Q:オーストラリアの語学学校の内容(授業風景、カリキュラムなど)はどんな感じなのですか?
日本の英会話教室とは違うのですか?
私も田村と同じ英語学校(シドニー大学付設の英語教育センターで、もともとはシドニー大学編入を目指す留学生のための施設)に通っていたので、学校のシステムとか、授業の雰囲気等については追記することはありません。
ああ、ひとつ思い出しましたが、そういえば通常の授業が終わったあとに、自由選択のオプション授業が週に2〜3回ほどあったと思います。文法、単語、発音、音楽、時事、スピーキングスキルといった科目から2つだか選択できたはず。でも、これは全学生を対象としているので学生間のレベルに差がありすぎて、あまり役に立った記憶はありません。他のクラスの人たちと知り合う機会にはなりますが、授業内容が詰まらないのでサボッてばかりいました。
その中でひとつだけ役に立ったのは「発音」。日本人の苦手な「S」と「SH」、「L」と「R」の違い、TH など日本語にはない子音や、同じアでも様々な母音などを徹底的に分析、早口言葉などを通して発音練習を繰り返します。面白いことに母国語によってそれぞれ苦手な音があるようで、中国系の人は「P」が「B」になってしまったり、スペイン系の人は「TH」の音がすべて濁ってしまったりといろいろ特徴があるわけですが、それらの傾向を耳で覚え、身体で認識することができたというメリットが実は大きかったように思います。実際社会に出てみると、様々な母国語の癖を引きずった英語を理解しなければやっていけませんので、ここでの経験があとあと役立っているのかな、と。
さて、話をもとに戻して通常の授業内容について、若干追加しておきます。私が参加したのは、ビジネス英語コースと一般上級コースだったので、授業のやり方は田村の記述とは若干違う面もありました。手法的には似たような感じですが、たとえば次のような練習もやっていました。
田村後注(以下、青色文字は同じ):福島は英語がかなりできて、入った時点で最上級クラスで(前半はビジネスコースに入れられたけど)、僕よりも一つ上。といってもゼネラルコースは4レベル4クラスしかなかったんですけど。それでも下記に述べているケンブリッジコースは、FCE、CAEよりも上の最上級Proficiencyでした。20週終る頃には、アッパーアドバンストで、普通の語学学校だったらありえないレベル7くらいです。それだけに以下の授業内容は上級者向けのコース内容だと思ってください。
- グループごとの寸劇。与えられた台本を読んで台詞を覚え、その授業時間内に即席発表会を開く。学芸会レベルとはいえ、結構盛り上がっていた。自分の台詞は何度も口に出して練習するから、台詞部分はカンペキに自分のものになるので効果的な学習法だと思う。
- 毎日数人が与えられたテーマに添ってトークを披露していたのは田村のクラスと同じだが、そのトーク内容はしっかり事前に準備しなければならなかった。というのは、トークが終わった後に、先生から文法的な間違いなどを細かく指摘され、それが週一度の小テストの問題の一部になったりするのである。で、まずは完璧なスピーチ用の原稿を作り、それを暗記し、鏡の前でトークの練習を何度も何度も重ね、そして本番に備えるという方法だった。トークにあたると前日は大変な騒ぎになるのだが、なぜか1回トークを終えるごとにグンと伸びているという実感があった。
また、トークの方法も時には生ではなく、休憩時間にテープやビデオに録画しておき、それを皆で聞く/見るという方法をとることもあった。こうすると自分の発音やボディランゲージを客観的にチェックすることができ、結構恥ずかしいのだが、役に立ったとは思う。
- 新しい英単語を覚えるためのゲーム。1人1つずつ英単語が与えられ、各自がそれについてイメージして物語を作る。で、その物語を象徴する絵を書かせ、その絵に基づいてクラスメイトに説明する。パートナーを変えて説明し続けるので、自分の単語は完全にインプットされるし、相手の絵や物語がインパクトがあれば、一発でたくさんの単語をインプットすることができる。新しい単語の記憶術としては、単にスペルを暗記するだけでなく、その言葉のイメージを右脳を使ってイメージと結び付けると、早く覚えられるだけではなく、忘れにくくなるともいう。授業外でも、新しい単語には必ず例文とイメージした絵を自分のノートに書くよう勧められた。
