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治安とリスク管理(4) 補足・トピック編


補足トピック編

補足その1 : Redfern/Eveleigh St="The Block"


 追記:長年危ないと言われていたこのエリアですが、現在は政府の大規模な再開発などによって、もぬけの空の状態になってます。
 実際、僕自身歩いてみたんですけど、その写真や解説については、

 Essay 793:貧困化と治安と空き家問題〜RedfernのEveleagh Stで思ったこと

 をご参照ください。



 以下、今となっては歴史的経緯ですが、シドニー市民としては今なお常識レベルだと思うので残しておきます。

 

Redfern Eveleigh St←クリックすると大きくなります

 なぜこのストリートが危険地帯になったのか、現状はどうなのか、社会学的に興味は尽きないのですが、それはさておき、必要なことは、「レッドファーンのイヴリー・ストリートには足を踏み入れるな」ってことです。英語でいえば、NO-GO-ZONEです。

 なにがそんなに恐いのか、実は誰も行ったことがないのでよく分からないのですが、単にスラム街だという以上に、シドニーの麻薬売買の組織のアジトがあるとかないとか書かれているのを読んだ記憶があります。レッドファーンはアボリジニの連中が多くて、彼らが凶暴だという話もありますが、別の文献でも紹介したようにレッドファーン全体でのアボリジニの人口比率は1.1%とかそんなものですし、別に彼らがおしなべて凶暴なわけでもないです(当たり前ですけど)。実際、レッドファーンにいってもそんなに多く見かけるものでもないです。旅行でオーストラリア北部に行った方がはるかに多く出会うでしょう。ただ、アボリジニの貧困層の若者達が、常に警察に目をつけられ、監視され、軋轢が生じており、それが発火して数年前ですが暴動が起きてます。

 イヴリーストリートはどこにあるのかというと、レッドファーン駅の北側(シティ方面)、シティに向かって線路の西側で、もっとも線路に近い南北の通りです。レッドファーンの駅の改札から、小さな通りを渡ると殺風景な公園があり、その公園からナチュラルに下り坂になっていきますが、その先にあります。公園から先は行かない方がいいでしょう。時と場合によりますが、雰囲気的に他と違うのでわかると思います(遠目にも窓ガラスが破壊されてたり)。また、間違ってもシェアなんか出ないでしょうから行くこともないでしょう。

 ただ、レッドファーンという行政区画は実はかなり広く、駅があるのは区画全体でいえばかなり西の方です。「レッドファーンと名がつくエリアには絶対に行くな」という人は、日本人でもオージーでもいます。が、僕の感覚では、同じレッドファーンでも東の方に行けば、それほど危険ではないように思います。シェアで住んでた人も結構いますし、名前の親近感で日本人に有名な「東京ビレッジ」というバッパーもレッドファーンのほぼ中央から東側にあります。もっといえば、イヴリーストリートさえ外せば、いきなり危険ってことはないでしょう。実際、オーストラリアの東大のようなシドニー大学は、レッドファーンの西隣にあり、そこの学生さんの最寄駅はレッドファーン駅であり、毎日大勢の学生さんが通行してるわけですからね。

 僕がその昔お世話した方が、ワーホリ後寿司職人になってシティで働いてましたけど、レッドファーン駅のすぐ裏手のマンションに住んでました。仕事が終わるのが深夜1時とかになるのですが、そこからタクシーで帰ろうとしても、「二台に一台は恐がっていってくれないんですよ」って笑ってました。"It's safe! No Problem!"とか説得してるらしいのですけど(^_^)。タクシーも深夜には恐がるエリアに日本人(別に普通の常識的な人です)が一人で暮らしているということで、恐いんだか恐くないんだかよく分からんのですが、まあ、実際のところそんなものかもしれません。

 実践的には、(真昼であろうが)イブリーストリートには絶対行くな、レッドファーン駅界隈一般なら夜の10時過ぎて一人で歩くようなことはするなっていうのが最低限の防衛ラインだと思います。最初の1か月の人は、「暗くなってからレッドファーン駅の改札の外に出るな」と申し上げておきましょう。直ちに何がどうなるもんでもないけど、最初のナイーブな時期に不快な経験をするとトラウマになってしまうからです。

 なお、このエリアも大分再開発がされてきています。ただ、それが問題の解決になっているのかどうかは議論の分かれるところでしょう。このあたり「治安」の問題ではなく、社会学の問題として捉えると、滅茶苦茶ディープです。アボリジニ問題とも絡むので、オーストラリアのような開拓系の国家の場合には征服者/被征服者の問題、文化的融合の問題、"社会的弱者"論、さらには都市計画論、、もう論点山盛りです。修士論文のテーマにできます。

 SBS放送が興味深い特集番組を組んでいます。The Block: Stories from a Meeting Place in NAIDOC Week 2012 (July 1-8)です。英語の練習にいかがか?


