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第5章:食事
1996年10月24日初出、2012年08月14日更新


5.1.外食編(1):シドニーのレストラン事情



世界中から移民が集まってきているシドニーは、毎日が「食の祭典」のような都市です。
通りを歩けば各国料理のレストランが軒を連ねていますし、各国料理の食材も豊富に売られています。

具体的にどの店が美味しいのかというと、これは好みの問題になりますし、地元の人々もそれぞれに意見があるようです。知人のオーストラリア人は、「この店はオーナーが変わってからダメになった」「この店は○○はダメだが○○はとても美味しい」と、かなりうるさいのですが、よく聞いてみると、同じ地域であっても玉石混交のようです(まあ当然ですが)。本屋にいけば「レストランガイド」本もありますが、日本ほど膨大な種類と量のグルメ本が出回ってるわけでもありません。

結局誰かに連れていってもらうか(しかしその店があなたの口に合うという保証はない)、いろいろと歩き回っているときに目星をつけておいて試してみるということになるでしょう。当たり外れは当然あるでしょうが、「それもまた楽しみのうち」くらいに気楽に構えていてください。


と言っても、まったく見当もつかないまま、いきなり知らない店に入るのは勇気のいることですので、補助知識を少々記すことにします。


 なお、オーストラリア・シドニーのより詳細な食生活情報は、シドニー食生活委員会をごらん下さい。

 個別のレストラン情報や食材の方法など書いてあります。

レストランのパターンと地域的特徴


レストランが集まっている地域は、
  1. 商業都心部:
    CBD、ノースシドニー、チャッツウッドなど
  2. 著名観光地・繁華街:
    ロックス、ダーリングハーバーやキングスクロスなど
  3. リッチで高級な一帯:
    キングスクロスより東方のポッツポイント、エリザベスベイ、ダブルベイなど
  4. 地元の人に愛されているカジュアルな一帯:
    パディントン、グリーブ、ニュータウン、サリーヒルズ、バルメインなど(これに尽きるものではない)
  5. 民族的「本場」の地域:
    アッシュフィールド(中華(上海)料理)、ライカード(イタリア料理)、ピーターシャム(ポルトガル料理)、マリックビル(ベトナム料理、ギリシャ料理)など他にも色々ある。

に分類されるでしょうか。地域的にバッサリ斬れるものでもないのですが、一応の目安として何となく雰囲気は分かるのではないでしょうか。


観光客向けレストラン

特別に「観光料理」というジャンルがあるわけではないのですが、泊っているホテルのレストランや、ツアーで用意されたランチメニュー、「お食事クーポン券」の対象店など、観光施設・コースに付随している料理は「観光料理」と言って差し支えないでしょう。ちなみに、ツアーのランチなどでよくスモーガスボード(Smorgasbord)という言葉を耳にされるでしょうが、これはバイキング形式の食事のことです。

日本人観光客向けにガイドブックなどで通常紹介されているような店は、都心部やキングスクロス周辺などのエリアで、料金設定も高めという傾向になるようです。同時にこのエリアには日本料理店も多く、日本料理店と観光エリアとはある程度ダブるようです。

(日本料理店以外で)日本語メニューが置いてある店は、まず経営として日本人観光客をターゲットとしている店でしょうし、店内に自分達以外に日本人がいたら、観光客向けである可能性が高いでしょう。シドニー人口中に占める(在住)日本人の割合は400人に一人程度ですから、そうそう滅多に出会うものでもないです。なお、観光ガイドブックに書いてあるからといって必ずしも日本語メニューがあるわけではありません(置いてある方が少ないかもしれない)。

もっとも観光客向けだからといって、一概に面白くないわけではなく、各店によって特徴もあるでしょうし、値段が高めであってもそれに十分値するレストランも多いでしょう。メリットとしては、一応ガイドその他で紹介されてる以上は、そうそう思いっきり「外れ」という店は少ないでしょう。日本語メニューもあればあったで便利ですし、安心感もあります。またJCBなど普通は通用しない日本系カードが使用できるというメリットもあります。

デメリットとしては、普通は$4前後のビールが$8もするなど意味なく高いこともあること。ホテルの朝食などで一人30ドルを超えるのはちょっと高すぎると思います。普通のイタリア料理店でお腹一杯食べても30ドルいくかどうかというのが相場ですし、そこらへんのカフェで朝食に20ドル分食べようと思ったらかなり大変(食べきれない)ですから。

