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7.シェアを探そう
 100%英語環境でのシェア探しは成功の第一関門



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STEP 01 : シェアすることの意味

現地社会へのドア

 多くのワーホリの方は最初に語学学校に行かれるでしょう。語学学校は必要ですし、英語を攻略するもっともスピィーディーな方法だろうし、またペースメーカーにもなるし、友達も出来ます。単純に行ってて楽しいでしょう。しかし、それだけでは全然足りないです。単に英語学習という面だけでいっても、学校の占める割合は40%くらいに過ぎず、あとの60%は実戦現場や自学自習で賄う必要があると思います。英語に限らずどんなスキルでも、大切なのは「実戦現場で使ってみる」ということです。教室内でシュミレーション会話をやってても足りず、実際の現場で使わないと、いつまでもペーパードライバーのままでしかない。

 ではどうやって「現場で使うか」ですが、これは超簡単な話で現地社会に入っていけばいいんです。

 原理はすっごく簡単。
 だけど実行するとなるとえらく難しい。

 あなたがブラジリアンとかコロンビアンのようにラテン系バリバリのパーソナリティを持ってたら、大した苦労もせずに現地社会に入っていけるでしょう。しかし、平均的な日本人にはそれが出来ない。あなたは、オージーばっかりひしめきあってるパブの中に入っていって、知らないおっちゃん達の中に「ハーイ!」って入っていけますか?また話し掛けられる言葉はバリバリスラング混じりの100%現地語で殆ど何を言ってるのかわからない状態でも全く気にせず、「あんたが何言ってるのか全然わかんないんだけどさー、まあ、よろしく頼むわ。その椅子空いてる?座ってもいい?サンクス!どうだい、調子は?」ってな感じでド厚かましく入っていけますか?

 彼らはそれが出来るのですね。というか地球人って大体それに近いことが出来る。ただ、北東アジアの片隅の日本人と韓国人だけが、単一文化環境で育ち、恥の文化を持ってることから(このあたりを考え出すと長くなる)、世界で最も自意識過剰の引っ込み思案民族だったりして、異民族とフランクなつきあいがしにくい。日本にいるガイジンさんって、気後れしないでどんどん日本人の中に入っていくでしょう?でも、彼らほど僕らは外国社会の中に入っていけません。つまりは心理的バリアがあり、これを打ち壊さないことには現地に入っていけず、結果として英語もモノになりにくい。もっといえば知識としての英語はかなり出来たとしても、そこにバリアがあるならば、せっかくの英語力を活用して現場で好ましい結果を出すことも難しくなる。

 ということは、この心理バリアを壊しておかないと、いくら英語を勉強しようが、数万ページの情報を収集しようが、結局現地社会に入っていけないから、日本人同士ツルんでそれで1年時間切れってことになるってことです。そして、現に大多数の人はそうなってます。世界は甘くないです。

 そもそも現地にいながら「日本語の情報」を集めようとしている時点で既に危ういともいえます。分からんこと、知りたいことがあったら、そこらへんのオージー捕まえて聞けばいい。オーストラリアに関するあらゆる情報のうち、日本語で記されているのは、全体の数万分の1に過ぎないですし、その多くが、僕らなど長期滞在者から見てたら「あ、それはちょっと違うんじゃ、、」というものも多い。現地のことは生粋の現地人(つまりオージー)に聞け、です。それに千変万化する生活において、全てについて予め情報を集めることなんか出来ないです。だから、結局現地に着いてからの勝負になるのですが、そこに自信がないから、つまり現地で英語で情報収集していくことに自信がないから、日本語情報を集めているわけでしょ。もうその時点で既に精神的に負けていると言えなくもない。

 語学学校で作る友達は、先生やスタッフを除けば、しょせんは全員が「よそ者」です。オーストラリアの現地知識や現地社会のネットワークに関して言えば、あなたと似たり寄ったりです。分からん者同士がいくら知り合いになったといっても、分からんものは分からん。勿論、同じような立場にあるからこそ親近感も連帯感も芽生え、急速に親しくなるし、遊んでたら楽しいですよ。でも、現地社会に切り込んでいくという意味では決定的に足りない。

