僕は昔からスペルが苦手で、未だに全然ダメです。これは日本にいるとき真面目に勉強してなかったことの当然の報いで、反省しきりです。そんな人間が「スペルの覚え方」をエラそうに説くのは僭越の極みなのですが、苦手分野を敢えて書くことで僕も進歩しようと思います。一緒にがんばろー!
スペルの覚え方 〜 ゴリゴリのローマ字読み&分類と法則性
英単語のスペルというのは、本当に漢字の書き取りと同じだと思います。
共通点その1。ネイティブでもよく「あれ?」となって間違える。だから日本ではあまりお目にかかりませんが、こちらでは「スペル辞典」なんてのが結構売ってたりします。それもニュースエージェントやビジネス本のあたりに置かれているわけで、これは日本における「間違い易い漢字辞典」「用語用法辞典」みたいなものですね。
共通点その2。パソコンの普及でスペルチェックしてくれるから、益々力が落ちるという点です。勝手に変換してくれるから漢字を忘れるのと一緒ですね。
英語の試験で手書きのライティングを試される以外、実生活ではそれほどスペルが厳しく問われることはないのですが、それにしたって程度の問題で、あまりにもヒドいとやはり問題です。AustraliaをOstorariaと書いたり、「日本」を「目(め)本」と書いてたりしたら、英語力以前に常識が疑われたりします。手書きのメモ書きなんかでも間違ってると恥ずかしいですよね。
発音とスペルの徹底分離!
スペル記憶の第一原則は、もう
徹底的に「発音とは別物」とわきまえることです。徹底的に、です。
実際の発音は、もうぜーんぜん違うぞ!、似ても似つかないくらい違うぞ!とキモに銘じる。
英語というのは複数の言語がミックスされているので、スペルと発音の法則性が乏しいです。あるのに発音しない黙字があったり、同じ字が重なったり重ならなかったり。スペルを見てても発音がわからなかったり、発音から推測しても到底そんなスペルは思いつかないという。この法則性の乏しさが英語のイヤらしいところなのですが、でも、まあ日本語の漢字の読みの方がもっとメチャクチャですのでひとのことは言えません(=例えば「頭」という漢字の読み(あたま・とう・かしら・ず)を使い分ける法則性を言えますか?)。
いずれにせよ、
スペルに引っ張られて変な発音になってしまったり、逆に発音に引っ張られてスペルを間違えたりしますので、両者を近接させていて良いことなどありません。ぜーんぜん違う!と最初にスッパリ割り切ってください。
コテコテのローマ字ベタ読み方式
ではスペルはどうやって覚えたらいいかですが、まずは
ローマ字ベタ読みでしょうね。
かーなり無理目でもガキガキにローマ字読みする。日本人=ジャパニーズは、Japaneseですが、語尾の「nese」あたりが鬱陶しいですね。だからもう「じゃぱねぜ」と読んじゃう。
曜日のスペルなんか見慣れているから簡単なようで落とし穴がありますよね。MondayとかSundayは問題ないにしても、Wednesdayなんかどう見ても「うえどねす」でしょう?NとDの順番が逆じゃないか!てかDは黙字で発音しないのでしょうが、いずれにせよ止めてくれい!ってスペルです。ですのでこれはもう
「うえどねす」で覚えるしかない。
まっとーなようでいて、意外と変なスペルもあります。例えば
restaurant (レストラン)は一見そのままですが、よーく見ると「と」の部分が「たう(tau)」になってます。だからしっかり「れすたうらんと」と覚える。
ローマ字読みは皆さんもやっておられると思いますが、
コツは、照れずにコテコテに徹することだと思います。完璧に覚えるまで吉本新喜劇のようにコッテコテでいくこと。
さらに、必要があれば前回の漢字当てはめ式など印象的なイメージを使って記憶しやすい形に変換する。
例えば、ウェンズデーが「うえどねす」だったら
「植土ネス」とか。土曜日のサタデーも厄介です。Saturdayですからね。で、しょうがなく「さつら」「さちゅら」とベタ読みし、しかる後に
「薩羅」と当て字を使うとか。
重ね字
