3つの配給原点
一応のメドは、@英語力は最低でもIELTS6点くらいでしょうか。そのくらい無いとそもそも永住権の申請が出来ないし、その他の就労ビザや進学などにおいても、英語力が足を引っ張って前に進めない恐れがあるからです。IELTS6点をTOEIC換算するのは難しいのですが、ざっと850点くらい?(ただし、TOEICはスピーキング・リスニング不足の可能性があるので、通常はプラス数ヶ月の英語圏での現場経験がないと、職探しなどの実戦力としては足りないケースが多いです)。IELTS6点というのは「最低」です。標準装備としては7点欲しい。6点だけなら他で(凄いコネがあるとか)稼がないとハンデ負います。6点以下はほぼ論外という意味で最低6点。足りない部分は、勉強!です。
A軍資金はあればあるほどいいけど、とりあえずオーストラリア到着時点で最低でも50-60万円くらい
(これはレート85円時代の試算ですのでレート100円になると70万円前後)。これは着いてから英語をやるための学校代と初動の生活費のミニマムです。ただし、既に英語がもしバリバリ出来るのであれば(既にIELTSで7点ゲットし、ローカル仕事もバイトレベルだったら余裕で経験済み)、殆どモトデは要らないでしょう。全部現地で稼げる筈。マックスは、別に限度はないけど、実例で3億円って人がいました。投資家ビザで入った人ですね。一家揃ってだったら2000万円という実例も知ってます。だから一律に「幾ら」というのはナンセンスの極みで、ここでも「最低」で幾らか?と言われたら、ゼロないし、まあ50-70万円くらいかな(単身者の場合)と。
Bキャリアですが、一般にホワイトカラーよりも職業リストに載ってる手に職系が強いですが、これもケースバイケース。あとで述べます。
さて、オーストラリアに降り立った時点での@ABの総合力とバランスがあなたの「配給原点」になります。これをどう積み増ししていって、無事にゴールにたどり着くか、大いなるゲームの開始です。
ここで「ゴール」とは、オーストラリアで永住権が射程に入る程度のスポンサーをゲットするか、ゲットしうるレベルにまでもっていくことだと思います。そのためには一定の英語力は必須ですし、現地での有意な稼働経験やコネクションが必要でしょう。では、どうやってそこまで持っていくか?
英語力錬成
最初はワーホリか学生ビザで入ってくることを勧めます。というかプラスアルファがないとそれ以外のビザは取れないでしょう。その前に「どんなもんか」で観光ビザで3か月ほどの視察滞在をするのも手です。なお、学生ビザの場合は、観光ビザで入って学校を見て、現地で学生ビザの申請をした方が間違いもロスも少ないでしょう。
英語がバリバリ出来る人以外、最初はとりあえず現地で使い物になるレベルまでの英語錬成期間になります。ここで「英語がバリバリ出来る人」というのは、実例でいえば、シドニー空港に着いた時点でそのへんのオージーにシェア探しのやり方を聞き、その場で幾つも電話してアポを取り、空港からダイレクトにタクシー飛ばしてシェア探しをするくらいの感じです。英語と実行力がバランス良く充実しているってことです。ちなみにその人はワーホリ三ヶ月目にして通訳翻訳の仕事を3つ掛け持ちして稼ぎ、半年後には正規に就職を決め、初任地はパリということでフランスに行っちゃいました。このくらい「出来る」と危なげはないですが、そんなのはレアケースであって、まあ、普通は英語修行でしょう。
純粋にテストの英語点だけを考えるなら語学留学した方が効率的でしょう。ここで、ワーホリを同列に論じるのは、上で述べたようにワーホリビザを有効に活用すれば、現地での職探しの重要な基礎力になる「現地ローカル社会への親和性」を得られるからです。この力は日本人の一番弱いところだし、英語力よりもトリッキーで習得するにはそれなりのコツがいる。ある意味、英語力よりも大事。やり方により、人によるけど、一般にワーホリの方がこの力を得やすい、少なくとも得るチャンスは作りやすい。第二にワーホリの方が軍資金を稼げるからです。ファーム仕事などを上手に探せば1−2年で200万円程度は稼ぎ出せるでしょう。
ただし、それもこれもローカル仕事を得られる程度の英語力あってのことですから、ワーホリから入っても、最初はクソ真面目に英語をやった方がいいです。その意味で、最初半年〜1年語学留学し、そのあとワーホリに切り替えて現地突撃をするという戦略もアリだし、そうする成功例もまた多いです。
