移民国家オーストラリアには世界中の食材と料理法が集まっており、食いしんぼには天国みたいな環境です。僕がオーストラリア永住を決めた理由の一つは、「メシがバラエティに富んでいて、しかも安くて美味い」という点があります。
一方、デフレ日本からみたら今やオーストラリアの方が賃金も物価も高くなっており、そんなに「安くて美味しい」とは言い切れなくなっています。これは長期生活をされる留学生さんやワーホリさんには厳しい環境です。
しかし、それでもまだまだ安くて美味しく、しかも栄養のバランスも取れている自炊方法は沢山あります。料理というのはちょっとしたコツを知ってるだけで、そこそこレベルであれば作れてしまうものですのですから、これを利用しない手はありません。
カップ麺食べたり、そこらでコーラ一本買ってたりしてたらお金が幾らあっても足りないでしょう。栄養や添加物の議論はさておき、20代男子の晩飯がカップ麺一つで済むとも思えない。小腹が空くから結局間食をしてしまい、その間食代がもっとかかる。コーラなどは一本だけ、それもテイクアウェイなどの店先で買ったら1缶2〜3ドルほどします。しかし、24本カートンをスーパーの大安売りのときに買えば一缶50セントで済む。1日平均1缶飲んで価格差2ドルだったら年間730ドルもの差になります。日本への航空券くらい余裕で出ます。ビールだったらもっと差が出ます。こういう金の使い方を改めるだけでも年間十数万円は浮くでしょう。
ということで、
ここでは「安く」という点を重視します。
しかし貧乏臭くなったり楽しくなかったら意味がないです。だから質は落とさない。同時に作るのに異様に手間暇がかかるのもカットします。だけど将来的に「料理が上手な奥さん(ダンナさん)」としてのスキルアップにもつなげたいです。要するにイイコトづくめにしたいわけですね。こんなのやり方一つです。
一応の基準でいえば、目標は平均単価一食1ドル以下。これはあくまで目標なので実際には数ドルくらいかかるでしょうが、それでも5ドル以下に抑えたいです。調理時間は30分以下。出来れば10分以下。カレーのようにドカンと作ってしばらく同じものを食べるという場合もあるので、この場合は最初に数時間かかりますが、以後は一食数分で済みますから。
料理/味の構造を知ろう
基本と応用
料理が上手な人は、冷蔵庫をあけて余り物などを「ふんふん」と眺めて、ほんの10分くらいで料理本もみずにチャッチャと作ってしまいます。下手な人は、料理本と首っ引きになって、書かれている食材や調味料がなかったら「もうダメだ!」で投げ出しちゃったりします。
料理に限らず「○○がヘタな人 」というのは、
@基本構造がわかってない
↓ だから
A難しく考えすぎて、マニュアル(解説本)がないと何もできない
というパターンに陥るようです。しかし、この種のコツというのは煎じ詰めれば1分で理解できます。極論かも知れないけど、僕は本当にそうだと思ってます。
ここでは個別の料理法をあれこれ書きません。そんなの書いても忘れるし。それよりも大きな「発想」「構造」を書きます。その方がはるかに覚えやすい。そして、基本から応用への考え方の筋道やパターンを覚えてもらいます。とにかく応用が利くようにする。
応用はとても大事です。自炊においては生命線だといってもいい。
応用が出来なければ自炊する意味がないと言い切ってもいいかもしれません。少なくとも経済的メリットかなり減ります。
ここでいう「応用」とは、
「ありあわせのものでチャッチャと作る」ことです。絶対にこのレベルまでは来てください。また絶対に出来ます!このページの日本語を理解できるだけの知能があったら出来ます。
単純な自炊だけならそれほど節約になりません。
むしろ材料費や調味料代でもっとお金が嵩むかもしれない。
自炊でお金が激しく節約できるようになるには、幾つかの条件があります。
@コンスタントに作ること、Aどんなものでアドリブで作れること、です。つまりは応用がきくこと。冷蔵庫に残っている萎びかけた野菜、賞味期限のヤバい食材、それらをいかに有効活用できるかどうかです。だから応用が大事です。ありあわせのものでチャッチャと作れるからこそコンスタントに作れるのだし、コンスタントに作るからこそ食材や調味料の無駄も少なくなり、平均単価がドカンと落ちるわけです。
味の原理
能書きはこのくらいにして本論いきます!