同じ字が重なったり、重ならなかったりというのもややこしいです。
tomorrow (明日)なんてのもMが重なるのかRが重なるのかすぐに分からなくなる。
address (アドレス、住所)も、DとRとSで何が重なるか、
accommodation (アコモデーション、宿)などはCもMも重なります。未だに迷うのが、シドニーの大通りのパラマッタロードで
ParramattaでRとMとTのどれが重なるか曖昧。
これはもう腹括ってtomorrowだったら「M1R2」、アドレスだったら「D2S2」、パラマッタは「R2T2」と、スターウォーズのR2D2みたいに覚える方法があります。いちいちRとかMとか言わずに(わかるから)、「1−2」「2−2」「2−1」などのパターンに分けるのも手です。
これだけでは心もとないなら、例えば野球の好きな方なら、
「1−2」は「逆転サヨナラ型」、「2−1」は「先行逃げ切り型」、「2−2」は「引き分け型(打撃戦)」、「1−1」は引き分け型(投手戦)とか。tomorrowは「1-2」ですから
「明日は逆転」ですね。アドレスとアコモは打撃戦。
重なるのが一つの文字だけの場合はまだしも楽です。とりあえず「この単語は重なる!」と覚える。どの文字がダブるかは、まあ、大体の感じで分かるのではないでしょうか。それに、重なり方がヘンなので、それが印象的になって覚える場合もあります。例えば、シドニーのサバーブのライカード(Leichhardt)なんて、読みもしないHがど真ん中で2つもあるので逆に覚えやすいです。また、人名に「Aaron」といのがあり、しょっぱなにAが重なるというかなり印象的なものも覚えやすい。ちなみにAaronは会社名に多く、これは電話帳のアルファベット順で早く出てくるからだと思われます。同じ理由で「AAA株式会社」なんてのも多い。電話帳のSEOですね。
変わったスペルがあったりしたら、ネイティブでもよくスペルの確認をしてたりします。日本語で「カワシマのカワは三本川(川)じゃなくて、サンズイの方(河)です」というようなものです。昔たまたま見た洋画で、少年と少女が出会うシーンで、活発な女の子が自己紹介するときに「わたし、ベッキー!Kふたつっ!(BeckyではなくBeckky)」とかいってて、なんか、この「Kふたつね!」が妙にカッコいいなと思ってしまった。"Hi, I'm Beckky, two Ks"。
鬼スペル SとC
いっつも間違える、、というか、覚えられないから間違える以前に途方に暮れる、辞書で調べてもスペルが分からないからテキトーにやってもヒット率が悪くイライラする、、、そんな厄介なスペルがありますよね。鬼のような難攻不落な鬼スペル。
まず、CとSです。どちらも「サ行」なのですが、SunとかCatみたいにそれだけだったらまだしも覚えられます。
厳しいのはSとCの両方登場して、しかも微妙にくっついてたり離れてたりしていて混乱を招くものです。
例えば、
success(サクセス)とか、
necessary(ネセサリィ)、
access(アクセス)、
accessory(アクセサリー)とか。これらはCとSが分からないうえに、重なるかどうかも分からんと二重に面倒臭いスペル群です。
攻略法のその一は、類似例を幾つか書きだしてみて
法則を見つける(つくる)ことです。
例えば上の四つだけで法則性を導くのもナンですけど、強引にやってみたら、
「CはSより先に来る」「クセという音はCSではなくCC」「後ろのSは重なる」とかね。
勿論常にそうなるかどうかは僕も検証してないのでわかりませんし、山ほど例外はあるでしょう。
しかし、完璧を期す必要はなく、「仮説」でいいからそういう原則を自分で作っておくことです。とりあえずの一応の目安にはなりますから。
第二に、その法則が通用しない単語が出てきたら修正をほどこす。「これは例外」として処理するか、例外があまりにも多いので原則と例外を逆転させるか、並列的なA型B型にするなど、常に考え続けるといいです。法則性やパターン分けを模索するのは、記憶術の大原則、
