今週の一枚(2018/01/08)
Essay 859:2016-2017年度 オーストラリア永住権DATA速報
〜移民局の発表「2016-17 Migration Programme Report」より
写真は、昨日(2018/01/07)、シドニー(内陸部)で47度を記録した日に撮影したオペラハウス。
うろ覚えの記憶ですが、このオペラハウスのフォルムがどうしてこうなっているのか?その設計者のコンセプトはというと、一つは「貝殻」。そしてもう一つは「船の帆(ヨットの帆ような)」だったかと。紺碧の空に、風をはらんだ船の白い帆が、自由を象徴するかのように輝いているってイメージじゃないかなーと勝手に思ってます。
40度以上のこの日、強烈な太陽光線にテカるくらいに照り映えているオペラハウスの白いフォルムは、まさにこのコンセプトそのものじゃないか、と思った次第です。蒼い空に突き刺さるような自由の輝き。
うろ覚えの記憶ですが、このオペラハウスのフォルムがどうしてこうなっているのか?その設計者のコンセプトはというと、一つは「貝殻」。そしてもう一つは「船の帆(ヨットの帆ような)」だったかと。紺碧の空に、風をはらんだ船の白い帆が、自由を象徴するかのように輝いているってイメージじゃないかなーと勝手に思ってます。
40度以上のこの日、強烈な太陽光線にテカるくらいに照り映えているオペラハウスの白いフォルムは、まさにこのコンセプトそのものじゃないか、と思った次第です。蒼い空に突き刺さるような自由の輝き。
概要
オーストラリア移民局が、先般、前会計年度(2016年07月01日〜2017年06月30日)の移民プログラム(永住権付与)の年間レポートを出しました。毎年やってますが、簡単に要旨を紹介します。レポート全文は、ここににあります。
さて、この統計ですが、結論からいえば、何かすごーく目新しい出来事が起きたわけではないです。ま、普通。だいたい例年どおりです。
が、その「例年通り」自体、そんなに理解しているわけではないので、ときどき「ほお、最近はこうなっているのか」というのを認識するのは有意義なことだと思います。
全18ページほどの短いレポートなので、さらっと読めてしまうと思いますが、要旨を抜書きしますね。
Executive summaryで今年のトピックが書かれてますが、
・永住権発行予定数が19万のところ、実際に交付されたのは18万3608人でちょい少なめです。
・うち出身国トップはインド(21.2%)で、二位が中国(15.4%)
・18万の永住権のうち、スキル・技術系移民が12.4万、配偶者や親族などファミリー系が5.6万で、約2:1で技術系です。
・さらに内訳をみつつ簡単な結論をいえば、普通の日本人が永住権を取る場合、(1)仕事系の雇用者指名か、(2)配偶者系かで、これが50:50くらいです。これが事実上の二大王道だと言っていいでしょう。
以下、もう少し細かくみます。
各論
永住権全体の数字
レポートの最初に上げられているグラフですが、これが永住権全体の状況です。画面オレンジ色が仕事(スキル)系、青が家族系。
細かな動向はどうでもよくて、押さえておくべきは、
・スキル系2:家族系1くらいの割合比率であること
・実数についてはここ数年格別の変化はなく、永住権数が減っているという事実は「ない」こと。
・実数についてはここ数年格別の変化はなく、永住権数が減っているという事実は「ない」こと。
ビザの内訳
スキル:家族と大雑把に言いましたが、さらに細かく見てみます。
下に行くほど数が多いのですが、永住権発行数が最も多いのが"Employer Sponsored(雇用者指名永住権(+RSMS))"です。青とオレンジは、オーストラリア国内申請か国外からの申請かの違いで、雇用者指名の場合、大部分がオーストラリア国内からの申請です。これは現に働いているのがオーストラリアなので、当然だとは思いますが。
この雇用者指名とほぼ同数なのが配偶者ビザです。オーストラリア人と結婚(事実婚)することによって永住権を取るパターンです。
この二大ビザよりも、やや少ない数で独立技術移住があります。僕もコレでしたが、年々ハードルが高くなってます。なんせ、(1)オーストラリアで求められている職務とそれについての十分な職務経験、(2)年齢、(3)英語点の三拍子揃ってることが最も厳しく求められますから。大体ですねー、スキルを必死になって修めていたら英語なんかやってるヒマないのが普通ですからね。その意味で出身国が英語圏の人たちは絶対有利です(イギリスとか)。また、難関化している原因として、世界の人々の優秀化があると思います。20年前はまだ発展途上国が離陸し始める頃で、教育もろくに整備されていなかったから、ライバルが少なかったから楽だったんですけど。今はどんどんライバル増えてます。もう日々量産されているといってもいい。これを日本人的に翻訳すれば、昔は独立移住ビザを取れた人でも、いまはハイレベル化してるから難しくなってるということでしょうね。
数からいけば独立移住は、雇用者指名と配偶者ビザよりもちょっと少ないくらいだけど、現実的可能性でいえば実数よりも少なく感じます。