まず、料理の構造を知ってください。これは要するに「味の構造」です。味というのはどういう具合に組立てられているかですが、これがまた拍子抜けするくらい簡単です。
ダシ+調味料 という二重構造
まず、この事を頭に叩き込んでください。
これが中核部分です。これが大本の幹の部分であり、その他の料理ノウハウの多くはここから派生する枝葉や小知恵に過ぎません。
今度味噌汁を作るときに、ダシを入れないでお湯に味噌だけ溶いた時点で味見してみてください。かなり不味いですよ。もう飲めたもんじゃないです。これは一回やってみて、もうどれだけマズイか身体で覚えてください。じゃあ次に和風ダシ(「ほんだし」のようなもの)を入れて下さい。これでいきなりなつかしい味噌汁になります。ここで、あなたは「ダシ」ということの意味を、身体を知ったことになります。この体験知識は宝石レベルに大事です。
(注:これが激マズになる本当の理由は市販の味噌に入っている化学調味料その他の添加物のせいなのでしょう。本物の味噌だったらそれほど不味くはない筈です)。
このように、料理/味というのは、
ダシ(ストック)+調味料という二重構造になっていることを理解してください。
「そんなの知ってるよ!」と言う人もいるでしょう。でも機械的に本だしを入れたり、鰹節をかいたりしてるだけでは分かったことにはなってないと思います。それは手順を覚えているだけで本質が分かってるわけではない。僕もこのことに気づいて、「そうか、そうだったのかあ!?」と目からウロコが落ち、料理がグンと気楽になり、同時に上手になったと思います。この構造さえ知っておけば、だいたいの調理法の見当はつくようになるから、調理法を暗記しなくても済みます。数学の公式をベタ覚えしなくても、公式の出し方、その発想だけ知っておけばいいということです。また、あとでも書くけど
「○○の素」というインスタント系のものは買う必要もなくなります。日本料理に限らず、中華でも西洋料理でもある程度こなせるようになります。
ダシ=ストックとは
ダシは、日本料理に限らず世界の共通の原理です。家の土台のように、ダシに相当する下部構造があり、その上に調味料やスパイスという建物という上部構造がある。二階建て原理になっているのですね。もちろん、ステーキやお好み焼きのようにダシが要らないものもありますが、通例の汁物、煮物、そして炒め物にもダシが使われています。
ダシというのは、もともとは食べ物の素材の味です。食材本来がもっている味がジワジワにじみ出てきて、何ともいえない「うまみ」をつける。しかし、これが面倒臭い。ラーメンのスープもそうですが、鶏ガラやら野菜やらをグツグツ(×10)くらい煮込んで煮込んでようやく取れるものです。西洋料理でもコンソメやブイヨンのようにグツグツ煮込みます。数日どころか1週間以上煮込む場合もあるようです。超面倒臭いです。
日本料理の場合、伝統的にインスタントに取れる二大ダシがあります。カツオブシと昆布です。世界に誇るべき、ナチュラルでオーガニックなインスタントストックです。インスタントといっても、鰹節やダシ昆布を作るまでに気の遠くなるような工程があり、トータルで言えば世界で最も手間暇をかけているのですが。しかし、オーストラリアで日本料理を作る場合、鰹節そのものは手に入らないからパックの削り節でとるか、あるいはこちらでも売られている昆布で取るかですが、一般には和風だしでいいでしょう。そんなに時間もないだろうし。ここでは「いかに本物の料理を作るか」論ではなく、「いかに財布・胃袋・手間暇に優しく作るか」論ですから。
余談(食の安全が気になる人へのコラム):化学(うま味)調味料と和風だしとMSG
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「味の素」のような化学(うまみ)調味料があります。「味の素」は商品名で、同じく「ハイミー」とか「いの一番」などの商品があります。それまで食の万能ツールとしてチヤホヤされていたのですが、グルメ志向や自然志向が強まってから、手の平を返すように嫌われるようになりました。可哀想なくらいです。「化学」というケミカルなネーミングが良くないということで、今では「うま味」調味料と称していますが、それでも化学=健康に良くないという意識は皆に擦りこまれていたりします。
では、これと「本だし」のような和風だしは同じものなのでしょうか?これも沢山の商品があります。ティーパック状のものもありますが、粉末状のものも多いです。これって化学調味料では、、?という疑問が僕の中にもあり、今回調べてみました。結論は、調べれば調べるほど迷宮に入っていきました。よう分からん!
