい」となれば直接コンタクトを取ることができるそうで、この人材市場というか、お見合いみたいな点も新システムのハイライトの一つらしいです。要するに、移民局が大きな「人材センター」になっていくようなものですね。
それだけっちゃそれだけのことなのですが、これ、よく考えると結構キツいです。幾つかのポイントを挙げてみます。
点数だけ揃えても、招待されなかったら意味がない件
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それまでの独立移住永住権とは違って、スキルセレクトに「参加」し(Expression of Interest)、「招待状」(Invitation)をゲットしないと、永住権の申請(アプライ)すらできません。てか、招待状をもらうかどうかが事実上の天王山になるでしょう。
そして、この「招待状」がクセモノです。
このEOI(興味あります表明)にネットで応募すると、あとはその集団にプールされ、移民局の審査待ちになります。
審査される有効期間は2年間のようです(移民局のFAQの
What happens after you submit your EOIに” You might receive an invitation any time up to two years after you submit your EOI.”と書いてあります。)
しかし、提出してから、今どの辺をやってて、自分はどのあたりにランキングされていて、あとどのくらい待たねばならないかわかりません。宅配便のようなトラッキングシステムは無い。また必ずしも先に応募した人が優先するものでもなく、定期的にラウンドと呼ばれる審査で、キャリアやオーストラリアでの就職可能性やモロモロを総合的に判断してOK!という人から順に招待状を発送するのでしょう。また、各職業エリアにおいて枠(シーリング)があるようで、満杯になったらその年度はそれで終わり。で、選に漏れたらまた列の後に廻され、2年の間、じっと招待状が届くのを一日千秋の思いで待ち続けるという。
2年待っても結局招待されなかったらパーです。またやり直しという。
移民局の
説明文だと
「These skilled workers and business people
can then be found and nominated for skilled visas by Australian employers or state and territory governments, or they
might be invited by the Australian Government to lodge a visa application.」
(これら技術労働者やビジネス移住希望者は、オーストラリアの民間雇用主あるいは州政府によって技術系ビザのために見出され
うるし、あるいはオーストラリア(連邦)政府によって招待される
かもしれません」となっています。「されうる」とか「かも」という表現で、確実性に欠けるのです。
そしてまた、
FAQコーナーでは、「There is no guarantee that submitting an EOI will result in an invitation to apply for a visa.」(EOIに参加したからといって招待を得られるという保証はありません)とハッキリと書かれています。
もしあなたが、破格の高ポイントを挙げられるなら余裕で待っていたらいいです。しかし、ボーダー60点ですら四苦八苦というのが多くの実情でしょう。だとしたら、単にエントリーして待ってるだけだったら、後から後から自分より優秀な連中が参加して追い抜かれていき、結局2年経ってもお呼びがかからないという悲しい可能性もあります。
EOIラウンド結果
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2012年8月、施行後最初のラウンド結果="Round 1 August 2012 Results"が出ました。最初ということもあり最も審査が簡単な最優秀グループ100人でした。しかし、これ凄すぎちゃって参考にならないというか、ポイントスコアのボーダー60点でも取るのが至難の業といわれているところで、85点をとってるバケモノみたいな人々が5人もいます。最低でも75点です。25-32歳で、学士号持ってて、IELTSで8点取れて(てかもともとイギリス人など英語が母国語で)、SOLにある職業でオーストラリアで8年以上の職歴があってようやく85点ですか?多分彼らはその気があったら数年前に余裕で永住権取れている筈です。最近になって気が変わって応募したみたいな感じなんでしょう。だから「凄すぎて参考にならない」のですが
