言うまでもないですが、オーストラリアにワーホリで行くということは、見知らぬ異国で一人ぼっちで生きていくということです。一人で食糧をゲットし、一人で住む所を探し、一人で生活をし、一人でお金を稼ぎ、一人でやりたいことをガンガンやっていくことです。
いくら高いお金を払って誰かにサポートを依頼しても、そんな他力本願でやっていける領域なんか微々たるものです。圧倒的大部分は一人でなんとかしなければならない。それは当然のことですし、また充分可能なことです。いざ自分が出来てしまえば「なんでこんなことにビビってたのか?」という気分になるくらい大したことではないです。
「生まれて初めて」という体験は怖い。誰でも怖い。でも、スプーン一杯分の勇気で乗り越えてください。一日も早く一本立ちしましょう。後回しにすればするほど心理的に恐くなってきます。先送りしてドツボにはまるのは不良債権処理と同じ。今日やらないことは、明日はもっとやらない。がんばろー。
そこで、未知の荒野を切り開くための、最低限度の基礎スキルと装備について説明します。
4.公共交通機関(特にバス)を乗りこなすこと (到着直後から遅くとも数日以内)
公共交通機関の利用の仕方については、
に書いてあるのでご参照下さい。
さて、上で基礎編を学んだところで、実戦です。
まずはバス。バスは必ず!制覇してください。
”鉄っちゃん民族”日本人の電車愛好癖
いきなり余談ですが、最初にあなたの「常識」を壊しておきましょう。
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日本人は、世界でも珍しい「鉄っちゃん民族」です。鉄道や電車が大好き!明治の文明開化、陸蒸気といわれた汽車の登場の衝撃が民族的DNAに刻印されたのでしょうか、歌まで作ってますもんね(”汽笛一声新橋を〜”ってやつ)。あと、サイズも厚さもとりどりな時刻表が山ほど売られています。こっちは時刻表なんて売ってないし、なんであんなもんを金払って買うのか外人には理解しにくい。本格的な鉄道ファンのための雑誌も沢山あります。こんな国珍しいですよ。
それはやはり細かいところに完璧主義を発揮する日本人が、神のような正確さで電車を運行しているからだと思うのですね。でも、世界の電車はもっともっとチャランポランです。時刻表どおり運行されているとは限らない。その確度は天気予報といい勝負という感じ。人口が爆発的に増大し続けているシドニーでも事情は同じ。インフラ整備が後手後手に廻り、公共交通機関のダメさ加減に対するブチブチ文句はオージー日常会話のフェバリットアイテムであり、現地新聞の常連ネタです。そのなかでも特に電車がヒドい。駅と駅との間でスーッと停まり、そのまま信号待ち数十分なんて悪夢のような事態もないわけではない。大体、毎週末になると必ずどっかの路線がメンテのために全面運休になるなんて、日本の常識ではおよそ考えられないでしょう。
しかし、電車に対する絶大な信頼感を抱いている日本人は、どうしてもバスよりも電車に乗りたがる傾向があります。確かに、電車は路線や駅がハッキリ分かるけど、バスは複雑だし、わかりにくいですもんね。でも、総じていえばバスの方が信頼性が高い。また、故障しても、電車のように「車内監禁数時間」という悲惨なことはなく、その場で降りればいいからリカバリーが容易。それに、意外と深夜まで運行してますし、電車がボンダイで終ってしまうイースタンサバーブは24時間運行が結構あります。
それに、イタリア人の街ライカード、おしゃれなパディントン、下北沢みたいにとんがってて面白いグリーブ、ニュータウン、ボンダイ・ブロンティ・クージー・マルーブラというビーチ沿い、、いずれも電車は走ってませんから、バスが乗れなければ行けないです。ノースのクロウズネストやニュートラルベイは日本人に馴染みが深く、そのエリアのジャパレスで働いている人が多いですけど、これも基本的にバスオンリーです。
バスを乗りこなすことは、シドニー生活における必須技術だといって過言ではないです。是非ともマスターしてください。
とりあえずOpal Card買う
まずは、ニュースエージェントでもキオスクでもどこでもいいから、Opal Cardをゲットしましょう。