一方、現場に慣れ過ぎると、カジュアルで流暢な口語は習得しやすい反面、文法的に滅茶苦茶になって、最後のアップグレードであるIELTSや本格的なビジネスシーン(正規のフルタイム採用)でコケるパターンが多いです。そこそこは出来るけど、そこそこしかできないから上にいけないという。後述のようにローカルのカジュアルジョブは美味しいのですが、それでも永住権レベルからみれば、しょせんは使い捨てのフリーターの外国人労働者に過ぎない。その程度の"人材"だったら何十万人という単位で掃いて捨てるほどいるし、オーストラリア政府が永住権を出して許可する「本当の人材」ではない。
語学というのは地味にシコシコやるっきゃないので、どっかでこの「地味シコ」時期を作らないとならない。だったら最初の方がいいだろうと思います。どうせ最初は全てに不慣れだから派手に動き回れないし、地味にやってる方がむしろ精神的にも楽。ここをすっ飛ばして、基礎力がないままスラング口語だけ妙に伸びると矯正するのが難しいです。それ以上に、コマを大分進めた後半戦に、この地味シコをもってくるのは生活リズム的にも、メンタル的にも難しいです。朝から晩まで働いて、稼いで、疲れ切って帰ってきたところでまたIELTSの勉強をするのはツライです。ツライだけでなく出来なかったら結局永住権ゲームは敗退ですもんね。
ただし、ワーホリの通学期間は年間4か月に過ぎないので、2年目更新後にまた通ったり、あるいはワーホリ後に学生ビザに切り替える際、語学学校で学生ビザをとる人も最近では結構います。ここ数年、時間に余裕があり低廉でもあるイブニングコースが発達してきたので、それで学生ビザは取るという手もあります。ここで、へたなビザ取り学校(で有名な学校)通って、後々の永住権申請の際に移民局に妙な偏見(てか正しいのだが)で見られてスキルセレクトで後回しにされる(かもしれない)潜在的リスクを負う(かもしれない)なら、英語やってる分にはビザ的に文句を言われることは少ないでしょうし。イブニング&ブレイクの入れ方次第では、ビザ取り学校と資金的には大差ないので。
初期はジャパレス
仕事ですが、着いた初期の頃は、まだまだ不慣れなので、比較的職を得やすいジャパレスがいいと思います。ジャパレスを避けてローカル仕事ばかりを狙う人もいますが、これは賢くないです。なんせケタ違いに英語力の高い大学留学生やネィティブのオージー達を競争相手にするわけですから、彼らに比べれば幼稚園児レベルの語学学校生では、それなりに「運」がないとゲットできない。だから期間が読めない。ラッキーだったらすぐに得られるけど、日本でプロの翻訳家になった人ですら50連敗して結局ダメ、最近でもIELTS6点持ちながらも80連敗という記録があります。だからこんなの「運」でしかないし、あまりにも時間が読めなさすぎます。
でも、「鉄は熱いうちに打て」で、着いてからまったりせずに早く働いた方いい。とっととやりやすいジャパレスから攻略して、負担になりすぎない限度で、コンスタントに働いたらいいです。生活リズムがつくし、なによりも現地で稼ぐ自信もつきます。3か月やって未だに現地職歴ゼロだったら勢いが鈍って、何をするにも老人のように「よっこらしょ」みたいなノリになるから、結局大したことしないままタイムアップになる恐れがあります。着いた当初の勢いを殺すなです。
あの〜「ステップアップの永住権」とかカッコつけて描いてますけど、基本的には他人の家にあがりこんで、そのまま住まわせてもらおう等という虫のいいプロジェクトなんだから、その基本は「殴り込み」みたいなものです。気迫の勝負。一歩で退いたらそこで終わりという「気分はいつも土俵際」でやってください。かといってリラックスしないとすぐにネガ転・鬱転するので、そこのメンタル管理が超難しいです。最大のケアをはかってくださいまし。コンスタントに「小さな成功、小さな達成感」を小刻みに積上げていくのが大事だと思う。どんな些細なことでもいいから、小さな成功を重ねて、成功慣れし、勝ち癖をつけ、勢いをつけること。なんだかんだいって、これが出来るか/できないかが最大の分岐点って気もします。別に海外に限らないけど。
そして通学しながらのバイトであろうとも、贅沢言わなければ、十分食べていくくらい出来るはずです。賄いも付くから食費が浮くし、栄養補給にもなる(日本食美味しいし、自炊だとテキトーになって栄養バランス崩しがちだし)。直近でも3か月でジャパレスだけで(学校も必死で行って)20万円貯めた人もいます。学校&ジャパレスで、貴重な軍資金を減らすことない、「サステイナブルな生活」を構築すること。大体、到着一ヶ月以内にそこまで持って行くのが理想。
