グラフの真ん中あたりで、いきなり垂直落下のようにガクンと値が下がっているのが分かると思います。これがいわゆるリーマンショックです。もともと本稿はこのとき=リーマン・ショック直後に豪ドルが100円台から50円台に急降下した一時期に書かれたものです。
ここのところリーマンショックのような急激な変動はなく、ほぼ安定しているのであまり神経質にならなくてもよいので、タックしておきます。まあ、いつどうなるかは誰にもわからないのですが。
それまで70-80円台だった豪ドルは、2007年以降100円ラインを行ったり来たりしています。2008年春頃まで104.9円をつけていたのですが、08年秋には一気にドル50円台まで崩落しました。これが世界経済危機(リーマンショック)です。いかに凄まじい変動であったかがお分かりでしょう。
その後は75-85円のボックスレンジで平和に推移していたんですけど、アベノミクスが円安誘導をせっせとするもんだから、2012年中期以降は90円台で推移していますが、2016年くらいから下がり気味です。1990年代中頃は100円をつけたときもあったし、もっと昔の話になれば280円台で留学したとか、米ドル360円時代には440円だったいう大昔の話も聞いたことがあります。
さて、このような為替の動きを前提に、どうしたらいいのでしょうか?これが本稿の課題です。
オーストラリアに行こうという人にとって、08年後期以降の円高&豪ドル安(50円台までストンと落ちたとき)はチャンスでした。この時期はリーマンショックやら、大手留学業者(ゲートウェイ21)が倒産するやらで、日本人留学生の多くがキャンセルなど二の足を踏んで激減していたのですが、結果的にいえばこの時期こそが激しくお買い得だったわけですね。為替が50%動くということは、100万円が200万円の価値を持つことになるのですから、所持金が一気に倍になったのと同じことです。
これを単なる結果論で済ませては勿体ないです。学ぶべきものは学ばねば。
今、留学やワーホリ資金を一生懸命貯めておられる方々、
為替の動きは定期的にウォッチングされておくといいです。一気に倍!なんてことは10年に一回もないですけど、数万円くらいの差は普通に生じますから。直近数年の傾向を頭に入れ、大体の値頃感をつかんでおくことです。例えばこの表でいえば、2010年以降平均すると80円台中頃くらいですが、高値に振れた90円前後に換金するのと、安値の70円台後半あたりで換金するのとでは10%以上の差があります。
しかし、日本での仕事や生活がある身では、いくら為替的にチャンスだと言っても、いきなり来週から渡豪できるような身軽な人も少ないでしょう。来年の渡豪予定を前提に、「このまま円高が続けばいいな」「まずい!どんどん上がっていく!」とヤキモキしているという人も多いでしょう。その気持ちはよく分ります。僕でもそう思う。しかし、問題はヤキモキしている間に再び円安(豪ドル高)に転じ、またドル100円に完全回復してしまったら、「あー、損した!」とガッカリすることです。今80万円の貯金を来年の渡豪までに頑張って100万円まで増やしても、その間に為替が80円から100円に動いたら、その貯金分20万円は事実上無意味になるわけですから、非常にムナしい思いをするでしょう。
では、渡豪の時期はズラせないにせよ、円高チャンスを確保する方法はないか?ですが、これはあります。幾らでもあります。
要するに、
現在の為替レートで確定してしまうことが出来たらいいわけです。
日々為替の動きをチェックしておいて、「こんなもんかな」と納得できるレートがあれば、そこで手持ちの資金の幾らかをオーストラリアドル建てで交換しておくのです。仮に今日、レート80円でTCを作っておけば、将来円安に戻ってドル950円になったとしてもOKです。
注意点としては、
@、以前はTC(トラベラーズチェック)がよく使われていたのですが、
2014年3月末でアメックスが日本でのTC販売を終了してしまったので、事実上TCは終わりになってます。。
