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特別寄稿体験談

アルバイト先との給与支払トラブルを労働委員会を通じて解決した事例



イントロダクション


 以下にご紹介するのは、2006年8月にご夫婦でワーホリにこられたKさんご夫妻です。一括パックをご利用になり、ウチのゲストルームにも滞在されていました。Kさんはシェア探しも難産で、カップルシェアを受け入れてくるシェアが少ないことから、150本以上電話して根性で見つけてこられました。このあたりも体験談を書いて欲しいところですが、これはまあ、ワーホリが終わったときに直筆体験談でも書いていただきましょう。今回はバイトの問題です。

 意欲満々のお二人は、語学学校にも目一杯17週通っておられたわけですが(現時点でも通学中)、資金補充&経験獲得のために通学中から早々に日本食レストラン(通称ジャパレス)でバイトをされていました。たまたま通っておられる学校でお目にかかったとき(毎週のように学校見学に僕も同行するので、過去にお世話した人によく会います)、バイトの話になり、給与支払い方法が奇妙であることや、レストランの名前に思い当たるところもあり、「それ、ヘンだよ。ちょっと調べた方がいいんじゃないかな?」と言いました。その場は深い話も出来なかったので、後ほどメールで以下のようにアドバイスしました。

 (前略)3ヶ月とかそんな長期に毎日30ドルづつ取られてたらやってられないと思いますよ。だって、いよいよ満期って頃に、あれこれイビリ出されるようにされたら、結局何も返ってきませんからね。キズが浅いうちに辞めたほうがいいと思いますです。

 ちなみに、こういった労働契約は違法だと思います。具体的にこちらの労働法の何条に反するのかは分かりませんが、常識で考えてもおかしいです。日本よりもはるかに労働者保護をしているこの国で、こんなやり方が通るわけはないです。

 なお、
PayCheck Plus
に、あなたの給料はフェアかどうかをチェックするサイトがありますが、レストランでカジュアルワーカーだった場合、最低時給20.30ドルです(2014年01月15日現在)。

詳しくは、NSW州の労働委員会の頁
FairWork Ombudsman Camplaints
にいろいろ書いてあります。

オンラインでも電話でも相談できますが、直接足を運ぶことも可能。
Sydneyの場合は、Level 12 255 Elizabeth Street Sydney NSW 2001 がこの事務所の連絡先ですので、一度訪れて相談してみるのも手です。

 ※リンクサイトや住所については、当時のメールのものから2014年時点のものに変えてあります。


 以後、Kさんは同事務所を訪問し、状況を訴え、結論的に言えば全面勝訴に近い結果を獲得できました。
 何度か足を運んだり、書面を書いたり、なかなか面倒臭い部分もあるのですが、「外国でこういうことをする事こそがワーホリの醍醐味じゃないか」「金銭以上にすごく貴重な経験が得られる」ということで、頑張っておられました。結論が出た時点で、「後からくる人のために貴重な体験談を書いてください」とお願いしたところ快諾され、以下のように書いていただきました。

 なお、2−3注意点を書いておきます。
 レストランの固有名詞は敢えて伏せます。なにかとウワサは聞いてますが、当該個人を攻撃するのは僕やKさんの本意ではないからです。それに、同じ名前でやってるジャパレスがもしかしてあるかもしれません(エリアが違えばありうる)。要らぬトバッチリを第三者にかけたくありません。また、店名は同じままオーナーが変わったりすることもよくあること(現にここは昔別の日本人オーナーだったような記憶があります)。この店の問題点は、要するにオーナーさんのドケチ性にあるのであり、このオーナーが別の名前でジャパレスをやるかもしれず、また似たようなオーナーもいない保証もない。さらに「そうか○○だけを気をつければいいのだな」と間違った印象を皆さんに与えかねません。付言するに、このオーナーさんは中国人ですが、別に中国人だからとか、日本人以外だからということは殆ど何の関係もないです。日本人オーナーでも結構ヒドイ話は聞きますし、逆に日本人以外のオーナーでもいい所もしっかりあります。

 広い世間にはイイ人もいれば意地悪な人もいます。いいバイト先もあれば悪いバイト先もあります。出来るだけ悪いところに当らないようにと思うのは人情ですが、だからとって「○○はアブナイ」みたいにアホな単純化をしてもリスクは回避できません。大事なのは、「あれ、おかしいな?」と思ったときに、どう交渉し、どう対処していくか。話がこじれたときには、公的機関などをどのように有効に使っていくのかというノウハウです。よって、この体験記事の本旨は、そのノウハウ部分にあります。