ゆえに、現実問題としては、雇用者指名と配偶者が二大王道になってるんじゃないかなーと思うのですね。
とはいっても、独立移住は永住ビザの超特急で「リーチ一発」ですから、最初に、ビザの代行業者さんなどに可能性があるか査定してもらう必要があるでしょう。万が一イケたら勿体無いですからね。どうせダメだろと諦めてたら、実はあのときやってたらOKだったんだ、今は規定も変わり、年齢的にダメになっちゃった、あー、あのときやっておけば!って後悔しないために。
なお、State/Territory Nominated というのは、雇用者指名と独立移住の中間みたいなもので、独立移住のEOS(興味アリ宣言)を出して、各州政府にノミネートしてもらうことです。州ごとに違い、それぞれ州のページに書かれてます。NSW州の場合はココです。ただ、今どの州で何が狙い目でとか、実際どのくらいのキャリアがあったらノミネートされるのかというホヤホヤの現場情報はビザの代行業者さんに聞かないとわからんと思います(知らない業者さんもいるでしょうから、何軒か聞いてみる)。
出身国
出身国のデーターです。最下段が一番多いのですが、一位がインド。二位が中国。以下、イギリス、フィリピン、パキスタン、ベトナム、南アフリカ、ネパール、マレーシア、アイルランド。日本も韓国もトップ10には入ってません。大体、イギリスゆかり系(イギリス、南ア、アイルランド)と、インド周辺系(インド、パキスタン、ネパール)、そして東アジア系(中国、フィリピン、ベトナム、マレーシア)です。ちなみにNZ人は別枠なので永住権プラグラムではカウントされてません。
ということで、今や完全にインドの時代です。十数年前から予測され、このエッセイでも紹介しましたが( ESSAY 146/ これから50年の世界経済/中国 vs インド(2004年03月8日))、中国の天下は10年ほどであとは少子高齢化と成長鈍化で「普通の先進国」になり、取って代わるのがインドであると(人口も追い抜かすし)。シドニーに日常生活を送っているだけでも、やたらインド系が増えているのが実感でわかります。シェア探しなんか手伝っていても露骨にそれがわかります。皮膚感覚でいえば、中国人が一人増えたらインド人が二人増えてるくらいの感覚ですし。
ただし、このグラフの前後に注釈がありまして、
実はインドの数は減っている(前年度4万0145から3万8854)。中国を追い越したインドの時代ではあるのですが、既にハイピークを越えているのでしょうか。中国もイギリスも数を減らしています。それだけ他の新興勢力が大きくなってるってことですかね。時代はどんどん進んでます。
南アジアと中国アジア
「南アジア」(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、ブータン、モルジブ)が、全体の30%を占める一大勢力になっています。今や、オーストラリアの永住権取得者の3人に一人弱は南アジアという時代になってます。「中国アジア=Chinese Asia」(香港、台湾、マカオ、モンゴルを合算したもの)という面白い概念が使われていてるのですが、これはまだ伸びてます。とはいっても、南アジアの30%に比べれば17%かそこらで、南アジアの半分強くらいの数でしかないです。
ということで、オーストラリア永住権に関していえば、中国の存在感というのは「その程度」だと。5人に一人もいない。
これを示したものが次の図で、
実数そのものでも、すでに2007年段階から紺色の「南アジア」が緑の「中国アジア」を越えてます。そして2010-11年を境に南アジアがゴンと延びて高止まりしてます。
オーストラリアという所は、移住するならおよそ世界でもっとも望ましいところだと思われているでしょう。世界的に見ても、治安や地政学的なカントリーリスクの低さ、生活水準の高さ、経済的成功のチャンスの多さ、人権や福祉、差別の少なさなど社会的な公正さなど、総合的に高い。だから世界の勢いある連中/地域の勢力図が、ストレートに反映しやすいと思われます。
日本のメディアでは、未だに「中国の台頭」とか書いているものもありますが、どんだけ情報古いんだって気もします。中国はもうピークアウトで、次はインドだけど、インドすらもピークアウトしつつあり、次がインド周辺と東南アジア(街を歩いていてもベトナム系のビジネス的な伸び〜Phoやポークロールがオーストラリア人のランチとしてスタンダード化しつつあるとか)であり、さらにその次が、目立つからわかりやすいのですが、アフリカの系の黒人の人も日に日に増えてきつつあります。
こちらに住むと、世界の息吹のようなものが皮膚感覚でわかるので、面白いですよ。それからすると、日本語メディアは、江戸時代の長崎の出島みたいな感じ。
州別動向
次に視点を変えて、永住権を取った人たちはオーストラリアのどの州にどのくらいいるか?です。この点線とか破線とかわかりにくいのだけど、ダントツにNSW州が多い、ことだけ押さえておけばよろしいかと。
次の図は、10年前に比べて、技術系移民について各州の増減を示したものです。