- 大学のコンピュータールームを利用したコンピューターの時間もあった。基本的なWORDの操作法やタイピングの練習などにあてられた時間なのだが、パソコンには既に慣れている私にとっては「休憩時間」のようなものだった。
- 前半のビジネスコースでは、ビジネスシーンで利用する専門用語や言い回しなども習ったのだが、当時の私のレベルは普通の会話ですら苦労していたので、大して役には立たなかったと思う。ビジネス英語を学びたいなら、先に一般コースで実力をつけてからにすべきと反省した。
授業では、ビジネスシーンを設定して交渉や模擬ミーティングをしたり、自由研究の発表会をしてみたり、契約書やレポートの書き方、電話の応対など教わったが、授業の進め方は後半の一般コースに比べるとやや日本の授業のような感じでマジメすぎて退屈であった(これはたぶんに先生のスキルが影響していると思う)。
学校がビジネスコースを作ったので、マネジメント上の理由(要するに人数合わせ)もあってか、強力に勧められた福島はビジネスコースへ。別の箇所でも書いたが、パンフレットに「コースが多彩」とかいっても、こういうこともあるのでアテにならない。このビジネスコースは、先生やクラスメートの相性も悪くて(政府の資金で留学してきたベトナム人達で、これがプライドが高い、高い)、彼女もけっこうヘコたれてましたね。僕も最初からアッパーインターだったしヘコたれてましたね。二人揃って前半戦は、しんどかったです。
唯一面白かったのは、生徒が一日先生になりきって、自分の好きなテーマについてプレゼンする時間。経済・ビジネス雑誌などから好きな記事を選び、それについて問題を作成し、クラスメートからの質問を受けたりするというもの。この時間、先生にあたると、一日じゅう喋っていなければならないので、ハードだが力はついたと思う。
- 後半のクラスは一般コースとはいえ、非常にレベルの高いクラスだったので(私は最も出来ないクチだった)、クラスメートの要望もあって最後にケンブリッジテストの模擬試験をやってみることになった。毎日少しずつリーディング、ライティング、リスニング等のテストをこなしていき、先生が答案に細かくコメントを入れて返してくれた。問題はすごい難しくて全然できなかったが、先生の恩情かギリギリセーフで合格していた。
- オーディオシステムのついたランゲージ・ラボラトリーで、リスニングの訓練。録音テープを聞いて穴埋め等をやっていたが、大抵はキレイなネイティブではなく、癖のある外国人や超早口のねーちゃんや、お年寄りの聞き取りにくい英語であった。他にランゲージラボではテーマに添って自分の話を自分でテープに録音し、机を代わってクラスメイトの録音した話を聞いて廻るというパターンもあった。
このランゲージ・ラボは放課後も無料で使用することができ(入学式の日に利用カードをくれた)、テープやビデオなどのオーディオ教材の貸し出しもしていて重宝した。英語だけでなくあらゆる語学の教材が豊富にあり、一般の大学生も利用していた。ここの掲示板に「EXCHANGE LESSON(日本語を教える代わりに英語を教えてもらおうという交換レッスン)」募集の貼り紙を出し、2人のオージーとエクスチェンジをすることになった。この2人は私にとっては、オーストラリアでの初のオージーフレンドとなったわけだが、彼らから教わったことは英語に限らず沢山ありました。
このエクスチェンジは大いに役に立ちました。特にオーストラリア社会のイロハから教えてくれたピーター氏には感謝してもしきれません。APLaCで書いてるコンテンツの原点は彼に教えてもらったようなものです。このようにローカルの水先案内人がいなかったら、すごい底の浅い留学に終ってたと思うし、永住していたかどうかすら疑問です。単なる「英語の勉強」ではなく「人生の転機」レベルの出来事で、これがあるからAPLaC全体でも念仏のように「いかにローカルに入っていくか」とそればっかり言ってるわけです。語学学校でも友達が出来るし、まあそこそこ楽しいけど、地元オーストラリア社会の方が面白さの量も質も桁違いです。もう全然世界も次元も違う。だから語学学校世界だけで留学が終ったら、メチャクチャ勿体ないです。わざわざ海外まで来た甲斐がない、とさえ言いたいくらいです。
