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間違いだらけの留学&ワーホリ生活


  〜チマタでよく聞く「都市伝説」を検証する〜

 このコンテンツはコラムです。
 皆さんの留学&ワーホリ生活をヘルプしている間に頭にぽっかり浮かんだこと、妙にチマタに蔓延している都市伝説まがいの誤解など、メモ書きあるいはエッセイ風味で軽く書いたものです。


1.「日本人の少ない学校」の矛盾
2.今通っている学校に不満がある場合どうするか?
3.学校へのコンプレインの方法
4.現地に着いたらすぐ銀行口座を開設すべきか?
5.現地に着いたらすぐTAX FILE NUMBER(TFN)を取得すべき?
6.イノチより大事なパスポート?
7.ジャパレスで働いても英語が伸びない?
8.タックスリターンをすると税金が返ってくる?
9.レシートを取っておくと出国の際に消費税分を返して貰える?

1.「日本人の少ない学校」の矛盾


 「日本人の少ない学校が希望です」と多くの人は言います。確かに日本人ばっかりだったら日本語使ってしまうから英語学習にはよろしくない点もあるでしょう。でも、「日本人が少ない」学校が日本人に人気があり、多くの日本人が入学したら、「日本人が少ない」というメリットは帳消しになっちゃいます。

 これってISP(インターネットのプロバイダ)に似てますね。人気のあるプロバイダは皆が回線を使うから重くなる。会員数が少ないプロバイダは回線が空いてるからサクサク動く。しかし、「サクサク動く」で人気になったら人が殺到して重くなる。もし重くならないままだったら、会員数が少ないままということで、やがて経営不振で潰れてしまうという。うまくいかないもんです

 あなたが平均的な日本人だとしたら、あなたが「いいな」と思うような学校だったら、他の日本人も「いいな」と思ってるわけですよね。だからある程度日本人がいるのはしょうがないことだ思います。むしろ全然いない方がブキミでもあります。

 もし本気で日本人の少ない学校が良いのだったら、他の日本人が到底選びそうもないような学校、ということになります。例えばチャイナタウンの隅っこにあって、学生の99%は中国人で、先生も中国人で、授業中も休み時間も中国語が飛び交ってるような学校だったら日本人は少ないでしょう。それでもいいの?

 問題は日本人比率ではなく、通ってくる日本人の「特性」だと思います。シリアスに勉強したい日本人なのか、とにかくお値段重視なのか、友達作りに来ているだけなのか、です。「日本人」といっても一枚岩ではないです。実は無茶苦茶いろんなタイプの日本人がいます。だから「どういうタイプの日本人がいるか」の方が大事でしょう。


2.今通っている学校に不満がある場合どうするか?


 結論から言いますと、「素晴らしい学校だと無理やり思いこめ!」ということです。

 「そんなムチャな」と思うでしょうが、理由は山ほどあります。
 まず、学校に対する不満点が個別に特定できる場合は、それを学校に伝え、改善して貰うように申し入れたらいいです。コンプレインです。これは大事なことで、このやり方はまた別項に書きます。
 しかし、事態を改善するためにやるべきことそれだけであり、それ以外に「ココがダメ、あそこがなってない」とブチブチ言うのは百害あって一利なしです。

 なぜなら------

 理由@:実効性ゼロ

 オーストラリアの学校の場合、殆どの場合、キャンセルしても授業料は返ってきません。ブチブチ不満を垂れてそれでお金が戻ってくるなら、幾らでもブチブチ言うべきですが、それで何ら現実が改善されないなら、ブチブチ言うだけ時間の無駄です。

理由A:ハロー効果

 一つの思いや先入観に引っ張られて全体が見えなくなる心理状況をハロー(後光)効果といいます。仏様のように後光(先入観)がさしていると何やらありがたく思える。ビジネスの労務管理、能力査定などでよく出てくる概念です。

 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」心理といえば分かりやすいでしょう。一つ何かにつまづいて波に乗れないと、何もかもがイヤに思えてきたりします。職場でも、学校でも家族でも恋愛でもどこでもあります。「あー、もー、イヤ!」ってテーブルひっくり返したい気分になったりします。でも、これってネガティブな心理が雪ダルマ式に増幅しているだけで、きちんと真実を反映しているわけでも何でもないです。

