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今週の1枚(05.02.21)





   ESSAY 196/英語の学習方法(その13)−リスニング(2)


 パターン化しやすい口語表現/口癖のようなボカした慣用表現、長文リスニングのフレームワーク


写真は、Crowsnestの昼下がり


 リスニングの第二回目です。
 前回は、リスニングがなぜ難しいのかという原因論と、原音に忠実な音声データーベースの構築について触れました。

 次にリスニングの一般的な傾向を考えてみますと、「パターン化されている」という特徴があるように思います。
 これは単にリスニングの特徴というに留まらず、ひろく一般的に、読み+書き系の文書言語に対する、聞き&喋り系のいわゆるオーラル系/口頭言語の特徴といってもいいかもしれません。

 文章作成においては、ゆっくり時間をかけることが出来ます。作家の先生などは、机の前でウンウン唸りながら文章をひねり出したり、1日かかって3行しか書けなかったりすることもあるくらいで、とにかく時間をかけられる。時間をかけられる分だけ、文章言語は口頭言語よりも、言語的にハイレベルになりますし、よりミスが少なくより的確なものが求められます。

 これに対して口頭言語の場合は、予め原稿を用意して読み上げるスピーチのような場合を除いては、即興でやっていかねばなりません。頭の中で言いたいことが思い浮かんでから、それを言語化して表現するまでの時間が極端に短いです。ほとんど1,2秒くらいでやります。面接やインタビューで難しい質問を浴びせられたり、高度な交渉術や法廷での証人尋問のように”その一言が死を招く”ような場合は、数秒以上考え込んだりしますが、そんな重要な局面は少ないです。大体は、思いついたそばからぱっぱっと言葉にしていってます。

 そうするとどうなるか?どうしても表現はパターン化されていくと思うのですよ。なぜならそんなにイチイチ改まってゼロから文章を構築していくような面倒臭いことやってるヒマはないですからです。

 例えば、窓の近くに立っているあなたに、友人が「ねえ、雨降ってる?」と聞いてきます。「降ってないよ。でも、なんか降りそうな感じ」って答えたりすると思うのですが、そのときの表現なんか殆どがパターン化された言い方でしょう?自分だけのオリジナリティ溢れる言語表現なんか、普通は、まあ、考えませんよね。「空はいまにも泣き出しそうに、暗色の予兆をはらみつつも、あたかも会戦前夜の遠征軍の宿営地のような静けさを宿している。その静粛さは、ある種の時間の弛緩感覚をもたらし、弛緩は、しかし、降雨のいよいよの間近さを逆に物語っているようだ」なんて答えないでしょ?口語でもいちいちそんな具合に即座にすらすら文章が出てきたら、あなたは文豪になれます。

 文語表現にもそれなりのパターンはあります。言語なんかパターンが全てって言っていえなくもないです。しかし、冷静に考えてみれば、口語表現の方が慣用的なパターン化されたフレーズにより多く寄りかかっているといっていいでしょう。





 このパターン表現が、リスニング(あるいはスピーキング)における一つの突破口になるんじゃないか、って気がします。つまりは、「非常によく使う口語表現」ですね。これを、辞書みたいにある程度網羅的に編纂し、しかも細かなTPOの解説を付したら、かなり役に立つものが出来るような気がします。が、しかし、そういった本は、寡聞にして僕は知らない。

 もちろんそういった意図で編纂された英語教材本は沢山あります。僕もいくつか持ってます。しかし、とてもじゃないけど、網羅的ではないし、掲示されている例の半数くらいは「そうかなあ?そんな言い方するか?」と疑問があるものだったりします。これはもうしょうがないですよね。英語圏世界は広いですから、エリアエリアによって言い方は違いますし。それはさておき、概して解説が乏しいという恨みがあります。訳しかないような場合も多い。これじゃ、使えないんじゃないかって気もします。言葉というのは、その単語やフレーズそのものを覚えるのは、100%のうち10%くらいだと思います。あとの90%は「どういうときに、どういう感じに使うか」という「使い方」です。そこをもう少し噛み砕いて書いてくれるといいのになあって思います。大体は、「スラング」「古めかしい言い方」「文語」とか大雑把に分類してるだけですからね。