補足2:デートレイプなどについて


 うれしい悲鳴かもしれませんが、よくナンパされたり、しつこく迫られたりする女性も多いかと思います。どういう場合が危険で、どういう場合が安全なのか?というと、別にこれといった判別法があるわけではなく、本人の「人を見る目」を養うしかないのが原則でしょう。直感力というのが一番大事でしょう。

 しかし、それではヘルプにならないので、もうちょっと書いておきます。

 冒頭で「デートレイプ」に触れましたが、性的被害は、物陰に潜んでいていきなり襲われるというよりは、顔見知りの犯行が統計的にも多いです。パブなどで飲み物に薬物を入れて泥酔させる、スパイクト・ドリンク(Spiked Drinks)という手口もあります。

 詳しい状況や対策は、もう一度URLを書いておきますが、NSW州のデートレイプ対策HPをどうぞ。

 公開されているパンフレット(クリックするとそのサイトにいきます)。
 同じく啓蒙サイト
英語だからといって面倒臭がらずに、現地の専門部局がわざわざ広報してくれているのだから、真剣に考えているなら読んだ方が良いと思います。リスク管理というのは、やみくもに恐がることではないのですから。

 ただ一般論として言うならば、このいわゆるDate Rapeというやつは、ほとんどナンパ流れみたいな形態で、日本だったらいちいち強姦罪で訴えたりはしないでそれきりになってしまったりするケースが多いと思います。でも、こちらでは、女性が真実その気がなかったらレイプとして厳然として扱われるわけですな。その意味では日本よりもはるかに厳しい。だから、問題視されているし、また対策や広報も行われているわけです。

 それに、相手が西欧人だった場合、西欧人の特徴として、女性から積極的にOKをしないかぎり絶対に手を出さないという傾向もあります。むろん全員がそうするわけではないですが、その抑制的な態度は一般の日本人よりも遥かに徹底していてます。だから、口説いたり、褒めたりってのは明るくやったりするけど、でも、しつこく迫ったりするのは普通しません。しつこい段階で、結構ヘンですので、「ヘンだよ」って拒絶していいですっていうか、すべきでしょう。

 電話番号などをしつこく聞かれたりする場合もあるでしょう。でも、別に教える必要なんかないと思います。必然性がない限り、です。あなたが教えたくなるようなスチェーションでなければ、別に教えなくていいですよ。 ”Is that really necessary?Why?”ってな感じでいいと思いますよ。

 例えばソーシャルなクラブなどで知り合って(ヨガ教室とかボランティアなど)、相手も適度に紳士的だったりして、むげに断るのも角が立つかなと思われる場合もあるでしょう。でも、その活動で必要な連絡事項等だったら当該事務局から連絡がいくでしょうし、あなたが気に入ってむしろこちらから相手の番号を聞きたいくらいだったら教えてもいいでしょうけど、そうでなければ必要ないです。

 角が立たないような言い方ですけど、”I think I should not do this.”でも充分失礼じゃないとは思いますよ。

 ただ、それでも角が立ちそうだったら、
 ”You know, I just arrived Australia. I know almost nothing about here. So, I think I should be cautious about everything. At least for the first 3 months, I try to be a "nice girl", keeping low profile, until I've got confidence to decide the things. And I made a promise with my mon and my boyfriend in Japan to keep everything OK. They trusted me and I want to keep my promise. I think you are not a bad guy, and it may sound too defensive or too protective, please do not take any offence, OK? Just let me keep my way. It's important for me at this stage. And I can tell you my e-mail address and you can contact me with e-mail anytime."

