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今週の一枚(2017/06/05)



Essay 828:457ビザを始めとするビザ改正案について


 写真は、Annandale
 なんとなく、アメリカ西部の大開拓時代って感じ。


 FBでも簡単にお知らせしましたが、さる4月18日に移民局が「457ビザ(労働ビザ)を廃止しまっせ、明日から」と寝耳に水のアナウンスをしたわけですが(正確には4月19日から来年03月まで段階的に施行)、今週はもうちょい詳しく書きます。

457ビザ(労働ビザ)の改正点

 もっぱら資料にしたのは、移民局本家のアナウンスページであるAbolition and replacement of the 457 visa ? Government reforms to employer sponsored skilled migration visasと関連資料ですが、他にもサードパーティの解説なども見ました。

改正点骨子

 ざっと見たところ今回の改正にポイントは、
(1)ビザ関連の名前が変わる
(2)職業リストから多くの職が除去された
(3)英語、年齢、費用など細かなところで厳しくなった
(4)2017年04月19日から2018年3月までに段階的に実施していく

 思うに(1)が一番大きいなーと。要は名前を変えて「ガラリと一新」「抜本的な大改正」という雰囲気を醸し出して、政府としては「一生懸命やってまっせー!」という政治的なパフォーマンスをしたいだけじゃないの?って気もします。FBでも指摘したところですけど。

 何がどう名前が変わるかというと、

 457ビザ→Temporary Skill Shortage (TSS) ビザ
 SOL(Skilled Occupations List)→MLTSSL(Medium and Long-term Strategic Skills List)
 CSOL(Consolidated Sponsored Occupation List)STSOL(Short-term Skilled Occupations List)

 要するに七面倒臭く変わってるわけで、概念的には同じです。

 「457ビザ」を「一時的な人手不足ビザ」と変えようと、言ってる内容は同じ。人材不足だからこそビザが発給されるわけで、そんなのイチイチ言わなくてもよろしい。やるなら「一時的な労働ビザ」でいい(Temporary Working Visa)、それが一番わかり易い。てか、今だって正式にはそうで、それをより簡単に「457」とナンバリングで言い習わしているだけ。なのに、敢えてわかりにくく改称してるだけだと思う。

 リストですけど、これも名前を変えてるだけ。しかも長ったらしくて覚えられないですよー、

 覚え方の工夫としてはSMLとTだと思います。コーラや服のサイズにSMLがあるけど、あれと似てる。サイズはSmall-Medium-Large(小中大)だけど、これは期間の長さで、Short-Medium-Long(短中長)です。偶然だけど、同じ文字の並びになるので覚えやすい。それに「T」=term=期間がくっつくだけです。

 つまり、MLTSSLは、「MとLサイズ」の「T=期間」で、あとはSOLとそんな変わりません。スキル(S)のリスト(L)。SLはもう日本語的に「職業(S)リスト」くらいに覚えちゃってもいいです。でも、真ん中のS=Strategic=戦術的な=なんて無駄なものが入ってますな。およそ戦術的(何らかの意図)でない法律なんかないんだから。

 STSOLは、ショートタームのSOLで覚えたらいいです。なんでここだけOccupationが入るのか、これも無駄で、STSLでいいじゃんと思うのだけど。

 ぶっちゃけていえば、MLで始まるのは「金のリスト」で数は少ないけどご利益も大きい、Sで始まるのは「銀のリスト」で数は多いけどご利益は薄いくらいに考えておけばいいかと。昔のSOLとCSOLは、頭にCがつくと補助的なレベルに下がると覚えたら良かったんですよね。社長→"副"社長、警部→警部”補”みたいな。

 余談ながらコメントすると、こういった改称は、無能な政府がよくやる手ですな。
 法律のプロのハシクレとして言わせて貰えば、立法技術としては、同じ内容なら混乱を避けるために出来るだけ同じ名称を使う方が好ましいです。改称するにしても、より本質的を明らかにし、また一目瞭然なクリアな名前にするなど、使い勝手を良くする方向に変えるべき。この点もダメダメっす。つまり「わかりにくくしてる」「混乱を招いている」改称であり、もうこの時点で立法に携わる公務員などをやっておられる人だったら、「はは〜ん」と推察できると思います。わかりにくくしてるっていうのは、逆にいえば、「あんまり分かってもらっては困る」ってことでしょ?つまり、大した改正をしてるわけでもないけど、いかも凄い大改正をしたかのように見せかけたいという偽装工作的な。特に、間にStrategicを入れているあたり、なんか小学生みたいないじましさを感じますね、僕は。スーパー・ウルトラ・ギャラクティカ・マグナム〜!みたいな。僕も一括パックも改称しようかな、「特殊戦略的一括パック」とかさ。

