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2008.10/24初稿〜逐次改訂



世界経済の動向とオーストラリアへの留学、ワーホリについて
(その3-3)





3.どう対処すれば良いか?(承前)

3-3.世界と日本のメガトレンドと将来のキャリア

 直近1〜2年の就職状況などという近視眼ではなく、「死ぬまでの数十年の見通し」というライフスパンでモノを考えた方がいいです。さもないと目先のことに振り回され、右往左往させられた挙句、何も始まらないうちに人生が終っていくというトホホなパターンに陥りかねない。

 これから数十年の見通し=大きな潮流といえば、第一章で書いたグローバリゼーションという大前提があります。グローバリゼーションの解説はもう第一章の繰り返しになるのでタックしておきます。→MORE

 しかし、グローバリゼーションを前提にしても、僕個人は日本の将来はバラ色だと思ってますし、アナタの将来もバラ色だと思ってますよ。チャンスの多い時代になって良かったね、と。


 何を根拠にこんな能天気なことを言っているかと言えば、確かに「日本人相手に売る」という従来のパターンにしがみついている限り展望は乏しいけど、日本よりもはるかに巨大な市場が世界に出現しつつあり、単純に「客数」は激増しているからです。

 客の数が増えてるんだったら、売りまくればいいだけのこと。世界デビューを果したばかりのそこらへんの新興国に比べれば、日本は「JAPAN」という黄金のブランドを持っているし、その神通力があるうちにどんどん進出していけばいい。

 何がなんでも海外に出ていかねばならないものではありません。日本に居たままでも”輸出”は出来ます。ブツは持って行けなくても客として来日させれば同じことです。現にオーストラリアは、大学や語学学校などの教育産業を重要な「輸出産業」として国策上位置づけています。タイの高級医療やブラジルの整形外科などは有力な輸出産業になっているじゃないですか。インドのヨガも実はそうとか言われてますし。自分が行かなくても来させれば良いのです。新興国相手にネット通販という手もある。

海外ネット販売〜県、企業を本格支援2011年9月7日 読売新聞(岐阜県版)
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 そして、既にGDPでは日本を追い抜かした中国をはじめとする世界の人達が、”ミステリアスJAPAN!”とかいって遊びに来てくれたり、投資先としてどんどんお金を注ぎ込んでくれます。2010年以降の日本の高額商品市場や不動産価格はチャイニーズによって支えてもらっているようなものでしょう。オーストラリア人投資家によってニセコや長野が賑わい、日本で居酒屋の心地よさを知ったオージーがオーストラリアで居酒屋を、その名も”IZAKAYA"として開店させるのが流行っています。このまま居酒屋というジャパニーズ・ブラッセリー形式がオーストラリアのみならず海外に広く定着したらいいですよね。だって、仮に今あなたがどっかの居酒屋でバイトしていたとしたら、そのバイト歴は履歴書に「本場の居酒屋キャリア」として誇らしげに書けたり、高く評価されるかもしれないわけですから。つまり、現状においても日本はグローバリゼーションによって恩恵を被っているわけです。外人さん達が勝手に盛り上げてくれているという。
 ↑上の記述は2012年頃に書いたものですが、実際にもそのとおりに進行しています。シドニーのジャパレスの数は増える一方だわ、日本にくる外国人客は2015年以降爆発的に増えてきているわ。


新しい成長パターン

 かくして実際にも先見性のある企業はどんどんそうしています。これまでのように自動車と家電だけを売るのではなく、日本の全産業が海外に向き合っていく。再編成であり、第一章で述べた環境「適応」です。

 こういった流れにおける企業の動向、それに伴う人材・雇用の基本パターンは以下のようになるでしょう。
パターン1:日本企業は海外に出ていく
パターン2:日本人社員を海外にいかせる
パターン3:優秀な外国人を雇い入れる

 おそらくこのパターンが新しい成長パターンになっていくでしょう。、、と初稿には「でしょう」と未来形で書いたのですが、書いたそばから現実化しあっという間に広がって、「何を今さら」みたいな感じになっています。

 さらに、
パターン4:外国人訪問客が日本でお金を落としていってくれる

 という大きなトレンドが来ています。

 まず統計的な話でいえば、
・オーストラリアに来る日本人観光客数よりも、日本に行くオーストラリア人観光客数の方が逆転して多くなった。
・日本人の年間海外旅行客数よりも日本にくる外国人訪問客数の方が多い、これも大逆転。

・オーストラリア人が日本滞在中に使うお金は平均25万円。日本人が日本で1年で使う額(家賃や税金など固定経費を除く)は125万円で、要するにオージー客5人集めたら日本人一人×1年分に匹敵する。

・日本の5スターホテルは28軒しかない。タイには110軒、メキシコにも93軒にもあるのに日本は異様に少ない。そして、5スターホテルの数と、観光収入との相関関係は91%以上、つまり5スターホテルを増やせば儲かる(出典はここ)。実際、日本は、観光客1人あたりの消費額が世界第46位であって(客数は16位なのに=2015年)、要するに非金持ち外国人ばっか相手してるから労多くして収入が少ない。