(ちなみに以後75点、70点、60点、、と下がってきて、2013年3月のラウンドでは60点が最頻値になっており、以後2013年11月18日まで順次見ていくと、たまに65点が最頻値になる場合もありますが、大多数は60点が最頻値ですね。ちょっとほっとしたりして。あんな85点なんてオリンピックレベルの点数が基準になってたら気が遠くなりますからね。)
Skill Selectのメイン頁の”Invitarion Rounds"タブを開くと、現在のラウンドとその次、さらには直近2年くらいの全てのラウンドの結果が表示されます。このあたりの情報公開はすごいなと思いますね。ずっと見ていくと、大体の傾向がわかると思います。
シーリング
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同じく
メイン頁の"Occupation Ceilings"というタブがあります。シーリング=天井=どの業/職種にどの程度の人員を割り振るかという一覧表です。年度内にその職業に割り振れた人数に達したら、もうその年のその業/職種は受け入れないということですね。
ばっと見た限りでは圧倒的に手に職系が強いです。大工、配管工、電気業者などは8000人前後のシーリングですが、ホワイトカラー系はほぼ全滅に近いくらいです。ITとかアカウンタント(会計士)は人気なのですが、応募人数が多すぎて特別扱い(プロラタでやる=配分比例)とか書かれているくらいです。
ただし結論的に言えば、「これだけでは分からない」です。本当にどこが狙い目かを知りたかったら、あともう二つの数値がほしいからです。すなわち、その業/職種にどのくらいの人が応募しているかという応募者数、そして実際のその業種で合格するときのポイント数も知りたいです。つまり、「狙い目」というのは、@受け入れ人数シーリングに余裕があって、A実際にもボコボコ合格していて、B応募者数が少なくて競争率が低く、C合格のためのハードルの絶対値が低いところなのでしょうけど、この表では@はわかるけど、ABCはわかりません(以前はAの実績もあったんだけど、見当たらなくなった)。このあたりは、やっぱり専門の代行業者さんに「潮の流れ」を聞いた方がいいかと思います。
さもないとシーリングは高いわ、合格者は多いわである業種を目指したとしても、同じように考えている応募者が膨大にいたら、実質的競争率は非常に高いわけです。逆に、シーリングは低いわ実績は低いわであっても、他の応募者が少なかったら競争率が低いから、意外とひょいととれてしまうかもしれない。
ということで決定的なことはわからないのですが、しかしそれでも、これまでの職業リストが単なる職種の羅列だったのに対し、これは実際の数値も書いてあるので、どの業種がどれくらい需要があると認められているか、そして実際のどのくらい早さでどのくらい埋まっていくか、継続的にじーっと見てると、なにごとかが見えてくるかもしれません。見えてこないかもしれないけど(^^)。でもデーターは多ければ多いほど良い。しかし、よくこんなところまで全世界に情報公開するなって感心しますけど。
資格試験が就活になったようなもの
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このスキル・セレクトは、手続的には、永住権申請→交付までのプロセスにおいて、新たに一つ手続(招待状)が増えただけのことですが、より本質的意味の変化としては、それまで「資格試験」だったものが「就活/ドラフト」になったようなものだと思います。
これまでのポイントテスト「だけ」の場合、いくらハードルが高かろうが地味にコツコツとポイントを積上げていけば、ほぼ自動的に永住権は取れました。ところが今度のスキルセレクトは、ポイントだけ積上げても永住権が取れる保証はない。
だとすれば対抗策としては、@よりポイントを積みますか、Aポイント以外のバイパスを狙うかです。そこで出てくるのが、スポンサー(民間の雇用主)/ノミネート(政府)です。ノミネートを受ければ、それだけでもポイントが加算されますし、民間や政府の「目に留まる」ことが出来れば、リージョナル永住権や就労ビザ→雇用者指名などの道も開けます。そして、就労ビザや雇用者指名、つまりスポンサーをガッチリつかまえた場合には必ずしもポイントに縛られないという強みもあります。