 それはさておき、ここまでは要するに名前が変わった、だけのことです。

改正の作業工程

 段階的に改正されるので、ややわかりにくい。その詳細は、移民局のFact sheetなどに書かれてますが、抜粋すると、

2017年04月19日以降
 現在の457ビザの職業リストの651の職業が435に圧縮(216の職業が削除)。
 SOLとCOSLを上述のMLTSSLなどに改称
 滞在期間はSTSOL(銀リスト)の場合は2年、MLTSSL(金リスト)の場合は4年

2017年07月01日(新年度)以降
 ・STSOL(銀リスト)は、労働省(Department of Employment)の意見をもとに再編され、MLTSSL(金リスト)は、教育省(Department of Education and Training)の意見をもとに再編される
 ・その他細かな諸点
 英語点の例外の除去(〜年収9万6400ドル以上の場合は英語が免除されていたのが、免除されなくなる)、職業に関する研修項目を法文で明確化するとか、キャラクター(人柄)審査証明(Provision of penal clearance certificates)が義務化(日本の場合は警察による無犯罪証明)とか

2017年12月以降
 ・457ビザ取得者のタックスファイルナンバーを集め、国税局に照会し、納税額が規定に照らして合ってるかどうかチェックを開始。
 ・スポンサーになる雇用者が規定違反をしていた場合、その詳細を公表(例外あり)

2018年03月以降
 ・457ビザは正式にTSSビザに改称される(それまでは457ビザ名称のまま)
 ・The Short-Term stream (STSOL=銀リスト)は、一時的な人材不足を救済するために広く活用され、The Medium-Term stream (MLTSSL=金リスト)は、より狭く、より高技能で、より核心な人材不足エリアに関する中長期的補強のために活用されるという「お題目」
 ・銀リスト系の内容は、
 更新はオーストラリア国内で一回だけ、リージョナル(田舎)の場合は多少職業範囲が広がる、英語点は易しい(IELTS5)、あとGTE(Genuine Temporary Entrance)の「お約束」(学生ビザでもやってる”宣誓”)
 ・金リスト系の内容は、
 国内更新1回、3年後に永住権への道、田舎だと多少職業が広い、英語も同じ5点
 ・両者に共通するものとして
 関係する職業について最低2年の実務経験
 Labour market testing (LMT)=国内労働市場テスト=オーストラリア国内では求める人材が得られません証明
 定められた最低年収(現在では$53,900)以上の職であること
 被差別テスト(オーストラリア人労働者が差別されていない職場かどうか)
 スポンサーになる雇用者は強制的に献金させられる(オーストラリア職業訓練基金へ、指名時に全額、小企業は年1200ドル、大きいところは1800ドル)
 これらの詳細については施行時までに詰める。
 
影響の及ぶ範囲
 既に457ビザを得ている人、スポンサーになってる人は現場のまま
 4月18日以前に申請した人は影響を受けるが、返金申請が出来る

雇用者指名(ENS/186)・地方移住(RSMS/187)の改正

 457改正の陰に隠れてますが、ENSとRSMSも改正になっています。詳細はここ。どっちも「ご指名」「スポンサー」が必要というビザですが、457がテンポラリーなのに対し、こちらは永住ビザです。
 大体同じ(職業リストが改称され、数が減る)ですが、改正日程がやや前倒しなのかな。
 2017年07月01日以降 英語点がIELTS6になる、年齢制限50歳は457から昇格するパターンには維持されるが、457すっ飛ばしてダイレクトに永住申請をやる場合には45歳に引き下げられます。

 2017年12月:タックスファイルナンバー照合は上と同じ。
 2018年03月:独特なところでは、成り上がり系の場合、それまで2年滞在(雇用ではない)条件だったのが3年に延長されます。職務経験(国外でも良い)も3年に延長。年齢も全ての場合に45歳までに縮減。強制カンパは上と同じだが、3000ドル(中小企業)、5000ドル(大企業)とこっちの方が高い。
 あとRSMSのリストは、一般の銀リストよりもさらにゆるい銅リストなのだが、それも銀リストになると。

コメント〜職業リストの本質的な無内容性

実体経済がメイン、ビザ規定はそれに奉仕する小道具にすぎないこと

 名前が変わったという以外の点は、職業リストの減少が目玉で、それ以外は些細なことでしょう(てか今もやってること)。
 そこでもっぱら職業リストが話題になるわけですが、651の職業から216減らしているから3分1減った、その数字分だけ難しくなった、、って額面通り受け取っていいのかどうかは微妙なところだと思います。

