◆ホスト側の事情/どうしてホームステイをやるか
まず最初に指摘すべきは、「見知らぬ(言葉も不自由な)外人を自分達と一緒に住まわせる」ということの大変さです。部屋が一つ占拠されるだけでなく、食事の手間と心配、コミュニーケーションのもどかしさ、はては治安の問題もあります(ステイしてた学生が泥棒して逃げたというケースもよく聞きますし、日本人にやられたという話も聴いたことがあります)。こんな面倒臭いことをなぜやるのか?
一つは@生計の補助手段として、もう一つはそれがA意義深いからです。この割合は各家庭によって違いますが、「補助収入」というのも正当な目的の一つです。
オーストラリアでは家を買ったら空いてる部屋を貸して(シェアして)ローン返済に当てるというのは当たり前の慣習です。それぞれが持てる資源を利用して収入のマネージメントをやるというのは、別段非難されることでもないです。誰だって生活は大変ですから。ここを「ホームステイは善意に溢れた人々とのボランタリーな心の交流が全て」カン違いして、「金目当てにやってる」と非難がましく言う人がいますが、それは世間知らずというか、オトギ話というか、相手の立場をちょっと考えれば判りそうなものだと思います。善意の発露だったら、もっともっと恵まれない人達は世界に沢山いますし、皆もボランティアなり寄付なりしてます。高いお金払って海外に来てる人は「恵まれた人」です。
しかし純粋ビジネスとして考えた場合、かなり労多くして実益に乏しいビジネスでもあります。シドニーのホームステイの相場は大体180〜190ドルです。これで週日は2食、週末は3食つけています。APLaCでは空いてる部屋を暫定的に貸してますが、それでも一泊40ドルで夕食は10ドルですから、1週間で最低350ドルになります。それを家賃や食費の補助に充ててますが、ハッキリ言ってこれでも「儲かる」というレベルからはほど遠いです。それも同じ日本人という絶対的に楽なことをしてるわけで、これが見知らぬ外国の人で、言葉もママならない人だったら、もう大変。帰りが遅かったら探しに出たり、警察に連絡したりなど気苦労も絶えないでしょう。考えただけでもウンザリします。
ですので純粋なビジネスだけでもないです。では何かというと、外国の人と一緒に暮して文化の違いを話し合ったりするなかで彼らも視野が広がりますし、それを意義のあることと思っています。また子供の教育上でも早いうちからいろんな経験をさせておくのはいいことだとか。でも基本的に人間が好きでないと出来ないことだと思います。人間と接して、交流するのが好きな人達なのでしょう。だから「ボランタリーの心の交流」というのはその意味では正しいですし、メインの目的でもあるでしょう。実際同じステイ先に3年も暮らし親子同然になってるパターンも珍しくないです。ただ、それぞれに生計もあるし、自ずと許容量というものがありますので、そのあたりをちゃんと弁えておいた方が良いということです。
◆英語の問題
英語力というのが色々な点で祟ってくることもあります。一般的にいって英語力の高い人ほどホームステイでのトラブルが少ない傾向にあります。
英語力に自信がないと、何言ってるのか断片的にしか判らりません。これは仕方のないことですし、ホスト側も慣れてます。
いけないのは判らないまま適当にYESとか言ってることです。これやってると後が苦しくなります。ホストも「このくらいだったら理解できるんだ」と誤解して益々早口で喋ったりします。また、ホストのお願いを(理解できてないが故に)平然と無視してしまうことも生じてしまい、「なんて人だ」と悪感情を持たれる危険もあります(でも本人は気付いていない)。さらに、今更「全然わかってませんでした」というのも憚られ悶々としたりします。そうこうしているうちに段々話し掛けられるのが苦痛になってきたりして、部屋に閉じ篭りがちになり、「非社交的な人」と思われたりもします。全てが悪循環になります。