そして@Aは相互関連します。同じ事だと言ってもいい。企業や政府の「目に留まる」ためには、それだけ魅力的な職歴実績、特にオーストラリアで現にガンガン働いているというリアルな状況を構築した方が有利ですから。また稼働実績があればポイントも高くなるし、スポンサー/ノミネートもされやすいし、ノミネートされればまたポイントも加算されるという相互関係になるわけです。
ということで、これはもう合格点だけ取れば良い「入試」ではなく、実際の稼働状況=そのためには「出会い」「チャンス」というファジーな要素満載の「就活」や、指名を得る「ドラフト」のような性格をいやおうなく帯びてくるということです。
独立移住と雇用者指名の接近
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先程永住権のルートは「フレキシブル」「同時存在」と述べましたが、ノミネートされるくらいの現地での仕事の実績を作ってたら、結局、独立移住でなくても雇用者指名でいけてしまうじゃないかってことでもあるわけです(実際、スキルセレクト〜EOIシステムには雇用者指名も入ってます)。
スキルセレクトにおいては、スポンサー探しは重要ですが、別に「絶対」ではないです。「見つけた方が有利」だというだけのことです。破格に高得点を挙げれば必要ないですし。またスキルセレクト自体がスポンサーを見つけるための人材バンク的な機能もありますから、エントリーした後にスポンサーがついたり、地方・州・連邦政府がノミネートする場合もあります(ノミネート=雇用=公務員になれるというわけでもなさそう)。
しかしながら、(招待状をゲットして永住権の申請した後の)審査の優先順位でいけば(
Priority processing for skilled migration visas )、第一順位にRSMS(地方でスポンサーを受けた人)、第二位雇用者指名永住権、第三に州政府ノミネートされた人となっており、第四にMLTSSL(昔のCSOL)でノミネートされた人、第五にそれらの要件を満たしてないグループの順番でビザの審査がなされるそうです。やっぱりスポンサーを得た方が有利ですよね。
一方、独立移住においてポイントをゲットするには現地で稼働していた方が有利ですし、また雇用者からノミネートされるくらい評価されていたら有利です。
ということは、現地稼働で独立移住を成功させるのも、雇用者指名を勝ち取るのも、実際にはそれほど違いはない(頑張る方向性は同じ)ようにも思われるのですね(もちろん細かな形式の差などはあるが)。
エスカレーター式の消滅
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これをブレイクダウンして、より身近に置き換えて表現すれば、「とりあえずオーストラリアの大学を出てポイント稼いで、それで〜」という、これまであった「エスカレーター的なメソッドの消滅」です。いくらどう頑張ってポイント稼いでも、破格の高得点を稼げない限り、最後にはオーストラリア政府や民間企業の「目にとまる」というファジーな工程をクリアする必要が高いからです。また、単に卒業しただけでは、そこまで破格な高得点にはならない。
そしてこれはエージェントさんにお任せ的なパッケージの消滅も意味します。エージェントさんには正しくビザ申請の専門代行サポートをやっていただけるわけだし、さらに複雑化専門化した永住権申請にはより力強い相棒になってくれることでしょう。しかし、それだけでは足りない。彼らは同時に人材会社でもあったりするから、頑張ってスポンサー先の会社を探してくれたり、現在の就職状況なども教えてくれるでしょう。しかし、オーストラリア現地の日本人社会など微々たるウェートしか占めませんし、あらゆる職歴/キャリアの人々に100%職を手配するなど、誰の手にも不可能だと思います。
ということは、コツコツ英語を勉強するなどでポイントを積上げると同時に、自分で現場でレジュメ(履歴書)配って奮闘するなど「いい出会い」をゲットした方が成功確率はグッと高まるということです。そして、これが出来なければ、結局、永住権取ったあとの生計も立ちにくいのですから、要はより実質的になっただけとも言えます。
EOIはビザ申請ではない→ブリッジングがおりない
→MORE
@、EOIはビザの申請そのものではない点
