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2回目ワーホリの難しさ(1)
  




 ワーホリ実戦講座 INDEX ↓


成長率の鈍化


 二回目ワーホリは難しいです。二回目を取るのも大変だけど、それ以上に2年目のワーホリの過ごし方が難しいです。ある意味では1年目とは比較にならないくらいの高難度になろうと。

 先に結論だけ書いておきますが、

 1年目は体育、2年目は「哲学」

 だと思います。2年目ワーホリの難易度を語ることは、いきおい抽象的で人生問答みたいな哲学になります。ハウツーではない。


 2年目ワーホリの何が難しいか?
 成長しにくいからだと思います。

 成長という点からしたら1年目は楽なんですよね。
 「何もかもが生まれて初めて!」で主観的には超大変だったりするのですが、逆に言えば何にもしなくても「生まれて初めて」の物事が向うから押し寄せてくれるのですから、否応なく経験値は上がります。つまりは成長します。それで「成長」という好ましい結果に結びつくかどうかはその人次第だとしても(心が折れてトラウマになって終わりとか)、しかし、そのキッカケは山ほど得られます。毎日、未知の世界への招待状がドサッと届き、ときには手を引っ張られて強引に連れて行かれたりもします。これだけあんなこと&こんなことをやってれば、どんな人でも何ほどか思うことはあるだろうし、肝っ玉も太くなろうし、この世の原理みたいなものも薄ぼんやりとでも見えてくるでしょう。それがすなわち「成長」です。"No pain, no gain"といいますが、1年目はペインも多いがゲインも多い。

 このように1年目は、難しいことを考えなくても「やりゃあいいんだ、やりゃあ!」の世界ですからシンプルです。ツライかもしれないけど、構造や行動指針はめっちゃ簡単。身体を動かして覚える体育なんですよね。

 しかし、2年目はそうもいきません。既に1年目の後半に始まり出す(人によっては着いて2週間目くらいから既に始まる)マンネリ化という新しい敵キャラが登場します。こいつは強敵です。同じようなことばっかりやってても経験値は上がらないし、必死でモノを考えたり、精神がガンガン鍛えられたりってこともない。その代わり精神的には楽ちんです。わかってることだけやればいいのは、本当に楽ですからね〜。ドキドキハラハラすることもない。しかしドキドキワクワクすることもない。これがマンネリ。空港に着いた初日からのロケット打ち上げのような急上昇の成長カーブは、どんどんと平坦になっていきます。でも平坦になるほど気分的には楽になる。それが落とし穴。マンネリがなぜ強敵なのかといえば「楽だから」でしょう。あまりにも気持ちいいから、それが「敵」だと思えない。

なぜ2年目が難しいか

 よし、わかった!俺は2年目も頑張るぜっ!と思ったとしても、もう一つもっと難しい問題が出てきます。HOW?です。「何をどう頑張るか?」です。これがよく分からん。

 1年目はとりあえずのコースがあります。まずは現地に慣れるために英語をやり、住まいを探し、お金がヤバかったら仕事も探し、生活のサイクルを築きます。これらは多くの場合、合理的で必要なプロセスだろうし、また一つ一つの過程に「生まれて初めて!」の学習効果が見込めます。 一番大変だけど、一番楽でもある。

 そして、ラウンドに出るなりして四苦八苦してファーム仕事を探し、2回目に必要な条件を満たすようにする。これはこれで難易度の高いゲームのようなものです。そうそう美味しいファームが転がっているわけではないし、あなた任せにしてると奴隷ファームにみたいなところに収容されるリスクもあるし、何ヶ月もぜーんぜんダメダメなときもある。

 そこでは、チョウチョのようにヒラヒラ舞っている「チャンス」をバシッ!とつかむ動物的な直感なり洞察力が必要です。僕の私見ですが、この直感=チャンスを的確にバシッとつかむ瞬発的な洞察力と意思決定力=こそが、ワーホリ終了後の実人生において最大の武器になるだろうと思います。どの方向に進むか、どこに就職するか、誰と結婚するか、どこに暮すか、これらの人生環境をどうカスタマイズするか/しないか、いつ&どうやってするか。