 まあ、結局、まとめてある本に頼るのではなく、自分で実際にひとつひとつ拾い上げて覚えていくしかないのでしょう。それが王道なんでしょう。実際に会話をしたり、ネィティブの会話を横から聞いたり、テレビやラジオ、映画、さらには小説や新聞などで、繰り返し繰り返し触れることにより、「なんか、これってよく使うフレーズだよな」っていうものを拾い上げていってください。結局、それしかないって気がします。





 ただ、同じくパターン化された表現であったとしても、そこからさらに幾つか分類分けすることができるでしょう。系統としては、

 A:なんの気なしに、ほとんど口癖のように使う慣用表現/単語
 B:ある程度まとまったボリュームがあり、複雑な内容を喋るときによく使われるフレームワーク

 のニ方向に分かれると思います。もちろんAとBの中間的な部分にもまた散在しているのですが、極としては、あまりにもありふれていて、いちいち熟語とかイディオムとか慣用句とかいうピックアップもされないような方向性が一つ。これが南極だとしたら、北極にあるのは、個々のフレーズは全然慣用的ではないのだが、全体のフレームワークが慣用的なもの、です。

 Aが聞き取りにくいのは、それがあまりに慣用的過ぎて、口癖のようなものなので、その言葉本来の意味がボヤけてしまい、それ自体に意味があるんだかないんだか分かりにくいという点にあるのだと思います。話が抽象的で何を言ってるのか分かりにくいかもしれませんが、そうですね日本語に置き換えてみれば分かりやすいでしょうか。日本語で「〜ていうか」とか、「〜みたいな」「〜って感じ」とかいう言い方がありますよね。これはリアルタイムの日本人は非常に良く使います。特に若い世代に良く使われる。おそらく1日喋っててれば100回も200回も言うんじゃないかってくらい頻繁につかわれる慣用表現だと思います。その表現に確固たる意味はあるのか?というと、あるような無いような、、、であり、ほとんど口癖みたいなものでしょ?

 こういった表現は、あまりそこに多くの意味を求めてはいけないし、たいした意味もなく癖みたいに使ってるから、リスニングもそこそこでいいです。だから、「あ、いま何て言ったの?大事なこと聞き逃したかもしれない」とパニックになる必要はないです(^_^)。



 英語にもこういうフレーズは結構あります。例えばですね、改まっていうと思いつかないものですが、何度か紹介したフレーズで、 "actually" って言葉があります。「アクチュアリ」と発音しますが、現地の人はメッチャクチャよく使いますよね。これはオーストラリアだけ、シドニーだけの特徴なのかもしれないけど、ほんとに1日100回くらい使ってるんじゃないかってくらいで。いつぞや、こちらのTVかラジオ局だったかで、「最近局内(職場)で面白いことあった?」みたいな、ほとんど内輪の雑談みたいな気楽な内容の放送があったのですが、「”actually”と言ったら罰金1ドル」という取り決めをやってたそうです。つまり、皆あまりにも無内容にactuallyを使いすぎる、放送に携わるものがこんな言語感覚でいいのか?みたいな部分が出発点だったらようですが、半分はまあ職場の遊びですよね。で、それをやったら、誰も彼もが罰金だらけになってしまったという。日本語でいえば、「てゆうか」を言ったら罰金100円みたいな感じでしょう。

 実際、actuallyを、より実践的に、よりニュアンスに即して意訳するとするなら「てゆうか」だと思います。辞書によれば、actuallyは、「実際には、本当は」という意味ですが、そういう具合に理解するとニュアンスが汲み取れません。説明すると長くなるのだけど、、、これ、以前どっかに書いたことあるぞ、あったあった、シドニー雑記帳時代の「近況/更新が進まないイイワケ 」に入ってますね。6年前に書いてるわ。こちらをご参照ください。