また、各家の規則で、「洗濯機を使うのは週に1回だけ」と決っていたとします。ホスト側としては「大した量でもないのに毎日洗濯機を使うのは電気代の無駄だから効率的にお願いね」という程度の意味で言ってる場合が多いです。だから、場合によっては2回使いたいときはその旨言えば、難なくOKになるでしょう。これが英語に自信がなくて言えないとなると、「週1回」が絶対厳守になってしまい、段々「このホストはケチだ」「使わせてくれない」という不満になって出てきます。大体ホームステイの不満というのはこの種の「〜くれない」系の被害感情的なものが多いです。これが英語がある程度出来る人なら、「今日はちょっと雨に降られたので悪いけど洗濯機を使わせてくれない?あるいは洗濯するときに一緒にやっておいてくれませんか?」と気楽に言えます。そこでダメと言われても、「どうしてですか?」「いやあ電気代が嵩んでね」「そんなに高いんですか?」「そうなのよ、ちょっとこれ(請求書)を見てよ」「へえ、あんまり日本と変わらないですね」「日本もそんなもんなの」という具合に楽しく会話が進展していきます。これが英語が出来ないと、暗い顔して我慢しているという。この種のギャップは至るところに出てきます。
しかし、そこまで英語力堪能な人は非常に稀です。それでも、皆さんうまいことやっておられます。つまり英語がダメでも上手くやっていく方法は幾らでもあるということです。そのコツを幾つか。
@一生懸命聞く姿勢&スマイル&分からないときは分からないと言う
問題はコミニケーションが破綻することで、それは「聞こうとしている」という姿勢でかなりの程度未然に回避されます。少なくとも「全然聞いてないな、こいつ」とは思われません。また、出会った時などに、親愛や礼儀としてごく自然に微笑めばそうそうおかしなことにはなりません。別にヘコヘコしたり卑屈になる必要は一切ありませんし。ただ英語が分からなくなると段々と話すのも鬱陶しくなり、ついブスッとしてしまいがちですから、そこを気を付けようということです。また、緊張していると「自然に振舞う」というのも難しくなります。「完璧に理解できて当たり前」と思うから苦しいし、緊張するし、妙な引け目を感じたりして態度がどんどん不自然になっていくのであって、わからなくてもあなたのせいではありません。そこは自信もって、腹を括ってください。
そのうえで、"Sorry?"と聞き直してください。ただ、何度言われても分からないものは分からないでしょう。その場合、4回も5回もSorryというのは憚られますし、途方にも暮れます。その場合、「ここまでは解っているんだけど」というのを示すために、相手の言ってることを出来る限りオウム返しにしてみる方法もあります。あるいは確認のために、"You mean,"(つまりアナタが言いたいのは〜ですね?),"Are you talking about .."(〜について言ってるんですね).と自分で繰り返してみるとか。どこまでが分かっていてどこが分からないのか相手にも分かるようにします。
A100%分からなくてもいい
細々とした冗談などは何度説明されても分からないものもありますし、完全に分からなくてもいいです(分かってもギャグセンスが違うので全然面白くないものもある)。だいたい半分も分かれば上出来です。相手が忙しそうなときもありますし、聞くにしても聞きどきがあるでしょう。そこはケースバイケース。気楽に構えてください。
B紙に書いてもらう
どうしても分からなかったら、メモ用紙などに、"Would you write it down for me?"(ちょっと書いてください)と頼むのも方法です。特に最初は、単語自体を知らないので分からない場合が多いでしょうし、単語が分からなかったら説明のしようがない場合もあります。また単語は知ってても発音が違って理解できない場合など。書いてもられば辞書も引けますし、書かれてみたら物凄く簡単な英語を喋ってるのだということも分かると思います。手近にメモ用紙などを用意されておくのもいいでしょう。相手も分かってもいないのに適当に相槌打たれるよりは、理解したいという熱意を示された方がずっと気分はいいと思います。
C自分から喋ること
相手の英語をこちらが聞取るよりも、こちらの英語を相手が理解する場合の方が意思疎通率は高いです。ですので、大事なことはこちらから喋ったらいいと思います。その場合、全くソラで言いはじめるよりも、ある程度、簡単に単語を書き出すなり英作文しておいてから喋ると、全然違います。かなり喋りやすくなりますから。僕らでも電話で込み入った話をする場合、事前に2〜3分ちょっと書き出して整理しておきます。スラスラ単語や言い回しが出てきます。
D同じ人の英語は分かるようになる
