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英語雑記帳






発 音


もう泣きそう

 現地の英語世界でやっていくため、とりあえず何が一番重要かといえば、発音だと思います。これはもう着いてすぐ実感しました。バスに乗るとまず運転手さんに行先を告げて料金を払うのですが、ここで発音が悪いと、もうそこでアウト。立往生。何を言うべきかも判ってる、どう読むかも知ってる、だから通じる筈なのに全然通じない。何回言っても言っても通じない。後ろからイライラと順番待ってる人々、車内からこちらを見てる乗客、衆人環視の中でニッチもサッチも状態に陥り、もう泣きそうになります。

 「ああ、発音やらなきゃ」と思う瞬間です。

 しかし、発音が恐ろしいのは、「発音やんなきゃ!」と思うのは何も最初だけではなく、これが毎年毎年リニューアルされてそう思うことです。文法などの領域になると、年を追うごとに大事な所と大事でないところ、「ここはそんなにムキになってやらんでも1年に1回も使わんな」というのがわかってきます。まあまあ手を抜いてもいいかなというメリハリみたいなものが何となくわかる。しかし、発音だけは年を追うごとに「こんなんじゃ、駄目!」と想いを新たにします。勉強はじめた1年目の発音に対するシビアさと3年目のシビアさはかなり違います。3年目の方が真剣。手を抜いていいところなど一つもないわという気になります。

LとRだけじゃないよ


 最初はご多聞に漏れず、「日本人はLとRが弱い」とかそのあたりのレベルの認識でした。だからその他の発音については、適当にやってりゃ通じるだろう等と思ったりするのですが、これが甘い。オシルコに角砂糖10個ブチこんで埋立地にしちゃうくらいに甘い。

 現代の日本語は母音が「あいうえお」の5つしかありません(昔は「ゐ」とか「ゑ」など多かったけど)。これはかなりのハンデだと思います。先日テレビを見てたら、言語学者が出てきて、世界の言語を調べると母音の数は500以上あると言ってました。500! ごひゃく!? 僕らはそのうちの5個しか知らないし、体感的にピンとこないけど、じつは人類はその100倍の「音」を知っている。

単母音だけで3倍!

 で、英語の場合は幾つかというと、右の表でわかるように、単母音だけで15。二重母音も含めると2315母音の英語を5母音の日本語で理解しようというのは基本的に無理です。15色を5色で表現しようとするもの、虹を白黒で表現しようとするようなものです。だから、同じ「あ」にムチャクチャ沢山の発音をブチこむことになる。

 この無茶苦茶さは、母音システムが違う外国人の人が、『「あ」も「い」も「う」も同じでしょ?』といってるようなものです。で、英語でも違うものは違うのです。日本人の僕らからすると、この発音表などは、「どうせ大差ないんでしょ?何を大袈裟にチマチマ細かく分けおってからに」という気持が心の底では拭い切れないのですが、これホントに違うのですね。日本人が「あ」と「お」を絶対に間違えないように、彼らも間違えない。もう全然違う文字であり発音です。この「ホントに違う」という、とても信じられないような真実を理解するのに、やっぱり数年かかるんじゃないかと思うわけです。

 そりゃ全体の会話の文脈で多少発音が駄目でも通じはしますよ。でもそれは前後の文脈や推測で無理やり通じているだけのことで、発音的に通じてるわけではないです。住んでるうちに、大体日常で使うフレーズも決ってきて、使うスチェーションもわかってきますから、かなり通じやすくなってきますが、そこが落とし穴。「英語が上手くなった」という気がしてくるのですが、それは違うと思います。適当に通じるから安心してしまっていい加減になってくるから、「英語が中々上達しない病」にかかるわけです。僕もかかってるワケです。

 ただ暮しはじめて、生計だ仕事だとなると中々腰落ち着けて英語やってる暇がないのですね。それこそ日本にいるのと同じことです。そりゃ英語圏にいれば多少は刺激があって上手くはなるかもしれないけど、これまで自分が無意識にOKを出してたものに「こんなんじゃダメ」とNGを出すほどシビアなセンスで勉強やってる暇はない。だから、語学留学など「英語だけやってりゃそれでいい」という超恵まれた環境にいる方は、もう鼻血が出るほど勉強されたらいいと思います。物事はカタめてやると効率的に伸びるし、チンタラやるとザルで水すくってるみたいにやっては忘れの繰り返しになるから。



 英語の母音が15あるとして、じゃ日本語の「あいうえお」の他に10個あるんだ、と考えるのも違うと思います。ぜ〜んぶ別個に15個あるくらいに考えておいた方がいいのではないか。日本語の「あいうえお」にドンピシャ同じ発音なんか無い、と。大体「あ」だけで、英語では5種類以上あるのに、その5種類を全部同じ「あ」に聞こえてしまう人間が「日本語の”あ”と同じなのはコレ」なんて判るわけがないのだ。

 自分には同じ聞こえる「あ」を5種類以上聞き分けて、喋り分ける−−こんなことが出来るんか?と気が遠くなります。僕もまだまだ道半ばですが、少なくとも「日本人はLとRが〜」程度で終わってる認識のままだったら、そりゃあ上達するわけがないよ。上達したら嘘だわ。「何年やっても英語が出来ない」とお嘆きの貴兄、出来ないのは出来ないなりのちゃんとした理由があるのだと思いませんか?