と同時に、語学学校で英語レベルが中級(インターミディエイト)以上の人だったら、ジャパレスと同時並行してローカル仕事のレジュメ配りにもチャレンジしてください。アッパーインター以上のレベルだったら、運の要素にもありつつも、ゲット出来る場合も多い。それ以下のレベルの場合、中級以上に上がるころから徐々に活動していくこと。中級でもパブの仕事をゲットした人もいますしね。とりあえずここでは、こういう現地に突撃するという行為に慣れることです。
ワーホリさんは学校期間が4か月までと制限されるので、卒業したらとっととラウンドに出るなり、朝から晩まで仕事探しをして今度は超真剣にローカル仕事をゲットしてください。最初はカフェくらいが取っつきやすいのですが、カフェは昼間仕事だから学校とかぶります。だから学校が終ってフルタイムでできるようになった時点がチャンス。しかし、ラウンド先でさらに過酷な職探しをやってる方がずっと修行になるし資金稼ぎにはなるとは思います。学生ビザの人はラウンドに出れないので、大体の目安では半年くらいまでにはローカル仕事を得ること。タイムスケジュール的にもマストだと思います。
ローカル仕事をするにしても、最初はカフェ、レストラン系、あるいはクリーニングなどの現場仕事でしょう。それでも時給額面で20ドル以上は出るでしょうから、次のステージに備えて「貯め」の態勢に入れると思います。また、実戦英語機会にも恵まれるようになるので、ここで学校では学びにくい口語英語を磨いてください。そしてオージーなど地元仲間を増やしていってください。
基礎体力と次の一手
さて、ここまで出来たら、あなたはビザさえあれば、そして贅沢言わなければ、現地で生計を立てることくらいだったら楽勝に出来るようになってるでしょう。この生活が永遠に続けばいいけど、しかし永住権以外のビザには必ず終期がある。その生活を続けたいなら、やはり最終的に永住権まで目指して、次の手を打つべきことになります。
ここまでは大体誰でも同じでしょう。日本に居ながら@ABが豊富にあり、いきなり永住権や就労ビザにリーチをかけられる人は別として現地で這い上がってくるパターンであれば、ここまではほぼ共通に必要な基礎体力だと思います。
ここでいう「基礎体力」をかいつまんで整理すれば、地味シコな英語力錬成と、ローカル社会への浸透力・現場力でしょう。この両者をバランス良くマックスポイントまでもっていくことですね。なぜローカルだの、現場だのしつこく言うかというと、次のステージで大きくモノをいうからです。こちらで職を得るためには、その職が「おいしい」順に、口コミ・コネ→直接アタック→求人・斡旋という一般原則がありそうに思うからです。確たる法則ではないですが、どうもそういう傾向がある。そうなると単に求人広告や人材斡旋を待つだけではなく(それはそれで大切だけど)、可能性を増やすためには、どんどんアタックをかけていくこと、そしてローカル社会でのネットワークとコネを増やすことだと思うからです。現地における日系社会は、あまりにもマイノリティ社会過ぎて、それだけに頼っていてもすぐにネタ切れになる。日本が強かった20年前のバブル期はまだ何とかなったけど、現在そして将来はそれほど当てにしない方がいい。だから非日系である普通のローカルが肥沃な大地になり、そこへのいかに行くかがポイントになるということですね。
で、ここで先が大きく分かれてくると思います。 実力がついた分、選択肢がやたら増えてくるのです。
有望な手に職がある人
まず永住権まで視座に入れているなら、ここまで間に、現地のビザの代行士さんの事務所を訪れ、ちゃんと査定料を払って(これ大事)、可能性やルートを相談してきてください。人により、キャリアにより、千差万別ですので、思いこみで動くと大損します。規定があまりにも複雑なので、もう生兵法は怪我のモトだと思いますから。
そこでの相談内容をベースにしてそれぞれに方向性は変わってくると思いますが、大雑把にいくつかのパターンを描いておきます。
まずBのキャリアが非常に有望な人。自動車の整備士とか永住権の職業リストに載っている人、あるいは載っていなくても腕一本で仕事を得やすいポジションに居る人は、積極果敢にそのエリアでの職探しをしてください。一件見つかればいいってぬるいやり方ではなく、何件も見つけて「選べる」くらい。そのためには毎日レジュメ配り、メール送信です。