 難しい学術的説明は出来ませんが、要するに「機嫌の悪いときは全てが不愉快に思える」ということで、僕らが子供の頃から延々経験してきている、いわばありふれた心理状態です。こんなもんに騙されてはいけない。
 しかし、騙されるんですよねー。フレンドリーで和気あいあいとしたクラスの雰囲気も、一つボタンが掛け違って自分が馴染めなかった場合、「甘ったるくて、チャラい集団」に見えたりします。「け、いい年こいて、何が”イェー!”だよ、バッカじゃねーの、こいつら!」って気分になりますよ。人間というのはハッピーな状態にあるときは、客観的にはアホに見えます(盛り上がってる宴会を想起せよ)。スネ夫君状態になって自分もアホになれなかったら、ひどくツライんです。

 問題はこの先です。不愉快になって苦虫噛みつぶしたような顔をしていると、誰もおっかながって話しかけてきません。あなただってそんな奴に話しかけたくないでしょう?だから、友達できない(まあ、世界の人は空気読みませんから、平然と話しかけたりもしますけど(特に南米系))。いきおい会話機会も減ります。放課後のパーティなんかも行かないし。英語ってのは「使ってなんぼ」ですから、学校で口がくたびれるくらい喋られなければ伸びません。不機嫌になってると心理的に不愉快なだけでなく、大事な学習機会も逸してしまいます。すごい勿体ないよ。

 この地獄の悪循環は「死に至る病」ですので、何が何でも途中でブッタ切らねばなりません。だから無理やりにでも笑え、哀しいときこそ笑え!ってなもんで、スパンと気分転換する必要があります。まあ、「言うは易し」で中々難しいのですが、だからこそネガティブ感情がまだ芽生えた段階でコマメに潰しておくことが大事です。放っておくと成長し、腫瘍のようになって、ついには人格すらも蝕み、恨みがましい人生を送ることになります。恐いです。実はそういう人って結構います。弁護士時代に沢山見てきました。

理由そのB:期待値が不当に高すぎる or 間違っている

 頭の中で勝手に「学校とはこういうもの」と思いこみ、それに合致しない現実にイライラし、不満につながる場合というのがよくあります。この世の中、全てが自分の思い通りに運んでいくわけはありません。そんなことは6歳児だって知ってます。しかし、いい年してそれが分からない人もいます。

 例えば、「なかなか英語が上達しない」という不満があります。しかし、こんなのは100人が100人感じるフラストレーションです。たかが数ヶ月から1年やそこら学校いったくらいで何とかなるほど英語は甘くないです。半年くらいだったら主観的には全然伸びてないような気がしても不思議ではない。客観的には急速に伸びてるんですよ。でも自分ではそう思えない。あまりにも道のりが遠いからだし、いつまでたってもストリートのネイティブの言うことが分からないからです。しかし、10年以上現地で暮していたって分からんもんは分からんです。一生のライフワークくらいに思って取り組んでください。ましてや、1−2ヶ月程度だったら効果があるように感じられる方が不思議です。仮に効果があるように感じられたとしても、そんなのは小手先の改良(例えば特定の発音のちょっとしたコツとか)に過ぎないから本質的な進歩ではない。英語は全然お手軽じゃないです。自分の背丈が伸びるとか、樹木が成長するようなもので、ある程度のタイムスパンで「ふと気付くと成長している」ようなもので、数週間スパンでは全然分からんです。

 また、「こんなに頑張ってるのに」という人もいますが、本人的には頑張ってるつもりでも、客観的には大して頑張ってないケースも多い。「英語の勉強の仕方」 を読んでください。単に学校行ってるだけで英語が伸びると思ってる人は、僕から言わせたらその時点で論外。学校外の時間をいかに創意工夫を凝らして勉強するかで決まります。勉強でも、スポーツでも、仕事でも「出来る奴」というのは、そこが強い。

 あとマネージメント上不可抗力の凸凹はあります。例えば、クラスの国籍構成が異様に偏ってるとか、授業のニーズが自分のと違うとかいうのは、多人数でクラス編成をするという形態である以上不可避的に生じます。日本人比率が20%であっても、その日本人がたまたま全員自分のクラスになることだって、偶然起きたりもします。また、英語能力は文法、語意、読解、スピーキングなど多岐にわたり、人によってその個別能力にバラつきがあります。スピーキングは出来るけど、文法がダメとか、スピーキングでも速さはいいけど正確さがダメとか。授業は、プロの教師が、個々の生徒のバラ付きを見つつ最大限ニーズに合わせるようにしますが、それでも十数人生徒がいたら100%は絶対不可能。100%を求めたかったら個人レッスンしかないわけですが、そうなると1時間50ドルとか100ドルクラスになります。プロフェッショナルを1時間雇うんですからそのくらいかかるでしょう(弁護士雇ったら1時間500ドル取られる)。それを十数人で割りカンにして安くしているというのが学校の形態なのですから、不可抗力的バラ付きは当然のこととして甘受すべきです。だってそれしか払ってないんだもん。