ここが移民局のズルいところなんですけど、申請そのものではないので、(1)審査に対する不服申立ができない(のかな?)、(2)ブリッジングビザが降りない、(3)本申請ではないので状況が変わりうる、という致命的な問題があると思います。これを分説すると、
A、永住ビザが降りるまでの滞在費用がかかるようになった
これまでは本申請さえしてしまえば自動的にブリッジングビザが降り、最終結果が出るまでフリーでオーストラリアに居続けることが出来ました。だから、結果が出るまでしばらくほったらかしにされていても「まあ、いいや」みたいな対応も出来た。しかし、ブリッジングビザが降りないということで、現在のビザが切れたらオーストラリアから退去しなければならなくなります。あるいは別途の他のビザ(学生ビザとか)を申請しなければならない。この費用がまた嵩む。しかも、いつ招待状が来るかわからないという宙ぶらりん状態になるということです。
B、2年間も待ってる間に年齢が上がってしまってアウトになることはないのか?という疑問もあります。本申請の場合は「申請時○歳」で固定しましたけど、今度は本申請ではないので待ってる間もどんどん年齢が加算され、日に日に可能性が減っていくという。ここは移民局のFAQを読んでみたけどよく分かりませんでした。多分年齢アウトになったらダメなんじゃないかと思われますが。
私見
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さらに、素人の当て推量でものを言うのを許していただければ、このシステム、役人さんの「絵に描いた餅」っぽい部分もあるような気がします。建前的には、「よりオーストラリアの経済ニーズに合致し、よりスムースにビザ交付手続きを進める」ということですが、中核にある狙いは、政府の管理しやすさと移民局の事務負担の軽減という行政サイドの都合、そして、政治的には地方活性化(help address regional skill shortages)という目論見あってのことでしょう。
確かに、今までの先着順みたいに審査することによる事務的ロス、稼働可能性も考えずに形だけポイントがあるかどうかだけを審査する形式主義を是正するのは正しいと思います。しかし、話が「実質的」になればなるほど、役所レベルでそんな「実質」判断なんか出来るのか?という疑問もあります。スポンサーや現在の稼働状況などの実質的要件を重視しているわけですけど、これだって、やろうと思ったら形だけのスポンサーと稼働とかでっち上げることも出来るわけで、どこまで貫徹できるか、また貫徹してよいかは微妙な問題をはらむでしょう。
いずれにせよ、永住権獲得が一種の障害物競走だとしたら、これまでは調理師や美容師の学校出て実務をやればゴールだったのが、一定の職域でスポンサーを得ると有利になるという形に、ゲームのルール(障害物の内容)が変わったということです。これまでハードルと泥んこ沼だったのか、今度は「人探しゲーム」が入ってきたという。
総じて言えば、移民局にとってだけ都合の良いシステムだと思います。要するにもっと楽に仕事をしたいんでしょう。移住先としてのオーストラリアの人気は年々高まっており、移民局もオーバーワークになっているようです。確かに選ぶ側としては、ベスト&ブライテストな人材を順次採用するには合理的なものでしょう。ある程度の時間のスパンの中で、オートマティックに篩(ふるい)にかけていけばいいのですから。また、法的不服審査の対象にならないというのも労力節減には大きいでしょう。しかし、その分、申請者には宙ぶらりんで不安な期間を押しつけているわけで、どうなんかな?という気もします。
以上は、移民局の公開ページをあれこれ読んだ上で、僕個人が勝手に「多分こうなんじゃないかな」と書いているだけのことです。あまり鵜呑みにしないで、自分でも調べてください。かなり複雑なシステムな上に、はじまったばかりで刻々と運用も変わるでしょうから、それだけに専門家の意見を求めてください。素人の手に負えるようなもんじゃないです。
2012年7月施行の新方式とビザ・サブクラス統廃合と新ポイントテスト改
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前述のように、2011年7月新ポイントテスト、1年のタイムラグで2012年7月スキルセレクト方式(招待状方式)が導入されるわけですが、これにともなって若干のマイナーチェンジ(というか永住ビザシステム改正の仕上げ)がなされました。
といっても実質的にはそう大きく変らないのですが、見たところ2点あります。