ここでもNSW州の伸びが顕著です。てかNSW州以外、10年前とそれほど大差ないです。ここ数年メルボルンのVIC州の経済発展が言われていたのですが、ことビザに関する限り、NSWが強いみたいです。一方、家族系ですが、これは技術系ほど変化はないのですが、NSW州が逆に減ってます。
この数字の意味がどうなのかは書いてませんでした。うーん、ちょっと仮説も考えたんだけど、でも「なんとでも言えるな」と思って、よくわからないことにしましょう。これだけでは決めつけられない。
雇用主スポンサービザの動向
次にスポンサービザの動向ですが、これは地域振興のためのRSMSと雇用者指名の2系統があります。
このグラフは両者を合算したものです。青が国内申請、オレンジが国外申請です。
リーマンショックの頃(2007-8年)から着実に伸びており、ここ数年は高値安定といった感じです。
地域移住(RSMS)の動向
永住権の抜け道として重宝されていたRSMSですが、こうしてグラフにしてみると、2012-13年を境にピークアウトしているのがわかります。
なお、RSMSも州別でいえばWAが37%でダントツで、QLD21%、SA10%。
RSMSは抜け道封じなのか年々厳しくなってますが、去年の改正直前の駆け込み需要か、申請数そのものは前年度1.75万から約2万に増えているけど、交付数は右肩下がりです。移民局も馬鹿じゃないですから、いつまでも抜け道を放置しているわけもないですし。
雇用者指名
さて肝心の雇用者指名の動向ですが、大きな増えたり減ったりの波はありますが、概ね増加傾向であると言っていいと思います。
てか2007年の頃に比べたら(1.87万)、去年は3.8万で、ほぼ倍増くらい伸びてます。ここ3年くらいは微差で、ほぼ安定しているようです。RSMSのように途中にピークがきて、あとは減っていく一方というのと好対照です。
次に、State-Specific and Regional Migration (SSRM)の動向があるのですが、あんま関係ないので割愛します。州政府が関与する、上に述べた州ノミネートやRSMSですが、やっぱ2012年頃にピークがきて、以後毎年減ってます。
職業別動向
次に職業別動向ですが、全ての職種を網羅するのは無理なので、上位5職業の過去数年の変化を示したのが次のグラフです。
言えるのは、職業によって年ごとの増減が激しいという点です。
なんでそんなに増減が激しいのかは、ときの経済事情やら、労働者の需給バランスをビビットに反映するからでしょう。ある時点で人手不足で優遇措置をしてたりすると、そこが狙い目になるからどっと人が集まり、結局狭き門になったり、もう十分人が集まったからもう要らないになったり。
シェフは、いっとき学校さえ出てれば即取れたという優遇措置で人気あったんですけど、優遇が廃止になって、それ用のビジネス学校が潰れたりという騒ぎになりました。これでシェフの目は消えたのかと思われがちですけど、実は続いていますし、現在もあります。
配偶者ビザ
配偶者ビザも、10年前に比べれば増加してますし、またここ数年高値安定といった感じです。
ちなみに配偶者以外の親族系ビザ、あるいはChildビザもあるのですが、あまり関係ないので割愛します。
まとめ
以上をまとめてみると、(1)基本的に例年通りであって、何がすごく変わったことが起きたわけではない
(2)普通の日本人が永住権をゲットするルートとしては、雇用者指名か配偶者(パートナー)ビザが二大王道であり、諸条件に恵まれていたら独立移住のリーチ一発もありうる、ということですね。
移民局の名称とURLがまた変更された
ちなみに、オーストラリアの移民局のURLがまた変わりました。これまで「www.border.gov.au」だったのが、今度は「www.homeaffairs.gov.au」になりました。またかよ!もういい加減にしてくれ!って叫びたい気分です。とにかくオーストラリアの役所は、ちょっと目を離したスキに名称は変わる、住所は変わる、URLは変わる、サイトの構成は変わる(そしてこっそりビザ申請料金を値上げする)で、リンクを貼っても貼ってもおいつきません。一応今回は、401リダイレクトで誘導してくれているのか、旧来のリンクでいっても新サイトの当該ページに誘導してくれるようです。が、油断はできません。どうせまた、WEB制作業者の「ご提案」とやらに乗って、構成からなにから全部やり替えたりするのでしょう。
また、Department of Homeaffiars(内務省かな)管轄に省庁再編する意味とか語るべきポイントは多々あるのですが(スパイ、テロ防止など公安系に軸足を移している=やることが無くなった政府が「仕事してる」っぽく見せるためによくやる手口だが)、オーストラリアも詰まらん国みたいになってきたなーって気もしますね。
というよりも、今やこれまでの先進国は世界の15%の負け組グループに転落してるので、もう国家や政府に選択肢は乏しいのでしょうね(例えば、最近のNesweekの特集記事「世界の85%が希望の時代、米欧日が不安の時代となった理由」などを参照)。ま、それはまた別の機会に。今回は直近統計の速報のお知らせだけにします。
文責:田村