2012年の付記〜オーストラリアのインターン論
本コンテンツ(日本語教師アシスタント部分)は1999年執筆ですから、かなり古いコンテンツです。
本来なら削除したり、多少補正して新しいコンテンツに模様替えしても良いのですが、敢えてそうはしていません。なぜか?
本稿は、初稿執筆者の福島が、この種の日本語教師ボランティア派遣の会社に勤めており(オーストラリアに移住して最初に勤めた会社)そこでの日々の体験が本コンテンツのベースになっています。またリンクを貼ってある小島さんの体験談も、当時のものです。
つまり、これらは一般的な解説文ではなく、リアルな証言&ドキュメントなのです。
解説文なら適当にアップデート出来るのですが、証言やドキュメント系のものというのは、基本的に後日にあれこれ手を加えてはいけない、それをやると"偽造"っぽくなっちゃうし。
またアップデートしようにも、その後、こういった業界のど真ん中のような観測ポイントにいませんので、当時と同じレベルでモノが言えないのですね。「〜と言われている」とか「〜ではないかと思われ」程度のレベルなら書けますけど、それだとレベルが違いすぎるので、迂闊に修正もできない。で、「どうしたもんかな?」と腕を組んで困っているうちに、現在に至るって感じです。
日本語教師をとりまく外部環境の変化
ただ、日本語教師やインターンシップなどついての外部環境やその変遷という、客観的なバックグランドは書けますので、それを書いておきます。
インターンシップといえば、その昔は「海外でちょっと(お金を払って)働いてみませんか?」系のものでした。
「お金を払って働く」というのも考えてみればヘンな話なのですが、まあ、一種の観光や体験アクティビティの一環として思われていたのですね。
日本語教師ボランティアですが、
シドニーで仕事を探す方法第二章:「日本リテラシー」の市場価値〜かつての王道系パターンの凋落で述べたように、オーストラリアにおける日本語教師という存在自体が1990年当時と2010年以降とではまるで違っています。もちろん日本語教師という職は健在だし需要もありますが、当時のような「ブーム」ではないです。
第二に、この種の"ボランティア"というのは両刃の剣でもあります。無償奉仕という温かい善意性がある反面、一つ間違ったらプロの日本語教師の人達の職を圧迫することにもなるという点です。いわば労働力のダンピングになりうるという。
もちろん真剣に教授技術を学び、経験を積んできたプロの日本語教師の方々と、たまたま日本に生まれ育ったので日本語が喋れるに過ぎない僕ら日本人との間では、教授技術のプロフェッショナル性という意味では大きな断絶があります。現場で真剣に学びたいという旺盛な需要があるならば、プロの教師と素人である日本人という「生きた教材」は仲良く両立するでしょう。しかし、現場の需要が減退し、そこまでシビアに学ぶ気はないけど色々なカルチャーに触れてみたい的なものにトーンダウンしてきた場合、この両者はバッティングしてきます。
僕自身、プロの日本語教師の方から苦々しい述懐として聞いたことがあります。「観光気分で他人の職を奪わないで欲しい」と。
このあたり、どこでもそうだとか、常にそうだと言ってるわけでは勿論ありません。仲良く両立している現場も多々あろうし、そもそも日本語自体を教えておらず、単にカルチャー課外活動的に留まってるからバッティングしないということもあるでしょう。それは様々です。まだら模様でしょう。
しかし、「無償の善意活動」という温かいトーンで全てが塗られているわけではない、特に業界自体が下り坂になり職を得るのが大変になってくればくるほど、あなたがこの種の「苦味のある現実」に出会う場面もあるかもしれません。意地悪なことを書いているようですが、いざ現場にいって、そういう視線で迎えられたら結構キツイと思われますので、先に書いておきます。
現場でのミスマッチ
一方、日本語教師ボランティアは誰かに斡旋してもらわねば出来ないという種類のものではないです。これは他のページでも昔から書いてますし、現場で直接交渉したほうがずっと早いし、融通もきくし、成功率も高いです。実例は幾らでもあります。これは日本語教師でなくて、全てのボランティアに共通して言えることですし、そしてまたインターンシップについても言えます。