A、そのかわりに、豪ドルの「外貨預金」口座に預金しておく方法もありますが、あとでオーストラリアに送金する手間と手数料がかかります。
B、トラベラーズチェックと同じような為替レート確保機能でいえば、カード版TCともいうべき
国際プリペイドカードがあります。これはマスタカードの
キャッシュパスポート、同じマスター系の
マネパカード、
新生銀行のプリペイドカードGAICAなどがあります。
もっとも、ここは個々人の判断ですが、全資金を替えてしまわない方がいいかも。なぜなら今後もっと円高になって、ドル40円とかになったら、「あー、もっと後で替えておけば良かった!」となりますから。但し、将来的にどっちに振れるかは全く分りませんので、そこはアナタの判断です。とりあえず半分だけとか、とりあえず語学学校費用分だけとか。
しかし、より真剣に考え出すとリスクヘッジのために何回かに分けて換金するという方法もあります。例えばいまここに100万円の資金があったとして、ドル70円になったのでとりあえず30万円だけ換金します。以後70円以上が続いていたけど、あるとき65円まで下がったのでもう30万円追加で換金します。また2か月後60円まで下がったのでさらに30万円換金します。こうすると、合計90万円を平均65円で換金したことになります。株式でいうナンピン買いという手法ですね。
ただし、国際プリペードカードの作成自体が手間だったり、そうそう仕事を抜け出して銀行に通うわけにもいかない。面倒くさいです。今がチャンスと思いつつ、行くヒマがないのでみすみす逃してしまったということもあるでしょう。
そこで、
外貨預金という方法があります。
例えば、SMBCプレスティア(三井住友信託銀行プレスティア←旧Citiバンク)などですが、インターネットバンキングで簡単に手持ちの預金を好きな外貨に替えておくことができます。いろいろな銀行でやってると思われますので、興味があったらどんどん調べてみてください。この方法のメリットは、TCと違ってイチイチ銀行まで出向かなくてもいいし、深夜のネット作業の間に出来るし、ネットカフェでもできます。また手数料もたいがい無料(というか手数料コミのレート設定になってる)。非常に気楽に出来ますから、ものすごくキメの細かい作業も出来ます。電卓叩きまくって常にこれまでの平均値を出し、それを下回ったら換金し、さらにドーンと円安に振れたら一気に円に戻して儲けるということも出来ます。
ただし、そんなイイコトづくめの方法がこの世にあるわけないのですで、注意点もあります。
@、
外貨預金に入れてある状態からどうやってオーストラリア現地で現金化するか、そのルートを研究しておくこと。
オーストラリアの銀行口座に送金できるのか、ネットバンキングで出来るのか、あらかじめ口座を登録しないとダメなのか、どのくらい日時がかかるのかであり、これらを徹底調査しておきましょう。この確認やツメを怠ると、
外貨資金はあるけどオーストラリア現地に持って来れないという泣きそうな状況になります。あるいは、外貨預金を送金しようとする場合「一回日本円に戻さないと送金できません」なんてシバリがかかっていたら、その時点でのレートでまた換金しなければなりません。そのときのレートが不利だったら、せっかくの苦労も台無しです。
A、ムキになりすぎないこと
これってやり始めると、一種のデイトレですからハマるんですよ。もう一日中ネットにかじりついて、1時間おきにちゃっちゃと交換し、大きな値動きや逆に振れたらこれまでの資金から半分を日本円に戻して、いや待てよ一回ユーロを通しておいた方が率がいいかも、あ、待てよだったら複数の通貨に分散しておけばいいかも、、、なんてハマろうと思えば泥沼にハマれます。なんのことはない、一人投資ファンドになっていくようなものですが、プロ中のプロであるアメリカの投資ファンドが大コケしているのが今日の状況ですから、あくまでもほどほどに。典型的な「手段の目的化」です。
総合的な注意点は、あまり
一喜一憂しすぎないこと、です。
これは厳重に念を押しておきたいと思います。