なぜかというと「化学=ダメ」という発想が幼稚すぎるからです。化学調味料の本体であるグルタミン酸そのものは自然の食品にも普通にあります。というか自然の食品の中にあるものを抽出精製したものが化学調味料なのですから。現在の味の素などは、自然の食材(さとうきびなど)を発酵させて作っています。かつては石油から作り、その成分(タール)の存在が疑われ、そこから化学=悪者論が出てきたようですが、今はそうではないです。微生物発酵方式だから味噌と変わらん。ただし、抽出したグルタミン酸はそのままの形では使えないので、水に溶けるように水酸化ナトリウムで中和してグルタミン酸ナトリウムにするわけで、そのプロセスは「化学」的ではあります。
だとしたら「和風だし」にしても、かつおぶし粉末やエキスだけではなく、定性的な粉末にして固着させるプロセスでなんらかの「化学」的なことが行われているでしょうし、その意味でいえば同じっちゃ同じなんです。
それに一般に、「化学調味料無使用」と表示されているのは、「化学調味料(グルタミン酸ナトリウム)は使ってません」というだけのことで、他の化学物質や製法を使っていても「無使用」と表示できるのですね。人工的なアミノ酸混合物であるタンパク加水分解物を使っている場合はよくあり、それにもクロロプロパノール類など発ガン性が疑われるものがあります。だから、味の素が絶対に悪者で、味の素を使ってなかったら絶対に大丈夫、、って、幼稚な世界ではないということです。
そもそも、自然の食品があんな粉末などに形状を変え、長期間流通し陳列されている段階で、もう全然自然じゃないです。なんらかの「加工」を施さないとならない筈です。
一方「化学」というのもいい加減な概念で、本当のことを言えば森羅万象の全てが化学です。だって「化学」というのは物質内部の原子の構造や反応を調べる学問なんだから、原子や分子で出来ていれば全て化学。僕らの人体だって化学物質のカタマリだし、コーヒーに砂糖をいれただけでも化学反応がある。自然と化学が相反するわけではなく、自然=化学なんですよね。だから考えれば考えるほど分からなくなるというのはそういう意味です。化学部に入り直さないと。
オーストラリアでは、味の素の成分(グルタミン酸ナトリウム)のことをMSGと表示します。Monosodium Glutamateの略です。構造式はHOOC(CH2)2CH(NH2)COONa。よく食品の表示や、テイクアウェイの店先に「NO MSG」と書いてありますが、これは「化学調味料は使ってません」ということです。その昔西欧社会で、中華料理屋症候群(チャイニーズレストラン・シンドローム)というのがあり、MSGを摂取して気分が悪くなったという出来事がありました。以後、西欧でも化学調味料は悪者になって、MSG=悪という図式になってます。しかしね、これも都市伝説レベルの部分もあって、国連のJECFAの長年の研究によれば人体被害は無いということです。以前は1日120mgと上限を決めてましたけど、今ではそれも撤廃してます。
まあ、身体に良い悪いでいえば、塩、砂糖、酒、、、なんでも取りすぎたら悪いんですけどね。要はバランスと節制でしょ。いずれにせよ、ちょこっと調べた限りでは、味の素や化学調味料の単独犯説(そいつ一人だけが悪党であとは全員善人)なんてのは嘘だということです。
現実的な落としどころでいえば、まあ、出来ればあんまりこの種のモノにお世話になるなということです。この項は、いちいち鰹節をかいたり、3日がかりでブイヨン取ってられない、というところが出発点ですから、本だしやストック(ブイヨン、コンソメ)は使わないと話が進みません。
ただし、使うにしても、気持ち少なめに使うこと。この種のより実戦的な弊害は、味が強いので入れすぎると舌が馬鹿になること、またどんなものでも同じ味になってしまって詰まらんという点にあります。ダシ=食材本来の味ですから、食材を煮込んでいるだけでもダシは出ますし、そっちの方が全然美味しい。だから、あくまで補強材くらいにしておかれるといいです。