とかなんとか言っておくといいでしょう。言葉数が多いかもしれないけど、ちゃんと説明するってのはそういうことだと思いますし、ちゃんと説明するのは、この国では(西欧では)とても大事なことですからね。だから繰り返しになるけど、英語が出来るというのは防犯上(人間関係上)にも有効な武器になるわけです。

 なお、男性一人のシェア先に女性が一人で住むというケースはこれまでに山ほどありましたし、それで問題が生じたというケースは少ないっていうか、僕が直接知ってる範囲では無いです。問題は生じたことはありますが、男女問題ではないです(お金の問題とか)。別に恐いのに無理してそんなシェアをする必要は毛頭ありません。僕もシェア探しのお手伝いをする場合、「男一人だから」ということで頭から除外しない方がいいよというアドバイスはします。会ってみて、「ああ、この人だったら絶対大丈夫」と思える人が実在しますし(実際に会うまでなかなか想像しにくいでしょうが)、そう思えたらすればいいし、懸念があるんだったらやめたらいいです。先入観は持つな、無理はするなってことです。

 シェア探しにいってレイプされたってケースは噂では聞きますけどかなり眉唾な気がします。なぜなら、シェアで犯罪を犯したら身元なんかバレバレだし、泣き寝入りが少ない現地の状況ではみすみす捕まるだけですからね。むしろあなたがオーナーで、他人を自宅に招きいれるような場合の方がリスキーだといえます。なぜなら、相手の身元なんか分からないんですから。

 一方では、こちらで知り合った異性と素敵な生活を育んでおられる方もまた沢山おられます。その後めでたくゴールインされて、オーストラリアに住みつづけている人、日本に一緒に戻った人、その他相手の本国に行って暮らしている人、沢山おられます。その逆に、なんとなく付き合ってるんだけど、結婚とかの話になるといきなりモゴモゴいって話が先に進まないってケースもよく聞きます。まあ、でも、そのあたりは日本でも同じですし、結局は人間関係一般の問題じゃないかって気もしますね。このあたりの話は面白いのですが、治安リスクという主題からは外れますのでオミット。


補足その3 : 寸借詐欺


 これは僕の身近に実例が2回ほどあるので、書いておきます。
 シティを歩いていると(大体このテの話はシティですが)、フレンドリーな人と出会います。「どこから来たの?」で始まってベンチに腰掛けて楽しいお喋りをすることも多いでしょう。大いに楽しんでください。

 が、そのとってもフレンドリーな人が、「実はちょっと困ってるんだ」といいだしたら話は違ってきます。内容はさまざまですけど、大体、「身分はこちらに長期滞在しているか永住権を持っていて、現在仕事でホテル暮らしをしている」、「クレジットカードの入った財布を落としてしまって、現金も何も持ち合わせがない」「もちろん再発行を頼んでいるのだけど、時間がかかる。来週には着くと思うのだけど、ホテルの清算をしなければならない」とかなんとか言って、「すまんが、ちょっと用立ててくれないか、来週にはすぐに返すから」とお金を借りてドロンというパターンです。いわゆる寸借詐欺です。

 3件相談を受けましたが、どうも手口が似通ってます。やり方は巧妙で、未だに本当に詐欺だったのか、単にルーズで能天気だから返すのを忘れてるのか判別しにくいという特徴があります。フレンドリーにうち解けても、すぐにその話はせずに、一緒にパブに飲みにいったり、楽しく時間を過ごし、礼儀正しく紳士的で、話も面白い。でもって初日はそれで終わりということもあります。顔なじみになってから、「実は〜」が始まるのですが、お金を貸した後も、別に逃げもせずシティに平然と出没していて、「ハーイ」とか手を振ってるという。でもってまたコーヒーとか飲んで、「いやあ、ありがとう、もうじきカードが届くから、真っ先に返すからね」とか言うわけですよ。全然逃げる気配もないし、まあ、いいかと思ってうちに姿が見えなくなってしまった、、という。

 結構大金を詐取されたりしてるので、気をつけてください。
 何をどう気をつけるかというと、こちらに永住、ないし長期滞在してる人が、財布やカードを紛失したり、仮に手持ちの全財産を失ったとしても、赤の他人のあなたにヘルプを求めなければならないなんてことはありえない、ってことです。これは話そのものがヨタだと思います。

 なぜなら、永住者あるいは長期にこちらにいる程度の経験があるなら、そんな程度のトラブルは自分で幾らでも対処できるからです。ハッキリ言ってトラブルのうちにも入らない。仮にカードを紛失したとして、再発行に時間がかかるとしましょう。ホテル代の清算が迫ってるのも事実としましょう。だったら、ネットバンキングなどで本国の自分の口座からホテルの口座に送金すれば済む話ですし、それだけ長いこと住んでいてこちらに銀行口座がないというのも変な話です。また銀行口座をもってなくても支店止めで送金できます。いやしくも海外にやってきて、長いことやってるんだったら、その手の処理の方法は幾らでも知ってる筈です。それに、長いこといるなら、知り合ったばかりのあなたよりも頼れるマイトはいるでしょう。さらに公的・私的サポートシステムがあります。シドニーにホームレスの人が少ないのは、この種のシェルターなどの公的・私的(教会などチャリティ団体が運営)なヘルプが多いわけで、いざホテルを追い出されても尚も手はあります。長いこと住んでてそのあたりのことを知らないはずはない。だから話のスジそのものが嘘だということです。