以前はトラベルテンだの、マイマルチなど複雑なシステムでしたけど、今はオーパルカード一本で済みます。楽になったもんです。
あとは、
オーパルカード解説ページ読んでください。
もうこれだけで、この章は済み!です。
オーパルカードがメインになって、シンプル化されてますし、極論すればそれ以外のことは知る必要も無いです。単にオーパルカードをタップしておけばそれでいいです。
学びの機会
ただ、楽になった分、「学びの機会」は消えるのですね。以前は複雑で大変だっただけに、多くのものを学べました。以下、ここは学べという部分を抜書きしておきます。
発音の恐ろしさ
以前はトラベルテンやらマイマルチ2やら複雑なチケットを店で買ったり、バスの運ちゃんに行き先を正確に伝えたりしなければなりませんでした。そこで「本物の発音の難しさ」をトラウマが生じるくらいの強烈さで思い知らされたものです。
モノを買う時の注意点
その1:たった数語でいいけど、その代わりハッキリ明確に発音する。日本人の英語が現場で通じない理由の大部分は「声が小さい」からです。大きな声で喋る、これが第一歩。
その2:絶対「プリーズ」を忘れないこと。プリーズを抜かして喋るのはかなり失礼な言い方で、プリーズを入れなくていいのは刑務所と軍隊だけ。喧嘩を売るつもりがないなら、プリーズを絶対つけよう。
行き先を伝える〜発音のコツ
バスのシステムは、距離によって料金が変わるシステムになってます。日本の都市部のバスのように全線均一料金では
ないです。長い距離を載ればそれだけ料金も高くなるシステムです。
距離に応じて料金が変わる場合、日本では、後ろから乗車して整理券を受け取り、前から降りるときに整理券を提出して精算しますが、こちらは、前から乗り、
最初に運転手に行き先を正直に申告するという性善説に立っています。しかし、行き先を言おうにも、こちらの
バス停には名前がないので(本当はあるんだけど◯◯ストリートとかそんなので聞いても何処かはわからん)、一般地名で言うしかないです。
★もっとも、今はオーパルカードでタップするだけでOK!です。
バスについているGPSで自動的に距離を積算してくれて、勝手にOPALカードから引き落としてくれますから手間いらずです。
ただし、オーパルカードはNSW州のシドニー周辺だけですし、各州都にはまた別のカードがあったりします。ラウンドなど田舎に行ったら、そんなカードなんか全然ないエリアも多いでしょう。ということで後日の予習方々、さらに書いておきます。
例えば、ボンダイジャンクションまで行きたい場合は、運転手さんに、"I'm going to Bondi Junction"あるいは単に"Bondi Junction"と告げると、運転手さんが、"Four Thirty"(4ドル30セント)などと教えてくれるので、料金をその場で払いレシートを受け取ることになります(今はオーパルシングルチケットを買う)。
ここで、問題になるのが、
発音が悪いので全然聞き取ってもらえない
地名の読み方が間違っているので全然通じない
という恐怖の事態が生じることです。たとえば、"Leichhardt"などは”ライカード”と読むのですが、なかなか読めないですよね。ガイドブックなどで”リーシャート”とトボケたルビが振ってあることもあります。ここで通じないとツライですよ。
GoogleMAPのカタカナ表示は全然アテになりません。かーなり間違ってます。特にラッシュ時とか、満員の乗客の注目を浴び、後ろには長蛇の列ですが、言っても言っても通じない。僕も最初の頃、そういう経験をしました。ほんと、泣きたくなりますよ(-_-;)。
こんな感じです。
"I'm going to Newtown"
"Sorry?"
"I'm going to Newtown"
"Sorry?"
"I'm going to Newtown"
"I can't hear you."
"I'm going to Newtown"
"Speak louder, please?"
"I'm going to Newtown"
"Still I can't hear you, much louder!!"
"I'm going to Newtown"
"Oh, NO! What are you talking about?!"