この種のイトナミに興味を持たれる方は多いでしょうし、そのアプローチの角度についても様々でしょう。
単なる「観光の延長」「思い出作り」くらいのニュアンスで希望される方もおられるでしょうし(それが悪いわけではない)、もう少し将来のキャリアとしての実利的な部分を重視される方もおられるでしょう。実利についても、就職面接のときに「○○をやってきました」という「お土産」「エピソード」という意味での実利もあれば、絶対に○○業界に食い込んでやる!そのための第一歩、そのための前線基地だという戦略性バリバリのものもあるでしょう。
いずれもアリです。何が良くて何が悪いというものではないです。
ただし、僕ら日本人の側の意識や希望が千差万別であるのと同じように、受け入れ側のオーストラリアの現場もまた千差万別です。素朴に善意で「客人」を迎え入れようという現場もあれば、プロの教師のクビにしてコストカッティングをしようとしている現場もまたあるでしょうし、ボランティアといってもプロ並の意識と技術を求めるシビアな現場もあるでしょうし(オーストラリアのボランティア水準は高い)、インターンでも、その業界に食い込もうというアンビシャスな連中がピラニアのように集まっている苛烈な職場もあるでしょう。これもまた様々です。
僕らもイロイロ、現場もイロイロってことですね。
ゆえに、こんな万華鏡のように千変万化する現場を一律に語ることはナンセンスでもあり、危険でもあります。Aだと思って行ったら、現場全然非Aであり、その現実に木端微塵に打ち砕かれましたってことも、ないわけではない。
ならばどうしたらいいか?ちゃんと知っておこうということです。大きな全体像を知る、それぞれに表情が違う現場のニュアンスとバリエーションを知る。そして、自分自身の意向を知る。私は何がしたいのか?思い出が欲しいのか、お土産話の武勇伝が欲しいのか、その業界に食い込んでいきたいのか?シリアス度がゼロから100まであるとしたらどの程度なのか。
次に現場で直接探せば良いというのは、一つにはこのマッチングのメリットがあるからです。
先に現場に行って、現場を見て、担当者と話し合って、ダンドリを打ち合わせていく過程で、こちらも現場の状況がわかるし、相手もこちらの能力とか意向を知るので、ミスマッチが少ないです。
例えば、先ほどの「プロの教師の職を奪う」という懸念をお持ちであるなら、その旨先に伝えることが出来ます。例えば、「プロの教師の方々がどれだけ努力を重ね、高い技術を積上げてこられたか、それは私には分かっているつもりです」「当然、相応のレスペクトも払っています」「私自身は教師ではなく、生きた教材/マテリアルです」「それをプラスに使っていただける機会があれば、ということです」とかちゃんと話せば済むことでしょう。プロの日本語教師の方がいたら引き合わせてもらって、"What I want to do here is "help" you, not a "threat"と胸を開いて言えばいい。最初にそれをやっておけば、後々しっくりいきますし、実り豊かなものになるでしょう。
こういうシリアスな話を英語でやるわけですから、それなりに大変ですよね。でも、ここですり合せをしておかないと、もっともっと現実的に大変になったりします。後段の福島の「ドキュメント」に書かれているような「てんやわんや」のケース(〜書かれてないけど、ストレスのあまり発狂状態になって、夜の校舎の窓ガラスを叩き割って歩くという殆ど「尾崎豊/卒業」状態になって警察沙汰になった)もあるわけです。
現実は甘くないです。でもとても実り豊かなものでもあります。「美しいバラに棘がある」というクソ当たり前の常識です。ならばどうする?ちゃんと調べる、自分の目で調べる、話し合う。トゲはあるのかないのか、どこにあるのか、どれだけあるのか、予め話し合ってトゲを抜けばいいじゃん、それだけのことじゃんってことです。それが出来たからこそ「武勇伝」にもなりうる。
