ここでは学校のロケーション・性格と、住居エリアとの関連で考えてみます。日々の生活は、語学学校だけで決まるものでもなく、あと半分は住居の場所で決まります。例えば、ボンダイに住んで→シティの学校に行く、あるいはその逆など、「組み合わせ」というのものがあるからです。また、シティのシェアに入り、シティの学校に行き、シティでバイトを探すという全部徒歩圏内で住まそうというワンストップショッピングのような形態もあり、それはどうか?と。
結論的にいえば、ステイにせよ、シェアにせよ、
「ちょっと遠いかな」くらいの感覚で丁度いいと思ってます。特に最初は。
なぜなら、職住近接ならぬ学住
近接過ぎると、生活圏内がとても狭くなってしまうからです。シティに住んでシティの学校に行く、ボンダイに住んでボンダイの学校に行くのは、一見素敵に思えるのですが、それだと本当に生活圏内が限られてきます。ボンダイ固着型になってしまえば、シティに行くのすら面倒になり、ましてや濃くて面白い西方面、緑豊かなノースなどには滅多に足が伸びないでしょう。結局、何をするにも徒歩圏内ということになり、新大久保に住んで歌舞伎町で働いているチャイニーズみたいになってしまいます。
しかし、シェア探しをキチンとやったら分かると思いますが、シドニーというのはサバーブによって恐ろしく色合いが異なり、それがとても面白く、知らずに帰るのは勿体ないです。また、生活圏内を広めにとっておいた方が、学校の帰り道や気軽に「道草」ができますから思わぬ発見や出会いもあるでしょう。また、バイト探しやイベント、パーティー、ボランティアなどなどサーチ範囲が広くなる分、成功率も高まります。
正確な距離感をつかもう
地元民オージーの感覚でいえば、シドニーシティを基点として半径10キロ圏内に住むというのは、東京における山手線の内側のそのまた内側に住むようなもので、メチャクチャ贅沢な話だったりします。
大体
よくある「シドニー地図」がシティ周辺のものが多いので勘違いしがちですが、あれって観光客用のもので、東京でいえば「東京駅と銀座周辺しか載ってない地図」のようなものです。そんなところに「住む」というのがリアリティがないです。
シドニーの距離感を東京に置き換えれば、「山の手の線の内側ライン」は、
北はChatswood、西はStrathfiled、南西はRockdale、南東はMaroubra Junction、東はBondi Beachくらいの範囲がそうでしょう。これより内側のエリアは、山手線の内側だと思っていたら間違いないです。
こんな至近立地になかなか家なんか買えないし、実際、日本の感覚ではありえないくらい高いです。築30年の2DKのマンションが8000万円とか平気でします。一戸建てでこのエリアだったら、ちょっといいなと思ったらすぐに1億から2億円を超えます。ゆえにシティから30キロも50キロも離れたブラックタウン、キャンベルタウン、ペンリスあたりに新興住宅地がガンガン建ち並んでいるのが現地の実情です。
遠足の定番ブルーマウンテンの山麓のペンリスまで、シティからは50キロありますが、この距離は東京駅から八王子までの距離です。あるいは東京駅から横浜過ぎて湘南の手前くらいの距離。ね、大体感覚的に似てるでしょう。ということで、通勤の距離感覚は東京首都圏とそんなに変わりません。
西部のAshfieldからシティまで通ったとしても、東京でいえば秋葉原や荻窪から新宿に通ってる程度のことに過ぎない。実際、Google Mapで路線沿いに計るといずれも9キロ弱でほぼ同じです。
シティだけ見てると、ちょっと離れただけで異様に遠く感じるのですが、地元民の感覚では「すぐそこ」です。ボンダイジャンクションの学校に行くからボンダイ周辺に住みたいというのは、「職場が銀座にあるから銀座に住みたい」といってるようなもので、これも現地人の感覚からは遊離しています。
郊外通学のメリット、デメリット
しかし、郊外に暮すのも通学が面倒だし、交通費もかかるという問題があります。その点はどうでしょうか?