結局、こっちの声は小さくなり、大きくなるのは相手の声だけという悲しいことに。
そこで威力を発揮するのがカードなのですね。これだと何も会話をせずに、タップすればいいだけです。
楽になった分、「発音の恐ろしさ」を実感する学びの機会が減ります。
空港への安いルート(400番バスと420番バス)
400、420番という長距離路線バス、この系統はシドニー空港から破格に安くいけるルートとして有名です。
以前は400番一発で、西(Burwood)〜空港〜東(Bondi Junction)だったのですが、いつのまにか、400番(東専用)でBondi Junction〜空港止まり、420番(西メインで東ちょい)でBurwood〜空港〜Mascot経由Eastgarden(Bondiまではいかない)に分割されてしまいました。
シティに行かないのが問題ではあるのですが、なんせ空港まで電車でいくと片道15ドル以上します。空港線だけ異様に高いのです。オーパルカードを持っていても、電車で行く場合は、空港駅で乗降するためには別に追加料金が掛かります。
ところがこのバス路線で行くと普通の市バス料金でいけるのでかなり安くなります。友達を空港に送迎に行く場合、お財布に優しいルートです。
★また初めてシドニーに来られる人で、バジェットコンシャスの人の場合、空港の売店でオーパルカードをを買い、意地でも400番のバス停を探し(また分りにくいところにあるんだ、”ナンバー・フォーハンドレッド!”と人に聞くべし)、乗ればいいです。シティに向うならば、Bondi Junction駅経由なんてかったるいことをせずに、逆方向(西方向)のRockdale駅まで出て、そこで電車に乗り換えた方が全然早いです(手前のBanksia駅でも良いが、Rockdale駅の方が大きいので止まる本数が多い)。
ちなみに運ちゃんや道行く人に行き先を聞く場合ですが、手ぶらで聞いたら沈没する可能性がありますから、それなりのギアが必要でしょう。すなわち
地図。
どんな地図でもいいです。スマホにGoogle Mapで表示させてもいい(画面を写メっておくといい)。目的地が書いてある地図を手にし、その地図を示しながら、「ココに行きたいんだあ!」と言えば通じます。"I want to go there"と。地図もないときは、目的地の
住所なりサバーブを書いた紙を用意しましょう。ライカードなら"Leichhardt"と書いた紙を見せれば発音の失敗は防げます。一種の筆談ですね。「ライカード」なんてカタカナで書いちゃダメですよ(^_^)。慣れてきて、地名の発音も結構出来るようになってきたらカッコよく聞けるようになります。がんばろー。
とにかく一回乗ってみよう
あなたが最初シドニーの何処にいるかによっても違うでしょうが、とにかく一度はバスに乗ってみましょう。一回でも乗ってみれば、恐怖心は無くなります。要するに、日本と同じ普通のバスです。乗ったら、「あ、バスだな」とアホみたいな感想を抱くでしょうが、それでいいです。来たばかりの頃は、「未知の恐怖」に取り囲まれています。
怖いのは「やったことない」という未知部分からくるのであって、そのこと自体はハードなことでも何でもないです。一回でもやりさえすれば「未知」という部分が消えますから、ぐっと精神的には楽になります。バスから降りる頃には、自分がバスに乗るのにビビっていたという記憶すらもなくなったりします。とにかく、やってみ、ってことです。
まずは練習。いきなりシェアのアポを取って、予定時刻までに知らない場所に行くのが最初のバス体験というのはちと厳しい。失敗が許される余裕のあるときに、失敗しても大したことのない距離を乗ってみましょう。
あなたがステイ先とか、バッパーにいるような場合、とりあえず分かりやすくシティまで行ってきたらいいと思います。シティから20キロも30キロも離れているとかなら別ですが、おそらくは10キロ範囲でしょう。バス料金なんか、今は2.24ドル、3.73ドル、4.80ドルの三段階しかないし(昔はもっと複雑多岐だった)、最高料金でも400円ちょいなんだからビビることはないです。
それにシティに向かうバスは、大体がシティが終着駅ですから楽です。もし、あなたが既にシティにいるのでしたらとりあえず何のバスでもいいから乗って、ほんの数箇所バス停を移動する程度でもいいですから(地図で自分の位置がフォローできる程度)進んでみましょう。
シティ外からシティに往復する場合は、ここが大事なんですが、自分が乗ってきたバス停の位置を地図上で確認し、また風景を目に焼き付けておいてください。そして、停留所に記されているシティ行きのバスの系統番号をメモっておいてください。また、シティで降りた場合は、自分が降りた場所をこれまた地図で確認して置いてください。地図にシルシをつけるくらいに。そして、これらが帰ってくる場合の基礎情報になります。
