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英語雑記帳
99年06月27日初出、2010年09月09日改訂


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単語の覚え方(初版)



 この初稿は1999年に福島が著したもので、それは「単語の覚え方(初版本)」として以下(↓このページ)にそのまま残しておきます。当時は、英語に関する「よもやまエッセイ」として、のほほん風味で書いていました。それはそれで面白いし、実は内容的もかなり深いことが書かれているのですが、もう少しシリアスに勉強したいという人、特にわざわざ「単語、覚え方」という検索をかけて辿り着いてきた人には若干「芸風」が違ってミスマッチな部分もなきしもならず。

 そこで「新・単語の覚え方」として別稿を起こし、もう少しシリアスに書いておきます。英単語の記憶術にはかなり多くのノウハウがあり、考えうるもの全て列記しておきます。長くなりそうなので、ぶつ切りにして順次あげていきます。

 新・単語の覚え方

 Part 01 : 効率の良い勉強方法、連想とデーターリンク、最強最速の情況記憶
 Part 02 : 偉大なる「こじつけ」パワー、部分的でもまず定着させる
 Part 03 : 用途と対象を明確に、読めない単語は覚えられない
 Part 04 : スペルの記憶術
 Part 05 : テスト用記憶術
 

おそらく、ある程度の英語力のある日本人が英語圏にやって来て、最初に認識するのは「こりゃアカン、単語全然知らん」ってことだろうと思います。会話でも読み書きでも、単語知らなきゃどうにもならないわけです。

そこで、今回は「単語の覚え方」を紹介してみたいと思います。

クソ当たり前のことですが、基本はマメに辞書ひくこと。出来るだけ新しい単語に出会うべく、文章を読んだりして、ちょっとでも不安な単語はイチイチ辞書をひく。面倒臭いけど、この積み重ねがやっぱりイノチでしょう。

ふだんはなかなか時間的精神的な余裕がないから、知りたい意味だけ分かったらさっさと辞書を閉じてしまいます。が、このやり方を繰り返していると、その文脈での意味は分かっても、同じ単語が他の文脈で出てきたら、もうお手上げということになっちゃいます。

本当は調べようとする文脈での意味を把握するついでに、辞書に書いてある説明を全部読むといいんですよね。その単語の全体像が見えてくるから。「もともとこういう意味のものが、転じてこんな意味になったり、こんな文脈ではこういう意味にもなるんだ」ってのが分かると、上っ面だけじゃなくて包括的に理解できるような気がします。

同じような効果を狙ってのことでしょう、よく語学学校の先生に「英英辞典」「同義語辞典」を使うよう勧められました。でも、最初のうちは語彙力がないから、英英辞典ひくと、ひいたところで分からない単語がごそっと出てきて、それをまた英英辞典で調べるとまた知らない単語がでてきて、いつまでたってももともと知りたかった単語の意味が分からない・・・という悪循環に陥ったものです。時間のある時は、知りたい単語を一旦英和辞書で調べ、それから一応英英辞書での記述も読んでみる、そこで出てくる知らない単語は英和辞書で調べる、あるいはとりあえず無視してもいい、という具合にすると、その単語についての理解は深まりますし、説明で出てきた単語についても記憶は無理でも、次に出てきた時に「こいつ見たことある顔だぞ」くらいには馴染めるように思います。




といっても、一生懸命辞書ひいてるわりにはなかなか覚えられなかったりします。ひいてみたら、既にラインマーカーがひいてあったりして、「えー、この単語、前にも調べてたのかー」とショック受けたりしませんか? 「あたしって頭悪いんちゃうか」「もう、いい加減覚えろよー」と自分自身に腹がたったり、情けなくなったり。皆さん、そんな経験を重ねながら覚えていくのでしょう。

大学受験英語用に「シケ単」「でる単」という定番の参考書がありましたが(今でも愛用されてるのかな?)、昔はあれを繰り返し眺めているだけでも結構覚えられたものです。ところが、悲しいかな、年とるにつれてなかなか頭に入らなくなります。とりあえずその場は覚えても、忘れるのが早いこと、早いこと。「記憶力はハタチを境に落ちていく」という説があったと思いますが、たしかに反論する余地ないですね。記憶力は確実に落ちている。特に丸暗記が出来ない。だから、タダの単語(英語と日本語訳)の羅列だけ眺めているだけでは、もうダメです。
それに、試験前の一夜漬けには「でる確率の高い単語」だけ並べてくれてる本は役立ちますが、試験が明けたらスッポリ脳みそから抜け落ちてるような気しませんか?