 余談ですけど、語学学校の学生さんの間で「都市伝説」まがいの(口裂け女や人面魚のような)デマが飛び交ってたりします。いろいろあるけど、例えばバイトで源泉徴収されている税金はあとで申告すれば戻ってくるとか(その通りだけど一定の条件を満たさないとダメ)、払った消費税は戻ってくる(出国30日前に一店舗あたり300ドル以上買い、且つ身につけて帰国する場合のみ)とか、シェアのボンドは絶対返ってこない(大体普通返ってくる)、ローカルのカフェでオージーに混じって働くなんて絶対無理(中上級以上だったら可能)とか。「オーストラリアのこと知らなすぎ」って話が多いのですが、全員「よそ者」だから正しくツッコミを入れる人がいないのですね。

 その足りない部分を補うためには、何らかのアクティビティが必要です。現地の人達のネットワークに何らかの形で入っていく何らかのキッカケが欲しい。そのへん歩いているオージーに「僕と友達になりませんか」といきなり話し掛けても、相手も「は?」てなもんでしょう。

 じゃあ、どんなアクティビティがあるのか?というと、それはもう無限にあります。簡単な話、仕事しちゃえばいいです。地元のオーストラリア人環境の仕事をすればいい。ただ、これはそれなりの英語力が必要だし、それ以上に心理的ハードルが高い。実際に出来ている人はワーホリ100人中数名以下でしょう(本当はトライすればもっと出来るはずだけど)。また、いきなりってのはキツイものもあります。他にもエクスチェンジなり、ボランティアなり、コミカレなり、近所のコミュニティの集いなりに出ればいいです。

 その中で、最も成功率が高く、最もやり方がシンプルで、最も短期間で多くの収穫を上げられるのが「シェア探し」だと思います。

シェア探しが出来たら全部できる

 シェア探しは、
(1)英語で情報を収集して(ネット、掲示板、電柱広告など)、
(2)知らない人に英語でコンタクトを取って(電話して)、
(3)知らない住所に自分ひとりの力だけで公共交通機関を乗り継いでたどり着き、
(4)初対面の人の家を訪ねて中を見せてもらって、お金の話もして、交渉もして、それを何軒も繰り返し、
(5)合意に達し、金銭の授受も行い、現実に引越し、実際に住み始める
という一連の過程で出来ています。

 英語を使って、現実にこの社会に切り込んでいって、実際に一つの形にしていくためのお手本モデルのようなものです。だから、このパターンさえやってしまえば、あとは繰り返しなんです。ボランティだろうが、仕事だろうが、英語で情報を収拾→コンタクト→現場→面会・交渉・合意→実行というパターンであることは同じなんです。

 では、なぜシェアが一番易しく、第一歩になりうるのか?ですが、カタチが非常にシンプルだからです。要するに週幾らで住むというだけのことで、居住環境は現物を見て、一緒に住む人と話をすれば大体90%はわかります。立地にしたって、自分でそこまで辿り着く過程でどのくらい離れているかもわかるでしょう。つまり「見れば大体わかる」ってことです。またシェア契約におけるこちらの義務はレント(家賃)を払うことくらいです。話は簡単なんです。

 これがボランティアとか仕事とかになると、見ただけではわからないですよ。実際自分はどんな仕事をするのか、口頭で説明されただけではピンとこないだろうし、第一その説明を完璧に理解できるわけもないです。また、自分の特技は何か、どの程度のスキルを要求されているのか、そのあたりに誤解があったりしたら後で大変な目に遭います。

 また、シェアが楽なのは、これは基本的には「買物」だということです。自分がお金を払って部屋の滞在権を買うというショッピングなんですね。相手が「一緒に住みませんか」という広告を出しているのを、買うだけの話です。これが仕事になると、自分がお金を貰う側ですし、要求水準はハードになります。また、ボランティアも仕事も、求人広告なんか見てないで勝手に訪ねていってこっちからオファーするという作業が必要なのですが、「呼ばれてもいないのに勝手に訪ねる」という形で話が始まる以上、シェアよりも敷居が高いのは自明の理でしょう。