@、ビザカテゴリー(サブクラス)の統廃合
A、セレクト方式施行下におけるポイントテストの内容
サブクラスの統廃合
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まず@ですが、それまで分けていたオーストラリア国内/国外のサブクラスを統合します。
これだけでは「なんのこっちゃ?」でしょうから、表にしてみました。
サブクラス改正の比較表
|
2012年7月前 |
2012年07月以降 |
skilled independent
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オーストラリア国外からの申請
→サブクラス175
オーストラリア国内からの申請
→サブクラス885
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オーストラリア国内外を問わず
サブクラス189
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skilled nominated/sponsored |
国外申請→サブクラス176
国内申請→サブクラス886
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オーストラリア国内外を問わず
サブクラス190
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skilled regional sponsored |
国外申請→サブクラス487
国内申請→サブクラス475
|
オーストラリア国内外を問わず
サブクラス489
|
★従来の国外申請分(175、176,475)は2012年7月1日以降締め切られ、国内申請分(885、886,487)は半年遅れの2013年1月1日(元旦)から締め切られます。
★サブクラス 485 (skilled graduate)、 476 (skilled recognised graduate)といポイントテスト不要のビザについては変更ありません。
なおこの485はオーストラリアに2年留学した後(どの学校でもいいわけではない)、18か月の就労可能ビザを貰えるというもので、「1年半あげるからその間に永住権が取れるように稼働経験を積みなさい」という”執行猶予””準備”ビザです。現地での激しい”就活”と就労経験を積めるかどうかに関わってきます。詳しくは
Skilled -- Graduate (Temporary) Visa (Subclass 485)参照。
476ビザは、オーストラリアの学校ではなくてもオーストラリアの雇用者から評価されている世界各国の大学の該当学部(今はエンジニア=工学部)を卒業した人に、同じように1年半の猶予期間が与えられるというものです。詳しくは
Skilled -- Recognised Graduate (Temporary) Visa (Subclass 476) 参照。
しかし、ここの
世界の認定された大学リストを見ると、日本は東北大学しかありません(とか言ってるうちに東北大学も消えてゼロになった)。中国なんか11大学もあるのに。これは単純に世界の大学ランキングではなく、オーストラリアの雇用主(財界)のこれまでの採用経験から出てきたものであり、いわば採用実績ランキングみたいなものだと思います。多分、日本からはたまたま東北大出身の人が採用され、しっかり働いてくれたからリストアップされているのでしょう。おそらくそうだと思います。そうなると、もの凄い格差が出てくるのですよ。海外企業にガンガン出ていって活躍している実績のある国ほど永住権も取りやすくなり、逆にそこがショボイ国だと永住権も取りにくいという二極分化というか淘汰というか、それがあるということです。これは丁度採用実績のある大学から就活するのと、実績の乏しい大学から就活する差みたいなもので、その世界版です。
また、
ワシントンアコードという認定機関に認定されたところは大丈夫だそうで、そこからリンクをたどって日本にいくと、日本技術者教育認定機構と言う組織になり、その
認定結果を見ると東京大学大学院はわかるんだけど、産業技術大学院大学、神戸情報大学院大学、京都情報大学院大学、でもこれ2016年で終わっちゃってて、今どうなってるのかわかりません。