もうひとつのデメリットは、せっかく各民族が集まってそれぞれの味(雰囲気)を出しているシドニーなのに、その濃度が薄まってしまいかねないことです。その民族コミュニティの人が主として食べに来ていて、どうかすると英語のメニューすらない、あったところでメニューを見てもさっぱり見当もつかない、飛び交う言葉は聞いたこともない言葉ばかりという「濃い」雰囲気で、およそ今まで考えたこともないような味の料理が出てくるという「冒険」はあまり期待できないでしょう。


どうしてこのような一定の傾向が出てきてしまうかを推測するに、一番大きな理由は「日本人観光客がそれを好む」ということでしょう。なんだかんだ言っても、電車で30分も揺られて日本人など一人も歩いていない町のレストランに行くというのはかなり冒険であり、実際にやる人も少ない。ビジネス的な理由としては、旅行会社がコミッション(仲介料)を取れるかどうかで絞りはかかるでしょうし、一方では「団体客お断り」としているレストランも結構あると聞きますので、あれやこれやで選択肢も少なくなってしまうのでしょう(確たる証拠があるわけではないのですが)。

日本料理店の場合

観光客向けの店と並んで、もっとも抵抗なく入れる店が、日本料理店(ジャパニーズレストラン)でしょう。

ところで観光という要素を除いても、一般に日本レストランの場合、他の国の料理に比べて料金は高めです。高いといっても日本で食べることを考えたらリーズナブルなわけで、これはそもそも日本の物価高に起因するのでしょう(日本からの投下資本の回収率、人件費、日本から調達する材料の値段、そして高くても「安い」と言って=事実安いのですが=払う日本人客の存在など)。

日本レストランの店は、正確な数はわかりませんが、シドニー近郊に数十軒という単位でありますし、実は観光エリアに限らず広く点在しています。具体的にどこにどんな店が位置しているかは、前述のようにコミュニティ誌などの広告をみれば大体のことは分かるでしょう。

ちなみに、よく見ていくと、日本レストランのなかでも、「日本人のための日本レストラン」と「より地元に溶け込んだ日本レストラン」の二系統があるように思われます。もちろんそれほど明確に線引は出来ないのですが、お店に来ている客がほとんど日本人であるお店と地元客ばかりで日本人など殆どいないお店とがあるようです。

さて気になる質ですが、これはあなたの味覚と好みの問題だし、店によって違うでしょうし、何とも言えない。ですが、少なくともシドニーに関しては、味にうるさい在住日本人も多いですし、もちろん競争もありますし、それなりの志をもってお店をやっておられる人もいるわけで、一概に「海外だからこの程度」という先入観は捨てた方が良いでしょう。

ところで日本国内で「日本料理」というと会席料理などを思い浮かべてしまいがちですが、世界の視点で見れば、『エスニック料理/アジア料理』の一ジャンルでしかありませんし、ここでは寿司もカツ丼も焼鳥も蕎麦もひっくるめて“Japanese food”になります。もっとも、寿司屋さん、おでん屋さん、焼鳥屋さん、ラーメン屋さんなど、専門的に分化しているお店も沢山あります。世界の料理が凌ぎを削っているシドニーで、日本料理がどのように評価されているか、また世界の人々に親しまれているのは日本料理のうちのどの一品なのか、などを見てみるのも興味深いポイントでしょう。オーストラリア人の家族連れが幼い子に箸の使い方を教えて寿司を食べていたり、真剣にメニューを見入って「これが美味しいんだよ」とか検討してる姿は見ていてなかなかに面白いです。

なお、次項の「自炊」の箇所でも述べますが、一遍ご自分で食材調達からはじめて日本料理にトライして、それなりに苦労されてから食べにいかれると、各店の創意工夫や努力の跡がよく理解されるでしょう。

中華料理の場合(飲茶−Yum Cha)

世界中どこに行ってもあるチャイニーズレストランは、当然シドニーにも軒を並べています。都心南部のチャイナタウンでは、ランチタイムに飲茶(英語でもヤムチャ(Yum Cha)と言う)が食べられます。もっとも全ての店でやってるわけではないし、チャイナタウンにも限りません。

ヤムチャですが、店内に入り案内されて席についていると、料理を乗せた台車を押しながらひっきりなしに往来している売り子さんが「いかが?」とテーブルにやってきますので、好きな皿を貰って食べます。料金のシステムは、テーブルの上に伝票があり、売り子さんが売れた皿(籠)の分ハンコを押していき、最後に清算するという方法になってます。