 ほんと2015年あたりから、直近1-2年で劇的に状況が変わってきていますし、伸びしろもまだまだたくさんあると思います。

 グラフは「【2017年】日本の旅行収支・訪日外国人数推移をグラフ化(1996年〜)」からキャプってきましたが、ほんと2010年代中盤から(ここ数年)で爆発的に延びている。もちろん爆買いもあろうが、今はむしろ東京よりも地方に流れているというレポートもあり、定着している。

2012年あたりまでの記事スクラップ

もう歴史的資料になったのでタックしておきます(めっちゃ膨大にあるし)  →MORE



留学・ワーホリで得るべきもの


 ということで、将来キャリアの蓄積という意味では、海外リテラシー(言語能力+外人と上手くやっていく能力)の重要性は今まで以上に高まってると思います。

 さて、「海外リテラシー」のデフォルト装備としての言語ですが、中国語、ヒンドゥー語、ポルトガル語(ブラジル)などの現地語が望ましいのですが、既に「ここじゃ!」というターゲット国が決まっている人は格別、まだ行き先も分からない段階で闇雲にやるのもロスが多い。まずは英語でしょう。国際取引になったら英語標準ですし、当事者が3カ国以上になれば英語を使うしかないですし、どの国でもバリバリのビジネスマンだったら当たり前のように英語を喋れますから。というわけで工場出荷設定として英語は当然、その上で現地カスタマイズとして現地語って感じでしょう。ただ言語習得は時間がかかりますので、使い物になるまでそれなりにタイムスパンをみておくといいです。「メシのタネ」なんだかピカピカに磨くこと。

 一方では「現場慣れ、外人慣れ」という場数体験が現場では威力を発揮します。実際、机上だけで勉強「だけ」しているTOEIC950点の人よりも、現地生活で場数を踏んだ500点台のワーホリさんの方が使えたりするのですよね。つまり「英語が出来る」だけではダメで、「英語を使って目の前の現実を変えていくスキル(経験)」がなければ実際には意味がないということです。これはいくら強調しても足りない点であり、中高6年間英語をやっても「現場では無能」である根本原因だと思います。教習所で幾ら練習しても路上経験が乏しかったら使い物にならないのと同じことです。この点については、語学学校の選び方Part6上級編:何のために学校にいくのか?「結果を出す」留学へ(別窓)参照。基礎力と実践力、それぞれのバランスが大切です。

 もう少し具体的に言うと、まず英語レベルでいえば、本気で使い物になるのは2−3年かかるけど、とっかかりだけなら半年現地の学校に通えば何とかなります。あくまで「とっかかり」だけど。そのとっかかりをテコに、最初はバイトでも何でもいいからローカル職場で働き、やってるうちに徐々に実力をつけ、キャリアを稼いでいけばいいでしょう。同時に「言語」以外のツール=「外人慣れ」ですが、これは言語以上に簡単に習得できるでしょう。第一章で述べたように、オーストラリア(特にシドニー)は世界の縮図のように中国人やインド人、語学学校にはブラジル人などが沢山います。日本人よりも遙かに多い。彼らと付き合い慣れておくのは、将来への大きなプラスになるでしょう。

 プラスアルファですが、例えばこれからは世界的に食や農業への注目が高まるでしょう。オーガニック食材は日本だけではなく、「先行き不透明な時代だからこそ身近な食にこだわる」のは世界的なトレンドです。オーストラリアなんか「料理が上手」というだけで永住権あげてたんだから食への関心の高さが分かるでしょう。また世界が豊かになるにつれ日本食はどんどん広まります。これは結構な確度で言えると思う。現にシドニーの日本料理屋はもの凄い勢いで増えています(もはや日本人の専売特許ではなく、普通にオージーやチャイニーズが経営している)。その意味でワーホリさんや留学生のファームやWWOOF仕事、ジャパレスでのバイトは、単に小銭を稼ぐとか、二回目ワーホリのためという目先の損得ではなく、もっと大きな可能性があります。いわば「食に関するキャリア」といえるわけで、その経験を生かすも殺すもその人の才覚次第です。

 別に「食」に限らず、あなたが海外で得てきた見聞や体験を、どのように自分の血肉にしていくか?です。これもまた個人の才覚であるし、他人に教えて貰うようなことではないでしょう。


海外幻想への戒めとセロテープの切り口


 最後にバランスを取るために(むやみに「海外幻想」を撒き散らさないために)、キツイ釘を刺しておくと、海外で何とかしている人は基本的に日本国内でも何とかしてます。ビザ不要+母国語OKという夢のように楽チンな本国環境で何ともならなかった人が、その数倍ハードな海外で何とかなるわけないです。

 ただし!その「何とかする」モチベーションやキッカケを得やすいかどうか、何とかする以前の自分の精神健康を取り戻せるかどうか、同じ頑張るにしても周囲から応援されるか冷笑されるかとか、そういった差は歴然としてあるとは思います。「海外に行けば成功する」とは口が裂けても言えませんし、事実にも反していますが、「大きな転機になりうる」とは言えると思います。