 この種のフレーズは、ほかにも"just"の使い方なんかがあります。ジャスト/justも非常によく使いますね。この機会にちょっと解説しておきますが、ジャストは辞書的には「丁度、まさに、正確な、ほんの」とか色々な意味があります。実際にもいろいろな意味があるのですが、「口癖のように使われるパターン」としては、日本語の「ちょっと」に相当すると思います、日本語の「ちょっと」も、実はかなりいい加減に使われている頻用語でしょう。「ちょっといいですか?」「いや、ちょっと、、」「ちょっとお聞きしたいのですけど」などなど、別に「ちょっと」と言っても言わなくても大差ないような場合に使われるでしょ。「ちょっと」って何よ、何が「ちょっと」なのよ?って、改まって突っ込まれたら困るというか。

 「ちょっと」という言葉を使う人間の心理を分析してみますと(大袈裟な言い方だけど)、「そんな大した事じゃないんですよ」「シリアスに受け止めないで、軽く流してくださいね」という、あくまで事態を軽く軽く演出したい、そんなに大袈裟に、改まって、深刻に受け取ってもらうと困るという心理があると思うのですね。「いいですか?これは非常に重要なことなんです!」というのと対極にあるような言い方で、「ちょっとお尋ねしますが」のときは、「そんなに長い時間手間をとらせるような面倒くさいことをあなたに持ちかけてるわけではないんですから、安心してね」ってニュアンスがあり、「おや、どちらへ?」と聞かれて「いや、ちょっとそこまで」と答えるときは、「いや、別に改まっていうような重要な案件で出かけているわけでもないですよ」「聞いても面白くないようなありふれた行動ですよ」という軽い感じを出し、もっといえば「いちいち答えるのも面倒くさいから答えません」「none of your buisness」という感じでしょう。要するに「大した事ないのよ」ということで、相手の注意喚起を低いレベルに押さえたいときに使うんじゃないかなって思います。

 英語のjustも、似たような感覚で、電話でなにか聞きたいようなことがある場合、"I just want to make sure about,,"とか、"I'm just calling about,,"とか言います。「あー、ちょっと○○についてお聞きしたいのですけど、、」という感じですね。「すみません、ちょっと、、」という感じで人に話し掛けたいときは、justという言葉は知ってて損はないでしょう。日本人は、なぜか、"I would like to"構文がやたら好きで(というか文例集によく載ってる)こればっかり使ってるけど、ややかしこまった言い方なので、使っておかしくはないけど、そればっかというのは不自然でしょう。I'd like to を覚えるんだったら、あわせてI just want to も覚えておいた方がよりナチュラルになると思います。「お紅茶かなにかいかがかしら?」「あ、では、紅茶をいただけますか?」というような場合は、I would like toと言った方がいいですけど、「あ、すみません、ちょっと-」ってカジュアルでさりげない感じで言いたかったら、I just- の方が自然だと思います。


 あと、ジャストって入れた方がリズム&メロディというか歌詞的にも安定する、言いやすいって点も、「ちょっと」と同じですね。日本語の「ちょっと」も、これを入れたほうが発音しやすいでしょ?「すみません、ちょっとお聞きしたいのですが」と「すみません、お聞きしたいのですが」とでは、「ちょっと」を入れたほうがリズム的に言い易くないですか?"I want to make sure"よりも"I just want make sure"の方が言いやすいです。ここで「言いやすいな、たしかに」と感じるようになったら英語のリズム感が大分身についてきてると言ってもいいのでしょう。

 英語のjustには、「ちょっと」以外の意味もあります。雰囲気で自然にわかると思いますが、「ただ〜だけ」って言いたい場合にも使います。"What are you doing?""I'm just shopping"「なにやってんの?」「いや、別に、ただ買い物してるだけだよ」っていう場合ですね。「一個だけでいいんですね?」「一個でいいです」"just one?""just one"。