はい、それは「銀座や新宿に住む」のと比べれば、それなりに時間も交通費もかかります。朝は交通渋滞が激しいこと、公共交通機関(とくに電車)がそれほど正確ではないことから、ドアツードアで通学時間が30分以内だったら御の字だと思います。別に1時間くらいかかったとしても、それほど不思議でも不運でもないです。
ただし、
地図上の距離と実際の時間とは全然比例しません。先ほどのAshfield(チャイニーズの街で小龍包が美味)ですが、この駅は急行が停まるので、
時刻表で見たら分かりますが、Ashfieldを朝の8時7分に出たら、レッドファーン17分、セントラル20分、タウンホールには23分に着きます。せいぜい十数分で着いてしまいます。
一方シティが幾ら狭いといっても端から端まで歩けば30分以上かかります。意外と坂はあるし、信号待ちがやたら長いし。だから問題は、地図上の距離ではなく、例えばAshfieldだったら
自宅からその駅までどのくらいかかるかが一番のポイントだったりします。バスでもシティ圏内を離れるとスイスイ流れるのですけど、シティ近辺になると渋滞するので時間がかかる。これがシェア探しのスィートスポットの狙い目で、実戦的なコツになるのですが。
交通費ですが、確かに負担になる部分はあるのですが、その代わりシティ圏内を離れたら交通費分などお釣りが来るくらい安くもなります。
それに幾らシティに住んでるからって、全く交通機関を利用しないってことはないでしょう。海にもパーティにもフリマにも行くだろう。料金は距離で変わりますが、電車でいえば移動距離が10キロ以内だったら全部同じです。バスは3キロ(2.15)と3-8キロ(3.58)と8キロ以遠(4.61)で違いますが、シティをちょっと出たらもうバスの第二料金になります。また
治安の項にも書きましたが、シティの夜は近くてもバスに乗った方がいいです。
ここでケチって交通機関を利用しなくなると、結局、あなたのオーストラリア体験は「歩いていける範囲の体験」という小学生並の活動範囲に限定され、つまるところは歌舞伎町エスニック体験でしかなくなる。それでいいんか?って気もします。逆に、その気になって乗るならばOpalCardの割引ルール(60分ルールや日曜は乗り放題2.6ドル)を活用すればかなり安く済みます。
こまめに移動するかどうかの差は、日々積もり積もっていくので馬鹿にならないです。一回的な差だったら、どんなにハデに見えようが長い目で見れば大したことないけど(クラスの球技大会でヒーローになった/エラーして恥かいた)、毎日着実に積み上がっていくもの(部活でいい友達に巡り会えた)は本当に大きな差になる。終ってみたらオーストラリアに行った甲斐があった/無かったというON/OFFの差に直結していく。
シティには、ローカルの人はそんなに住んでいません。シェアにしろ、同じ学生、ワーホリ同士のシェアが多いでしょう。でも、皆の体験談でもしばしば指摘されているように、地元ローカルの人々との交流が成功の決め手になります。地元社会に切り込んでいくにしても、なんらかのツテや水先案内人がいると非常にやりやすいのですが、住まいというのは違う世界へのドアになる可能性もあります。逆に、自分と同類の連中と暮らすのは気楽で楽しい反面、学校の環境と大差なく、リソースが限られているから、段々やることが無くなってきて行き詰まってくる傾向があります。
英語の学習や異文化体験という観点からいえば、シドニーにある色々な要素を出来るだけ幅広く摂取した方がいいです。バスや電車に乗ってると、長い時間地元の人達を観察できますし、このヒューマンウオッチングが面白いし、また生の英語表現の宝庫です。
シェア探しの英語電話の想定問答集に出てくる表現も、僕が電車やバスに乗りながらパクったものです。辞書で調べて自分で考えた英語表現というのは、泣きたくなるほど通じないけど、現場でパクった表現はまず間違いなく通じる。とても利用価値が高い。真剣に英語が上手くなりたかったら、とにかく「耳で盗め」です。こっちの普通に車内で携帯で話しますから、「なるほど、待ち合わせに遅れそうなときは、そういう言い方をするんだ!」という発見があります。
Cityのデメリット
まず、シドニーのシティとはどういうところかを正確に把握する必要があります。
第一に、シティはとても狭いです。オーストラリア最大の都市だからどれだけスゴイのかと思いきや、猫の額のような狭さです。シドニーシティはカマボコ板みたいに細長い長方形、短冊形をしており、南北2キロ、東西500メートル程度です。これって、狭いですよ。2キロといえば、東京では日比谷公園からトコトコ歩いて歌舞伎座超えて築地本願寺あたりです。大阪では阪急梅田のかっぱ横丁から淀屋橋くらい、名古屋でいえば名古屋駅からテレビ塔ほどのこともなく、福岡では博多駅から直線距離で天神くらいです。徒歩で30分程度。しかも正方形エリアではなく細長い帯みたいなエリアですから、あっけないくらい小さい。郊外も全部含めていう場合の「シドニー (Greater Sydney)」は半径50キロの巨大なエリア(東京や大阪通勤圏内全部くらい)ですが、シティと呼ばれる一画は、東京でいえば一つの電車の駅周辺の町/エリアくらいでしかない。そして一歩シティから出たらいきなり住宅街です。東京や大阪などの大都市を頭に描いていると大間違いです。