人によっていつも使う単語、言い回し、癖があります。パターンが決っているわけですね。ですので同じ人(ホストファミリー)と喋っていると、ほどなくしてかなりの程度聞き取れるようになっていきます。最初は大変ですが、だんだん楽になります。ただし、これが違う相手になると又壊滅的に判らないなんてこともあります。
◆意外と知らないホームステイ英単語
fridge(フリッジ):冷蔵庫。 refrigeratorとちゃんと言うのはマレでフリッジといいます。冷凍庫は日本とおなじフリーザー。
vacuum(ヴァキューム):バキュームカーのバキュームですが、本来は「吸い取る」という意味で「掃除機」「掃除機を掛ける」という意味で言います。また
“Hoover(フーバー)”ともいいます。これはオーストラリアで有名な掃除機メーカーで、メーカーの名前が一般名詞になってるわけです(味の素みたいなもの)
laundry(洗濯):ランドリーですが、「ローンドリィ」とローにアクセントがきます。洗濯物はwashings、洗濯機はwashing machineといいます。
telly, TV(テレビ):テレビのことは「ティーヴィー」ですが、「テリー」という愛称を使う家庭も多いです。
ブレックファスト、ランチは問題ないでしょうが、ディナーに関して。オーストラリア人の夕食は概して軽く、1枚のお皿に肉と野菜を盛り付けたものだけだったり、マクドナルドで済ませたりということもあります。ですので、パーティーでもない限り、ディナーと呼ぶにはちょっと大袈裟。そこで彼らは夕食を、
supper(サパー)とか、
tea(ティー)とか呼びます。夕食時に「ティーの時間よ」と言われても、お茶しか出してくれないわけではないので、ご安心を。同じティーといっても「お茶の時間」の意味もあるので、ややこしいわけですが(イギリス系の名残で、午前11時頃に「ティータイム」をとる学校や職場もかなりある。よってランチタイムは1時頃にズレ込む場合が多い)。
ナイフ、フォーク、スプーンなど食事用語は大体日本と同じですが、皿のことはdishよりも
plate(プレート)という場合の方が多い(そのくせ皿洗機はdish washerという)。パンといったらフライパンなどのpan(鍋)のことで、日本語のパンはブレッドです。
「昨日の夕食の残りもの」のことを
leftover(レフトオーバー)といいます。
流しは
sink(シンク)、電子レンジは
microwave(マイクロウェイヴ)、調理用レンジのことは
stove(ストーブ)。ちなみに、暖房器具のストーブのことは、
heater(ヒーター)です。
電話では、市内通話のことを
local call(ローカルコール)といい、国際通話は
International call、国内長距離通話のことは
STD(エスティーディー)といいます。コレクトコールは
リバースチャージ。公衆電話は
pay phone、public phone、テレホンカードは
phone cardです。留守番電話は
answering machine(アンサリングマシン)、携帯電話は
mobile phone(ムーバルフォーン)です。
よく登場する意外と知らない言い回しとしては、「I've got」(I haveと同じ)、「You've got to」(You have toと同じ)、「How come」(Whyと同じ)、あたりを覚えておくと多少役立つでしょう。
◆慣習/よくある決まりごと
@水/シャワー制限
オーストラリアでは世界で二番目に乾燥した大陸であり(シドニーあたりではそういう実感はゼロですが)、また開拓民時代からの伝統か、水を大切にします。そのため風呂好きな日本人とのギャップが一番激しいのがシャワーです。バスタブなんて無くて当たり前ですし、シャワーも大体5分。それ以上使ってると給湯タンクの容量次第で水になってしまいます。一遍カラになってしまった給湯タンクがもう一回沸くには冬には15分以上かかります。調子に乗って朝シャンやりまくっていると、他の人のお湯を使い果たしてしまい、恨まれます。少ない水(お湯)資源を大切に、ということで、シャワーは一回5分までとか、使用時間を決めているステイ先が多いです。男女によって違うでしょうが、慣れれば短くて済みます。
A食事