 あと、肯定強調のjustというのが良く使われます。”just beautiful"など、感極まったような言い方でいいます。感情表現が豊かなオバサンとかがよく使いますよね。両手の胸の前にもってきて、ゆっくり開きながら、”じゃすっ、、びゅーぅーてぃふうる”と言います。これは、「ただ美しいだけ」と訳すべきではなく、「ただ、もう、美しいの一語に尽きる」という意味です。理屈でいえば、「美しい」という要素以外何もない、100%ピュアに「美しい」、だから「”美しい”しかない」という意味で、justを使うのですね。日本語の英語教材とかにはあんまり載ってないかもしれませんが、非常によく使いますよ。こちらは、楽しい体験などをお互いに熱く語り合って幸福をシェアする文化がありますから、「いかに素晴らしかったか」というテーマや表現は、本当に日常的に年がら年中やってます。そういった会話に参加して、日本の紅葉の素晴らしさを力説してくださいね。just beratiful!って。
 そうそう、「午後6時ジャストに出発します」とか、時間をきっかりと定めるときに「ジャスト」といいますが、あれは日本語です。英語で「6時きっかりに」といいたかったら、 シャープって言ってください。”6 o'clock sharp”って。英語のjustには、そんな意味はないですから、”6 o'clock just”って言っても、「ちょっと6時に」「6時だけに」という感じに聞こえるでしょうから、と怪訝な顔をされます。よく間違えるところですので、注意。






 こんなにイッコイッコ解説してたらいくら紙面があっても足りません。"I mean"とか、"kind of "とか、"pretty"とか、、、
 実例に即して、一つ一つ拾っていってください。

 ただ、これだけは考えてください。
 これらの頻用フレーズは、なぜ頻用されるのか?です。それは「便利だから」です。便利で重宝するからこそ皆が頻繁に使ってるのです。便利じゃなかったら使わないです。そして、だからこそ、これらのフレーズは覚えると「便利」なんです。スピーキングの際にかなり威力を発揮します。


 なにがどう便利なの?というと、多分こういうことだと思います。
 口語言語は、即興で言わなければならないだけに、なかなかネィティブでも思ったとおりのことを的確に一発で表現できない。表現できないから、行き過ぎた分を削り取ったり、足りない部分を補ったりの補正作業をしたり、的確に表現できないまま「ね?分かるでしょ?」で雰囲気で強引に分からせようとしたり、明確に言いたくないので適当に誤魔化したりします。それは日常口語の、ある種普遍的なパターンだと思うのですね。

 日本語の慣用フレーズ、さっき例示した「てゆうか」「みたいな」「感じ」なんかもまさにそうでしょう?はっきり的確に上手に表現できないから、ボヤヤンとした状態で、「これで、なんとなく分かるでしょ?分かってよ」ということですよね。その怠惰な部分を敏感に感じ取って、年配の人などはこういった「だらしない表現」を嫌ったりするのでしょう。「日本語もまとも喋れない」って。それはそのとおりだと思いますよ。そんな曖昧言語を使わずに表現できたらそれに越したことはないですから。また、そのための努力を怠るべきでもないでしょう。特に目上の人とかビジネスシーンでそんなだらしない、スロッピーな言葉遣いしてたら馬鹿だと思われても仕方ないです。しかし、誰も彼もが常日頃から完璧に言葉を使いこなせるわけでもないし、言葉の完璧さにエネルギーを注ぐくらいなら、内容の面白さと深さ、切り出すタイミングの良さにエネルギーを注ぐべき場合もあります。特に友達同士の気楽な雑談なんかではそうですよね。

 英語でも同じようにドンピシャといえないし、言いにくいようなときに、各種の補正表現、例えば I mean =「つまり」「いや、私が言いたいのではすね」「誤解しないでくださいね」などがよく使われたりするのだと思います。「みたいな」は、like, kind of , sort of などですね。