 海外に20年近く居て思うのですが、日本人って素材としてはいいものを持ってますし、能力だって決して低いわけではない。むしろ粒がそろっている方でしょう。日本で「人生、お先真っ暗」感を抱く人が増えているとしたら、それは個々人の能力というよりも、人生の上昇気流に乗るキッカケが減ってきているのでしょう。切り口が分からなくなったセロテープみたいに、爪でひっかいてもひっかいても分からないような感じ。

 一旦キッカケをつかめば、あとはするすると辿っていけば自然と上がっていきます。でも「キッカケ」といっても大したことじゃないんですよね。「お!」とちょっといい感じになれる、ささやかでも達成感を得られる、つまりは「味をしめて」「調子に乗れる」ことです。部活の勧誘で「いやあ、キミはスジがいいねえ!」と褒められてその気になって、その道に進んでしまうようなものです。小石ひとつの「方向変換点」があればそれでいいです。冗談みたいな話だけど、いや、本当、そんなことで人生上がったり下がったりしますもん。

 僕がお世話してきた1000人以上の方々も、中には日本で煮詰って、半ば絶望感を抱えてこられた人も多いですが、こっちに来たらかなり元気になりますからね。また、当初の滞在予定を超えてこちらに永住なり就職する人は数%以下でしかない反面、大多数の帰国組も日本で楽しくやっているようです。つまり渡豪前に絶望的に見えた状況も、タフな経験を積んだ帰国後には大したことには思えず、バキバキ進軍できるのでしょう。僕が知る限り、皆さんサクッと再就職できてますし、かなりワガママな条件でも見つけ出してきてます。ライフスタイルがガラリと変わる人もいます。「何とかする」力が300%増量してるからでしょう。卒業後就職せずにパチスロで食べてた人がいましたが、ワーホリを十分堪能したあとは、「いや、もう、今は働きたくて、働きたくて!」とやる気満々で帰国後バリバリ働いてます。

 究極的なことを言えば、国内も海外もヘチマもないです。場所や状況がどうあれ、元気な奴は何とかするし、不元気な奴はしょぼいままというだけの話でしょう。そして今の状況を見ると、どうも日本よりも海外(オーストラリア)の方が「元気になりやすい」「調子に乗りやすい」、つまりは「小石」が多いのではないか?ということです。それだけといえばそれだけの話なのだと思います。でも、大事なんですよね、それだけのことが。

 外国人や留学生を採用したがる企業現場の心理は、語学力や海外体験もさることながら、それによって培った「バイタリティ」を欲しがってるようにも思えるのです。「やる気がある」だけではなく、「本当にやりとげてしまう力」というか。

 例えば、東芝の採用情報「海外留学生採用」によると、
その中で、私たちが留学生の皆さんに期待するものは、単なる語学力や狭義の知識ではなく、異文化の環境の中で否応なしに皮膚感覚として身につけた多様な価値観や、留学生活の中で努力してつかんだ生き方なのです。自らの夢を描き、それを自分自身の言葉で語ることができる人。さらにその夢を実現するために、果敢なチャレンジと情熱を傾けることができる人。東芝が求めているのは、そんな『自分自身に一生懸命な人』なのです。
 「いいこと言うじゃないか」って。美辞麗句のように聞こえるかもしれないけど、これは結構本気だと思います。「否応なしに皮膚感覚として身につけた」とか、言ってることがリアルというか、「わかっている」感じがします。こんだけ分かっていながら、東芝はどうしちゃったんでしょうねー。でもね、NSW州の電気の半分以上は東芝の現地法人が作ってる(鉄鉱石による火力発電)という話もあります。海外では頑張ってるんだけどね。


 これは逆に言えばキツイ話でもあります。単に「留学しました」「TOEIC900点取りました」だけでは足らず、「海外で使える人材か」という実質を厳しく査定されるということです。企業だって生き残りをかけて海外進出をするのだから、使えない人を雇って失敗している余裕はないでしょう。「なんだ、海外に行ってきてこの程度か?」と思われたら逆効果です。行けばいいってもんじゃないし、点取り虫になればいいってものでもない。あくまで実質をみるでしょう。

 他方では、「卒業」や「資格」というこれといったカタチにならなくたって、あなたが現地に来てあれこれ四苦八苦してきた全てのことがあなたの血肉になり、知らない間に人間力を増大させます。座っているだけで存在感のある、えもいわれぬ人間的な迫力を増すことになります。企業が海外進出に真剣に取り組めば取り組むほど、そしてこれから彼らが海外展開の経験を積むほど、査定の目は実質本意になろうし、また正確なものにもなるでしょう。カタチになるならないは別として、ちゃんと頑張れば頑張っただけの成果はあると思います。

 なお、本稿はあくまで「世界経済のトレンド」という客観的な枠組という観点で書きましたが、同じ現象を留学・ワーホリという個人の視点からみると、どう考えて取り組むべきかを、時代が変わった/オーストラリア留学・ワーホリ・移住の新しい局面で書いておきました。多分に重複しますが、併せてお目通しを。