「覚えにくいものを覚えやすい形に変換する」という点に意味があります。その方が、単発的に出てきたそばから覚えているだけよりもずっと効率がいいです。
例えば、
science(サイエンス、科学)などという単語を見つけてしまうと、「CはSより先に来る」法則がガラガラと崩壊するのですが、ここが踏ん張りどころです。アメリカ憲法の「修正第○条」みたいに頑張りましょう。
上の「CS」系は音が「くせ」「させ」で、綴りもやたら密集しているのですが、サイエンス(Science)は違う。要は「さい(し)」=SCI だけです。で、よく考えると変なスペルですよね。「さい」と言いたいなら「SI」でも{CI」でもいいはずなのに無駄に「SCI」になってる。こういう
ヘンテコなスペルの場合、だいたい由緒正しい「いわれ」があると思っていいです。「いわれ」というのは、「その昔、えらいお坊様がこの村にきんしゃってな、、(中略)、、それから○○するようになったんじゃ」みたいなお話しです。
言語の由来=すなわち
「語源」ですが、これが面白いんですね〜。日本語の「銀杏」の誤読で英語のGinkgyo, Gingkyoになったとか、第二次大戦中の捕虜になった日本人の言い方を黒人兵がまねて「班長」→honchoになり、今でも"Yo, Honcho"なんて言ったりする=洋画やヒップホップに出てくるとか。また後でまとめて書きます。単語力増強の強力兵器ですから。
それはともかく「SCI」ですが、
アルク社の語源辞典などで語源を調べると、ラテン語やギリシャ語の「scio/scire」という言葉があり、これは「知る」という意味になります。そうなると、科学とか知識とか人間の知的活動を意味する単語で、音が「さい」「し」系はこの系譜を引く一族ではないかと推定されます。実際、語源辞典に表示されているのですが、サイエンス(科学)のほかに、con
science(良心、意識)、con
scious(意識=ボディコンの語源)なんてのが出てきます。語源覚えがいいのは、このついでに、nescient(無知)、omniscience(全知、神)、prescience(予知)なんてのもゲット出来てしまうことです。
このように、語源を調べるなどして、
「知的活動を表わす"SCI"という一族がいる」と法則性の追加、修正、分類を施すといいです。
何度もいいますが、この法則が正しいかどうかは問題ではありません。学会で発表するわけでもないんだから。
あーでもない、こーでもないと
考え続けることがメチャクチャ大事なのです。なぜ大事なのか?一回目から読んでる人はもうお分かりでしょう?考えれば考えるほど、その記憶が他の記憶とコネクトし、リンクが貼られ、インデックスが増えていくからです。考えるほどその記憶はぶっ太くなっていきます。それが大事なのだと思います。
例えば、先ほどのParramatta Rdは、R2M1T2で重なりそうなのが3つあって、逆転とか打撃戦とか当てはまらないぞ、で終ってしまうのではなく、そこを自分のオリジナルで補強していくことです。こんなん幾らでも出来るでしょ。「2−1−2」なんだからダブルプレイみたいにして覚えてもいい。最初と最後の字だけ重なるのだから、基本は「2−2(打撃戦)」だけど、真ん中が1で中だるみがあると覚えてもいいし、野球に徹するなら、「序盤3回と、終盤9回の表裏に1点づつ入ったゲーム」と連想してもいい。別に正解なんかないのだから、奔放な想像力とこじつけ力で固めてしまいましょ〜。
発音との関係での法則性 Pの前にはMが来る
これはかつて福島が書いたと思いますが、complainなどの場合、CO
MPになるのかCO
NPになるのかいつも迷う場合、
「Pの前にはMが来る」という法則があります。なぜか?これは理由があります。
@、「P」という発音は破裂音であり、破裂音の場合、必ず直前に一回口を閉じなければならない
A、NとMはともに鼻音であるが、両者の違いは口を開けて発音するのがNで、口を閉じるのがMである
