実践&食材調達編
生活コスト削減のための自炊の場合、いくつかの条件が必要です。
@いかに安く、効率的に材料を調達するか
Aいかに材料を使い切るか
=コンスタントにありあわせの材料を使った料理が出来るか
B「とりあえず」の定番料理を幾つ知っているか or 準備しているか
あたりの条件が挙げられると思います。
ことコスト削減という見地からしたら、購入価格のコストダウンという入り口部分と、いかに使いきるかという製造過程でのポイントがあります。そして前章でも書いたけど、「使いきる」という観点からは、「いかにあり合わせで作るか」という課題が出てきて、このハードルを乗り越える基礎体力として前章の「味の基本構造を知る」という部分が出てきます。しかし、毎日毎日そうそう素晴らしいアイディアが湧き出るものでもないし、考えるだけでイヤになっちゃうので、ある程度はルーティン化しておき、頭を使わずに出来るようにしておく。それがBですね。
以下、分説するよりもひっくるめて書いていきます。相互に関連するから。
サンドイッチ
これさえ作れたら生きていけます。調理時間も数分だし、ランチに最適。マスターすべきマストアイテムです。
オーストラリア(というか本場西欧の)サンドイッチは
日本のサンドイッチとは似て非なるものです。まず日本のサンドイッチ概念を叩き壊して、ゼロリセットしておいてください。
何が違うかというと、
@ボリュームが比較にならないくらい多い、Aすごく美味い。
こちらは定番のようにサンドイッチバーが至るところにありますが、意外と利用している日本人は少ないです。目の前に具がばーっと並べられており、何をどう注文すればいいのか分からないからでしょう。一問一答形式で注文していく際の英会話で既にビビるという問題もあるのでしょう。簡単な注文の仕方は、
生活体験マニュアルの5.3.外食編(3)テイクアウェイに書いておきましたから参照してください。はるか昔のコンテンツだけど、基本は変わってないです。
僕も着いてすぐの頃におっかなびっくり注文しました。ローストビーフを具に選んだのですが、一枚ペラリと載せるかと思いきや、もうワシづかみしてドサッと載せる。でもってレタスやらトマトやらをガンガン乗せる。数センチくらい積み上げた具の上に他方のパンを乗る。おもむろに「サンドイッチ切り器」みたいなもの=平べったいアルミの板で、真ん中に包丁を差し込める隙間がついている=を取り出し、これで上からグッとプレスし、包丁でざっくと二つに切り、紙につつでん「はいっ」とくれます。受け取ったときのズシッとした重量感が印象的でした。「おお、これがサンドイッチというものなのか」と感動しました。それだけに高いです。ひとつ1000円くらいしたりする場合もあるのだけど、ボリュームと質を考えたらむしろ安い。
サラダ=カツ丼と思え〜一つでお腹一杯になる定番ランチアイテム
こちらではランチにスープだけ、サラダだけ、サンドイッチだけというパターンが多いです。カフェなどでは"Soup of the day"(本日のスープ)と日替わりメニューがあり、本当にスープだけ頼んでいる人も多いです。
スープやサラダというと、日本人的には「付け合わせ」的に思っているから、「あんなもんで腹一杯になるんか?」と疑問だったのですが、実はこれお腹一杯になります。
ここでも固定概念を壊されるわけですが、あれらはサイドディッシュではなく「それだけで一食として成立するもの」として作られています。日本人の僕はマクドナルドによってハンバーガーを知ったので、ハンバーガーってあーゆーものだと思ってたけど、もう全然違う。巨大。まず持てません。ハンバーガーというのは皿に乗せてフォークとナイフで切って食べるものだったのですね。
よく地元のカフェで見かけるベジ・バーガー(野菜だけのバーガー)を右に貼っておきます。ローストされた茄子やカプシカム(ピーマン)が美味しいのですが、上にドーンと野菜がテンコ盛りされており、しばらく食べてからようやくパン層に辿り着くという。「ハンバーガー」の概念がグラリと揺らぎます。
サラダなんか大きな丼鉢くらいに出てくるし肉類の具も豊富。パンプキンスープを飲んだら、カボチャ一個分くらい入ってるじゃないかというくらい濃厚。つまりサイドディッシュではなく、「それだけで一食になるもの」、日本に即していえば、カツ丼や天丼などの丼系、あるいは天ぷら蕎麦とかあの種のランチ定番食品だと思ったらいいです。