 さらに、自分が強いと思ってる箇所も他人から見たら弱かったりします。だから正しくそこを練習させられていても、本人的には「なんで今さら、、」と不満タラタラになりがちなんですよね。でも、そこで「今さら、、」とか思ってるからこそ、あなたの英語が伸び悩むわけで(弱点を認識できず、うぬぼれている)、本人の意向に100%沿えばそれが素晴らしい効果を発揮するかというとそういうものでもないです。

 その他、先生が人間的に好きになれないとか、クラスメートが気にくわないとかいうのも、言うまでもないけど不可抗力。


理由C:その他の問題が学校に投射されている

 これ、実は結構あります。なんらかの生活上、あるいは人生上の悩みを抱えていて、そのストレスがはけ口を求め、攻撃欲求として生じる場合。要するに無意識的に「やつあたり」してる場合。ただ、これを言い出すとかなり難しくなりますから、指摘だけ。カスタマーサービスとか、店頭、営業など、人間相手の仕事を長くされている人だったら、「ああ、はいはい」と分かると思いますが。


 学校というのは常に流動しています。先生やクラスメートの相性も、人間同士であれば絶対生じるわけですが、毎週クラスの誰か卒業し、毎週だれか入ってきます。数週間に一度はせーのでクラス替えもあります。先生も替わります。また、やってる間に自分の能力の凸凹も均され、あるときを境にグンと楽になることもあります。例えばボキャの少なさがスピーキングの足を引っ張ってるので、スピーキングの練習ではなくリーディング=ボキャを増やすには最適=やらされていたような場合、ボキャブラリが一定量を超えてくるとスピーキングも伸びたように感じるのですね。

 ですので後で述べる個別コンプレインは別として、今の学校が良いか悪いかの判断は通学中は保留にしておき、積極的に周囲と馴染み、会話機会も多くし、先生に質問しまくり、その学校を骨までしゃぶりつくす勢いで利用すべきです。それが一番賢いし、もっとも効果が高い。だから、「無理やりにでも"良い”と思いこめ!」というアドバイスになるわけです。そして、一定期間が終了し、凸凹が均されたあと、はじめて「評価」というのを下せば足ります。途中でイヤになったって、いいことなんか何にも無いよ。


3.学校へのコンプレインの方法


 コンプレイン(苦情)はやるべきです。これは学校に限らず、オーストラリア社会では盛んにおこなれてますし、積極的に奨励されています。コンプレインは、「やっても良い」という権利であると同時に、皆で衆知を寄せ合う「義務」なのだくらいに思っていてください。

 しかし、コンプレインをするにも成熟した技術が必要で、単に不満をぶつけるようなやり方では殆ど成功しないし、場合によっては逆にせせら笑われるだけです。これは、英語以上に大事な西欧社会のオキテ&スキルですので、是非習得しておいてください。学校の授業でもアッパーインターくらいになったらやらされる筈です。さもないと、幾ら英語が喋れても、いざというとき何の役にも立たないわけで、それじゃあ何のための英語学習、何のための海外体験か?って、日本に帰ったときにまた馬鹿にされます(泣)。

 さて方法論ですが、実はホームステイ編で既に書いてます。ホームステイ事情/傾向と対策(後編) リクエスト&コンプレイン編です。ほとんどここに書いてあることと重複しますので是非お読み下さい。

 上を読んだことを前提に(絶対読んでね)、多少補足しておきます。

 授業内容に不満がある場合は、可能な限り個別的に特定しておくこと。特定できないコンプレインは意味がない。対応のしようがないからです。例えば、宿題の答合わせを延々やり続けるのは無駄と感じた場合、「○月○日の授業の場合、午前9時から9時40分まで答合わせをし、しかも単に答を言わせて先生が正否を言うだけのもので解説もない」というくらい特定されるといいです。また、「だったら正解をプリントして配ってくれれば1分で済む」という対案もキチンと出せればさらにGOOD。

 レベルが低い、あるいは高いと感じられたような場合、試験的でもいいから別のクラスに編入してもらうように交渉するのは当然ですが、その場合、学校側もクラス編成やカリキュラムというマネージメントの都合もあります。これに理解を示しつつ、「可能な限り早く」「1−2週間うちに」と刻限を切るのも交渉術の常識。また、編入のための試験をして欲しいと申し出ること、試験をしてくれなかったらいかにクラス替えが必要かを論じた英文(当然)上申書みたいなものをレポート用紙数頁に書いてヘッドティーチャーあるいは校長に提出すること。そのレポートの内容それ自体が既に「テスト」として機能し、「ほう、ここまで書けるんだったら上に上げてもいいかな」と思って貰えるチャンスになる。実際、4枚以上のレポートで直訴した例もあります。ただ、上に述べたようにプロの教師が「キミはこのレベル」と言ったら、本人がどう思おうが、十中八九プロが正しいと思われます。