 これは母音だけではなく、子音もそうです。日本語の子音は「かさたなはまやらわ」の精々10足らずですが、英語では24個くらいあります。しかも、常に母音と結合して母音の音勢に乗っかってればいい日本語とちがって、英語の子音は母音と独立して響かせますので、日本語よりももっとエッジの立った発音をします。だから日本語的に丸い発音してても通じないことがよくあります。

二重母音

 さらに二重母音の問題があります。日本語だったら「おー」と「おう」の区別なんかあんまり付かなくなってきて、「オオさか」といっても、「オウさか」といっても、「オーさか」といっても余り大きな差はない。でも、英語ではこれがあったりします。

 例えば、日本語ではオンリー(only)といいますが、正しくはオウンリー。この種の誤解は日本語英語の至るところにあって、コート(外套/coat)は正しくはコウトです。「コート」と単純に伸ばすと裁判所(court)になってしまいます。コースト(coast/海岸、正しくはコウスト)。ポート(港)はポー、ボーダラインはボーでいいですが、プロポーズはプロポウズ、ソープはソウプ、ショルダーはショウルダー、ポストはポウストです。

 些細な差に見えるでしょう。そう、些細なことです。でもそれが些細で済むのは、全体の文脈が相手にわかる場合であって、全く新しい話題に入るとき、最初に話し掛けるとき、固有名詞を言うときは、この種の発音のミスは時として大変なことになります。タクシーで行先告げたけど、発音が悪くて誤解されて飛んでもないところに連れていかれるとか。

 二重母音の例ではなく単母音の例なのですが、僕らが前に住んでたのはニュータウンの隣のキャンパーダウン(Camperdown)というところでしたが、発音がダメでようキャンベルタウン(Campbelltown)に間違われたものです。シティから3キロ程度のキャンパーダウンにいくつもりが、シティから50キロ先のキャンベルタウンに連れていかれたら笑いごとじゃないです。「何処住んでるの?」という話題でズーっと相手が誤解しっぱなしで、どうも話が噛み合わないと思ったら、やっぱり地名を誤解してたとかね。

 でも、キャンパーがどうしてキャンベルに間違えられるのか?ですが、段々判ってきたのですが、キャンパーの「パー」と伸ばす音を「アー」と明るく伸ばしてたのですね。本当はくぐもった「er音」でなければならない。右の図では、一番下の緑色の「あー」と言うべきところを、一番上の「あー」と言っていた。キャンパーダウンをキャンパーダウンと聞取って貰おうと思ったら、この「あー」部分を正しく発音するのがキモなんですね。彼らはこの音が聞こえるかどうかで区別してる。で、聞こえない。そうなると「キャン○○タウン」と真ん中が意味不明な言葉に聞こえる、で、推測してキャンベルタウンだと思ってしまうという。これがわかってからは、百発百中通じるようになりました。

 日本語だって、伸ばす音が不正確な外人さんから、「オゲサですね」といきなり言われたら、それが 「大袈裟」だと思い付くのに時間かかるでしょ?「オマカ」が「大まか」とか、「オラカ」が「大らか」、「コモリ」というから「子守り」だと思ったらコウモリ(蝙蝠)だったとか、ちょっとした差でネィティブが連想する単語は全然違ったりします。だから何度言っても(コモリと何度言われても)、コウモリだとは思い付かず、何言ってるのかようわからん、通じない、という事態が発生するのでしょう。

 実際に喋ってる時間でいえば僅か0.3秒かそこらのほんの一瞬の差なんですが、この一つ一つの構成要素を研ぎ澄ませているか、いないかで、全体としての印象はガラリと違ってきます。音楽やってる人ならおわかりでしょう。一音をどこまで緻密に詰めていけるかが、結局は全てを制するということを。なぜなら、1秒にも満たない細かな要素で全てが構成されているのですから、一つひとつがマズければ、喋ってること全部間違ってるのと同じですもん。

 日本語だって、「外人さんの日本語だ」とすぐにわかってしまったりするのは、結局発音がダメだからでしょう。そしてそれは、イントネーションがおかしいということもありますが、何よりも個々の母音と子音の発音がなってない、という部分に起因するのだと思います。


 発音の話は、まだまだ幾らでもネタがあります。15母音、24子音、全ての発音に一回分づつ注釈つけることだって出来るくらい。でも、最初はこのくらいにしておきます。





(初稿)99年07月26日:田村


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