欲しいのは、ただの雇用主ではなく、「すごく良い雇用主」です。単に働かせてくれるだけではなく、あれこれビザの面倒もみてくれて、また仕事を離れても人間的に波長の合うような人です。ライトパーソンをゲットできるかどうか。もしそういう人をゲットできたら、それだけでほぼ「勝った」といっていいでしょう。地道にやっていれば雇用者指名永住権という、今となっては最も確実なルートをゲットできますから。
しかしそんな「すごく良い」なんて人に出会うのは、かなりの幸運ですから、まずは普通の雇用主で良いし、場合によっては「無いよりはマシ」であまり良くない雇用主でもいいかもしれない。なぜなら、どこであれ働けば現地での職歴キャリアがつくからです。このキャリアが次の転職先探しに非常に力になります。この原理は別項で描いたので省略。そして、有給職がみつからないなら、ボランタリーでもいいです。つまりはインターンシップです。
次に、それほどのキャリアが無い場合、新たにこちらでキャリアを築いていくということになります。
ここが最大級に難しいところだと思います。選択肢は、あなたのキャリアや進路、興味などに応じて無数にあるのだけど、どれも決め手にかけるから、同時並行で幾つも走らせておきつつ、潮の流れを見つつ、上手に調整していかねばならない。
大学やTAFE、ビジネス学校に行くメリット・デメリット
具体的には、例えばこちらの大学やTAFEなどに入るという方向性があります。そこで専門スキルを学習し、将来の就職機会に活かしていくということですね。2年以上通えば(どの学校でもいいわけではないが)ポイント加算されるし、卒業生ビザも貰えます。ただし、デメリットもあります。第一にコストがかかる。オーストラリアの大学は留学生に対しては高いです。他国に比べればそうでもないかもしれないが、それでも高い。年間授業料で2万ドル超えます。今ウチの近所のマッコーリー大学の経済系で2万7000ドル、シドニー大学の同系統で3万ドル(ちなみに国民や永住権保持者は3分の1程度で済む)。こちらの大学は3年なので授業料だけで6〜9万ドル、500〜800万円します。まずこれだけの軍資金を用意するのが大変。第二に授業が超ハード。バイトしている余裕もあるかどうか。
第三に、それだけのコストと努力をかけながらリターンが微妙な点です。
確かに卒業すれば18か月の
卒業生ビザ=Skilled - Graduate (Temporary) Visa (Subclass 485)をもらえるのだけど、しかしこれってワーホリみたいなもので、働いても勉強しても何してもいいよというビザで、この18か月で働いて永住権申請に必要な職歴やら、スポンサーを探しなさいよ、探すだけの期間を上げるよということです。だから結局職探し/スポンサー探しをしなければいけないことに変りはないです。そして、前のページで書いたように新卒採用が日本ほど盛んでないこちらでは、卒業しても職歴ゼロであることに変りはないし、永住権持ってないと職がないというニワトリタマゴ問題が出てくるので、インターンとかプロフェッショナルイヤーを通じて根性入れてハッスルしないとならない。第四に大学院でマスターを取るとか、妙に高学歴になりすぎてしまうと、"Overqualification"の問題で逆に就職可能性が狭まるリスクもなきにしもあらず。
また、「Post Study work arrangements」というのもあって(詳細は
Post Study work arrangementss、これだと最大4年のビザをくれますが(博士課程か研究修士の場合、一般の学士とコース修士は2年)、別にこれも居たら永住権をくれるわけではなく、自力で職を探さねばならないことに変わりはないです。
「古き良き時代」(数年前だけど)は、卒業すれば自動的に永住権くれたけど、それが実務時間○時間という制限が付され、さらに○年実務と重くなり、最後には「チャンスだけあげる」に縮小しているということです。ここで「むむ」と思うのですね。それだけのお金と労力を費やすならもっと他にやりようがあるんじゃないかと。
ただし、その学問分野が好きで、それをやってるだけでかなり幸福であり、その分野で身を立てたいと思うのであれば、トライする価値はあります。なぜならそこまできたら永住権がどうのというケチなレベルではなく人生のテーマレベルになってくるからです。それにそれだけ好きだったら学問にも打ち込むだろうし、そうすれば自然と学会や論文を通じて世界中にネットワークが広がっていくだろうし、目の前に新しい世界が広がる可能性だってあります。オーストラリアではないけど、カナダで講師のクチがあるとか。逆に言えばそこ(世界に通用するプロレベル)まで行かなきゃ、あんなにハードな勉強する意味ないだろって気もする。