 ちなみに、逆にジャパレスなど日本人ワーホリを雇っている側にも知り合いはいますし、そこでの話を聞いていたら、かなりヒドいワーホリさんもいます。いきなり初日から無断欠勤するとか、ザラにいるそうですから、まあ、店にせよ、労働者にせよ玉石混交だということです。単純に善玉悪玉に分けていると外します。これはホームステイでも、シェアでも、学校でもなんでもそうです。要するに「好ましからざる存在」というのは、世間に満遍なく広がっているということで、だからこそ「対処方法」というのが大事であるということです。


Kさんの体験報告レポート


今回バイトしたジャパレスとの間に生じた賃金の問題について、今後同様の被害者のための道しるべの一つとなるべく、一筆したためます。ちなみにこのジャパレス、オーナーは日本語が堪能な中国人でした。

バイト先を簡単に説明すると、
・オーナーはつまらないことですぐキレる
  馬鹿か!卵は片手で割るんだよッ!
  お前殺すぞ!これ高いんだぞッ!*1
・地下倉庫はネズミの食料庫に等しい
  ネズミがダンボールを食い破って、乾麺を食べます
   →あまりはもちろん客に出します
・生ゴミを出した後のポリバケツで皿は洗う
  一度にたくさん皿が洗えて、効果的だそうです(オーナー談)
・床に落ちた食べ物は水で洗って客に出す
  床に落ちた食べ物を捨てたら、*1を言われました
などなど他にもいろいろありますが、本題とは関係ないのでこの辺で紹介は〆ます。

まず、最初に怪しいと思った点は、インタビュー時の賃金等の話と、契約書の話が異なっていた点です。

インタビュー時
● トレーニング期間(最初の8日間)は時給$8、それ以降は$10
● トレーニング期間は一日につき一時間勤務時間を引く(7時間働いても記録は6時間)
● 給料は2週間に一回、土曜日
● 賄い付き

契約書(インタビュー時には言及しなかった点)
● 3ヶ月以内に辞めたら、最初の8日間については一日あたり$30チャージする
● 賄いは一回あたり$5チャージする

契約書の内容が変だなと思ったので、私はオーナーにコピーをくださいとお願いしました。オーナーは一日たって、私の申し出を断りました。理由は、「そんなことをする会社はオーストラリアに存在しない」からだそうです。また「契約書の内容はどこの会社も大体同じで法律に沿って作ってある、法律を調べればすぐわかるから、自分で調べてみなさい」(このオーナー、なにかと法律、法律ってうるさかったです)とも言われました。そこで私は、家に帰ってからシェアメイト(生粋のオージー)に話を聞いてみました。シェアメイトは「契約書のコピーを渡さない会社は、オーストラリアに存在しない」そうです。この時点でオーナーへの信用はゼロにほぼ等しくなりました。

さて2週間ほどバイトしたのち、その日は3回目の土曜日だったので、オーナーに今日は私の給料日なので、給料をくださいと話をしました。オーナーは「今日はあんたの給料日じゃない、給料日は会社が規定したうんたらかんたら・・・(長い説明)・・・」5分ほど話し合いは続きましたが、最終的にはオーナーがブチキレて、"Fuck! Go out!"(Get outが正しいと思うんですが)と叫び、腕をつかまれてレストランの外に追い出されました。

その後、田村さんに教えていただいた労働委員会/Office of Industrial Relations にどうしたものかと相談に行きました。彼らは、「規定の形式に則った請求書*2を、オーナーに対して送りなさい」と教えてくれました。自分たちの賃金の計算方法も教えてくれました。そして、「もし一週間たっても何の返事もなかったら、もう一回ここに来なさい」と言ってくれました。さらに「英語が全然わからなくても大丈夫だから、安心しなさい」と、心強い一言もいただきました。

そして、最初の交渉(?)の日がやってきました。私は*2は書いたものの、納得のいく金額がもらえたらこれで終わりにしてもいいと思っていました。ところが、オーナーが提示した金額は、私の予想をはるかに下回るひどいものでした。オーナーは、またオーストラリアの法律は法律は、と酸っぱく言っていましたが、討論するのも馬鹿馬鹿しいので、*2を手渡して帰りました。ちなみにオーナーが提示した金額は、私が$240ほどで、妻のほうは$180ほどでした。