ということで、自分でサンドイッチを作るときも、本式のサンドイッチを作ってください。でないと、材料を買ってきても余らせてしまいます。とりあえずガンガン乗せる。親の敵のように乗せる。レタスも薄く一枚引くなんてイジこいレベルではなく、積み上げて層になるくらい。ハムもトマトもチーズも。積み上げて数センチにして、上からしっかり抑えてないと二つに切れないくらい。シェア探しをする人のために作ってあげたサンドイッチの写真が体験談にあったので、そこから引用しておきます。→こんな感じ。
大口開けて「あんぐ」と食べるように作るべし。
あとで書くと思いますが、こちらは野菜やハム、チーズという基本食材の味がしっかりしてるから美味しいです。ラウンドに出ると毎日サンドイッチになったりしますが、それでも飽きない。僕もカントリー方面に旅行にいったとき、結局一番美味しかったのは、ドライブの道すがら食べたサンドイッチだったりします。
サンドイッチというのは作るのはそんなに難しくないです。というか、パンに挟むだけだから、難しくなりようがない。
サンドイッチの本当の難しさは、食材の調達といかに使いきるかという@A部分にこそあります。
パンの選定
いわゆるサンドイッチ用の食パンですが、これもピンキリで種類があります。スーパーのノーブランドでは2ドル前後のものもあるし(最安値で95セントかな)、高級品になると「五穀米」のように十数種類の穀物が混ざっている5ドル前後のもの(美味しい)、さらにもっと高いのものもあります。その代わり一パックが大きく、日本の食パン一斤の2−3倍はあります。味と値段はほぼ比例しますが、ここでは、標準廉価版(標準価格米みたいな)2ドルパンでいいかと思います。
スーパーなどでは予めスライスされているパンが売られていますが、町のパン屋さんではその場でスライスしてくれます(パン切り機が面白い)。Would you like to slice?って聞いてくれます。ただスライスのハバが(日本人の感覚からしたら)やたら薄い。サンドイッチ用とトースト用の二種類の選択があるのですが、一応トーストの方が多少は厚めのようだけど気をつけてないと分からないくらいどちらも薄い。分厚いトーストが食べたいんだあ!という人は、スライスして貰わずに買って、あとで自分で好きなようにスライスしてください。なぜ薄いか?といえば、そもそも食パンの食べ方が違うからでしょう。皿の上でフォークとナイフで切って食べたりしますから、あの薄さでいいのでしょう。
パンの値段はどんどん上がってましたが、2015年頃(時期はうろ覚え)から逆にスーパーのパンは下がってます。多分大手スーパーの戦略で、日常的に集中する価格帯&商品について、価格破壊の安値をつけて一気に量を稼ぎ、薄利多売を徹底させようというマーケティングかと思われます。実際安くなった商品は多く、コールズの牛乳なんか2リットルで2ドルですからね(これが大企業の生産者イジメとして社会問題にもなってるんだが)。
あと、「2個(たくさん)買うと激安になる」という戦術は相変わらず健在です。アジア人や単身者が増えたことでハーフサイズのパンも多少見かけますがメジャーではない。やはりドーンと沢山買うという伝統的な bulk buying系です。さて、こんなに買っても使い残してしまう!と思うので、ついつい手が出しにくいという問題があります。
解決策は幾つかあって、例えば、@冷凍しておく、A「生協」方式です。
@冷凍は、もう最初に(野菜や具が新鮮なうちに)ドドドとサンドイッチを作り切っておいて、ラップに包んで冷凍しておき、朝カチカチの物体を持って通学すれば、ランチにはほどよく自然解凍しているという。料理というのは準備と後片付けが面倒であり、一気にまとめて作ってしまうと手間いらずです。月〜金の5回分のランチを一気に作れば、一食平均のコストと作成時間は大幅に短縮できます。一食あたり1ドル×1分くらいで済んでしまう筈です。破壊的な節約効果があります。シェア先の冷凍庫に収まらないという場合もあるでしょうから、そこは適宜調節(食べ進んでいよいよとなったら冷凍するとか)。
A生協方式は、友達数人と一緒に買って分割するという方法です。特に1パック4ドルのものが2パックで5ドルになるような場合(物凄い割引率です)、共同購入は威力を発揮します。こちらは沢山買うと信じられないくらい安くなるので(水とかコーラとか)、いろいろな点で活用するといいです。
「パン」は日本語?