場所柄、中国人が多いようですが、騒然とした雰囲気の中で、各民族ゴチャゴチャに入り乱れて料理を楽しんでいます。売り子さんも、英語や日本語を喋ってくれることもありますが、相手構わず中国語(広東語と思われる)で売って歩きます。客の方も何を言ってるのかさっぱり分からないまま、『これなに?』とばかりに(料理は小籠に入っていて外から見えない場合が多い)勝手に蓋に手を伸ばして開けて中身を見ようとしています。その横では、前の客のテーブルを片づけ新たに配膳しているウエイターさんの手つきも鮮やかに、というか「この人なに怒ってるんだ?」と一瞬思ってしまうような勢いの良さだったりしますが、ここではそれがカルチャーです。迫力負けしないように。また売り子さんには、Yes/Noをはっきり言わないと、どんどん皿をテーブルに乗せられてしまいます(最もYes/Noをハッキリ言うべきはここかもしれない)。

食べた品にもよりますが、4人で行けば1人頭1000円前後も出せば晩御飯が入らなくなるくらい食べられるでしょう(一般に多人数の方が安く済みます)。料理も一体何十種類あるのかわからないくらい豊富ですし、見たこともない料理も多いでしょう。飲み物は最初に聞かれますが、ビールなど特に頼まないときは「ティー、プリーズ」と言えば、大きな急須にいれた中国茶を持ってきてくれます。清算は座ったままウエイターに伝票を示して「チェック・プリーズ」と言えば、請求書を乗せたトレイを運んでくれます。キッチリお金があるときはトレイにお金を乗せてそのまま帰ればいいですし、お釣が必要なときはお金を置いて待っていれば、そのトレイを一旦持ち帰ったあと又お釣を運んできてくれます。

飲茶の話ばかりになってしまいましたが、もちろん通常の中華料理もあります(というか飲茶はランチタイムだけです)。中華料理の店は、「どんな町にも必ず一軒はある」と言われるくらいありふれた存在ですし、多くのオーストラリア人が苦もなく箸を使っているのは(大抵のアジア人はこれを見て意外に思うようですが)、子供の頃から中華料理を食べにいったりするから自然に覚えるとも聞きます。ヤムチャをやってないときの中華料理店のシステムは、ごく普通のレストランの場合と変わるところはありません。


オーストラリア料理の場合


「オーストラリア料理」と言っても、基本的には開拓民風の素朴な料理が主流で、一番有名なのがバーベキュー(BBQと書く。バービーと略称されることもある)でしょうが、「繊細な技巧の結晶」の対極にあるようなもので、「肉焼いて食べるだけ」という基本的にはキャンプ料理に近いです。

ただ手軽なだけに、日本人が家庭で鍋料理やるような感覚で気軽にやってますし、キャンプ場やちょっとした公園には必ずといっていいほどBBQ用のグリル台が設置されています(ロードマップなどを見ると記号で記されている)。

BBQにせよステーキにせよ、一般的に言えることは、量が多くて、良く焼いてあって(焼き過ぎとも思える)、固めであるということです。頑健な肉体と顎で、ガンガン食っていくということで、パワーの差を感じるところです(最も日常におけるオーストラリア人はそれほど大食漢でもないようですが)。最初からそういうものだと思えばそれはそれで美味しいのですが。

なお「オーストラリア料理の店」という店は特に存在しませんが、Modern Australian、あるいはAustralian Cuisineと呼ばれるジャンルがあって、各国の料理を修行したシェフ達が、オーストラリアの素材を活かし、またあらゆる国の料理のよい部分をミックスして作る創作料理のようなものです。性格上、シェフによってメニューが違うでしょうから、一概に「こういうもの」と言うことは出来ませんが、「なるほど」と頷く巧みな一品もあるでしょうし、意気込みだけが先行している一品もあるでしょう。

そのような技巧を凝らした創作系ではなく、もっとオーストラリア人の日常の生活に密着した「普通の料理」を味わえる場所は、パブ(酒場)などと併設しているBistro/ビストロでしょう。ここでは「案内されて、席について、メニューを見て.....」という普通のシステムではなく、生協の食堂のようにセルフサービスになっています。必ずしも全てがそうというわけでもないのですが、一般には適当に空いてるテーブルに座って、飲み物はバーに行き注文しその場でお金を払って貰ってくる、食べ物は食べ物専用のカウンターで注文してお金を払って番号を貰って、番号が呼び出されたら取りに行くというシステムです。メニューの品数もそれほど多くなく、壁に黒板があって適当にそこから選ぶという段取りになっているのが最もありふれた形態でしょう。なお、最初に肉やサラダを買って、中庭のバーベキューのグリルで勝手に焼いて食べるという方式の店もあります。