 老練な漁師が潮の変わり目を的確に見抜くように、あるいは優秀なギャンブラーがツキの変わり目を的確に捉えるように、物事には「ここだ!」というターニングポイントがあり、それが分かるかどうか。これはあまりにも複雑な意思決定過程を経るので、ほとんど意識野ではトレースできず、「直感」という大雑把な表現になってしまいます。しかし実際には「○○のときは大体○○だ」という過去の経験やら何やらを総動員し、高等数学のような複雑極まる計算をしています(細かい理屈はEssay 536 : 無意識と直感を参照してください)。その意味でファーム探しはそのいい練習になります。

 ということで、ラウンドやファーム探しでまた揉まれ、修行過程があり、成長が見込めます。

 さて、とにもかくにも二回目ワーホリの資格をゲットしました、申請しました、取れました、あと1年滞在できます、、、ときて、「ほんで、居てどうすんの?」です。資格ゲットの旅は大変かもしれないけど、それでもまだ「やること」がある。「やることが見える」うちはまだ楽なのですね。それが終ってしまったら、そっから先は「自分で考えろ!」と突き放されてしまいます。「これさえやれば」という下書きがなくなる。

 ここで人によって差が出てきます。
 「やること?そんなもん山ほどあるわ。もうありすぎてありすぎて、2年なんかじゃ全然足りない〜!」って人がいるかと思えば、定年退職したオジサンみたいに「さあ、明日からどうしよ?」と公園のベンチでたそがれる人もいるわけです。

2年目のパターン

 2年目のパターンは様々ですが、これまで見聞した限りでは、例えばこんな感じです。

@、イケイケGOGO♪

ラウンドに出て、ファームや旅の生活の面白さが徐々に分かりはじめ、楽しくて楽しくて止まらなくなり、「ひゃっほ〜♪」状態で進んでいくパターンです。

 オーストラリア全土をやっつけ、さらにNZワーホリで3年目を過ごすというハット・トリックみたいな人もいます。さらには世界一周やインドや南米に出かけている人もリアルタイムに何人もいます。ある意味、これが一番考えないで、一番幸福で、一番充実しているパターンかもしれません。人間、充実しているときって「どうしよう?」とかあんまり悩まないですもんね。「はい時間です〜」といわれたら、「え〜!?」「もっとやってたい!」という。

A、深化

 @ほどドーパミン・ハイ状態になってるわけではないけど、それなりに考えて「深化」させていくパターンです。

 例えば、ラウンドでもファームでも単に「行ってきました」「働きました」ではなく、田舎の町や風景をしみじみ味わったり、嘘みたいに途方もない大自然風景に日々暮すことで「地球と語り明かす日々」を楽しんだり、気に入ったファームに長逗留して段々ここで生まれ育ったかのように錯覚してきてパラレルワールド的な人生を味わったり、バッパーで出会う人々ともっともっと深く交流して、世界を取材したり、ソウルメイトに出会っちゃったり、、、。

 あるいは、1年目は「とりあえず」的に促成栽培のやっつけ仕事で済ませた英語。その錬成に本腰を入れて取り組むというパターンもあるでしょう。今度は超本気。1日28時間勉強するくらいの気合で、極真空手黒帯かPL学園野球部レギュラーかというぐらい打ち込む。あるいは、仕事探しにしてももっと意識的に選んでみる。とにかくローカルで働ければいいやではなく、日本での自分の本業とリンクするような形にするとか、将来的に興味のある分野を囓ってみるとか。逆に絶対にやらなそうな仕事ばかりを探して自分の「幅」を無理矢理広げていくとか。同じく、それが仕事ではなく、なんらかの進学であったり。

B、恋愛

 これは@Aとは全く次元が違うパターンです。
 ちゃんちゃらリゾラバではなく、もっとシリアスに誰かとガビーン的な出会いをし、あれこれ喧嘩しながらも進んでいく。「育(はぐく)む」って感じ。あるいは破局する。ハッピーエンドだろうがカタストロフだろうが現在進行形だろうが、いずれにせよ青春的なヒトコマであり、栄養価高いです。「流した涙の数だけ大人になるのさ〜」の世界ですね。まあ、頑張ってください(^_^)。お気張りやす(京都弁)。