 多くの場合、最初のコンタクトの電話が鬼門になりますが、この点でもシェアが最も簡単です。なぜならシェアの電話をするときの相手というのは、当然シェア広告をしている人だから、問い合わせ電話がかかってくることは最初から予想してます。だから電話をしても話が早いです。電話英語というのは対面英語の数倍難しく、TOEIC900点レベルの人でも言ってることの30%でもわかれば上出来でしょう。多くは何言ってるのかさっぱり分からんでしょう。だから、最初から電話でこみ入った話はするのは殆ど不可能だと思った方がいい。その点、シェアの電話の内容なんか、超定型パターンです。「シェア探し入門」にシェア電話の英語の想定問答集を作っておきましたけど、シェア電話なんか煎じ詰めればたった3点だけです。@まだ空いてるか、A(見に行くのは当然として)いつがいいか、Bどこに行けばいいか(住所)、だけです。極端に省略した電話でも、「あ、シェアの電話なんですけど、まだ空いてますか?あ、じゃあ明日の午後とか見に行っていいですか?5時とか?あ、6時以降?OKです。6時に。で、住所は?はい、○番の、○○ストリートですね。わかりました、じゃあ、明日6時に。どうも」で済むでしょ?実は簡単なんですよ。これがボランティアだったら、「あ、すみません、そちらでボランティアを募集してたりしますか?あ、してる?具体的にはどんなことをするのでしょうか?ふむふむ、、、」と会話内容は千変万化します。難しいと思います。


STEP 02 : シェア探しの過程で学ぶこと

 シェア探しは、単に居心地のいい住まいを見つける以上の効用があります。

@スピーキングとリスニングの超特訓

 ほんの数日のシェア探しだけで、あなたのスピーキング&リスニング能力は飛躍的に向上するでしょう。日本で英会話学校に週イチで一年通うくらいは上達すると思います。なぜかというと、多くの日本人の場合、初期の学習過程は「既に自分が知っている英語知識を現場で使うこと」「使い慣れること」だったりします。現場にでて、口ごもったり、何言ってるのかサッパリ分からなくても、あとで正解を教えて貰ったら「なんだ、知ってたよ!」てな感じでしょう。知ってる単語、知ってる構文、知ってる文法なんだけど、いざ現場になると出てこない。知ってるフレーズでも現場で言われると聞き取れない。

 別の箇所でも力説してますが、人間の言語能力からいって、読み書きが出来てスピーキングが出来ないということは本来あり得ないです。それなのに多くの日本人が「とにかく会話を」と、オーラルに苦手意識を持つのは何故か?というと、話は簡単で「実戦経験が非常に乏しい」からです。読み書きは読んだり書いたりすればいいだけですから、「実戦」経験は豊富です。でも、実際に外人さん相手に英語でコミュニケーションを取るという、それも教室のシュミレーションじゃなくて外国の本物の現場で、しかもありとあらゆるスラングや世界各言語の訛りの嵐のなかでやるという「実戦」経験は、多くの人の場合ゼロに近いでしょう。車の運転と同じで、教習所の庭の中だけで練習してても本当の意味では上達しません。ペーパードライバー状態です。やっぱり本物の路上に出てもまれてこないと上手にはなりません。本当のことを言えば、教室で10習ったら、現場で100くらいそれを使って練習しないと技術というのは身につかない。「実戦」の大事さです。

 シェア探しはあらゆるアクティビティの中では簡単な部類に属しますが、それでも本物の実戦現場であることに変わりはありません。全然聞き取れない、全く通じない。住所のスペルでも、「T」とか「B」とか特に難しくもなさそうなアルファベットの発音が全然聞き取れない、あるいは通じない。このようにペチャンコにされるような体験を通じて、本当の英語の発音とは何か、通じるためには何をどうしたらいいか、身体で覚えるでしょう。練習なんか気休めのようにやったってなんの意味もないのであって、本当に「ダメなものはダメ」と厳しくダメ出しをしてもらわないと伸びないです。そして、最初のそのハードルを知ることは、今後学校で勉強するにあたって計り知れない価値があります。