次に同じ学校に行くなら、より実学的で就職に直結しやすいTAFEやビジネス学校もあります。
SOL(職業リスト)を一回じっくり熟読されたらお分かりかと思いますが、医療系、エンジニア系、建築系などが強く、いわゆる一般的なホワイトカラーは少ない。
CSOL=Consolidated Sponsored Occupation Listという第二順位の補助リストで、マネージャークラスが出てくるくらいです。だから抽象的にビジネスとかマーケティングとか勉強しても、永住権に結びつきにくい。しかし一方では、建築系や車系だったら細かくSOLにリストアップされており、ロックスミス(鍵屋さん)なんてのも入ってる。だから、そのあたりを学びつつ、現場職場をどんどん開拓し(最初はインターンでも見習いでもなんでも)始めて、通いながら、実績とコネを培っていくという方法論もアリです。
※2018年01月移行、無駄に457ビザなどをいじくりまくって、SOLとCSOLの呼び名がMLTSSLとSTSOLに変わりました。あれこれ職が消えたり増えたりしてますが、もともと半年に一回見直しがなされるので、浮き沈みは常にあります。2018年時点のリストは、Combined current list of eligible skilled occupationsを御覧ください。
このあたりは、本当に人によって千差万別で、一律に「○○すると良い」という定石なんかないと思います。ありえないだろうし、そういうものを求めてはイケナイとすら思います。
勉強自体結構ハードですし、また職場だって甘くはないだろうから、単に「永住権の手段として仕方なく」くらいの気持ちだったら続かない可能性もあります。アカウンタントやIT系が良いとか言われててやってても、向いてない人には向いてないです。僕も数字系は大嫌いだから会計とか税務なんかやるくらいなら永住権なんか取れんでもいいわい、くらいに思っちゃいます。やっぱり自分で「ああ、こういう仕事で身を立てるのもいいな」と思えないとツライ。
しかし、意外と職業の範囲なんか知ってるようで知らないものです。「え、そんな仕事あるの?」というのが多い。だから一回、じっくり時間掛けてリストを見るといいです。いかに膨大な職種がこの世に(てかオーストラリアに)あるか。あるいは移民局が親切に
Australian Skills Recognition Information (ASRI)という職別逆引きページを作ってるので、そこで検索して、その職業でどのビザが取れるのかを調べる方法もありますとか書いてたら、いつの間にかしれっとこのページが消滅してました。その代わり、調べていくと、
Migrate to Australiaというサイトが出来てました。
例えば、Cartographerという職がSOLに載ってます(新MLTSSLにも健在)。なんだかわかります?「地図製作者」です。地理や地図が好きで、コンピューターグラフィックが好きで、数学とか緻密な作業が結構好きな人に向いているそうです。また「Environmental Consultant」なんてのもあって、公衆衛生の仕事ですが、放射線被害の実際の数値をどのへんにしたらいいのかとか、それは予算的に執行可能なのかとか、突っこんで考えてみたい人には面白いかもしれない。環境系は、コンサルタント、エンジニア、マネージャー、レサーチ、科学者と5つもあり、その全てがMLTSSLです。各仕事の内容は、ネットで検索すれば山ほど出てきますし、それで職がありそうかどうかも、調べれば大体当たりがつくでしょう。またそれを学ぶ学校はどこかとかも。
ここで僕は何を言いたいかというと、どうせ学校に行くなら、単に永住権のためだけで無理やり決めるのではなく、自分の好み、価値観、人生の一つの柱になるくらいのものの方がいいだろうということです。それをSOLを見ながら、一つづつ潰していくといいです。あのリストに載っているということは、オーストラリアで求められている職であり、一般に就職機会もあるでしょうしね(だけど、年がら年中変わるので要注意です)。
出会いによる就労ビザコース