ストックを入れなくても成り立つ料理には入れない。逆に手間が掛からないんだったら自然のダシを使うといいです。例えば、しゃぶしゃぶや湯豆腐に昆布を敷くだけで、かなり味はよくなりますよ。残ったお湯はそのままダシスープになるから、捨てるなんて勿体ないことしないで、翌日調味すればウドンが出来ます。
西洋料理の本だしに相当するのが、一般に売られている
ストックと呼ばれているものです。日本ではコンソメといった方が通りがいいかもしれません。こちらのスーパーで色々と売られています。チキン、ビーフ、ベジタブルなど色々ありますが、基本はやはりチキンでしょう。鶏ガラスープの味になりますから、中華料理ほかあらゆる料理のベースになります。「中華だし」なんか他に買わなくてもいいです。
銘柄も沢山ありますが、個人的にお好みなのが右の写真ほぼ中央にあるMasselのストックです。写真では減塩だけしかなく、スタンダードのものが品切れになってますが、どっちでもいいです。僕はチキン、ベジ、ビーフの三種を常備してます。使用頻度は10:5:1くらいでチキンが多いですね。どういうわけか同じ銘柄でも、上の段のカンに入ってるものよりもサイコロ状の方が美味しいように思います。気のせいかも知れないけど、缶入りは開けたり閉めたりする過程で湿気っちゃったり、変質するからかもしれません。
ということで、
和風だしとチキンストック、何はなくともまずこれらを用意してください。
この二つがあれば、和+洋・中と応用がきくから、かなり万能です。
和風ダシはシドニーだったら手に入ります。「これでなければ!」というお気に入りのレア銘柄があれば日本から持ってきて下さい(まあそのくらいこだわりのある人だったら、余裕で自炊できるでしょうからこのページは読まなくてもいいです)。
以下、ダシ(ストック)を使った調理の発想と応用ヒントをいくつか書きだしておきます。
洋風スープ
超簡単。お湯にストックと食材を入れて煮るだけ。
例えば、冷蔵庫の中にある使い残したしなびた野菜があった場合、スープか野菜炒めですよね。でもスープが一番食材を選ばないから楽です。適当に鍋にぶち込んで、チキンストックを入れて煮込めばちゃんとしたスープになります。
スープの種類なんか味噌汁の種類と同じで無限にあります。ストック入れて煮込めばいんだから、こんなに簡単な料理はないです。インスタントコーヒーを作れる人なら誰でも出来る。
コツらしきものを言えば、とにかく時間の許す限り煮込めということです。弱火でトロトロと。煮込み系というのは時間が経てばたつほど食材の味がにじみ出てくるので美味しくなります。1日以上煮込んでたらストックなんか要らないです。食材からダシがでちゃうから。でもまあ1日というのは大変なので、最初は数時間、それがダメなら1時間弱でもいいです。味は、別に煮込まずに放置してても出てきます。キッチンに冷えたまま放置しておいた二日目のカレーやおでんが美味しくなるのと同じ原理です。だから、わりと多めに作っておいて、連続して食べる。後になればなるほど飽きてくるが、後になればなるほど美味しくなる。そうそう作ったその日に食べるにしても、煮込んでから一回火を止めて寝かしておき、食べる直前に再び温めると味の染みこみ具合が進むような気がします。
あ、あと、西洋系スープを作る場合、白ワインをドバドバと入れるといいです。4リットルで1000円程度のカスクワインが安いですから好都合です。僕の場合、ストック少なめにしつつ、殆どワインで味付けします。料理酒というのは、あれは調味料というよりも一種のストックだと思います。日本の鍋物で、お湯の代わりに全部日本酒を使って作るものがありますが、そのくらいの感じでもいいくらい。
あとは好みや食材の具合によってアドリブでキメて下さい。