 しかし、現場においては、「わかりません」は通用しませんので、もう必死になってコミュニケーションを取ろうとするでしょう。頭の中をひっかきまわして、ありとあらゆる単語を探して、なんとか通じさせようとするはずです。この超必死な過程において、頭の中の英語脳が急速に構築されていくのです。ものすごい学習効率ですよ。


A外人慣れする = 心理バリアを壊す

 日本人の現場経験の乏しさは、そのまま外人慣れの乏しさでもあります。外人に囲まれながら英語で喋るというのは、普通の日本人にとっては「異常事態」以外の何物でもないです。異常事態だから、戸惑う、焦る、パニックを起こす、、、少なくとも全く平常心のままで居られる人は少ないでしょう。でも、精神に恐慌をきたしながら、うろ覚えの英単語を引っ張り出して、それを正しい順番に並べて、、なんて、火事の現場でジグソーパズルをやるようなもので、普通は無理でしょう。だから喋れない。

 でも、同じことを延々繰り返していけば、どんな人でも慣れてきます。人間の偉大な適応能力ってやつです。毎日数十本電話して、同じような内容を繰り返していけば、「外人と喋る」という事態に慣れてきます。異常事態が、徐々に「異常」とは思わなくなり、ドキドキしていた心拍数もだんだんと平静状態になっていくでしょう。そうなれば、以前はパニックになって思いつかなかった言い方も思いつくようになるし、気が動転して聞き取れなかった相手の言うことも、部分部分で分かるようになってきます。

 以前、ステイ先にお送りするときガチガチに緊張していて、ホストファミリーから「ハロー」と言われたことさえ理解できず、「田村さん、今なんて言ったんですか?」「ハローってなんですか?」というくらいテンパってた人がいましたが、人間というのは動転したら、信じられないくらい能力が落ちます。後で考えたら、「なんであんな馬鹿なことを」っていうことだってやっちゃう。だから、まず、慣れろ。外人に慣れろ、外人と英語で喋ることに慣れろ、です。慣れたら、それだけで実戦英語力は格段に上昇するはずです。


Bオーストラリアを知る、楽に生きられるようになる

 オーストラリア人は赤の他人に優しいです。最初にシェア探しをして感銘を受けるのは、「なんで、皆、あんなに優しいんですか?」ということで、涙ぐんだりする人もいるくらいです。道を聞いたら大抵の場合親切に教えてくれるし、聞いてもいないに周りから人が寄ってきて「大丈夫か?迷ったのか?」と心配してくれる。道を教えるどころか、そのへんのバスの運転手に正しい乗り場を聞きにいってくれたり、一生懸命地図を書いてくれたり、極端な例だと一緒にバスに乗ってくれて家の前まで連れて行ってくれた人すらいます。

 もちろん万人が天使のように優しいわけではなく、無愛想な人やイヤな人もいますよ。でも、比率で考えたら嘘みたいに優しい。もし「そんなこたあないぞ」という人がいたら、あなたは体験の絶対数が足りないと思う。あるいは全くの行きずりの人との交流、一個の人間と人間の純粋のコミュニケーションという面が乏しいのでしょう(仕事になるとオージーはダメだから、仕事の現場でしかつきあってなかったらそのあたりが分からないです)。ここでいう優しさとは、縁もゆかりもない赤の他人のあなたに対する一般的な親切心の深さです。しかし、シェア探しではそれこそが重要。