逆に、勉強は苦手とか、これといった専門職は見当たらないなら、出会い一発で勝負でしょう。上記の職歴アップグレードで上げていって、すごく良い雇用主に出会えるかどうかです。それがSOLにダイレクトに載ってなくても、CSOLのスケジュール2だったらかなり網羅的です。かつての優遇措置が廃止になったので、もうダメとか思われているシェフも美容師もCSOLには載ってます。だから雇用主に気に入られ、その雇用主がスポンサーになれるのであれば、ビジネスビザは出して貰えるのです。そして実績を積んでいけば、雇用者指名永住権も射程距離に入ってきます。
だから、オーストラリアに来て語学学校時代にバイトしていたジャパレスが居心地良く、いい関係を築け、そこで段々と難しい調理の仕事をやらせてもらい、お店にとって重要な戦力になっていったら、そのまま持ちあがりで永住権までいっちゃうってことも可能性としてはあるわけです。とりあえずいきなり就労ビザは難しいから、お店が授業料払って低廉なビジネス学校に通わせてもらい、そして仕事を続けるというパターンもあります(実は意外と多い)。
それは別にジャパレスに限りませんし、どんな職種でも可能性はあります。最初は単なるお金のためにやってた仕事でも以外に天分があったりして、ハマってしまうこともないわけではない(これも意外と多い)。このようなケースの場合は、学校がどうのというのはあまり問題にならないのです。
ただし、これも実例がありますが、かなりいいレストランで見込まれて実績積んで働いても、結局上手いこと使われているだけでスポンサーになってくれなかったというケースもあります。こういうケースは、とっとと次を探すべきです。また、スポンサーも見つかったし、全てがレディになったんんだけど、ただ一つIELTS7点取らないとゴールにならないので、忙しい仕事の合間を縫って勉強をし、しかしママならないので最後の英語部門で1−2年足踏みしてしまったというケースも結構あります。だから、最初の時点で、チャッチャ河岸を変えられる現場力を鍛え、そして「地味シコ」の英語力のド基礎だけでも培っておけ、という所以です。
強靱な足腰、柔軟な対応力
以上、段々分かってきたかと思いますが、永住権ゴールまで、英語力、現場力、就職可能性、軍資金、過去のキャリア、自分の人生の組立てや好き嫌い、そして「出会い運」、それにプラスしてオーストラリアの経済情勢と政府の移民方針、、、、これらのものが複雑に絡み合っています。そして刻一刻と変化していきます。
したがって一概にこうだというわけにはいかない。
常に水面のように、雲のように、グニャグニャ変化している。変化しているものに対応する戦略の基本は、こちらもフレキシブルに変化しうるだけの柔軟性を持つことであり、どのように動いてもブレないだけの強靱な足腰です。それは堅牢な英語力、実務力、そして自分はこう生きていきたいという価値観です。足腰はビシッとキメつつ、上半身は華麗にウェービングをしながら、チャンスを掴んだら一気に攻め落とす。ま、これって、よく考えたら永住権に限らず、人生全てに共通しますけど。
逆に変幻自在なものを相手にして、「TAFEさえいけば大丈夫」なんて硬直的で棒を飲んだような発想でいるのは危険です。また、ビザの専門の方に意見を求めろとは言いましたが、それはあくまで参考。最終的に結論を下すのはあなたです。オススメルートを示されても、金科玉条のように思いこんではダメだと思います(相手もそれを望まないでしょうしね)。なぜそうなるのか理由を説明して貰えるでしょうし、自分でもちゃんと理解すること。そして、他の方法論があるかどうかも考えること、実行することです。
そして、常に同時並行でプランBもプランCも走らせておくことです。またネガティブな決め方はしないこと。例えば、現場のレジュメ配りが恥ずかしいとか、苦手だからといって、とにかく学歴にしがみつくとか、楽をしようとか(楽じゃないんだけど)。そういうのがモチベーションになってると、そこだけ身体が硬くなってるので、チャンスが転がり込んできても、「え、でも、学校があるし」とかウダウダ言っててフレキシブルに対応が出来ない。
硬直的で確実に見えるエスカレーターを探して安心したい気持ちはわかりますが、かつてその発想でいって、一体どれだけの人が「屋根に登ってハシゴを外される」という悲惨な目に遭っているか。移民法なんか3年後には180度変わってることもあり得ますし、実際に変わってます。むしろ絶対変わると思った方がいい。
ゆえに、キャッチコピー的には、強靱な足腰+柔軟な対応力でしょうね。