例えば、賞味期限が近いベーコンが余ってたら、ベーコンとジャガイモ、キャベツなどを入れてポトフというか、気分はドイツ風にする。
イタリア風にしたかったら、トマトをミジン切りにしてブチ込み、さらにシェルなどの小さめのパスタをドバドバ入れておくと
ミネストローネ風になります。スーパーのライスの棚の近くに、穀物や豆類売り場があり、そこにミックスした豆セットが安価で売ってます。豆を入れても美味しいですよ。パスタや穀物が入るのでパンやご飯は無くてもいいです。スープだけで十分な食事になります。
僕個人の好みでは、ソーセージとフェンネルのスープがいいですね。フェンネルは日本では珍しい野菜ですが、こちらではふんだんに売られてますし、安い。一個100円程度。説明が難しいので
グーグル検索の画像を見てください。独特の香り高さがイイです。これと次項に述べる予定のオーストラリア名物ソーセージ。あとは適当に人参などをぶち込んで煮込む。
スープとシチュー
スープとシチューの違いは、今書いているような素人レベルにおいては殆ど同じです。「味噌汁と豚汁の差」とか言ってるようなものです。あっさり目がスープで、こってり目がシチューだという程度の差。もっともシチューは最初にタマネギと肉を炒めてから水を足すという意味でカレーに近いかも知れませんね。要は辛くないカレーをシチューというような感じ。なんで最初に炒めるかといえば、別に炒めなくてもできあがりにそれほど大きな差はないのだけど、タマネギというのは強火で炒めて「きつね色」にすると甘味が出るので美味しくなるってことです。だからスープでこれをやってもいいです。
スープやシチューにベイリーフ(月桂樹)やブーケガルニを入れないとダメとかいうのは中上級者の言うことです。そこまでこだわれるようになったら料理も楽しいんでしょうけどねー。でも、ここでは別にいいです。味が良くなるかも知れないメリットと、あれこれ言って「面倒臭そう」と腰が重くなるデメリットを考えたら後者の方が大きいと思うから。
さて、日本人的に「シチュー」といえば、ホワイトシチューとビーフシチュー(てか「茶色のシチュー」)でしょう。本物の西洋料理ではそんな大雑把な分け方はしないのだけど。例えばビーフシチューらしき物体も、ビーフストロガノフになったり、あるいはGoulashというスープに分類されてたり。しかし、ま、ここではナニゴトも大雑把にいきましょう。らしきゃいいんだ、らしきゃ。
ビーフシチュー
ビーフシチューは、ちょっと手強いぞ。
牛肉とビーフストックとトマトとワインを入れます。最初から長時間煮込むつもりならば一番安い肉でいいです。牛肉はかなり煮込まないとグニグニしてゴムみたいで食えたもんじゃないです。だから時間が短いなら高額な良い肉あるいはミンチで肉団子にしちゃう。時間が長いなら安い肉でいいです。「osso bucco」と呼ばれている骨付き肉が安いです。骨からいいダシが出ます。
コツはとにかく煮込むこと。煮込んで煮込んで、肉なんか原型を留めなくて溶けちゃうくらいが美味。野菜もセロリや人参、あと見慣れない白い人参みたいなパースニップとかでもいい。スーパーにシチュー(キャセロール)セットとしてパックになってたりするので、あれを参考にするといいかも。これは野菜の甘味を出すもので、これもトロトロに溶けてしまうくらいがいい。結局出来上がったら何の具もないスープ状になってますが、これが栄養満点、消化にも良い。
でも、これじゃ物足りない人は、中途でまた肉や野菜を追加するといいです。そうそう、ジャガイモはすぐに煮くずれるので、ジャガイモ状態で食べたいなら、最後の最後に入れたらいいです。電子レンジで柔らかくして入れてもいい。いわゆる自然のトロミを出したいならわざと煮くずれさせるのもテです(↓以下に指摘したように日本の片栗粉の殆どはジャガイモのデンプンで作ってるから同じこと)。なお沢山作って冷凍保存しておくなら、ジャガイモは外した方がいいです。コロッケのようにすり潰するならいいですが、そのままの形で冷凍したジャガイモは解凍するとカスカスして不味いです。