 このあたりの、誤魔化しフレーズっていったら表現悪いですけど、適当にボヤかしたいときもあるわけで、そのあたり、なぜそれが頻用フレーズになっているのか、これを覚えるとどう便利なのか、を考えておかれるといいと思いますよ。

 ”How can I say,,"なんかも、こちらに来た当初「わ、これ便利だ」と覚えましたけど、「なんて言えばいいのか、、」という意味で、要するに、的確な英語が思いつかずウンウン唸ってるとき、だからといって完全に沈黙してたら会話の雰囲気が凍ってしまうから何か口に出さなければならず、「非常に表現するのが難しいことを言おうとして、いま頑張ってます、もうちょっと待ってね」というシグナルを発信したいようなときに、「うーん、、、はうきゃなせい、、、」とか言ったりしてました(^_^)。まあ、「ツナギのフレーズですよね」。もう少しカッコよく言いたかったら、How should I put it....(どう表現すべきか)なんて言い方もあるでしょう。

 some とか somethingも、ボヤかし言葉によく使います。
 twenty someting girl, forty something gentlemanは、20歳代(とおぼしき)の女性、40代の男の人という意味です。
 something like that=みたいなもの
 or something =〜か何か He is a teacher or something(彼は教師かなにかだ)

 究極のボヤヤン言葉だったら、thingumbob というのがありますね。シンガンボブといって、「なんとかさん」「なんとかというもの」というボヤヤンとしたものをボヤヤンとしたまま表現する場合に使います。日本語でも言うでしょ、「ほら、その、なんとかっていう役者」みたいな言い方ですね。


 ああ、しかし、こんなの書いていると、やっぱり全体の体系とか抜きにして、一つづつ単語単位で解説していった方がいいのかもしれないって気がしてきますね。おっそろしく長くなるでしょうけど。







 Bパターンにいきます。Bパターンはなんだったかというと、慣用的なフレームワークですね。

 一応聞き取れるんだけど、文章が長くなってくると、情報の整理がおいつかなくなって、何がなんだか分からなくなって破綻してしまうって場合にこの種の勉強をするといいでしょう。

 この症状は、英語構文のフレームワークが頭に入ってないから、順次耳から入っていく情報をどこにどう置いて、最後に統合整理すればいいのか、情報処理の手順があいまいだから生じるのだと思います。

 たとえば、"What I'm going to say is little bit different from what you are trying to say"とか早口で言われたりします。耳には、「わったいむごういんとぅせいいずりとぅびっでぃふぁれんふらまわっちゅあとらいんぐとうせ」と聞こえるわけで、「あーー!わからん!」と言うことになりがちです。意味は、「僕がこれから言おうとすること、君が言おうとしていることはちょっと違うんだけど」ってことです。もっとカジュアルな会話として訳せば、「うーん、君が言わんとしてることとは、ちょっと違うかもしんないんだけどさ」ってことです。ちょっと噛み合わない意見なんだけど、それを承知のうえで、言ってみたいんだけどってことですね。

 これをなんの展望も予想もないまま、頭から順次理解しようとしようとしてたらパンクしても仕方ないと思います。
 これは、文法的に言えば「Whatの用法」になるのでしょうけど、「〜〜っていうこと」という具合に、あとに続く一文を what で括ってしまうという用法ですね。上記の文章も長いのですが、構造を単純化すれば、A is diffrent from B と言ってるだけでしょ?AはBと違うよ、と。この主語であるAが、cat とかdog とか簡単だったら、A cat is diffrent from a dog.で容易に理解できます。しかし、Aの部分が、「僕がこれから言おうとすること」いう具合に一文になってしまうから複雑に聞こえるのですね。一つの文章の中にまた小さな文章が入り込んでいるのを重文とか複文とか言いますが、SVOなどの文章構造が二重三重になるから、気をつけて情報処理をしてやらないとゴチャゴチャになってしまうわけです。

 じゃあ、この情報整理とやらはどうやればいいのか?といえば、予測でしょう。こういう形で始まったら、こういう形に文章が展開するだろうなという予測です。「はい、こっからここまでが主語ね」って逐次整理しながら聞いていけばいいんです。そして、Whatで始まりながら、疑問文の展開にならない、つまり What are you とかWhat do youとかbe動詞や助動詞が続かないで、What you..という形ではじまったら、「あ、長い主語が始まるぞ」と身構えるべきなんですね。

 そして、主語が終わって、いよいよ連結部に入るわけですが、"is"がはいることによって明示されるわけです。色分けしたら、こんな感じになると思います。 What I am going to say is little bit different fromwhat you are trying to say.