同時に、斡旋を受けるのがダメだとかそんな幼稚なことを書いているつもりはないです。斡旋する側だって誠実にやっておられるところもあるでしょうし、何か問題が起きたらとりあえず困るのは斡旋する側だったりするわけですから、事前にちゃんと説明もするでしょうし、適性に合わない人は「残念ですが」で厳しくハネるでしょう。これらの事情を知ることは、誠実な業者さんをちゃんと評価することにもつながると思います。「悪徳業者」がどーのこーのなんてネガティブな話はどうでもいいです(そういう話が好きな人もいるけど)。不心得者はどの業界、どの世界にもいる。「一人残らず天使ばっか」なんてところはこの地球上にない。いる/いないでいえば居るに決まってるし、何を今更ですよ。問題は天使が誰かでしょ?どうやってそれが見えるようになるかでしょう。
インターンシップについて
インターンの概念の日豪の差
インターンシップですが、
シドニーで仕事を探す方法第一章:日本とは全く違う就職/採用概念で書いたとおり、日本とオーストラリア(西欧圏)とでは意味内容が全然違うと思います。
こちらでは新卒採用などはないし(Graduate Jobsといって全くないわけではないが)、基本的に職歴がない人を採用する局面が非常に少ない。「未経験者優遇」ということはあまりない。このように、仕事をしなければ職歴を得られないが、職歴がなければ仕事を得られないという絶対矛盾、英語で"Catch 22"と言いますが、日本語ではニワトリ・タマゴですね。
この絶対矛盾を打ち破るために出てきたのがインターンシップです。無給でもいいから現場経験を積み、”準”「職歴」としてカウントしてもらうという。あるいは、無料のお試し採用です。「試供品」というか、ヨガ教室やダンス教室で「初回無料」と謳っているのと同様に、とりあえずやってもらって気にいったらお金払って続けてくださいというものです。
そして、これも書いたように、こちらの採用は「部品交換」ですから、なんとなく「良さげな人」という漠然とした採用をしません。職務内容と職歴がドンピシャと一致しないと採用しない傾向がある。非常に精密です。しかしそんな都合良く職歴を稼げるものでもない。だからインターンで稼ぐということです。
ゆえにインターンというのはとても戦略性の高いものです。あらかじめターゲットになる業界を定め、そこに斬り込んでいく職歴やアプローチの角度を定め、どのあたりから攻めていくかという、登山家が登攀ルートを選定するようなものです。
そこには、職歴というスタンプカードでポイントを積上げていき、徐々に目的を達成していくという、職歴の右肩上がり発想がベースにあります。日本の場合は、新卒採用が一番市場価値があり、あとはどんどん下がっていくという右肩下がりの生鮮食料品みたいな発想がベースにあり、もう根本的に違うといってもいい。
こちらでインターンを考えておられる方は、このあたりの常識的な違いについて、十分知っておいてください。
インターンの探し方
インターンシップは、語学学校などでも斡旋してますが、もともと斡旋専門の会社がいくつもあります(大体の学校はそこに外注に出している)。
Google Australiaで"internship"で検索して出てきたものをランダムに挙げておきます。
逆に、個々の団体や企業が常時インターンを募集しているケースも多々あります。というか、ある程度の規模になると普通やってるくらいの感じでしょう。特に興味のある分野があるなら、その関連団体や企業を調べて、そのホームページからインターンのコースを見るといいです。
あるいは、Gum Tree等の現地の無料掲示板で探す方法もあります。
Gum Treeの仕事コーナーで"internship"で検索した結果がコレです。
さらに、個別の企業に「仕事ありますか」とダイレクトにアタックをかけたり、「仕事やります」という個人広告を出したりして、そこで「給料は出せないけど、とりあえず1か月のインターンならオファーできるよ」と返事が来たりするわけです(それまでの職歴キャリアと現在の状況にもよりますけど)。
要するに
インターンの機会なんか無限にあるということです。
ドアはどこにでもある。無数にある。
ドアが無くても、呼びかけたらドアを作ってくれたりもする。
インターンのポイントは「インターンをすること」自体ではないです。
どの方面の、どんな企業・団体の、どんな職種のインターンをして、
その結果として自分は何を得たいのか?