おそらくオーストラリアの大学付設の英語学校の多くは、授業の質・内容に多少の差こそあれ、学期割、時間割は似たようなパターンでしょう。あとは私立の独立した英語学校というものが多くありますが、どういう感じなのか直接には知りません。シドニー大学で出会った留学生で以前に私立の英語学校に通っていた友達から聞いた話では、「私立の英語学校は学生の入れ替わりが激しく、ただ遊びに来ているだけの学生もいるし、クラスメートのレベルの差もかなりあるので、質的にはあまりよくなかった」とのことです。確かに当時シドニー大学の英語学校に来ていた学生は、皆「早くできるようになりたい」という熱心さが感じられましたし、実際一生懸命勉強していました。でも、クラスメイトにどんな人たちが集まるかは神のみぞ知るわけですし、授業の質は先生のスキルとパーソナリティに負うところが大きく、学生側から先生を指定できるわけではないので、結局「いい学校に出会えるかどうか」は運じゃないかという気がします。
わはは、「運」とか言ってるけど、それを言っちゃオシマイですよね。でも、ほんとそうなんですよね。カタログ選びのように決めてたら、お神籤引くようなもんです。いかに運の要素を減らしていくか、そこがポイントです。
シドニー大学は、自分らの母校でありながら、総合力やコストパフォーマンスに劣るからオススメしてませんが、学生が総じて真面目なのは確かです。実際、よその学校では、遊びにきてるような学生も沢山いるし、真剣に勉強してるとおちょくられたりしたという話もききます。僕のクラスにいた日本人の子も、同じようなこと言ってましたね。だからシドニー全体の学校で言えば、シドニー大学付属は明らかに上位につけてます。しかし全然トップではない。値段が高いのと、大学進学に偏っているのと、硬直的な官僚システムでスチューデントサービスが良くないからです。こういった学校間格差をいかに見抜いて、運の要素を減らしていくか、そこが勝負です。
また、当時のシドニー大学付属英語学校の一般コースには、様々な人たちが来ていました。ふつうの語学学校だとやはり多いのは18〜22才くらいの大学生を中心とした若い人たちだと思うのですが、この学校には様々な社会経験のある人たち、年令的にも幅広い人たちが集まっていました。デンマークから来たコンピュータープログラマー、ベトナム政府から援助を受けて留学してきた英語の先生(こんな人と同じクラスってのはツライですよ・・)、インドネシアの会社から資金援助を受けているエンジニア、ドイツからご主人の海外赴任についてきたイラン人の奥さん(4カ国語ペラペラ)、ホテル業界に見切りをつけて渡豪してきたトルコ人の女性、中国政府に愛想をつかして勤めていた食品会社を辞めて留学目指してきた北京出身の女性、九州から来た歯医者さん等々、その社会経験の豊かさは授業にも膨らみを持たせてくれて、英語以外にも勉強になる部分が多々ありました。
彼女が書いているデンマークから来たプログラマーというのが、今の彼女のダンナさんです。後に運命の再開を果し、結ばれるのだけど、これを書いている段階では、そんなことが未来に待ってるとは夢にも思わず、、、。
多士済々のクラスメートなのは、彼女が上級クラスだからだと思います。イッコ下の僕のクラスでは、普通の日本人や韓国人ばっかりでした。だから、語学学校では、いかに上級クラスに行くか、です。同じ学校とは思えないくらい、ガラリとメンツや雰囲気が変わります。上に行けば行くほど豊富な体験ができるし、モトが取れます。
さて、日本の英語学校との違いについて、少し考えてみましょう。
私は日本でも英語学校というものに何度か通ったことがあります。大学生の時はじめて週2日夜2時間ほどの英語学校に行きましたが、長くは続きませんでした。内容的には例文を読んで暗記し、それを入れ替えて練習するパターン・プラクティスが多かったと記憶しています。あとは会社の英会話クラブに顔を出していたこともありましたが、英語ネイティヴの先生を呼んで、皆して不自由な英語で何となく雑談をしていただけでした。オーストラリアに留学しようと決めてからさすがに不安になってきて、1ヵ月だけ週2日夜2時間英語学校に通いましたが、これが非常に費用が高かったという記憶があります。シドニー大学に支払った半年分の授業料の半分くらいを費やし、その割には単なるパターン・プラクティスだけで、まあ、多少不安感は払拭できたかもしれないけど、効能は限りなくゼロに近かったと思います。