単なる単語の羅列を丸暗記するよりは、興味のある本や記事などを読みながら、知らない単語を調べていく方が記憶には残りやすいと思います。もちろん、文章中には頻度の低い単語やら、あまり重要でない単語もありますから、試験対策にはあまり適していないでしょう。けど、長〜い目で見れば「覚える必要のない単語」なんてものは存在しませんから、結局はこういうやり方の方が効率がいいんじゃないかと思います。




しかし、「マメに辞書をひく」「興味のある文章を読みながら調べる」だけじゃ、当たり前すぎますね。誰でも分かってることで、分かっちゃいるがなかなか出来ない。まあ、語学力習得に王道はないってのは真実なんでしょうが。

ただ、もうちょっと突っ込んで研究したら、もっと効率的な単語の覚え方ってのもあるんじゃないかという気もします。というのは、経験上「恥かいた場面で出てきた単語は忘れない」という事実があるんですね。現場で使った単語、それも、せっぱ詰まった時に脳みそから絞り出して思い出した単語や、思い出せなくて恥かいた時の単語は、絶対に忘れないんですね。その単語を思い起こす時、一緒に付随してくる感情や状況場面や物語があるわけです。

たとえば・・・。

思い起こせば5年前。半年間の語学学校留学が終わって一旦日本に帰国しようという時、引越し用のダンボール箱を集めようと思いました。近所の薬局に行けばあるんじゃないかと。薬局のおばちゃんに「いらないダンボール箱を少しもらえませんか?」とお願いしようと思い、あんまり長いセンテンスだとトチってしまうから一発で相手に分かるような簡潔な表現をしたかった。

辞書をひくと、「不要な」は「dispensable」、ダンボール箱は「cardboad」と出ていました。おっけー、「Can I have dispensable cardboad?」と言えばいいんだ! 家から薬局まで、何度も何度も口の中でと念仏のように唱えながら歩きました。

さて、薬局に到着、いつものおばちゃんがいます。
「きゃ、きゃないはぶ でぃ、でぃ、でぃすぺんさぶる、か、かーどぼーど」

やったー、言えたぞ!と心の中では万歳三唱。ところが、おばちゃん訝った顔してる。発音が悪かったのかな、意味が通じてないみたい。しばし考えたおばちゃんは、こう言いました。

「Do you wanna a box?」

へ? ボックス? たったそれだけでいいの? それじゃあ、あんなに一生懸命調べて練習していった「でぃすぺんさぶる かーどぼーど」の立場は?

今振りかえれば笑えますが、当時は真剣そのものですからね。でも、おかげさまで、dispensable という単語はその後しっかりと記憶に残っています。あの時のおばちゃんの怪訝そうな顔とともに。



本当に恥かいた単語は忘れない、という一例でした。こんな話、いっぱいあるんですけどね(^^;)。





かといって、いつもいつも恥かいてばかりもいられませんから、似たような状況を勉強の場で人工的に作るように工夫します。要するに意識的に「右脳を使う」わけです。左脳だけだとタダの丸暗記なので、覚えにくいし忘れるのも時間の問題。でも、右脳にコネクトして記憶に刻むとイイという理論もあるそうですし。

英語学校で教えてもらったアイデアをひとつご紹介します(英語学校って、こういう学習法を仕入れるのに適していますね)。知らない単語に出会ったら、その単語を使って短いストーリーを作り、そのストーリに即した絵をかきます。立派な絵である必要はないのですが、その絵からその単語がイメージできるようにするのがコツ。

たとえば、precedence(前例)という単語を覚えるために、こんなストーリーを作ったとします。

In my high school days, teachers believed that students should not be allowed to wear even color socks, because they would not be able to control diciplines in their school once they make a precedence.
(高校時代、教師たちはカラーソックスを履くことさえ許すべきではないと信じていた。なぜなら、一旦前例を作ってしまうと校内の規律をコントロールすることが出来なくなるからだ。)

で、ここで個人的に思い起こすのは、高校時代の風紀担当教師、カバヤマだったりします(^^;)。で、カバヤマが生徒を捕まえて怒ってる顔を思い浮かべながら、絵を描くわけです。こういう個人的で感情に直結するような文例と絵が出てきたら、しめたものです。

英語学校の先生の話では、これを1日10単語ずつでいいから続けて、毎日過去1週間分を復習するだけでも、相当単語力は伸びるということです。まじめに続ければ、の話ですが。




また、自分の記憶しやすい方法を意識して利用するという方法もあるそうです。なんでも、人間には記憶に関して3つのタイプがあるんだそうで。「@絵や文字を通して、視覚的に覚えるタイプ」「A動作を伴って覚えるタイプ」「B聴覚的に捉えて覚えるタイプ」。

