ビザというハードル
就労関係のビザの階層構造
最もネックになるのはビザでしょう。
オーストラリアにおける「就労とビザ」の関係は、
@永住権(無制限)
Aいわゆる就労(労働)系のビザ(スポンサー雇用主による)
Bワーホリ&学生ビザ(期間など厳しい制限)
C観光ビザ(就労禁止)
という階層になっているとしたら、C→@と上がるにつれて就労&労働条件も良くなります。同時に取得も難しくなります。
C観光ビザは一番簡単に取得できますが、しかし全く働けません。
B学生ビザは、学生は勉強が本分ということから、出席率8割を要求され、週の労働時間も20時間(正確には「2週で40時間」)に制限されています。ワーホリビザは、ワーホリビザ申請が30歳までという年齢制限に加えて、同一雇用主のもとで半年までと制限されています。これらの制限のために、基本的にはカジュアルジョブにならざるを得ないという宿命があります。
一方@永住権は、選挙権以外については殆どオーストラリア国民と同じ権利を付与されますから最強です。それは職を得やすいというだけではなく、税率、社会保険などについても国民と同列に扱われます。
↑ここまでは分かりやすいです。
迷宮の労働ビザ
問題は、Aの領域です。これがもう「迷宮」というか、一筋縄ではいかないというか、書いている僕でも全然咀嚼しきれていません。
このページを最初に起こした1997年時点では、「永住権は難しいけど労働ビザならまだ易しい」という環境にありました。しかし、2000年以降になると状況は変わり、永住権は難しくなったが、労働ビザはもっと難しくなったといっても良いでしょう。
A領域が迷宮になるのは、その範囲がやたら広く、かつ業種によって状況は違い、さらに時期によって規制がコロコロ変わるという特殊性です。だから一概に言えないというか、一概に言おうとしてはイケナイのだと思います。
A領域の典型的な場合は、「457 visa(TSSビザに改称)」と言われるもので、もっとも日本人に馴染みがあるのは、日本で日本企業に入ってこちらに赴任してくる駐在パターンです。これは就職そのものは日本でしていますので、「オーストラリアの職探し」の問題ではなく、単純にオーストラリアで働くためのビザという事務手続の問題に過ぎません。なお、言うまでもないですが、別に日本企業に限ったことではなく、シンガポールでシンガポールの企業に入社し、社命でオーストラリアに赴任してくる場合も含みます。
そうではなく、現地で仕事を探し、同時に労働ビザを出して貰うというパターンがあります。日系企業の現地採用なんかもそうですが、これも別に日系企業に限りません。地元オーストラリア企業でも良いし、数的にはその方が数千倍あるでしょう。
しかし、これが難しい。
難しい理由は、一つにはビザ条件がやたらうるさいことです。
457ビザの移民局解説頁を読んでいくと、スポンサー企業になるだけでも七面倒くさい条件が山ほど並んでますし、雇用に関しても、地元のオーストラリア人では代替できない証明とか、賃金水準が他のオーストラリア労働者と同程度でなくてはならないとか、そもそも業種職種が永住ビザと同じものに限定されるとか(そうでないLabour Agreementという形態もあるが)、もちろん英語力もかなりのものを要求されます。
第二に就職機会があるか?という実質的な難しさです。求人情報を見ても、圧倒的大多数が「永住権保持」を条件にしています。ぱっと見た感じでは永住権をもっていなければ、そもそ労働市場に参加することも出来ないかのようにすら見えます。
非常に厳しいようですが、見方を変えたら至極当然のことでもあります。ビザの規定がやたら厳しいのも、オーストラリア人の雇用と賃金水準を守るため国としては当然やらねばならないでしょう。安い外国人労働力を無制限に認めていたら、国民はみな職にあぶれてしまいます。したがって、敢えてわざわざ外国人を雇うメリットがある場合にのみ限定解除でビザを認めるという。一方、雇用主の立場にたてば、そこらに幾らでもいる労働力と変わらない人を雇うために、面倒臭いビザスポンサーの手続きとコストをかける必要性などないからです。手続きの煩雑さは専門家に任せるにせよ、コスト的には数十万円はかかるでしょう。そこまで払ってでも「I want you!」と言ってもらわねばならないわけで、それはナチュラルに難しいです。
永住権と何が違うの?