日本で本格的に英語を勉強し、マスターされている方も多くいらっしゃるので、私が日本で英語をマスターできなかったのは、全く自己の能力&努力不足以外の何物でもないのですが、そんな私でもオーストラリアに来てから日常生活をこなせるようになったという結果を総合して考えると、「やっぱり英語をマスターしたかったら、英語を話す国で勉強した方が効率的」ということは言えると思います。
最近では英会話テキストもテープも簡単に入手できるようになりましたが、現地にいればあれらの教材は全部タダで入手できるわけです。満員電車の中でウォークマンで耳をふさぐ代わりに、町を歩いていれば自然と人々の会話が耳に入ってきますし、テレビもラジオも新聞も雑誌も、すべてが教材になります。また、自分の現在の実力を毎日まざまざと見せ付けられますので、「あー、まだまだだあ!」と悔しい思いをしたり、「やった!通じた!」という喜びを感じたりしながら、日々確実にステップアップしていけます。
授業についても前述挙げたようにバラエティに富んだ方法で、楽しい雰囲気の中で授業が繰り広げられていきますので、飽きることなく自然に身体に身についていきます。これは日本の英語学校(中にはいい授業をしている学校もあるのだろうが)とは大きく違う点ですし、是非とも日本の英語教育にも取り入れてもらいたい手法、考え方も多々あります。
また、ここまで言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、日本で英語教えているネイティブの先生の質にはやや疑わしいものがあります。勿論いい先生もいらっしゃいますが、結構な確率で「単なる効率のいいアルバイト」と捉えている人もいますし、語学教育法についてなんら知識も経験もない人でも外国人であるというだけでチヤホヤされているキライもあります。実際、こちらで出会ったオーストラリア人で日本に暮らしたことのある友人たちは、「日本に行けば英語の先生といういいバイトがあるから、いいのよね」と言います。その友人たちは優秀ではありますが、英語教育については全くの素人です。
こういった日本国内の英語ネイティブ教師の現状と比較すると、オーストラリア国内の方が英語教師の質が高いのは言うまでもないでしょう。ネイティブだらけの中で、母語を教えるだけの能力と経験を持った人同士が競争しているのですから。
これは本当にそうだと思います。日本では、英語ネィティブそのものが珍しいから、それだけで教師になれます。日本を訪れるオーストラリア人など英語圏ワーホリの定番のバイトは英会話の先生。でも、こちらでは全員英語を喋るから、そのなかで教師になるのはかなりの技量が必要とされます。技術的には天地の差でしょう。
ただ、日本の英会話学校は、学生の資質にも問題がありますよ。シドニー大学本科生のハーンは2歳のときにこっちにきたら殆どネィティブのオージーだし、英語は完璧、頭脳も東大生並だったのだけど(大学の日本語の科目の教材で志賀直哉の「暗夜行路」を辞書なしでスラスラ読んでたくらい)、でも日本に行ったときに英会話スクールのバイトは出来なかったのです。理由は簡単、見た目が日本人みたい(ベトナム系)だからです。つまり、英会話学校としては「金髪のガイジンと会話をするひととき」というのが「商品」になるのであり、いかに教え方が上手だろうが、いかに完璧な英語だろうが、見た目が日本人みたいだったら受講生からクレームが殺到するそうです。本当は、ネイティブだというだけの先生よりも、日本人で教え方が上手な人から習った方が伸びると思うのだが(特に初中級)。まあ、そういう消費者サイドの問題もあります。学校のレベルを上げるも下げるも生徒次第、消費者次第です。
オーストラリアは移民の国。移民に対する英語教育という観点から、語学教育に関する研究は非常に進んでいるそうです。それを吸収できるか否かは個人のやる気と努力次第ですが、本気で取り組めば、日本国内でがんばるよりは、効率よく「生きた英語」をマスターしていける環境は整っていることと思います。
結婚して永住権を取ったり、IELTS6点以下で永住権を取った人にはAMESという政府による英語学校があります。質はどうもイマイチなんだけど、そのかわり普通の語学学校ではまずお目にかかれない民族ばっかりです。中国人は未だ馴染みがあるとして、ユダヤ人、ロシア人、イランなど中東系、さらにクロアチア、マセドニアなどの旧ユーゴ圏など。これが本当のオーストラリアの姿であり、語学学校がいかに多国籍の学生を誇ろうが、お金持ち or/and エリートによる外来者用のリゾート施設的な存在に過ぎない。本物の現実世界は学校の外にあります。