一人の人がひとつのタイプに属するわけではなく、この3つが複雑に入り交じっていたりもするそうですが、自分が比較的どのグループに入りそうかは、現場にいたら大体分かると思います。一般的には若い人ほどB聴覚経由が向いているような気はしますね。子供なんか文字見なくても、他人が喋ってる音だけ聴いて吸収していきますもんね。

私はB聴覚経由は全然ダメで、@視覚とA動作経由で入ってくると覚えやすいようです。私は、どうもスペルを確認し、自分で書いてみるまで絶対に納得できないタチなんです。音を聴いただけじゃ絶対覚えない。それと、ジェスチャー交じりで使った単語は忘れにくいです。だから、語学学校でやった「ジェスチャーゲーム」や「英語演劇」なんか、すごくハマりました。特に演劇は大好きでした。自分の役の台詞は暗記しなきゃならないわけですが、演技をともなって喋るのでいつまでも覚えていられました。

ところが、この3タイプ、先生も人間ですから、先生にも得意なタイプがあるわけです。で、先生としてもどうしても自分の得意なタイプの方法を授業に多く取り入れてしまいがちなんだそうです。そういや、動きをやたら取り入れる授業をする先生がいたり、スペルなんか無視してどんどん聞かせようとする先生がいたり、ということはありました。そこで、先生との相性という問題が出てくるのでしょう。まあ、先生との相性は教え方よりも性格的なものの方が影響力強いような気はしますが。

とにかく、自分に向いている記憶方法を意識的に使えば、効率あがりますよ、というマメ知識でした。




もうひとつ、冗談みたいだけど覚えやすい方法があります。中学時代など、英語ビギナーの頃によく遊びでやった人もおられるでしょうが、単語に無理矢理漢字にあてはめて音を覚えるという。有名なところでは、dictionary を「字ひく書なり」と覚えるとか。シドニー来たばかりの頃、田村がコレに凝ってました。

ホームページの「シドニー生活体験マニュアルノート」にも、「Can I have 〜」「Could I have 〜」 という決まり言葉は、「沖縄にハブという蛇がいますが、”「キャ内ハブ」「句題ハブ」という大蛇がいて、買物に際してはこの名前を冒頭で言うシキタリになっているのだ”等の荒唐無稽の設定をすると一発で憶えられたりします」みたいな紹介がまじめに語られていたりします。こういう突拍子もないことを思い付くのが田村の特技なんですね。

最初は私、こういう覚え方は邪道として真剣に取り合っていませんでしたが、これが実は結構使えたりします。この「田村式漢字あてはめ記憶法」で覚えた単語は、思い出しやすいし、意外と忘れません。たとえば、ハサミはscissors といいますが、この単語を思い出すとき、いまだに「詩座図」というワケわからん漢字熟語が脳裏に浮かびます。

こういう荒唐無稽はビギナーのうちはどんどん活用したらいいと思います。母国語の音に近いものに、適当に意味づけすると、記憶しやすくなることは事実ですから、邪道でもなんでも使えるものは使ってしまえ。で、ある程度、数をこなして英単語に慣れてくると、イチイチ母国語とリンクしなくても覚えられるようになりますから、心配いりません。

今、夫ラースも日本語を少しずつ覚えていますが、彼には彼なりの覚え方があるようです。デンマーク語や英語にリンクさせて、適当な荒唐無稽をでっちあげているんですね。たとえば、数字の九は、音としては英語の queue(列)と同じなので、「列に並んで10になるのを待つんだから、キューは9だ」という。

そういや、オーストラリアで日本語教師をされていたから教えてもらった日本語の数字の覚えさせ方というがありますが、これ逆の立場で眺めてみると、ちょっと新鮮です。こんな発想もあるんだ〜ということで、英語学習の参考にもなるかと思います。


itchi かゆみ
knee ひざ
sun 太陽
she 彼女
go 行く
rock
hitch 引っかける(ヒッチハイクのヒッチ)
hatch (ひなが)孵化する
queue
10 Jew ユダヤ人






ところで、せっかく覚えた単語も、知っている筈なのに、その場になると出てこないということ、よくありませんか。「ど忘れ」の部類に入るんでしょうが、どうも英語の場合のコレは、「純粋なド忘れ=今まで何度となく使ってきて当然のように馴染んでいる言葉を忘れてしまうこと」とはちょっと違うようです。知っていると思っていても、現場で使うことに慣れていないから出てこない。頭の中ではあと一歩のところまで出てきているのに、あと一歩前に出てきてくれない。電車は目の前に止まっているのに、ドアが開いてくれないというか。
これ、読み書きなら悠長に辞書ひいて確認する暇がありますが、会話だと時間切れになっちゃったりして、悔しい思いをします。