 授業方法に不満がある場合、個人補習をしてくれるように頼むのも良い方法です。それがダメでも、「スピーキングを伸ばすためにはどういう教材でどう勉強すべきか」と聞くべし。とにかく何度でも話す。腹を割って、うち解けて、自説に固執せず、ともに成長するくらいの感じで話すといいです。

 「そんなにしなきゃいけないのか?」というと、そうです。そのくらい出来なきゃ西欧社会でやっていけないよ。やっていけないんだったら、何のために英語学んでるのさ?意味ないじゃん。語学学校だから問題も小さいし、マイルドな対応してくれますし、ビギナー向けなんですよ。これが大学になるともっと大変ですよ。僕の知人は、大学で必死に勉強して優秀な点を取って喜んでたのも束の間、指導教官からカンニングしただろうと厳しく問い詰められ、いくら説明しても聞く耳もたずで結局落第させられてしまいました。それとて学校という温室レベルであり、これがビジネス現場になれば、申請した永住権の書類を2年以上ほったらかしにされるとか、間違った理由で却下されるとか、家の修理を頼んだら半金受け取ったまま半年以上何もせずに放置されたとか、、、、幾らでもあります。そういう現実社会の荒波でやっていくために英語やってるんでしょ?だから、語学学校でのコンプレインというのは、手頃な練習台です。

 でもね、一見厳しいようでいながら、こちらではかなりフレキシブルに対応してくれるので、本当のことを言えば日本よりもずっと楽なんです。日本の場合は、お客様は神様ですから、丁重に対応してくれはするけど、でも「まことに相すみません、お客様申し訳ございません」と謝ってくれるだけで結局何もしてくれないってケースが多いです。これはもう過去の弁護士実務でイヤというほど体験してます。でもこちらでは、ペコペコ謝ってくれはしないけど、ちゃんと話せば聞いてくれるし、「じゃあ、こうしましょう」と現実的な対案を出してくれる機会が多い

 特にライトパーソンをつかんだら、びっくりするくらい話が早く進みます。これを日本でやろうと思ったら裁判掛けてゆさぶって、粘り強く交渉して2年かかるようなことが、10分くらいで出来ちゃったりもします。大学などでも3年かかるところを、「これはもう日本で履修済だから免除してくれ」と指導教授に交渉すれば1年短縮してくれることもあります。これだけで数百万浮きますよ。

 西欧社会では、"Everything is negotiable."といいます。「全てのことは交渉可能」という意味をよく理解して、行動されるといいです。外国というのは果実に似ていて、外側だけ触ってても苦い皮があるだけですが、奥深くに切り込んでいくと、そこには甘い果肉があります。

 それに厳しいことを言うなら、英語を勉強して、海外修行して、そしてどうするの?目的は?といえば、「海外の(ビジネス等の)現場能力を向上させる」だとするなら、語学学校ごときで手こずっているようでは話にならないとも言えます。だって一歩外に出たら海千山千の連中が相手ですからね。

 余計なお世話かもしれないけど、自分自身の過去の弁護士時代のノウハウでいえば、交渉というのは押したり引いたりですが、「押し」も大事だけど、「引き」はもっと大事です。微妙な交渉ほど、ギャンギャン喚いて主張だけするというのは結構最悪で相手を意固地にするだけで、「うんうん、なるほど、わかります」と相手と波長同調して、譲るべきところは譲る。そしてすっと相手の懐に入り込み、すっと引き寄せて投げを打つという柔道みたいな呼吸が要ります。これは意識的にやってみるといいですよ。スパン!と決まると気持ちいいですよ。最初から上手くいくわけないので、何事も練習です。海外云々だけではないし、日本も含めて万国共通に通用するし(ローカルバイアスは計算しないとダメっすよ)、これが上手かヘタかで、多分一生レベルで数千万円くらい違ってくると思います。いや。冗談抜きで。話が逸れまくっているので、これ以上のこの種のネタに興味のある人は、今週の一枚エッセイの喧嘩道入門でもお読みください(ESSAY 629/「喧嘩道」入門(1) 〜自他の超克以降(6)まで。)



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