第三に、労働ビザに真正面から格闘していくと永住権とどこが違うの?くらいに実質的に似てくることです。それだけのスポンサーを探しだすことが出来、またそれだけの労働価値をもっているなら、もう永住権取れちゃうんじゃないないの?という。
↑上の表は、 移民局からダウンロードしたものですが、就労関係のビザの種類の一覧表です。じつは古い表なんですけど、現在のものよりもずっと分かりやすいのですね。現時点のものは
Visa Options Comparison Chartsをご参照ください。キャプチャーして載せようかと思いますが、だらだら縦に長いわ、要領を得ないわでやめます。
似たような表として、
永住権の解説を書いたページにも載せてます。クリックしたら大きくなります。
全部英語だし専門用語ばっかだしよく分からないと思いますが(僕も)、幾つかの種類があるのですが、いわゆるビジネスビザと呼ばれるのは、直上の表で言えば左上の457ビザです(右下の489も)。それ以外は永住権の種類です。ビジネスビザが永住権と一緒に表になっているという時点で、いかにニアリーな存在かということを感じてみてください。
特に左上の457とすぐその下の186ビザ(雇用者指名永住権)とは、注意深く見てないと「何処が違うの?」くらい似ているでしょう?実際の現場でも似ているのですね。
ついでに下の4つも解説すれば、3番目の187ビザは、基本的には雇用者指名永住と同じなのですが、雇用者が地方の場合、地方活性化対策の一環としてやや条件を緩めて(職種とか)認めているものです。地方=Reaginal Australiaって具体的に何処?というと、この
Eligible Postcodes in Regional AustraliaによればBrisbane,Gold Coast, Sydney, Newcastle, Wollongong、Melbourne,Perthなど比較的大都市周辺を除くオーストラリア全部です。二回目ワーホリのファームの位置と同じになるのかな?
右上は一匹狼永住権の王道、独立移住永住権(189)です。オーストラリアにコネなんかないわいって人のためのビザ。しかし、2012年7月以降、何らかの形でスポンサーなり雇用可能性がないとダメだから、スキルセレクトという移民局主催の人材バンクのようなところに登録しなければならず、そこで判断されるという。次が政府や地方自体がスンポサーになる場合、最後の489は4年間の補欠永住権みたいなものです。地方の場合、政府ないしこちらに住んでいる親戚にスポンサーされれば4年間は働けるよということです。
要するに「出会い」であること
以上をつらつらと眺めていると、枝葉末節をばっさり除外すれば、要するに「良い出会いがあるかどうか」に尽きると思います。
労働ビザだって、これだけ面倒臭いことをやってくれるような雇用主/職場に出会えるかどうか、そしてそういう出会いがあれば永住権までは、もう目と鼻の先です。「政府や地方自治体の指名」といっても、要するに現場においては担当者が「うん、この人はいいぞ」と思うかどうかという胸先三寸的な要素が多分にあると思います。つまり、他人の主観によって結構決まってしまうことであり、それは恐ろしくもあるし、逆にやりやすくもあります。
ビザのスポンサーに慣れているところに気に入られれば、あとは幾ら細かな条件なり書類が要求されようとも、手慣れたものでしょうし、外注にも出すでしょうから、バキバキ揃えていくことは可能でしょう。形式などは、その気になれば何とでもなるという部分も大きいと思うのですよ、実務レベルにおいては。
だとしたら、やはり良い雇用主に出会うかどうか論、どうやってそこまで辿り着くか論になると思うのです。
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