 まず話をハッキリさせておくべきですが、ビザの規定というのは、あくまでオーストラリア人がオーストラリア人のためのやってるものです。自分らのことを自分らが決めているという「内政」です。まかり間違っても、オーストラリアに稼働/永住したい外国人のために恩恵的にやってるものではありません。ここ、誤解しがちなんだけど、原則論としてはそうです。だから外国人である我々の要求、意見、願望などは、基本的に100%ガン無視されます(事務処理がおかしいとか、手続がわかりにくいとかいう実務レベルの消費者的苦情は受け付けるけど、政策決定レベルでは考慮されない)。

 457などの労働ビザも永住権も、国民であるオーストラリア人からそういう要望があるからこそやっているわけです。オーストラリア国内のビジネスにおいて、従業員は国民だけで間に合ってます、それでうまく廻ってますってことになってたら、基本ビジネス系移民はゼロになります。ニーズがないのですからね。あとは、「好きな人と一緒に暮らしたい」という国民のニーズに応える系統=婚姻・家族系ビザ(永住の二本柱は、ビジネス or 家族ですから)。

 ビザの改正なり法律というのは、あくまでオーストラリア国民の要望に忠実に答える形でなされなければならない。実体はあくまでオーストラリア経済とオーストラリア国民であって、ビザや法律はそのための補助器具に過ぎません。この原則論はしつこいくらいに頭に叩き込んでおくべきだと思います。なにをムキになってるかというと、オーストラリアの雇用情勢とか外国労働者へのニーズという現実社会が労働ビザのあり方を決めるのであって、それを離れて移民局「ごとき」が何かを決める力は無いからです。そりゃ一時的に移民局がトチ狂ったり、今回みたいな政治的パフォーマンスがメインになることはあるでしょう。現実→規定という関係がリアルタイムに正確になるものではないですが、長い目で見てれば結局はそうなります。

 この原則論を徹底的に純化していけば、職業リストの99%が削除になり、それが現実の外国人労働者への需要が99%消滅したという実体を正しく反映しているならば、それはもう仕方がないことです。そこでいくら移民局のリストだけが増えてたって、実際にその職の求人がゼロだったら、就職できず&スポンサーになってもらえず、そもそもビザ申請できないのですから。

 我々が見るべきは、そういう雇用実体があるかどうか、それだけです。これをもっと身近な言葉に置き換えていえば、要するに「オーストラリアにとどまって働いて欲しい」って言ってもらえるかどうか、といういつもの話に収斂されていくだけです。その実態が真正であればあるほど、「あとはなんとでもなる」という部分もありますから。これは後述します。

立法技術としての職業リスト

 立法技術的にいえば、職業リストなんか無駄だとすらいえます。もう「Labour market testing (LMT)=国内労働市場テスト」一本でいい。それを真剣に審査しさえすればいい。なぜなら、「オーストラリア国内市場では望む人材が得られず」且つ「目の前に雇いたい有能な外国人がいる」というオーストラリア雇用者がいるわけですから、その国民のニーズに答えるのは政府の義務でしょう。

 それを大雑把な経済トレンドとか雇用統計から「○○業界は人手不足で〜」とかマスとして把握し、編纂していったのが職業リストですが、僕に言わせればあんなの「官僚の作文」だと思います。キミらにそのあたりの正確な実体が「わかるの?」と。かつて政府というものが庶民の働いている実体をきめ細かく正確に把握したことなんかあんの?キミらにその能力あんの?といえば無いでしょ。日本の全労働者のサビ残を労働基準監督署は正確に把握し、きちんと行政指導してるんですか?といえばしてないでしょう。またそれをするだけの人員予算も無い。

 お上の認識と現場のギャップは至る所で出てくると思います。例えば、マストレンドとしてはオーストラリア人の労働力でOKって業種があったとしても、あまりにも田舎に企業があるので誰も来てくれない、でもとある社長の家でホームステイしてたスリランカ人が真面目で優秀だから採用したいって話もあると思うのですよ。でも、マストレンドとしてリストアップされてないからダメだというのは、端的に行政が無能だと思います。国民のニーズに答えきれてないからです。

 だから職業リストなんか本来の意味でいえば絵に描いたモチであり、官僚の幻想でしかない。しょせん行政はマスでやっていくしかないから、大雑把にカテゴライズして、グループAはこうして、Bはこうしてという場合分け設定をするしかない。でも人類史的には「マスの時代」は終わって、AIを活用するなどして個性に応じてきめ細かくやっていく時代にきてると思いますよね(これは過去に書いたからカット)。