 もし、それでもどーしてもヘルプしたくなったら、写真付きの身分証明書をそこらでコピーしてもらい、そこに借用書を書いて貰い、携帯で記念写真の一枚でも撮ってください。できれば、近くのJP(民間公証人)にコピーとサインの証明を貰ってください。そのくらいガチガチに証拠で固めること。

 また、上手く言い逃れられてどうしても断れないんだったら、「よし、これから警察にいって助けて貰うようにお願いしよう!私も一緒について行くから行きましょう」とでも言って下さい。警察がダメなら、カウンシル(役所)でもどこでも。

 「日本人が狙われる」かどうかは分かりませんが、そういう場合に、NOと言えない(言い方を知らない)日本人がいるのは事実ですので、この際、NOの言い方はちゃんと学んでおきましょう。

 簡単な英語の言い回しだけ書いておきます。

 Sorry, I can't help you.
 これは、街で「1ドル貸して〜」という寸借を断ったりするときに。

 あるいは、セールスや勧誘などを軽く(角が立たないように)断る場合は、
 Maybe, Some other time (next time) (また、今度ね)
 Sorry, I'm busy now (今、忙しいの)
 それでも引き下がらない場合は、キッパリと、
 I said, I'm busy, OK?(忙しいって言ってるの!)

 あるいは、勧誘があまりにしつこかったりした場合には、バシッと
 I'm not interested in that, OK?(興味ないです)
 Don't push me, it's bit rude! (そんなに押しつけないで下さい、失礼じゃないか)
 Do you want me to call the police? (警察呼びますよ)

 まあ、こんなのは幾らでも言い方がありますので、ストックとして持っておかれると良いです。
 こういうときに的確にアレコレ言えない、上手いこと言えないからつけ込まれてしまった、、というのは、まさに英語力とリスクは反比例する関係になるのですが、性格ということもあるでしょう。

 ただ、英語力でいえば、「英語ができない攻撃」というのもあります。僕も昔、「○○で困ってる、1ドル貸してくれないか」と言われたことがあるのですが、何言ってるのか分からなくて、何度も何度も聞き返し、5回目くらいに聞き返したときには、向こうの方がウンザリして、「もういいよ」と去っていったことがあります。意図したわけではないけど、英語が出来ないなら出来ないで、それが攻撃にもなります。"I don't understand"を延々繰り返せば、向こうも「ダメだ、こりゃ」って思うこともあるでしょう。


 以上、あれこれ思いつくまま書いてみましたが、治安やリスク対策がそれだけで突出して存在するわけではないです。英語力であるとか、土地鑑であるとか、フットワークであるとか、直感や常識的判断力であるとか、全てのものの総合バランスの上に治安やリスク対策というのは成り立っているということです。必要以上にビビッたって意味ないし、貴重な体験機会を逃すことにもなるし、なにかに一つの物事に頼ろうとしたり(誰かのサポートだけに頼ったり)、なにか一つのことにとらわれているのはむしろ危険だともいえます。何について書いても最後には同じ結論になってしまうのですが、要はバランスであり、要は総合力である、と。


1.治安とリスク管理(1) 傾向編
 1-1.概況 オーストラリアの犯罪状況
 1-2.最初は活動重視、徐々に引き締めること
 1-3.周囲のオージーがあなたの警備隊
2..治安とリスク管理(2) 対策編
 2-1.リスク対策基礎力編
 2-2.路上盗犯対策 「スキのない私」の演出
 2-3.被害を最小限に留めるワザ各種
 2-4.住居侵入窃盗系に対する対策
3.治安とリスク管理(3) シティについて
 3-1.シティの構造
 3-2.シティと他のエリアの犯罪発生率比較
 3-3.シティ内部でのホットスポット(危険エリア)
 3-4.歩いていけるからこそ危険
4.治安とリスク管理(4) 補足トピック編
 4-1.Redfern/Eveleigh Stについて
 4-2.デートレイプについて
 4-3.寸借詐欺

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