 「出物腫れ物所嫌わず」といいますが、恋愛というのは時空間を超越します。だからオーストラリアとか、ワーホリとかいうのとは全然関係ないです。逆にいえば、恋愛系が出てきたらその時点で「ワーホリ」という物語は大きな変容を迫られます。そこで「第一部完」というか、違う物語が走るようになったりします。それは楽しくも、ややこしく、二つの物語が強引にミックスしながら進んでいくでしょう。相手もワーホリ同士だったら物語の合体は比較的容易だけど、相手が学生ビザや地元定住のローカルピープルだった場合、ラウンドが抑制されたり、出たと思ったらすぐに戻ったりという感じになったりもするでしょう。そのうち相手が帰国したりしたら遠距離恋愛に突入です。いやあ、大変だなあ。お気張りやす。

 なお、(国際)結婚まで視野にはいってきたら、次のCと自然合流してきます。
 

C、現実世界への着陸=夢と現実の統合

 日本における日々の生活を現実だとしたら、オーストラリアでの日々などはまるで「夢」のようです。それは帰国したら分かります。いつもの自分の部屋で目が覚めて、見慣れた天井が見えたとき、オーストラリアの日々が「あれは何だったの?」という、まさに昨日見た夢のように感じられるでしょう。「ああ、良い夢見たわ」で起き上がり、頭ボリボリかきながら、歯磨きシャカシャカ、、、

 しかし、夢を夢のまま終らせてしまうのは勿体ない。そこで、あの夢の世界をなんとかこの現実世界に持って来れないか?というイトナミがあります。いくつもパターンはあるけど、要は夢の世界をベースにしつつ、それで「安定的にメシが食えて生活できる」ようにあれこれとダンドリをかましていく作業です。

 具体的には、オーストラリアが気に入ったらオーストラリアの永住権を取る、あるいはこちらで労働ビザなど安定的に働き将来の布石にする、シンガポールなどの第三国で働く。先物買いのためのアフリカに渡って起業のネタを探す、、、はたまたオーストラリアで得た体験を日本で生かす。それはどんな形であってもいい。単純に英語教師になったり、通訳翻訳、外資系という英語方面に進むこともあろうし、日本ベースの国際交流に進むのもあろうし(日本にいる外人さんのサポートとか、外人前提のシェアハウス事業とか)、日本での観光、貿易業、あるいは海外進出する日本企業、、そんなの無限にバリエーションがあります。

 さらに分かりやすい「カタチ」になってなくても、ワーホリ時代に獲得した感性、価値観、行動力、つまりは「スピリッツ」みたいなものを中核に据えることも出来ます。悩んでるヒマあったらとにかく動け、具体的に動け!という抜群の行動力にせよ、電車が止まっても平気で10キロ歩ける体力と耐性にせよ。面の皮が超合金製のように厚くなって、多少ガンガンなぐられても痛くない、何をいわれても心が波立たない反面、「なるほど一理ある」と思えば貪欲に消化する精神的・知的胃袋などなど。

 いずれにせよ3年目には帰国する(あるいは選択を迫られる)ことを前提にしつつ、2年目は夢と現実をクレバーに統合させていこうという方向性です。

D、その他〜静かな革命と本体回帰

 しかし、こうやってパターン分け出来てしまうほど人間の行動バラエティは貧弱ではないです。そのバリエーションは文字通り無限にあるでしょう。また@〜Cは相反するものではなく、両立も同時存在もするでしょう。

 結局鳴かず飛ばず、何のために来たの?というトホホな旅であったとしても、それまで気づいてなかった自分のダメなところがイヤというほど分かったということは大きな収穫だろうし、それが人生のターニングポイントになったりもするでしょう。それまでの価値観が逆転するということあるでしょう。それまで人生の中核にしていた筈の「お勉強が出来る」とか「人と比べて」などの方法論が実はクソでしたということに気づくかもしれません。あるいは、ごくごく自然に、心が変わっていく、自分のあり方やなりたちが変わっていく「静かな革命」みたいなものもあるでしょう。You can't change what you are, but you can change the way you are.