学校等にも慣れて来るにしたがって帰りが遅くなったりします。その場合は、事前に一本電話を入れておいてください。「5時までに連絡して」にルールにしているステイ先もありますが、食事の準備の大変さを考えれば常識的に分かると思います。言い訳を全部英訳しようとすると大変ですが、要するに相手が知りたいのは「夕食を準備する必要があるのかどうか」だけですから、「I'll be late tonight. I don't need dinner.」だけで、とりあえずOKです。また、連絡が余りにないと、警察に連絡したり日本の親許に連絡したりなど一大事になったりしますので注意。シドニーの公衆電話は少ない上に壊れているのが多いので、見つけたら即電話してください。
食事の好き嫌いは、"I don't like it"とハッキリ言っても構いません。民族によって人によって好みは違って当たり前ですから、それを言われたくらいで怒ったりはしません。ただ、食べ慣れない物で、最初はイヤでも、3回食べたら病み付きになるものも沢山ありますので、いいチャンスだくらいに考えておくのもいいでしょう。
洗い物ですが、これが小さなシンクにお湯を張って洗剤を入れ、グシャグシャ洗ってそのまま(ゆすがずに)というパターンが多くの家庭で見られます。最初は「げ?ゆすがないの?」「そんなの使ったら死ぬんじゃないの?」と驚きますが、そうしてますし、別にそれが原因で体調不良になったという話も聞いたことありません。家によって違いますが、これが最大のカルチャーショックだったりもします。
B家事
ホームステイは「ホテルのお客様」ではありません。またこちらでは家族の家事分担は日本以上に常識ですので、そんなに必死になって手伝うことはありませんが、気楽に手伝ったりしてください。食べおわった自分の皿を流しにもっていくこととか。"Do you need my help?""Shall I help you?"とか気軽に声をかけるとか。
C名前を覚えよう
オーストラリア人にとって、人の名前を覚えることは最低限のマナーであるかのようです。世界じゅうから移民が集まっていますから、読み方が想像できない名前や一度や二度聞いたくらいでは覚えられないような名前も沢山あるのに、彼らは名前を覚えようと努力しますし、覚えることがとても上手です。
何人も学生を受け入れている慣れたホストファミリーならば、あなたにも同じ習慣を期待することはないですが、やはりこれも文化ですから、出来るだけ相手の名前は早く覚え、コミュニケーションする際も出来るだけ相手の名前を呼びかけるようにするとスムーズにいくと思います。
なお、オーストラリアでは、 Mr Mrs Ms Dr などの称号を無視して、ファーストネームで呼び合うことがほとんどです。気軽に「ジョン」「ジェニー」と呼んでみましょう。
◆ホームステイのメリット
その気になって過ごせば、ホームステイは情報の宝庫であり、英語の勉強の恰好の場です。
妙にキレイにまとめた教室英語ではない100%ナマの英語が聴けます。しかも、当り前すぎて普通本では載っていないような(しかし最も日常でよく使う)単語や言い回しが飛び交っています。「ちょっとそこにあるの取って」「え?アレ買ってきてくれなかったの?」「今日はちょっと遅くなるから先に食べてて」「早くしないと銀行閉まっちゃうよ」などなど、意外と英語で言えないものですが、教本調べても載ってなかったりします。それをライブで見られるのですからこれに勝る教材はないです。先程「紙に書いて貰ってでも理解する」と言いましたが、単なる意思疎通だけではなく、これらの言い回しがこれから先シェアするにせよ、仕事するにせよ大きな財産になっていくでしょう。
また、子供のしつけ方、夫婦喧嘩の仕方など、「ふーん、そうやってやるんだ」と見るともなく見ていれば、知らず知らずのうちに物凄い蓄積になっていきます。
参考
★よりセキララなホームステイの現状/「ホームステイ/傾向と対策」
(前・中・後編)
ところで、上記の注意事項はシェアにおいても全く同様に当てはまります。
シェア=学生同士(特に日本人同士)と思っていたら大間違いで、ホームステイのようなオーストラリア環境のシェアは幾らでもあります(というか地元的にはそっちの方が主流)。単に英語で電話して探すのが恐いとかいう理由でお手軽にシェアを決める日本人が多いから、その種の誤解になるのだと思います。ちゃんと探せばステイと遜色ないどころか、自分の目で見て選べるだけにより快適な住まいを見つけることが出来ます。
そのあたりの話は以下のページを参照↓
★シドニーシェア探し入門
★シェア探しの効能=100%英語環境でのシェア探しがなぜ成功の第一関門になるのか?