手紙の返事を待っている間、少々この州の労働FAQを調べてみました。なかでも目を引いたものは、雇用者と被雇用者が同意した契約であっても、最低賃金以下であった場合はその契約は無効であるというものでした。

1週間が経過しましたが、オーナーからは何の連絡も入らず、従って再度労働委員会を訪れました。今回は、労働委員会に提出する書類を書くことになりました。内容は、自分の詳細やレストランでの勤務内容、勤務時間、また現在どのような問題を抱えているかというもの記述するものでした。*2のコピーも提出し、今度は数日後に労働委員会が私に手紙を出すのでそれまで待つようにといわれました。

数日後、労働委員会からの手紙が届きました。内容は、私たちのクレームは連邦労働局/Australian Government Office of Workplace Services に送られたので、そちらの指示に従うようにと書いてありました。すぐに、連保労働局からの手紙を受け取りました。そこには、「再度雇用者に対して14日間の猶予を与えるので、その間に問題を解決するように努力しなさい」「その間に問題が解決しないのであれば、連邦労働局が調査を開始するために、私たちに連絡を取る」と書いてありました。

そこで私は再度オーナーに電話をかけ、私の請求した金額を払いますかと問いました。オーナーは「あんたの計算は間違ってる。私の弁護士が言ってた、この国の法律ではうんたらかんたら・・・契約書ではうんたらかんたら・・・」と、また長い説明を始めました。埒が明かないので、私は、オーナーの反論の是非を連邦労働局に尋ねたあと再度オーナーに電話をするといって電話を切りました。

さて私は英語が話せないので、連邦労働局に聞きたいことを作文し、それを語学学校の先生に添削してもらい、FAXしました。翌日、連邦労働局よりE-mailが入り、彼らに連絡を取るようにとありました。早速私は連邦労働局に電話をしました。連邦労働局は、「オーナーは給料を払うといっているので、一度連邦労働局のオフィスに来てください」というものでした。また通訳も付けるから心配しないようにとも言ってくれました。

翌日私は連邦労働局を訪問しました。私は州の最低賃金に則って私の賃金を計算したのですが、彼らはこういいました。「オーストラリアの法律は頻繁に変わる。また時と場合によっては、州法ではなく連邦法が適用される」。今回私の賃金は、州法ではなく連邦法によって計算されることになりました。私が連邦労働局を訪れる数日前に、オーナー側が連邦労働局を訪れ、既にいろいろ調査を受けたようでした。以下に私のクレームと彼らの反論を記します。

私の請求
 ● 39.5時間働いた
 ● 最低賃金に則った金額を請求した
 ● カジュアルワーカーである*3
 ● 休日手当を付ける

オーナーの反論
 ●34時間働いた
 ●辞める一日前に通告した*4
 ●賄い代として、一日につき$5請求する*5
 ●信用を壊した(私が辞めたので、妻も辞めたことを言っていたようです)*6

連邦労働局が下した決断は、
*3・・・私はパートタイムワーカー
*4・・・本来ならば一週間前に通告しなければならないが、今回は問題視しない
*5・・・違法
*6・・・法律とは関係ないので、取り扱わない

労働時間については、私の請求した時間で給与が計算されました。私のClassificationはレストランGrade3で、最低時給は2006年11月現在$14.09(税込)でした。計算は以下のような感じでした。

(39.5hours × $14.09 + 休日手当) - 税金(29%?)

この計算で、最終的には$450ほどゲットできました。給料が既に連邦労働局の方にあったのは驚きでした。ただ妻のほうは、請求した金額を全額もらえませんでした。というのも、最後のバイトの日に妻は欠勤したのですが、欠勤報告の旨の電話は、妻ではなく私が電話したからです。オーストラリアでは、そういった類の通告は認めないそうです。妻は5.5時間(最終日の労働時間分)ペナルティーとして差し引かれていました。それでも最初の交渉の日にオーナーが提示した金額よりははるかに高い金額をもらえたので、満足しています。また一通り英語での説明があった後、再度通訳の電話(3者通話)をとおして内容の確認もありました。



とまあこんな具合で一件落着を迎えたわけですが、英語がわからなくても、外国でも、たかだかワーホリメーカーでも、何とかなるものなんですね。それほどまでにこの国の人は、権利を尊重してくれるということが、改めてうれしく感じました。最後に連邦労働局の人が言ってくれた一言が、妙に心に残ります。

"Your English is not too bad."




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