 あるいは、日々はまったり過ごしていながらも、そのまったりが何とも快いってこともあるでしょう。それは怠惰とかダラダラしたドラッグ的な気持ち良さではなく、田舎の湯治場に滞在するように、少しづつ垢が落ちていき、新陳代謝が進み、垢の下からもともとの自分が現れてくる、自分がどんどんナチュラルになっていく気持ち良さです。「そうだよな、もともと俺ってこういう奴だったんだよな」と再確認する。で、「らしくねえことやってたな、今まで」と気づく。これは大きな発見だと思います。また、こうやって「本来の自分に戻ることが出来る=本体回帰」という体験も、また大きな発見です。「その気になればいつでも元に戻れる」「そのやり方を知っている」というのは、その後の実人生のメンタル管理その他にどれだけモノをいうか。

 本当にいろいろあります。
 なかには、2年間ついに日本人村から一歩も出ることなく、殆ど英語を喋ることもなく、徴兵制のように嫌々ファームに出かけて二回目の資格を取り、そこで妙な習慣(マリワナとか)も覚えて、そのまま日本人村で過ごし、どっかの時点でカジノにハマり、いつかすってんてんになりトホホの帰国、、、なんてパターンもないわけではないでしょう。それこそバリエーションは無限にあります。

 パターンはともあれ、これだけは言えると思うのは、どういうことになろうが、残酷なくらい今の自分を映しだす鏡になるということです。だって、ワーホリくらい自由なイトナミは珍しいですからね。強制的に拉致されたとか、転勤で来たとか、家族が病気で仕方なく、、、などの外在的な理由で来ているわけでもなく、100%自分の意思で来て、100%自分の意思で過ごしているのだから、良きにつけ悪しきにつけその結末は100%自分のものです。美味しい果実がみのればそれは全部自分のもの、でも腐ったゴミや放射能が出ても、それは全部自分のものです。100%自由にやらせて貰いながらも、不本意な結果を自分以外の誰か/環境のせいにする人もいるかもしれません。でも、それは「そーゆー(なんでも他人のせいにする)人だ」という現実をクリアに映しだしているだけでしょう。


 さて、2年目に突入して(資格を取って)から、定年退職的に途方に暮れるか、あるいは自分の方向性をしっかり見いだしているか、これもあなた次第なのですが、なんでここが違ってくるのか?その原因論として、いわゆる「ワーホリ定食論」があります。

 →次(ワーホリ実戦講座(10-2)ワーホリ定食論)に続く




ワーホリ実戦講座 INDEX

1:ワーホリとは?近年の環境変化
1−1:グローバリゼーションの読み解き方とワーホリの新活用法
1−3:二回目ワーホリ
2: Watershed(分水嶺)運命の分かれ道〜 あまりに高い言葉と文化の壁
3.早いうちに「やる気」を「経験」にエクスチェンジすること
4.サバイバル力養成実戦講座 あしたのために〜その1(バスを制覇せよ)
5.サバイバル力養成実戦講座 あしたのために〜その2(地図を入手せよ)
6ー1.サバイバル力養成実戦講座 あしたのために〜その3(携帯電話を入手せよ)
6ー2.サバイバル力養成実戦講座 あしたのために〜その3(携帯電話編 その2)

7.シェアを探そう〜100%英語環境でのシェア探しがなぜ成功の第一関門になるのか?
※↑関連シドニーシェア探し入門を参照

8−1.仕事をしよう(その1) 仕事の効用 
8−2.仕事をしよう(その2) 仕事の探し方 日系〜ジャバレス編
8−3.仕事をしよう(その3) 仕事の探し方(2) 日系その他編、ローカル編
8−4.仕事をしよう(その4) 英文履歴書・実戦例

9−1.ラウンドのススメ(その1) 
9−2.ラウンドのススメ(その2) 
9−3.ラウンドのススメ(その3) 宿について
9−4.ラウンドのススメ(その4) 一人旅、車の旅

10−1.2年目ワーホリの難しさ(その1) 
10−2.2年目ワーホリの難しさ(その2) 「ワーホリ定食」論
10−3.2年目ワーホリの難しさ(その3) ゼロベースからの自家製メニュー
10−4.2年目ワーホリの難しさ(その4) 余談(自分の場合)と結語



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