このテの「最後の一歩、ふんづまり状態」に対処するには、ふだんから最後の一歩の「回路の通り」をよくするよう、その部分を鍛えておく必要があるようです。「電車がホームに到着するやいなやドアを開ける」練習をするわけです。といってもなにも難しい特殊訓練のことを言っているのではなく、何度も繰り返し「口に出す」ってことにすぎません。新しい単語は書いて覚えると同時に、何度も口に出して発音しておくといいようです。

で、自己流ながら思うのですが、その単語のみを発音するよりも、よく使う言い回しや文章とセットにして、つまり団子にして口に出して練習しておいた方がいいみたいです。たとえば、「万全、万全」とひとつの単語を取り出して繰り返し練習するより、「商品には万全を期しております」とよくある言い回しにしちゃって覚えた方が、その単語がなめらかに自然に出てきやすくなるってことですね。




最後にちょっと脱線。

とにかく単語を沢山知れば知るほど、楽になるでしょう。それでも、現場では知らない単語を相手に伝えなくてはならない場面は不可避的に出てきます。その場合、どう凌いだらいいか?

そりゃもう、知ってる単語を繋げて、なんとか意志疎通をはかるわけです。先の例で出てきた「不要なダンボール箱」も「dispensable cardboad」を知らなければ、「a box that you don't need(あなたが要らない箱)」でいいわけですから。

ここで使う関係代名詞(この例文では that)ですが、これ、実に便利なんですよね。実際、ネイティブの日常会話を聞いていると、難しい単語を使うよりも、関係代名詞でうまく繋げて、平易な単語だけで話していることがほとんどです。よく言われることですが、英語の日常会話で使われる単語はものすごく限られているのだと。

ですから、記憶の曖昧な単語やこなれていない単語を無理して思い出そうとするよりも、確実に知っている簡単な単語を駆使して通じさせるワザを身につけると、かなり楽になります。よく「日常会話が出来るようになると、勉強を怠って英語力が伸びなくなる」という話がありますが、そういうことなんだろうな。知ってる単語だけ組み合わせれば意志疎通できちゃうから、難しい単語や言い回しまで覚える必要性に迫られなくなるんでしょう。

スキルとしては、関係代名詞、名詞句などの文法をマスターすること。これ、文法書で読んでるうちは分かった気になるものですが、現場でスっと口をついて出てくるようになるにはちょっと時間かかると思います。なぜかというと、日本語と語順が逆になるんですよね。

たとえば、「教育(教養)のある人」は「a well-educated person」ですが、この単語を知らなかった場合、こうも言えます。「a person who has good education.」 もっと稚拙な表現なら「a person who went to good schools.」とかね。まるで幼稚園児のような文章ですが、これでも意味は通じるでしょう。ただ、日本語と前後関係が逆さになるのがネック。

そこで、こういった関係代名詞節や名詞節は、まるごと覚えて、口の中で念仏を唱えるように、何度も何度も繰り返して練習します。オージーの速さに負けないくらい早く言えるようになるまで。そうすると、似たようなバリエーションが出てきても、一部を入れ替えるだけでOKですから、スピードを落さず話せます。

もちろん、慣れるまでの間は語順なんか気にしないで、ガンガン思い付いた単語を並べていっても、結構通じるものです。

Do you know a man sitting there?
「あそこに座ってる男の人、知ってる?」

Yes, I know the man, he went to good schools, and he has a good job, and I like him, but I don't remember his name...
「うん、あの人、知ってる。たしか、学歴もよくって、今は結構いい仕事してるんだよね。私、好きなんだけど、あー、名前、思い出せないわ」(あくまで話者の意図を汲み取った意訳)


・・・なんて具合に、アホみたいなブツ切り文章でも、とにかく並べりゃ雰囲気で通じます。なんのこたあない、中学英語レベルの単純な文章を羅列させればいいのです。少なくとも何も単語が出てこず、「あうあう」やってるよりはずっとマシ。多少自分の知能指数が50くらい落ちたような錯覚をおぼえますが、背に腹は代えられません。腹を括りましょう(^^;)。

これがすんなり出来るようになったら、次のステップとして「もう少し的確に、簡潔に、流暢に、美しく」という要素を加えてみるという努力も必要ですが、最初はそんなこと考えなくていいです。最初から難しい文法事項を取り入れて、完璧な文章を作ろうと考え込んでしまうから、なかなか喋れないんですよね。

そういうわけで、「英会話を上達する過程においては、堂々とアホになることも必要である」という余談でした。



99年06月27日初出:福島

 


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