為替作業は一種のギャンブルですから、得をすることもあれば損をすることもあります。大体得をするのは専門のプロ集団であり、僕ら素人は損をする確率が多い。長い目で見たら損をするように出来てますので、仮に70円で交換したら、あとで50円に下がろうとも、「あー、失敗したあああ!」と大騒ぎしないこと。ある程度換金が済んだら、もう考えないこと。そんなことで
一喜一憂してるヒマがあったら、英単語の一つでも覚える方が実効性あります。
それに、後から振りかえれば誰だって神様になれます。一番安いときに買って一番高いときに売れば儲かるのは当たり前です。問題はいつが一番高いときなのかリアルタイムでは
絶対に分らないということです。そんなことが百発百中分るんだったら誰も苦労しませんし、もしあなたが的中率100%を誇るならば留学なんかやってないで投資家になるべきです。
今このページを読んで、「よーし、イイコトを聞いた!」と思って得をする人もいるでしょう。しかし、今全額をTC交換してしまって、いざ渡豪の時期にもっと円高になってたら、結局こんなページ読まなくて何もしなかった人が一番得するわけですよ。だから「あー、くそ、騙された!」と思ったりもするでしょう。でも、こんなことは騙すもヘチマもなく、イチから十まで自己責任の自己判断です。
例えば2012年暮れから13年にかけて一気に円安になってますが、こうなってから焦ってるようでは、失礼を承知でハッキリいえば「才能なし」でしょう。多少なりともカンがいい人は、自民が大勝して安倍首相になって円安誘導をブチ上げた時点で、あるいは総選挙が言われた出した時点でこうなることを予想したでしょう。しかし、そんなもん後付の理屈にすぎません。結果が出てからあれこれ言うのは誰でも言える。大体「予想した」といっても、数あるシナリオの一つとして考えたに過ぎないのかもしれないし、予想したからといってそのとおりに売買をするとも限りません。Aと予想をすれば、必ず「いや、待てよ」というBという対立予想も成り立って、どうしたらいいのか分からず、結局ズルズルと時機を失するのがありがちのパターンでしょう。結局のところ、未来は誰にもわからない。
つまり、売り買いのタイミングの正しさはリアルタイムには絶対に分らず、しかも後になってみれば誰でも神様の視点で振り返えることが出来る。
これは現実的にどーゆーことかというと、仮にどんなに努力し、どんなに成功しようとも、あとで神様の視点で検証すれば、必ずどっかでタイミングを間違えている筈です。つまり、何をどうしようが
絶対、損をした気分になる、ということです。「あそこで、ああしておけば」という後悔は絶対出てくる。しかし、そんな後悔くらい無意味なものはない。ジャンケンで「ああ、チョキを出しておけば良かった」と何時までも悔やんでいるようなものです。客観的にはすごい得をしていたとしても、強欲には限りがないので、主観的には損をした気分になりがちだということです。コレ、大事ですから、あらかじめ織り込んでおいてください。
そのあたりの苦〜い教訓も噛みしめつつ、現実的なアドバイスをするとしたら、今TCや外貨預金にするにせよ、全額一気とかはしない方がいいとは思いますね。半分くらいに留めておいて、「なるほどね、こんなやり方があるのね」というのを「この際、勉強する」「経験を積む」くらいの気分でいたらいいと思いますよ。ま、そこは皆さんのハンダンですけど。
最後に、円高円安ですが、105円時代に留学・ワーホリに来た人も、50円時代に来た人も、後者が常に優雅な生活を送っていたかというとあんまり関係ないですし、ましてやトータルでどれだけ有意義な時間を過ごせたかというのは、為替とは全く関係ないです。大体全期間を通じて貯金で全てを賄える人は少ないですし、しょせんは初動の点火資金に過ぎない。最初に金欠気味の方が万事シビアに、攻撃的になれて結果的に良かったという人もいれば、最初に萎縮したからそれが最後まで尾を引いたという人もいるでしょう。でも、ここで状況を利用して良い結果に結びつけられる人はどんな環境でもそうできる筈だし、状況に流されて不本意な方向にいっちゃう人はどんな状況でもそうなるでしょう。だから「関係ない」っちゃ、関係ないのです。