いずれにせよこの「学生さん成り上がりビザ」(と勝手に仇名をつけた)は、これを取ったところで永住権が貰えるわけではなく、ただ準備期間として18か月貰えるだけです。それだけでも有り難いのですが、18か月以内にいずれにせよ本チャンの永住権申請(スキルセレクト参加表明)をしなければならないことに変りはなく、この時点でポイントテストフリーになるのはいわば当然。
ポイントテストの微修正
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上に紹介した2011年7月の新ポイントテストに上書きするように、2012年7月導入のスキルセレクトに対応してポイントテストが微妙に修正されました。といっても、マイナーチェンジです。Ver.2.01くらいの感じ。
比較の原資料は、 2011年7月改正分については
1 July 2011 - Points Test for Certain Skilled Migration Visas、2012年7月以降については
Skilled Migration Points Test Under SkillSelectです。
いずれもPDFファイルでダウンロード出来ます。どちらも一覧表がついているのですが、欄の順番が真逆 or バラバラになってたり、微妙に表現が違ったり、やってるうちに頭がウニになりました。どうして官僚というのは、どこの国でも分かりやすく仕事をせんのだと、やっててムカついてきました(^_^)。
最初は比較表をシコシコと作ってましたが、異様に対照しにくいので、間違いのないように、原文をそのままスキャン加工して画像として示しておきます。
クリックすると大きな画像を表示します。
「大山鳴動ネズミ一匹」で、苦労した割には、出てきた結論は、「ほとんど同じ」ということですね。
微妙に違うのは、前が「申請時」だったのが、今度はスキルセレクトに応募(EOI=Expression Of Interest)をして、めでたく招待状"Invitation"が来た時点=”at time of invitation”に変ったということです。
あと、多少のチェンジはありますが、より正確に説明したという位の表現の差異かな?という気がします。
なお、リアルタイムでのポイントテストの詳細は、例えばサブクラス189(独立移住永住権)の場合は、
Skilled Independent visa (subclass 189)と、各ビザの説明の頁に書かれています。
★雇用者指名永住権
ワーキングビザのようでありながら永住権であるというわかりにくいカテゴリー。まず特定の雇用者に雇われるという意味ではワーキングビザに似てるのですが、雇用者が「この人でないとダメ!」「他に代替のきかない人材である」と主張立証するパターンです。ワーキングビザが「不法就労じゃないよ」という程度の消極的な立証であるのに対し、こちらは「代え難い有能な人物」という積極的な立証という点で違います。この積極的な立証が、インディペントの職業点立証の代わりになるようなものなのでしょう、「そこまで有能な人材だったら居ていいよ」ということで、永住権が与えられるのでしょう。
永住権ですから、指名してくれた雇用主から首になっても退去する必要はありませんし、2年なんたらという期間制限もないです。そこまで見込んで指名してくれた雇用者がクビといえば、その時点で失効しちゃう方が道理が通ってるようにも見えるのですが、そうならないのは、それが有能性の一般立証だからでしょう。一人の雇用者をそこまで言わせるほどに有能ならば他の会社にも容易に就職できるだろうということ。実際、単に指名しただけでは足りず、雇用主は一定期間、公の場で求人広告を出す必要があり、「公に募集したけど、やっぱり、これが出来る人材はオーストラリアの労働市場にはいませんでした」という事実立証もしなきゃならないわけです。逆にいえば、雇用者としてはアレコレやらなならんことがあって、面倒臭いビザでもあります。
ただ、このカテゴリーも、永住権=就活という大きな流れの流れのなかで、スキルセレクトの一カテゴリーとして位置づけられています。
これまで Employer Nomination Scheme (Subclass 121/856)だったのが、
スキルセレクトのEmployer Nomination Scheme (subclass 186)になっています。
★その他の永住権の種類