ビーフシチューのワインは赤ワインがいいでしょう。白ワインでも上品な仕上がりになりますが、赤ワインの方が迫力が出る。色もグンと濃くなるし。あと、トマトは自分で刻んでいれてもいいし、カンカンでもいいし、トマトピュレーが別に売ってるのでそれでもいいです。トマトジュースでもいい。
煮込み時間が長いという点でビーフシチューは結構気合がいります。週末のホビー的。美味いですけどね〜。
肉をバラ肉や薄切り肉を使い、且つ出来上がりにグリーンピースを散らしたりすると気分はハヤシライスです。
アジア系肉屋では、店先で言うとタン(舌)が出てきます。これがまた原型まんまで一抱えの砲弾くらいあるのでグロテスクなのですが、湯で皮を剥き、グツグツ煮込むと美味しいタンシチューになりますが、これも趣味の一品。もう「プロジェクト」って感じ。
ホワイトシチューとホワイトソース
ホワイトシチューは、ホワイトソースさえ出来れば簡単。スープにホワイトソースを入れればいいんだから。肉はチキンが合いますねー。ビーフでもいいけど、そうするとまた煮込むのに時間が掛かります。肉団子なんかもいいけど。
ホワイトソースは、
小麦粉+バター+牛乳という三種の神器で作ります。
手順とか色々あるんだろうけど、
大事なのは小鍋で別途ソースだけ作ること。つまり、ホワイトソースになってから他と混ぜること。スープに直接バターや小麦粉を入れるとダマになったりしてドツボになります。そこだけ気をつけて。あとは、テキトーでいいです。なんとかなります。
僕も全部せーので小鍋にぶち込んでます。加熱しながらヘラで忙しくかき混ぜる(延ばす)こと。箸ではダメ。すぐ焦げるので、火力に注意。ミルクは順次追加していくこと。完全にクリーミーにならなくても、だいたい混じり合えばそれでいい。あ、あと、小麦粉は面倒でも一回フルイ(ザル)にかけるといいです。それだけでかなり固まらなくなるし、またこっちの小麦粉は小麦の皮とかかなり混じってるのもありますから。
ホワイトソースさえ出来れば、これでグーンとバリエーションが広がります。ホワイトソース系のパスタだろうが、グラタンだろうが、スープスパだろうが、やり方は同じ。濃度や具が多少違うだけです。しかしホワイトソースの本当の実戦的な効用は、
「賞味期限の迫った牛乳を使い切れる」という点にあります。こちらの牛乳は2リットルサイズですからね。ついつい余る。余りそうになったら、「よしホワイトソースだ」で、牛乳仕立て系の料理にする。まあ、ケロッグのシリアルでもいいんだけど、晩飯がシリアルというのも寂しいモノがあるよね。
トマトソース
この際、トマトソースの作り方をやっちゃいましょう。これも簡単。
トマトソースですが、こちらで迂闊に「トマトソース」というとケチャップが出てきてしまいます。ここでは、漠然とした概念だけど、パスタなどのイタリア料理でトマトベースのもの、「赤っぽいやつ」くらいの意味でいいます。
ベースは、
オリーブオイル+ガーリック+トマト(みじん切り)です。流儀によって、タマネギのミジン切りと一緒に炒めるとか、ハーブ(オレガノとかローズマリーとか)を入れるとか、色々ありますが、基本はこれだけ。トマトのミジン切りが面倒だったり、トマトが高い時期(キロ4ドル以上したら高いと思う)は、1缶60円くらいのDiced Tomatoを使うとよろし。「赤っぽいの多め」にしたかったらトマトの量を増やせば良いだけ。
このトマトソースに食材を入れて(タマネギとか肉とかピーマンとか)を入れて炒め、パスタに絡めたらそれでOKです。ミンチ肉を入れて炒めたらミートソースになる。
ホワイトもトマトソースも味付けはストックと白ワインです。ただし、トマトソースの場合、あっさりパスタに絡める程度だったらストックはなくても可。オリーブオイルとガーリックだけでそこそこ食べられる味になってるので、ストックの有無は味見して決めてください。