という、
インターン先の(戦略的)選定こそが最重要課題 だということです。
それを考えずに、ただ「何となく」インターンをやっていてもあんまり意味ないというか、受け入れ先にしても、「何しに来たの?」的な感じでしょう。
実り豊かなものにするかどうかは、お馴染みの「いつもの結論」ですね。
UP TO YOU /あなた次第、です。
実戦的なコツ
そして、それを実行する際にあたって最重要の基盤になるのが「一人でポーンと入っていけるか」です。
知りもしない外国の街角で、知りもしない他人の会社/団体に、「こんちわ〜!」ってズンズン入っていくのは、最初はめちゃくちゃ勇気が要るでしょう。誰にでもできることではないというか、殆ど誰にもできないんじゃないかな。
それをするには、それ相応の「技術」と「タフな精神力」が必要です。
そこが、まさに死命を制するくらい重要な分岐点になるでしょう。
しかしですね、「技術」といっても
こちらでは誰でも普通にやってることなんだから、それほど高度なものでもないです。
わかってしまえば「新幹線の予約をする」程度の技術でしかないです。履歴書大量にコピーしてチラシ配りのように配って歩くか、メールでボンボン送っていくか。最初の自己紹介文やスピーチ部分の英文を作っておけば、あとは同じ事の繰り返しだから、半日もやれば「立板に水」。
また「タフな精神力」と書きましたが、要するにこんなものは「慣れ」です。免許取り立ての新米ドライバーが超ビビって運転してるだけのことで、やってりゃ誰でも慣れてくる。これも数をこなせば(せいぜい10件もやれば)いいだけです。これはもう「タフ」と表現するよりも、単に「気にならなくなる」だけのことです。
その意味ではいえば、誰でも出来ます。出来ないわけがない。
オーストラリアに飛行機に乗ってやってくるという程度の、実務処理能力と「勇気」があれば誰にでも出来る。
一括パックでトライする人が多いシェア探しがありますが、シェア探しが出来たら、これも自動的に出来るようになっているはずです。単純に技術論でいえばシェア探しの方が難しいですから。だって、シェアって普通の一般人/家庭に電話するわけですから、電話しても出ないことが多いし、「営業時間」というものがあるわけではないから訪問時間の設定もプライベートにあれこれズレてくる。それに、最大の難関が「住所」です。これを聞き取るのは鬼のように難しい。だからSMSで送ってもらったり苦労をするのだけど、でも、インターンなんか企業や団体だから住所は最初から分かってるし、調べれば一発でわかる。現場に行っても、シェアの場合は巨大なマンションの○号室とか見当がつかないんだけど、会社だったら看板もある。すごい楽ちん。
だから、出来ないと思いこんでるだけなんですよね。そして、慣れてきて出来るようになるわけですけど、これも「出来るようになる」というよりも、最初から出来るわけで、その実体は
「出来ないという思いこみが消える」だけのことだと思います。そうでなければ、シェア探しなんか100人が100人成功するわけないです。人によって出来たり出来なかったりするなら、僕だってサポートなんかやってられません。絶対出来るからこそサポート出来るわけで、そして、それよりもさらに簡単なインターンシップ探しなんか、それこそ誰でも出来ます。絶対。
むしろ本当に大変なのは、インターンが始まってからでしょう。
だからこそ、ここで不幸をミスマッチが起きることを防ぐために、「ちゃんと探せ」ってことになるのです。
↑以上、2013年の能書きはここまで。
↓以下、1999年当時の「証言ドキュメント」です。
1999年初稿時の原文
日本で外国人に対する日本語教育ビジネスが広がるにつれ、「海外の教育現場で日本語と日本文化を紹介しませんか?」という、
日本語教師アシスタント・ボランティア・プログラムをよく見かけるようになった。
有名どころではインターンシップのプログラムがあるが、ここに限らず雨後の竹の子状態で似たようなプログラムを運営する団体が出没してきた。
日本語教師体験をしてみたい日本人を、海外の小中学高校に「アシスタント」として派遣し、現場で日本語を教える先生をサポートしながら、子供たちに生の日本文化や日本語を教えるという活動内容である。
期間は現地の学期制度に合わせ、1学期〜1年というところ。現地滞在中は、学校関係者等の家にホームステイさせてもらったり、学校の寮に滞在したりする。