→MORE
英語で「パン」というと、普通はフライパンのように「平べったい形状の鍋」を意味します。通常はブレッド(bread)ですが、"bun"ともいうし、日本でいう「食パン」は普通"loaf"といいます。
というかパンの種類は日本人の想像を遙かに超えて広く、結局「小麦粉と水で生地にして作った主食になりうる食物」くらいにしか定義できません。日本は明治時代に西欧からパンが入ってきてまだ150年たらずビギナーですからパンといっても食パン、ロールパン、いわゆる菓子パンくらいしかなく、徐々にクロワッサンとかデニッシュとか種類が増えてきたという発展途上で、まだサワードウとかミッシュは一般的ではないでしょう。しかし世界のパンは数百種類あります。そのうち主立ったモノを
Wikipediaでリストアップされているのでごらん下さい。
でもなんでブレッドのことを「パン」と呼ぶのか謎です。もしかしたら「バン(bun)」が訛ったのかな?という気がしますが、バンというのは小さくてこんもり盛り上がった形のパンで、通常は甘い菓子パン系ですが、甘くないものもあります。イースターの季節商品である Hot Cross Bunもそうです(上に十字架をかたどった「+」が刻まれており、時期になるとColesなどでよく売ってます=6個一組のようにくっついていたりする)。これを聞き間違えて「パン」になったのではないかと(僕だけの仮説)。多分、Cutlet(切り身)のことを誤解して「カツレツ=油で揚げる=Deep Fry」になっているのと同じことではないかと。
具の選定
別に凝ったモノを作る必要はなく、生野菜とハム程度で十分です。
個人的な趣味でいえば、レタスは、日本でいう普通のレタス(
アイスバーグ・iceberg、キャベツ状になってる)ものが最適かと。多少高めで通常2〜3ドル。ついお値段安めのサニーレタス系に走りたくなるのですが、サンドイッチにして噛んだときのシャキッとした食感はアイスバーグの方が良く、また割と密集しているので見た目以上に量があり、サンドイッチ一回当たりのコストでは結局得だと思います。持ってみてズッシリ重い感じがするのが良い。
トマトは、普通のトマト、細長いイタリアトマト(roma tomato)、さらに茎のついているトラス・トマト(通常お値段高めだけどよく熟していて美味しい)があるけど、あなたの気分で適当に。キロ3ドル台が標準。
胡瓜はキューカンバーだが、日本風の胡瓜はレバノン胡瓜(レバニーズ・キュカンバー)。
ハムは、これがまた死ぬほど種類があるのだが、大事なコツは
パックしてあるものを買わないこと。つい慣れているパック商品に走りがちなのだが、お店の人に告げて買う量り売りコーナーで買った方が安い。嘘だと思ったら電卓叩いて計算してみたらいいけど1.5倍から2倍くらいパックの方が高い。これは綺麗に切れている部分だけ使うのでロスが多いのと、パック代などが余計にかかるかでしょう。それにハムでもなんでも切ったばかりのものの方が美味しい。最近では切りおきしないで、大きなままゴロンと転がしておき、注文があってから切ってくれる店が増えてきました。種類は多いがHoney Leg Hamなどキロ10ドル台のものが定番。25-30ドル出すと色が白っぽいターキーになり、これが高いだけあって淡泊で美味しい。が、普通はスペシャルで10ドル後半のでいいでしょう。あとはお好みです。100グラムでも結構あります。ハムを指さし、"Can I have this....er ..Leg Ham...yes, that's it...One hundred grams please!"と言えば簡単に買える。キロ18ドルでも100グラムだったら1.8ドル。約160円ちょいで、これで1週間のランチ分くらいまかなえる。
これら生鮮品を買うコツは、コマメに買うこと。トマトも面倒だからついまとめ買いをしてしまうのだが、最後の方は悪くなってきて結局損。コマメにベスト物を1−2個買えばいい。またハム類はすぐに冷蔵しなければならないので、家の近所で買うか、せめて2ドル60セントのチルドバッグ(断熱材で作ってある)を用意。こちらのハムは保存料が入ってない(or少なめなのか)あっという間に悪くなります。冷蔵庫においておいても1週間が限度。