 そして、通例、喋る場合は、これらの展開を分かりやすくするために、isのところで一息入れるなり、ひときわ大きな声でいうなりします。わったいむごういんとぅせい、、いず、りとぅびっでぃふぁれんふらむ、、わっちゅあとらいんぐとうせい という感じです。今度こういうリスニングをする機会があったら、注意してお聞きになるといいと思いますが、「いーーず」って「ここが区切りだよ!」って感じで発音されるのがわかると思います。





 これがフレームワークというものです。
 このフレームワークを身につけておけば、いくら文章が長くなってもついていくことが出来るようになります。さっきの文章ももっともっと長くなります。インテリの人とか、アカデミックやビジネス解説などでは、実際良く使われますが(言うべき内容がもとから複雑だから)、長く長くなるのですよね。例えば、「さきほどから貴方が躊躇いながらも、そして決然として言おうと試みておられることと、私がこれから述べようとすることは、いささか論点がかみ合ってないかのように、それはもちろん残念なことなのですが、感じられるかもしれません」という具合にどんどん長くなっていくわけですね。"What I'm going to state might be perceived a little bit irrelevant, regrettablly, of course, from what you have been hesitantly, yet decisively trying to say," てな感じに長く複雑になっていくわけです。

 映画でいえば、「羊たちの沈黙」「ハンニバル」「レッドドラゴン」三部作のアンソニー・ホプキンス演じるドクター・ハンニバルなんか、この種の言い回しが非常に多く、DVDで英語字幕を追っていても疲れます。

 まあ、こんな難しいレベルはさておき、基本的なフレームワークを知っておくこと、そしてそのフレームにあわせて展開を予測し、適切に情報を処理していくこと、これが長文リスニングの基本技術であろうと思います。

 そして、この長文フレームワークのパターンは、実はそんなに多くないです。上に述べたWhatで括る構文と、あと数回前に述べた、The 比較級+The 比較級構文とか、皆さんお馴染みの so 〜that構文とか、文法などでよく出てくるものが多いでしょう。あと、in order to とか according to とかの、接続詞や接続的イディオム。だから、文法とか構文をきっちりやっておかれるのが、一番の近道なんだと思います。

 あらためて確認しておきますが、文法や構文というのは、情報処理のシステムワークのことです。





文責:田村

英語の勉強方法 INDEX

(その1)−前提段階  ”量の砂漠”を越える「確信力」
(その2)−波長同調
(その3)−教授法・学校・教師/スピーキングの練習=搾り出し
(その4)−スピーキング(2) コミュニケーションと封印解除
(その5)−スピーキング(3) スピーキングを支える基礎力
(その6)−スピーキング(4) とにかくいっぺん現場で困ってみなはれ〜二つの果実
(その7)−スピーキング(5) ソリッドなサバイバル英語とグルーピング
(その8)−リーディング(その1) 新聞
(その9)−リーディング(その2) 新聞(2)
(その10)−リーディング(その3) 小説
(その11)−リーディング(その4) 精読と濫読
(その12)−リスニング(その1) リスニングが難しい理由/原音に忠実に
(その13)−リスニング(その2) パターン化しやすい口語表現/口癖のようなボカした慣用表現、長文リスニングのフレームワーク
(その14)−リスニング(その3) リエゾンとスピード
(その15)−リスニング(その4) 聴こえない音を聴くための精読的リスニングほか
(その16)−ライティング 文才と英作文能力の違い/定型性とサンプリング


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