ただし、立場はあくまでアシスタントなので、「一人で教壇に立ってはイケナイ(現地の先生のオブザーブが必要)」といった制約があり、現地の先生がすすめるカリキュラムを優先させ、その助っ人的役割が期待される。つまり、一人で好きなように授業を牛耳れるわけではなく、現地の先生や生徒のニーズを汲み取りながら自分のやりたいことと妥協していくことが大事なのである。
また、日本語を教えるといっても、現地の先生や滞在先の人との日常のやりとりなど、一日じゅう英語漬けになる。生徒も先生もそんなに日本語を喋れるわけではないから、基本は英語でのやりとりになるだろう。従って、それ相当の英語力、コミュニケーション能力が求められる。
誰でも気軽に参加できる、という類のプログラムではない。
このプログラムはアメリカ、イギリス、カナダをはじめ、ここオーストラリアでも広がってきた。特に、オーストラリアの学校では、教科としての日本語に人気がでてきて、日本語学習者数が急に伸びたこともあって、現場の教師が対応しきれていないという事情もある。インドネシア語の先生が「あいうえお」だけ覚えて、にわか日本語教師に変身したりすることも現実あるそうだ。そこで、「日本人」という貴重な生の教材をタダで入荷できるとあって、アシスタント受け入れに興味を示す学校は比較的多い。
また、日本人側から見ても、このプログラムは十分魅力的だ。日本語教師として海外で活躍したい人、海外生活を通じて英語力を伸ばしたい/視野を広げたいという人は沢山いる。が、オーストラリアでは既に日本語教師は供給過剰となっており、資格を取得しても永住権がなければ、あるいはかなりの田舎に行かなければ、就職先を探すのはほぼ不可能と言われている。その点、このプログラムに参加すれば、たとえ無給とはいえ、資格も労働ビザも要らずに現地に滞在しながら、「教師体験」ができるというわけだ。
さらに、日本国内の就職事情が厳しくなった昨今では、「大学卒業前後/解雇された後の時間ツブシ」的な利用も増えているだろう。同じような理由で、ワーキングホリデー制度の利用者も増えているようだが、「より中身の濃い、専門性の高いワーホリ体験」としても認識されているようだ。
私(福島)はオーストラリアに移住した頃、こういったプログラムを運営する会社に勤めたことがあります。個人経営の小さな会社でしたが、このプログラムは好調で導入以来、急成長を遂げていました。
オージースタッフが日本人アシスタントを受け入れる学校を開拓し、日本人スタッフが参加希望者との連絡等にあたっていました。手配する側からみて、大変だったこと、疑問に思っていたことは次のような点です。
学校開拓
オージースタッフが最も苦労していた点。日本人参加者人数分の受け入れ校を探すのが大変なのだ。アシスタントを受け入れたい学校は結構多いのだが、同じようなプログラムを運営する団体が急激に増えてしまったので、派遣団体同士で新規受け入れ校獲得合戦が繰り広げられていたりする。
インターンシップのような老舗では以前から派遣している学校を確保しているので比較的都会・郊外の学校を手配できるのだろうが、後発団体はどうしても田舎の学校をあたっていくしかない。バスで何十時間もかかるような陸の孤島まで派遣するようなこともあった。
新開拓するために学校宛にDM(ダイレクト・メール)を定期的に打っていた。が、ある学校の日本語教師によると「このテのDMが机の上に山積している」そうだ。そこで、よりインパクトのあるDMにするために、スタッフ全員で折鶴を折って、DMに同封したりという、涙ぐましい人海戦術も行われていた。
学校とのコミュニケーション問題
都会や郊外ならばスタッフが直接出向いて、プログラム内容を学校側に説明することも出来るのだろうが、田舎となるとイチイチ出張していられないので、電話とファックスのやりとりのみになる。こちらがいくら文書を送っておいても、忙しい現場の先生がすべての書類に目を通してくれるわけでもないので、会社が設定したルールや連絡事項等がうまく伝わらないこともあった。
日本人アシスタントの質
参加希望者には日本で面接をして、合否を出すことにしているのだが、「やる気のある人から可能性を奪う権利はない」という美しい言い訳と、やっぱり背に腹は代えられないという経営事情から、まず全ての人に合格通知を出していた。
よって、派遣されるアシスタントの質には大きな差が出てしまう。なんの心配も世話もせずとも、先方にも感謝されて本人も充実した時を過せるという素晴らしいアシスタントさんは、全体の2〜3割に過ぎない。可もなく不可もなく、多少の問題はありつつも大過なくやれる人が半分くらい。残りは「てんやわんや」ケースである。