コーヒーの種類


オーストラリア独特の言い方としては、コーヒーのホワイト/ブラック、ロング/ショートがあります。ある程度見当がつくでしょうが、ミルクを入れてカフェオレのようにしているものをホワイト、ミルクを入れないものをブラックといいます(砂糖の有無は関係ない)。さらにブラックの場合、薄めのもの(日本ではアメリカンと呼んでるもの)をロングといい、濃いめのものをショートといいます。特にいちいち聞かれない場合もありますが、「コーヒーのどれ?」という感じで聞かれたら上記の種別を聞いているのだと思ったらよいでしょう。なお紅茶もブラック/ホワイトの区別があり、区別の意味はコーヒーと同じです。

 さらに詳しくは、→レストラン情報/CAFE編(1) 現地のコーヒーについてを参照。

ビールについて


バーやレストランでビールを貰うとき、単に「ビール」と言っただけでは、「缶か、瓶のままか、グラスにいれてくるか」ということを聞かれます。缶はそのままカン(can)でいいのですが、瓶はボトルではなくスタッビィ(Stubby)といいます(より正確には複数系で「けぁんず(cans)」「すたびぃず(stubbies)」と言う)。さらにグラスに入れてくれるの場合は、中ジョッキに相当するのがスクーナー(Schooner/430ml)で、小ジョッキに相当するのがミディ(Middi/280ml)です。さらにややこしいことには、これはNSW州での言い方で、ビクトリア州ではポット、グラスというなど州によって呼び名が違うことです。このあたりは面白いのでどんなガイドブックにも書いてあるでしょう。

なお、ビールの場合、さらに「銘柄指定」があります。個人的に好みが確立していればそれを頼めばいいのですが、最初は全然知らないでしょう。どこの店にもまず必ずあるだろうという安全パイのような銘柄では、ビクトリアビター(Victoria Bitter/通称ヴイビー)やカールトン・コールド(Carlton Cold)などでしょうか。よく日本に輸入されてオレンジ色のラベルでお馴染みの「XXXX(フォーレックス)」はQLD州のビールでNSW州ではそれほどメジャーではないですし、有名ブランドであるToohyes(トゥーイーズ)は、さらにその中でもレッド、ドラウト、オールド、ブルー、ドライなど種類が異様に豊富すぎて、「トゥーイーズのどれ?」とさらに細かく銘柄を聞かれるので却って面倒かもしれません。その他の国の料理の場合


その他の各国の料理

インド料理、タイ料理、インドネシア、マレーシア、ベトナム、韓国、イタリア、ギリシア、レバノン、スペイン、メキシコ、アフリカ、チベット…とキリがありません。そういえばアメリカ料理というのを見かけませんが、マクドナルドやKFC(ケンタッキーフライドチキン)は沢山あります。フランス料理もありますが、やはり高めなのか、ホテルや市内のレストランはともかく、普通の町中ではあまり見掛けません。


一般にこうした各国料理は、移民でオーストラリアにやってきた人々が見知らぬ異国で開業して生計を立てる場合、レストランが最も適しているという理由によるのではないかと思われます。それだけに必死に作るでしょうし、他の同胞達の舌も厳しいので淘汰されていったのでしょう(実際によく潰れたりして競争も激しいようです)。チャイナタウンの中国人→中華料理のように、各民族が集まってる地域があり、そこで本格的な各国料理が楽しめます。

総じて、どの料理も日本で食べるよりも(日本人向けにしてない分)本格的で美味しく(というのは僕の主観ですが)、値段は1人3000円もあれば、かなりの質・量のものが食べられるでしょう。とは言いながらも、当然当たり外れ、口に合う/合わないはあるでしょうが。

結局、世界中の民族が移民している強みなのでしょうが、同じ事はレストランに限りません(インド人にヨガを習い、中国人に針を打ってもらうように)。オーストラリアワインも有名ですが、よく考えると主たる民族であるイギリス/アイルランド系の人々はあまりワインを作らないのですが(スコッチウィスキーは聞いてもイギリスワインは聞いたことがない→葡萄栽培の気候の問題)、これも後になって移民してきたドイツ系やイタリア系の人々がノウハウを駆使して作りあげたものと言われます。

なお、アジア系統の料理は辛いというイメージを持っている方もおられるでしょうが、確かに辛い一品もありますが、総じて言うほど辛くもなく、むしろ新鮮な野菜が豊富に使われサッパリしたものも多いですし、ココナッツミルクなどのマイルドな味のものも多いです。

各国のレストランに行くもう一つの楽しみは、店内やお客さんがその民族の雰囲気を漂わせていることです。例えば南欧系の人々は、生活サイクルとして晩御飯が遅く(夜の9時10時にやってくる人も多い)、民族音楽に合わせて踊る人がいたり、食べ方や、子供も躾け方など見ていると飽きませんし、お手軽に世界旅行しているような気分に浸れます。



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