第二に、「シティだから便利」というのは、意外と神話である場合が多いです。
たしかにシティには何でも揃ってるかに見えます。州議会やら最高裁やら証券取引所や各銀行本店やら一流ホテル、レストランやデパートなどひしめきあってます。しかし、ワーホリさんや留学生さんにとって、証券取引所や官庁が近くにあってもあまり意味が無いでしょう。せいぜいパスポートをなくして日本領事館に再発行申請に行くとか、ビザの切り替えのための移民局に行く程度だと思います。永田町や霞ヶ関に住むようなものですね。そんなことよりも、安くて美味しいフードコートであったり、新鮮な野菜とか日常の買物が気楽に出来る方が役に立つのではないでしょうか。そういう意味では、ボンダイもマンリーも、周辺住宅地のなかの中心商業地(東京周辺でいえば自由が丘やたまプラーザ、大阪でいえば千里中央とか高槻)ですから、ディリ-ライフ的にはこちらの方が便利だと思います。
もっともシティも、昔に比べれば高層マンションが立ち並び、シティ居住者の増加に伴い、スーパーやコンビニなど住環境も整いつつあります。それでも、ボンダイジャンクションなど郊外の巨大ショッピングセンターに比べるべくもないです。またシティにはチャイナタウンというアジア系買物エリアがありますが、エスニック系だったら西部、日本食材だったらノースの方がむしろ豊富でしょう(
シドニー食生活向上委員会/SHOP編参照)。あとはやっぱり都心だけに生活費は高くなります。食料品、テイクアウェイ、シェア代、いずれも高めになります。
第三に、シティはダントツに犯罪率が高いという治安の問題があります。詳しくは
治安とリスク管理(3)の統計数値と解説をご参照いただきたいのですが、都心だけあってリスク値は高いです。当たり前のことですけど。まあ、昼間に学校に行ってるだけだったら問題は少ないでしょうが、路上のスリや置き引きには十分注意してください。
第四に日本人環境です。シティには日本人観光客も沢山います。シドニーに在住している日本人は約1〜2万人程度といわれていますが、これはシドニーの全人口420万人中の1−2%程度です。しかしオーストラリアを訪れる日本人観光客は年間数十万人。その殆どがシティのホテルに泊まります。要するにシドニー全体でいえば、
シティだけダントツに日本人比率が高いです。普通のサバーブで暮らしていたら、3ヶ月暮らしても日本人なんか一人も出会わなくても普通です。それがシドニーの平均であり、「シドニーは日本人ばっかり」と言ってる人がいたら、その人はシティを中心にして活動しておられる方でしょう。
また、いわゆる日本人のワーホリ・学生さん御用達のような日系の情報センターがシティにひしきめきあっている点です。日本人同士のシェアなんかもシティの高層マンションに数多く見られます。日本人しかいない情報センターで、日本語でネットやって、日本のTV番組のDVDを借りて、日本人のカラオケボックスにいって、日本のマンガ喫茶に入ったりするなら、「シティは便利」と言えます。しかし、そういうライフスタイルにあまり魅力を感じないのであれば、この種のカルチャーが栄えているシティは、逆にデメリットの方が大きいともいえます。
確かにシティに暮して全て済ますのは合理的のように思えますが、これらシティのデメリットをよくお考えになることをオススメします。
冒頭に、「特に最初はちょっと遠いくらいの方がいい」と書いたのは、最初に郊外エリアで修行し、シドニーローカル感覚に馴染み、距離感も土地カンも正確に把握し、またフットワークも軽くなったら、上記のシティの弊害は大分減ってくるからです。とりわけローカルジョブをゲット出来るくらいの上級者になってきたら、おそらくは生活は多忙を極めているでしょうから、シティの方が楽ということもあるでしょう。その頃にはルームシェアにも慣れているでしょうしね。
もっとも、体験談でシティの100%ローカル(日本人ゼロ)のオフィスジョブをゲットした方は、モスマンから通勤してましたし、ローカルに馴染めば馴染むほどオージーと行動が似てくるとも言えます。シティで働く年収数千万クラスのエリートビジネスマン・オージーの住まいってとんでもなく遠いです。セントアイビスとかゴードンとか。これは都心で働いている取締役クラスが田園調布に住んでたりするのと同じです。
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