 「なあんだ、話しかけてもいいんだ」「いくらでも助けてくれるんだ」という事実が分かったら、それも知識ではなく自分の経験を通じて皮膚感覚でわかったら、そのあとの1年、楽になりますよ。最初は、街を歩いても、周囲の「外人」(本当は自分が外人なんだけど)が敵に見えたりしてビビッたりしますが、ある日を境に「皆、私の味方」って思えるようになります。これはもう一日でも一秒でも早くそう気付いた方がいいです。そう思えば、もう「万全のサポート」なんかお金払って頼む必要性もなくなります。なんせオーストラリア人2000万人があなたのサポート要員であり、彼らはオーストラリア全土のどこにでもいます。しかも、僕も含めて日本人のサポート要員なんかよりもずっとオーストラリア社会の仕組みを知ってますし、英語も完璧。これ以上頼もしい味方はいないわけで、早く、彼らが味方なのだということに気付いてください。

 しかし、これはいっくら僕がここで口を酸っぱくしていっても通じないと思います。自分自身の体験として理解しない限り、こういうことって本当は分からない。だから、早いうちにその経験をしなはれ、ということです。


C土地カンがつく、公共交通機関を使いこなせるようになる

 これも大事なことです。今後、やれバイトだ、パーティーだ、イベントだ、ボランティアだと沢山の機会があるでしょうが、常に常に自宅や学校の周囲でやってるわけではないです。ライカードとか、ニュートラルベイとか、クロイドンとか地名を聞いて、「あ、あそこね」ってピンとくるようになれば、またシティからバスや電車でどのくらいかかるのかというのが分かるようになれば、気軽に参加できます。

 あなたが地方から東京や大阪に出てきて半年も経ちながら「池袋ってどこ?」「十三ってどの辺?」とか聞いてたら先行き思いやられるでしょう?その街に暮す以上、常識レベルの土地鑑は早く身につけたらいいです。その後の大事なチャンスをミスらないためにも。

 シェア探しをすると、このあたりは短期間でメキメキと覚えます。APLaCに来る人はいきなりシェア探しにチャレンジする傾向が高いですが、大体3日もやれば何とかかんとか位置関係が理解できるようになりますし、交通機関の使い回しも上手になります。過去最高では1日15件見て廻った人がいますが、平均でも最高に見れる日は7−8件はいきます。11時にサリーヒルズで、1時にニュータウン、そのままエンモア、マリックビルまで行ってから、一路東に向かい、マルーブラ、クージー、ボンダイを見て、夕方にはシティに戻りアルティモで一件、最後はニュートラルベイとチャッツウッドでシメる、、、ような感じですね。これだけ走り回ったら、かなり理解できますし、恐くなくなる筈です。


Dコミュニケーション能力がつく

 これも忘れてはいけないメリットです。別の箇所でも書いてますけど、日本人が「英語が出来ない」と嘆いている状況を分析すると、「英語が出来ない」以前に、「(異民族との)コミュニケーションの仕方を知らないor不慣れである」という点にあると思います。日本というのは、日本国=日本国籍=日本民族=日本語=日本列島(領土)ということで、全てが重なり合ってる世界でも珍しい国です。普通民族と国籍は一致しないし、言語と領土もバラバラです。インドなんか公用語だけで十数を数えます。

 僕ら日本人が、日常的にやっている日本人同士の「コミュニケーション」というのは、言葉も文化も基礎知識もほぼ同じ人間同士の意思疎通です。あなたは、日本語が全然喋れない「日本人」、「東京ってなあに?食べ物の名前?」って言ってる日本人が知り合いにいますか?僕が今ここに書いている文章も、「このくらいだったら分かるだろう」という共通レベルがメチャクチャ高いです。キムタクって言えば大体の日本人は知ってますし、「ふりかけ」「温泉」「ウォッシュレット」「携帯のiモード」あたりの単語や概念は多くの日本人は知ってるでしょう。しかし、一歩外に出て異民族と話をする場合、これら共通の前提が消滅します。そもそも日本がどこにあるか知らないって人もいます。そして、あなたも相手の人の国のことを知らない。アフリカのスーダンからやってきた人と、何を喋りますか?どんな話題がありますか?仮にあなたも相手も英語が完璧だとして、あるいは相手の人が日本語が喋れるとして、どんな会話をして、人間同士うちとけあって、親しい関係を築いていきますか?これがコミュニケーション能力です。