チーズは、これも一番安いノーブランドのスライスチーズで十分です(24枚で3ドルくらい)。
製作
製作はいちいち書くまでもないけど、コツとしては
野菜多めにすることです。こちらの野菜は美味しいし、野菜だけでも十分食べられる。レタスのシャキ感とトマトの甘味だけで結構いけます。ハムは、そんなにドサドサ入れなくてもいい。チーズもしかり。味にアクセントを添えるくらいの感じでいい。まあ、これはやってみてお好みのレシピーを探すといいです。
マヨネーズは要りません。本場のマヨネーズとは違って日本マヨネーズは酸っぱいので、どうしても日本人は酸っぱいマヨネーズが欲しくなったりしますが、これが高い。輸入品になるし、卵製品だから持ち込めないし。と思っていたら、アジア人も増え、ジャパレス経由なのか日本風マヨネーズも人気が出てきたのか、普通のスーパーのエスニックコーナーで日本マヨネーズを売るようになってます。
FBに写真と小話を書いておきましたので、ご興味があれば。
でも、そもそもサンドイッチにマヨネーズ要らないですよ。マヨネーズに味に頼らなくても、素材の味がしっかりしてるから、それだけで十分食べられます。てか美味しい。これはサラダのドレッシングでも同じで、生野菜=マヨネーズ類という固定観念は捨てた方がいい。チーズもハムも保存食だから製造過程でたっぷり塩分がはいっており、これを入れておけば十分に塩味がつきます。サラダもドレッシングかけるならチーズを掛ける手があるし、実際こちらのカフェのサラダでは種類豊富なチーズが味に合わせてかかってます(薄くスライスしたやつとか)。
それでも酸っぱさが欲しかったら、イタリアンマヨネーズの
アイオリ/AIORIがオススメ。卵黄にガーリックとレモンジュースと岩塩、オリーブオイルを混ぜたもので、さすがイタリアン、マヨネーズよりも味が深くて美味しい。あるいはもうちょいズシッとした豆っぽさが欲しければトルコの
ハマス/Hummus、同じくトルコの胡瓜とヨーグルトを混ぜ合わせたtzatziki(ザージィーキーと読むらしい)あたりはシドニーローカルだったら誰でも知ってる有名どころ。いずれもチルドコーナーのDIP(ディップソースのディップ)コーナーにありますし、これらに限らずDIP食品だったら適度に酸味があるので代用できます。たーくさん種類があります。スモークサーモンやら、ナスやら。ただしアイオリは常にあるというわけでもなく、ライカードなどでイタリア系のデリ、あるいは
Harris Farm(
別窓)などデリも兼用している大きな八百屋さんに置いてあったりします。
さらにヴァージョンアップを目指すのならば、ベイビースピナーチに豆腐のように切り売りしているフェッタチーズを刻んで入れ、そこにピーチや洋梨をスライスしたモノを混ぜてアクセントをつけるとか、オリーブ油瓶詰めのサンドライド・トマトをみじん切りにして散らしてみるとか、同じ瓶詰めのローストカプシカムと綺麗にグリルして脂を落とした鶏胸肉と重ねるとか(上の写真の地中海バーガーがまさにそれ)、インドのタンドリーチキンを使うとか、サルタナス(レーズン)やヘーゼルナッツを砕いてアクセントにするとか、、、無限に可能性はあります。そして、こういった物が街角でよく売られているわけですね。一個8ドルくらいのフォカッシャとかクルリと巻いたWRAPとか。
ここまで来ると「お財布に優しい」という初期の目的を逸脱してしまうのでチラリと書くに留めておきますが、多少お財布に厳しくても美味しい物が食べたい!という人は、せっかく世界中の食が集まっているシドニーにいるのですから、あくなく探求心で研究してみてください。これまで生きてきた日本の常識ではおよそ思いつかないような食材の取り合わせがあり、食べてみたらびっくりするほどよく合うという物は多いです。そんな食材の存在自体知らなかった!というものも結構ありますしね。
→次に行く(第5回:実践&食材調達編 (2)〜ソーセージの偉大な効用)
もっとシドニーの食生活を豊かにしたい人は、
シドニー食生活向上委員会