「アシスタントの素行」について学校側からクレームが来たり(学校はアシスタントの能力について文句を言うことはまずなかった)、現地の人とアシスタントの間の人間関係がどうにも修復不可能になったり、カルチャーショック/ホームシック/病気等で放置しておくわけにはいかない状況になったり。この「現地サポート」という名の尻拭的作業に、スタッフはほとんどの時間と労力を費やすことになるのだ。
もちろん、学校やホームステイの受入状態があまりにもヒドイ場合もあったし、性格的に合わないってこともあったが、トラブルの8割がたは日本人側に原因があるようだった。
また、事前研修を行っていなかったのも「アシスタントの質のバラツキ」に影響していたと思う。インターンシップをはじめとするいくつかの団体では、参加者に任意で研修の機会が与えられており、現地生活について/英語について/日本語教授法などを一通り学んでおくことができる。もっとも、研修で習った一般的な日本語教授法など現場では大して役に立たないことが多いようだが、それでも研修を通じて参加者の不安を和らげ自信に繋げたり、ある程度の質を維持するための方策としては有効なのではないかと思っていた。
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この会社では、広告費もほとんどかけなかったのに(ポスター等DMを大学などに送るだけ)、参加希望者はどんどん増えていました。費用がインターンシップよりはずっと安かったのも一つの理由でしょうが、おそらく参加希望者の全体パイが増加していたのだろうと思います。プログラムの認知度があがると同時に、多くの人たちの需要に合致したのでしょう。
もし、今「日本語教師アシスタント ボランティア」に参加してみたいと思われている方にアドバイスするとしたら、次のようなことでしょうか。
運営団体に支払う参加費用はバカにならない金額である(団体によっても相当の開きがある)。その団体の運営方針や運営費の使い方、研修先決定までの段取とスケジュール(ギリギリになっても受け入れ先が決まらない、なんてこともありうる)、事前研修の有無、研修中のサポート内容などを確認し、納得した上で申込むこと。
運営団体に頼らずとも、現地で自力でクチを探すことも十分可能。ワーホリや学生ビザで渡豪して、学校をハシゴして校長に交渉して廻ればどこかで雇ってくれるかもしれない(成功例もあります)。もっとも英語力・交渉力がなくては話にならないし、出国前に必ずクチが見つかると確約できるわけではないが。
英語力はあるに越したことはない。が、英語そのものよりも交渉力、コミュニケーション能力の方を鍛えておいた方が現場では役立つだろう。でも、自分の言いたいことも伝えられないくらいの英語力ならば、参加する前に力をつけるべし。
実際に「インターンシップ プログラム」を利用して、オーストラリアでインターン(日本語教師アシスタント)を経験された、小島さんから体験レポートを送っていただきました。
★→小島さんの体験レポートを読む
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福島:99/12/20
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さらに関連:オーストラリア移住に関するもの
オーストラリア移住について INDEX
第一の関門:VISA
ビザの原理原則/技術独立移住永住権/頻繁に変わるビザ規定/専門業者さん/その他の永住権/永住権以外の労働できるビザ
第二の関門:生計
ビザ用のスキルと生計用のスキル/「日本人」というスキル/世界のオキテ/オーストラリア仕事探しサイト内リンク
戦略と戦術(その1)
フォーマット設定/欲望のディレクトリ〜永住権だけが全てではない、手段と目的を明瞭に意識すべし
戦略と戦術(その2) よくある基本パターンと組み合わせ
永住権優先でいくか、ステップアップ方式でいくか/「はじめの一歩」をどうするか/利益衡量/ストレート永住権の場合の具体的戦略/ステップアップ方式の場合の具体的戦略〜意外と使えるワーホリビザ/ダメだった場合〜あなたにとっての「成功」とは何か?/先のことは分からない/
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