 子供だったら簡単にできます。日本人の3歳くらいの子供を、オーストラリアのそこら辺の砂場で遊ばせておけば、ほどなく沢山友達をつくって一緒に遊んでます。でも大人になると出来なくなる。大人になるにつれて、慣れしたんだ人間関係形成のパターンによりかかってしまい、ピュアな人間と人間のつきあいをするのがヘタになる。それでもまだ、昔の日本だったら、電車やバスで隣に座った人と「いやあ、暑いですねえ」「ほんとに」とか言葉を交わす習慣がありましたけど、今はないでしょう。コミュニケーション能力がかなり劣化してると思います。使わないから錆び付いてしまってる。

 だから、英語もろくすっぽ出来ない段階で「突撃」しなはれと言うわけです。言葉や社交儀礼で誤魔化せませんからね。体当たりで良好な人間関係を築いていくしかないです。でも、やれば出来ます。だって、誰でも子供の頃はやってたことなんですから。人間というのは本来そういう具合に作られてます。身体の中にそういう能力はあります。知らない人とうまくやっていく能力です。にこっと笑うとか、感謝のオーラを出すとかね。僕がお世話するときも、初日から3日目くらいまでは、買物してても緊張してるのか、能面のようなデスマスク状態の人が多いです。スーパーのレジの順番が来たら挨拶をするのが当たり前であるこっちの社会で、そんなデスマスク状態で接していたらかなり異様というか、不気味ですよ。引かれますよ。でも、段々ナチュラルで柔和な表情になっていきます。最初は半泣きだったシェア探しも、「面白いですねー!いろんな人に会えるから楽しい!」て言うことが変わってくるにつれそうなります。こうなったらしめたもので、コミュニケーション能力があったまったところで、英語を勉強してください。下部構造である人間力がダメだったら、その上にいくら上等な英語を乗せてもダメです。上手であればあるほど慇懃無礼やイヤミに聞こえちゃったりしますもんね。


E事務処理能力がつく 甘えがなくなる

 シェア探しも佳境に入ると高度な事務処理能力を要求されるようになります。既に留守電に吹き込んでおいた件数も30件を超えるようになると、いついかなるときに折り返し電話が掛かってくるかもわかりません。それをクールに処理するためには、ぱっと開いたら一目でわかるようにスケジュールを整理しておかねばなりませんし、ある程度は頭に叩き込んでおかないとならない。掛かってきた電話がどのサバーブからかを聞き取り、明日の3時だったらOKだと言う。「えーと、明日の3時にケンジントンだったら、、、1時にダーリングハーストで、4時にアッシュフィールドのアポがあるから、ちょっと3時はキツいな。2時だったらOKといおう」と、英語で会話をしながら瞬時に決定しなければなりません。

 また、見る広告も優に百件を超えるようになりますから、どこに電話して、どこにまだ電話してないかをしっかり覚えておく必要があります。かなり記憶力が良くないと辛いですから、記憶力に自信がない場合、何らかの形でわかるように整理する必要があります。かといって一件づつノートに写してたら時間がいくらあっても足りません。ではどうするか?そこが工夫次第です。

 さらに、終盤では「いよいよ決める」という決断作業になります。早く決めないと、いいなと思ったところを他人に取られちゃったりします。しかし、まだ他にも見てみないところがある。早く決めないと取られるけど、もっと見たい、、この矛盾する要請をどこかで調和させねばなりません。決断力、直感力の出番です。また、「まだ、大丈夫だろう」と希望的観測で事を進めていると、キッチリ裏切られたりして、振り出しに戻ったりします。

 また、「詰めが甘い」というよくある問題もあります。なんとなくOKっぽい返事を貰ったというだけで、手付けも打ってないし鍵も貰ってない、入居日の設定もしていないで安心してると、せっかくの物件が流れちゃったりもします。英語で住所聞くときに、完全に確認するのを怠って適当に「行けばわかるだろう」で行ってみたら、s「そんな番地は無い、、」と現場で立ち往生する羽目になります。あわてて電話して聞こうとしたら、電話番号を控えてくるのを忘れて連絡がつかないというケースもあります。