その他永住権の取り方としては、地方スポンサービザというのがあり、言わば独立移住の補欠入学みたいなものです。オーストラリアの中でも比較的地方で、人口を増やしたいエリアに2年以上住み、ちゃんと仕事もしていたら、永住権申請を認めるという、オーストラリアの過疎化対策として認められているビザです。これにもいろいろ制約はあり、オーストラリアの学校に通うか、一定の職業経験があるかどうか、年齢、そして当然ながら英語点、さらに各自治体にスポンサー申請をしなければなりません。
※この点は、2019年改正で変わりました。地方優遇ビザなんだけど、3年以上地方で働いていないと永住権の道がなかったりして、条件的にそんなに易しくなった気もしないのですが(上の2019年の改正のコラムを参照)。
ご自分で事業を経営されてる方は、事業者移住ビザもあります。ただしこれは一種の「企業誘致」のようなもので、個人資産数千万とか年商1億とかかなりハードルは高いです。
以上は経済系の永住権(経済的利益をオーストラリアにもたらすという観点から認められる)ですが、それとは全く関係なく、人道系の永住権もあります。端的なのは、「家族がバラバラに暮すのは可哀想」ということから、家族の誰かがオーストラリアで永住権を取ったこと、あるいはオーストラリア永住権保持者と親族関係になること(国際結婚など)による家族移住というパターンですね。
このように永住権の種類は山ほどあり、それらが細かく規定され、且つ年がら年中改正されているので、僕もよく分かりません。というか専門家でないともう分からないと思います。上記は一応の概略まで。
★永住権以外で、オーストラリアで働くビザ/ビジネスビザ
以上がビザの概要ですが、ビザといっても実は100種類以上あるらしく、本当はこんなものではないのでしょう。また個別的な解説や類型も刻々と変化していくでしょうから、あくまで目安としてお考え下さい。
ただ、物の考え方としては、労働ビザのような
一時滞在ビザと永住権のような
永住ビザの二種類があるということ(ビザ申請の結果がでるまでの間、滞在許可されるブリッジビザという過渡的なものもありますが)を押さえておいて下さい。そしてテンポラリー(一時滞在)かパーマネント(永住)かの違いは、単に有効期限の差だけではなく、所得税の税率、メディケアなどの国民健康保険の加入資格、年金などの公的扶助の受給資格その他で結構大きな差があります。永住権保持者の場合、選挙を除いてほぼ国民と同じように扱われますが、テンポラリーの場合はなかなかに厳しいです。
あと、ビザについて総じて言えることは、
英語条件が年々厳しくなっていることです。これだけはハッキリ言えると思います。どのような永住権でも、IELTS(という英語試験)5点は必要ですし、一般的には6点、さらに7点取るとボーナスが貰えるから7点は欲しいです。大学入学資格でも7点とか7.5点とかとんでもなく高いハードルの学部もあります。しかし、僕の知り合いも職業的にはバリバリ成功しながらも、IELTS5点がついに取れないまま日本に帰国した人もいます。5点ですらもそれほどまでに難しい。6点だったら普通の語学学校で最上級クラスまで行ってください。IELTS1点上げるのに語学学校に1年通学するというのが通り相場ですから、7点というのがいかに高いか。年齢、職業、英語の三本柱のうち、年齢はタイムマシンがない限り点数UPするわけないし、職業点は大きな人生の枠組みに関わるから小刻みな改善など出来ません。そうなると、今からでも努力でなんとかなるのは英語だけです。逆に言えばそれすらも取りこぼすようでは話になりません。
上に述べたように、2011年7月以降は、独立移住永住権申請にはIELTS6点取ってなければ土俵にも登れません。そして加点エリアに7点のほかに、ついに8点(!)というレンジまで用意されています。8点なんか正直いって僕には想像つかないレベルです。野球に例えれば、6点というのは高校野球の野球部でレギュラーになり、地区大会でベスト8になるくらいのレベル、7点というのは甲子園にいけるくらいのレベル、8点というのは(おそらく)甲子園でも優勝を狙えたりプロが視野に入るくらいのレベル、じゃないでしょうか。ハンパないです。
ところで、やたら複雑な制度のせいでしょうか、移民局の現場でも実務処理をめぐって結構混乱してたりするそうですし、窓口レベルでいうことをあまり鵜呑みにしない方がいいでしょう。オーストラリアの処世術としては、「3回聞くまで(聞いても)安心するな」ですから。ですので、専門の業者さん、それも品質に信頼がおける日系の業者さんに聞く方が安全だと思います。
では、引き続いて生計の立てかた、さらに以上の所与の前提のもとにいかなる戦略を取ればいいのか、考えてみたいと思います。
→次(第二の関門:生計)につづく