B、ゆえに口を閉じる必要のあるPの前には、閉じた状態で発音するMが来た方が何かと好都合である
ということで、「Pの前にはMがくる原則」があり、彼女は高校生のときに自分で発見したそうです。えらいもんですね。僕が高校の時は英語諦めてましたからね〜。
この理論は実際にも正しく、またもっと一般化出来ます。
「破裂音など口を閉じてから発音する文字の前には、NではなくMになる」と。なにもPに限らず、同じ破裂音であるBもそう。口を閉じるという点がポイントであれば、別に破裂音に限る必要もなく、同じく口を閉じるMの場合もまた同じではないかと。
これは語源でもあり接頭語でもある「CO、COM」(=「共に、全く」の意味)の関連になるのですが、辞書(僕の手持ちのリーダース)で見ると
「B、P、Mの前ではCOMーになり、Lの前では COL-になり、R の前では COR-, その他の音の前では CON- となる.」となってます。
このように
発音のコンビネーションからスペルが推測できるというアプローチもまたあるわけですね。
冒頭に発音とスペルを分離すべしと書きましたが、それは僕も含めて多くの日本人の場合、どうしてもカタカナ発音が抜けず、完璧に英語発音になりきってないからでもあります。例えば、complainを「こMプレイン」、confuse「コNフューズ」とMとNとキッチリ峻別して喋ってるか?というと普通はやってない。カタカナで「コンプレイン」と覚えているだけ。つまりNもMも「ン」音で一緒になってるから、発音からではスペルが分からない。LとRもそうです。日常生活でもよく使う「アプリシエイト(感謝する)」と「アポロジャイズ(謝罪する)」でも、アプR/Lシエイト、アポR/Lジャイズなのかが「あれ?」と迷ったりしますね。逆に言えば発音が正確になればなるほど、スペルの苦痛も軽減されていく、ということですね。全てが相互に関連している。
ちなみに正解は、appreciate, apologis(z)eですけど、このapologis(z)eがまたイヤらしい単語で、RかLか問題の他、最初のPは重なるか問題もあり、且つ英語と米語でスペルが違う問題もあります(最後がseかzeか)。appと重なるか、apだけで重ならないか、、はい、また法則など覚え方を考えてみてください。
常習犯リストを作れ
法則性だの分類だのといっても、手持ちにサンプルケースがある程度集まらないと考えるモトがありません。かといって闇雲に辞書をひきまくっても徒労に終る可能性大です。ではどうするか?
まず、最初からそういう覚え方をするのではなく、よく間違える単語、いつも引っかかったり迷ったりする単語で、「あー!もう!」ってなったときにだけやればいいです。
そして、「あー!もう!」ってなったときがチャンスです。
よく間違える単語、スペルミス常習犯単語を、間違えたそばからメモしておくといいです。
いわゆる「単語帳を作るべきか問題」がありますが、レベルにもよりますけど=「いつも間違える」の”いつも”というくらい英語学習が進んでいたり、英語に接する頻度の高い人は、常習犯リストを作ることをオススメします。
常習犯リストが充実してきたら、ときおりめくっって「ふむ?」と考えてみてください。「いっつもここで迷う」「いつも○が重なるかどうかで間違える」という急所が見えてくると思います。ある程度見えてきたら、そこで初めて法則性なり、分類なり、語源調べなりをされるといいです。
自分のスペルミスのパターンを知るためには、パソコンのスペルチェック機能を使うのもいいでしょう。
、、、ってエラそうにあれこれ書いてますが、僕はやってません。だからダメなんですよ。でも、書くと必死に考えるから、書いてて自分で「そうだよなあ」って思ってしまった。さっそく今からでもやります。いっしょにがんばろ〜(こればっかだけど)。
スペルはこのくらいにしておきます。
次は、
Part 05 : テスト用記憶術を考えてみたいと思います。
→英語学習論トップ
語学学校研究
APLACのトップ
オーストラリア/シドニー現地サポートのページ