 いかに集中的に、大量にアタックするかが一つのポイントだとしたら、やったらやりっぱなしの食い散らかしにするのではなく、キチンとファイリングするなりデーター管理もまた別のポイントになります。さらに総合的な状況から、大所高所に立っての最終決断をいつ下すか、そして確定に向けてどの時期にどういう手を打てばいいのか、的確に思いつき、判断し、実行すること。そのあたりが甘いと、ぜーんぶキッチリ自分に跳ね返ってきます。

 これって、何のことはない、日本で日常でやってる「仕事」と一緒なんですよね。要するに、あなたが「仕事ができる」奴なのか出来ない奴なのか、結構わかってしまうという。別に出来なくてもいいんですよ。出来ない部分はハッキリ顕在化しますし、何が問題点であるかが分かると思います。これってものすごい貴重なサジェスチョンであり、ヒントです。しっかりこなしたら、甘さのない、「仕事の出来る人」になっている。仕事人は、仕事をするにあたって幸運をアテにしません。アテにしないから、必要な処置を思いつくことが出来、実行することが出来る。だから失敗しない。この際「仕事の出来る奴」になっておくといいですよ。一回そうなっておくと、この先一生お金の心配(就職の心配)をする度合は随分減ると思いますよ。

 以上、総じて言えば、シェア探しを通じてあなたは見違えるようにパワーアップするでしょう。なによりも自信がつくでしょう。もちろん完璧とはいかなくても、なんらかのコツは掴むことが出来ると思います。その効用は計り知れないくらい大きいと思います。

 逆に言えば、「楽ちんだから」といって日本語の電話だけでシェア探ししてたら、これらの効用の大部分はミスるわけです。勿体ないなと思います。

 最終的にどこに住むかなんかある意味どうでも良くて、結果論に過ぎないとも言えます。そのプロセスで得るものが多いということですし、シェア探しって本質的には「絶対に失敗しない」プロジェクトです。なぜなら「やる」だけで既に何かを得られる=成功なんだから。思い切って電話かけるだけで勇気は育まれ、とりあえず実戦英会話を無料で経験でき、しょーもないシェア先だろうがそこに行くというだけで知らないエリアを体験でき、現地のオージーに会え、他人の家の中が見れるわけです。やればやるだけ力になる。やってるそばから力になるわけで、だから常に成功し続けているとも言えるわけです。最終的にどこに住むかなんか、どうせ数ヶ月したら退去するんだから、大した問題ではないとすら言えます。この過程で得た自信や体験や総合能力の上昇は、一生モノの宝になるわけですからね。その「お宝」をゲットできたらシェア探しはとりあえず成功です。

 唯一失敗があるとしたら、途中で恐くなったり、メゲてやめちゃうことですね。これによって、英語トラウマ、外人恐怖症が一層ひどくなったり、「ああ、俺はなんてダメな奴なんだ」と自信喪失したりしたら意味ないです。でも、これは考え方一つですよね。そんなことでメゲてしまう「弱い自分」という克服課題が分かっただけでも成功だと僕は思いますよ。あとはリベンジあるのみ。最後の最後に勝ってしまえば(見つけてしまえば)、それまでの苦労はぜーんぶ美談になります。途中でメゲてればメゲてるほどドラマになりますし、達成感もひとしお。最後の美酒はおいしいですよ。オセロと一緒で、最後に白を置くことで、その列が全て黒から白にパタパタと変わるようなものです。「負けた」と思うか「まだ勝つまでの過程」と思うかの違いというか、本当の意味で負けたかどうかは、客観ではなく主観、自分の「心が折れた」かどうかだと思います。これっぱかしのことで折れないでくださいね。まあ、折れたらまた繋げばいいだけなんですけど(^_^)。骨折でも折れたところは前よりも強くなるって言うし。


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