一般にバスというのは、メジャーなところ(シティとかそのエリアで中心的な商業地)に行くのは楽です。マトが巨大だからですし、多くのバスはそこに向かうから、多少乗り間違えても大事には至らない。でも、メジャーなところからマイナーなところ(住宅地)に行く場合が難しいです。系統番号ひとつ間違っただけでとんでもないところにいくかもしれないし、目印になりうるようなランドマークもないですし、どこで降りればいいのかも似たような風景が続くからよくわからない。難易度高し。だから、先に難易度の易しい、メジャー方向の上り路線を利用し、バス初体験をし、難易度の高い帰路で地図とにらめっこしながら、「よし、○○地点通過、ああ、この場所は覚えてるぞ!」とやっていくと無理なくステップアップできるでしょう。行って帰ってこれたらもう大丈夫。
ちなみに、
一括パックというサービスでは、着いてすぐに(当日か翌日)に僕と一緒にバスと電車を乗ります。かなり集中的にあっちゃこっちゃ乗って、結構遠くまでいってご飯食べて帰ってきます。数時間のあいだに固めて5-6回乗りますから、その頃にはもう余裕のよっちゃんで乗れるようになります。また、Google Mapの行き先検索とか、Trip Viewというすぐれものアプリの使い方(これが結構難しい)とか、Opal Cardアプリの見方とかも教えます。集中してやれば数時間でもう怖いものなしになれるし、どこにでも行けるようになります。
補足 キセルとその発覚
オーパルカードの場合、キセルというのは基本ありえないのですが、それでもチケットの残高が少なくて料金に達しない時は、キセル扱いになって、200ドル!の罰金を喰らいます。残高(タップの度に表示される)に気をつけて、10ドルを下回ったら、トップアップ(リチャージ)しておくといいです。
以下の話は、昔話なんですけど、なかなか悲喜こもごもで面白かったので残しておきます。
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上にも書いたように、自分で行き先を申告するという性善説システムで成り立ってますから、嘘も言えます。例えば、手近な距離を申告して安い料金を払って、何食わぬ顔して遠くまで乗ってるとか、しれっとしてトラベルテンブルーを一回だけ打刻して済ますとか。それでも、別に乗れます。ある意味、おっそろしく簡単に不正乗車が出来ます。
しかし、全くのキセルフリーというわけではないです(当たり前ですが)。
バスに乗り込むときは別に良いのですが、あるバス停になると、チケットをチェックする検札官が乗り込んできます。通例、屈強な男二人組だったりしますが、女性のときもあります。乗り込んできた彼らは、順次乗客に向かって、"Could you show me your ticket, please?"と検札を始めます。キセルをしている人はここでバレます。
なぜバレるのか、上のトラベルテンチケットの裏の写真をクリックして拡大してよく見てください。何月何日何時何分に、セクション番号○番の停留所から○番系統のバスに乗ったということが示されています。これ一発で丸分かりなわけです。なお、複数回打刻したら複数回プリントされているわけですね。お金を払って乗る場合にはレシートを貰いますが、レシートにその旨の記載があります。だからレシートを捨てちゃダメですよ。
バレたらどうなるか?かなりカッコ悪いです。「なんだ、これは!」と公衆の面前で怒られます。その昔は「英語がわからない攻撃」というのが通用しましたけど、もう最近ではそんなことでは許してくれません。そんなことをすればバスの事務所に連行されて、「通訳をつけてやる」とかやられてしまうのがオチでしょう。
罰金は100ドル以上(犯状に応じて$100〜$550で、実際には200ドルが多い)。クレジットカードをその場で出さされて支払いさせられます。英語がわからないフリをしてても、「クレジットカード」と連呼されたら、わからないフリをしつづけるのは苦しいですよね。ちなみに、キセルは英語で言うと”Fare Evasion”といい、キセル防止の検札係のことを”Revenue Protection Officers”というようです。
では、どういうときにこの検札官が乗り込んでくるのか?そんなことが分かれば誰も苦労はしないです。もう運ですね。 そうそう滅多やたらと出会うものではないですが、一定期間乗ってれば必ずどっかでは出会うでしょう。ただ、運のいい人、悪い人といのはいます。あなたのお友達に、毎日のようにスピード違反をし、駐車違反をしながらなぜかつかまらない運のいい人がいるでしょう。反面、馬鹿がつくくらい正直にやってるのに、その日に限って魔がさして違法駐車をしたら早速切符切られているという可哀想な人もいるでしょう。あなたはどっちのタイプでしょうか。何年もキセルをやりつづけて未だにつかまってないラッキーな人もいますし、ワーホリで来られて初日と二日目、二日連続してつかまった運の悪い人もいます。
なお、近時、激しくチェックが入るようになったようですね。当局も本腰を入れてきたみたいです。先日(2011年7月)の新聞記事によると、各路線で前年度比10%とか20%、違反者が増えているようです。違反者が増えたというよりは、それだけ頻繁にチェックをやるようになったと考えた方がいいと思います。
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