 ともあれイリュージョンのようなリストをどういじくろうが、大事なのは雇用実体があるかどうかです。過去の永住権の職業別実績を見てても、シーリング(取得マックス天井)を遥かに下回る程度でしかない。例えば、2015-16年の実績を見ても、職業リストProduction Managersなんかシーリングを3582人にして前年の3132人から450人も増やしてるんだけど、それだけ人気あんのか?といえば、実際にそれで永住権までいってるのは年間わずか「4人」です。じゃあ「3582人」とか「450人増加」という「意味ありげな数字」は何なんのよ?意味あんの?です。だから辻褄合わせの官僚の作文であり、鉛筆ナメナメの数字合わせだろ?って言うのですよ。

 同じように見てても、Precision Metal Trades Workersが1000人枠なのに二人だけ、Automotive Electriciansなんかありそうだけど7人だけ、Cabinetmakersなんかゼロから1530人枠に増やしているけど結局永住権までいってるのはゼロ。Boat Builders and Shipwrightsもゼロ。一桁台なんかゴロゴロしてます。

 思うに、カテゴリー分けして大量処理がふさわしいのは取得者千人以上の大口ルートでしょう。でも、これって数えるくらいしかない。せいぜい10個あるかないかです。だからそういうメジャーどころだけ特別にルート設定しておいて、あとは一切リスト関係なく受け付けて、あとは個別に真摯な実体があるかどうかを見ればいいじゃんって思います。これだけ広い国で、年間10人以下とか程度だったら、職業リストがどうであれ、現実に「こいつを雇いたい」という国民の声があれば、それを丁寧に審査すればいいじゃん。600なんぼとかいう数の職業リストとかやっても、滑稽なんだよって気もしますな。

 さらに言えば、この膨大な職業リストは移民局が作ってるというよりも、ANZSCOと呼ばれるリストがあって、これは「Australian and New Zealand Standard Classification of Occupations」の略称です。これはABSという統計局が公表してますが、さらにそのベースになるのは、本来労働者保護の強いお国柄、最低賃金や労働条件なども業種×経験別に細かく定められいるという実体(AWARDS)があったり、とある仕事についての職業訓練カリキュラムをこうするとか(TAFEのコース認定)、必要とされる技能レベル検定(資格)であるとか、かなりきめ細かく行政でコントロールしてる点に基づくのだと思います。総じて言えば行政サイドのアプローチです。全業種を静止的にとらえて、カテゴライズして、それぞれに細かく設定してというのは行政管理的な発想ですから。しかしながら、現実のビジネス、それもAI化やアウトソーシングやグローバリズムが広がってる昨今、リアルなビジネス実体というのは、行政の一歩も二歩も先にいってます(だからこそ大企業に租税回避をやられて一杯食わされ続けている)。現場のニーズや、実際の労働のありようもまた、行政のアプローチとは微妙に違っているのですよね。

実践論〜金リストが必要になる場合

 原理論はさておき、実際にどんな感じになるかですが、先程の業種は限定されているけど有用性の高い金リスト(MLTSST)と範囲は広いが活用範囲も狭められている銀リスト(STSOL)の使い分けになるかと思います。

 でね、きちんと検討し尽くしてはいないけど、金じゃなきゃダメってケースがどれだけあるか?ですが、そんなに無いんじゃないかなー。とりあえず最強の189ビザ(Skilled Independent=独立技術移住)の場合は金リストじゃないとダメです。これはスポンサーや指名が一切要らない、誰にも頭を下げずに済むから最強ビザなんですけど、それだけに各エリアにおける選び抜かれたアスリートの世界です。実力だけではなく、いろんな条件が合致しないと取れない。これが取れるかどうかが最初の関門で、もしそれがいけそうなら先ずそれを考えるべきで、それがダメなら次善の策で現地雇用になります。

 例えばアカウンタントは金リスト常連で実際にも永住権ゴールは多いです。が!それだけに競争も激しい。1 March 2017 round resultsをみると、あまりにも応募者が多くてハイレベルになってるから、特定の職業の場合、60点ボーダーがあがっている。アカウンタントなんか70点で足切りを食らっています。70点ってアホみたいな高水準ですよ。60点が「東大に入れ」レベルだったら、70点って「上位30以内で東大に入れ」くらいの感じ。だから金リストに入ってるから、やったーとか思ってても、それだけで喜んでいはぬか喜びになりかねないです。厳しいのよね。逆に言えば、全然ライバルが居なさそうだけど、なぜか金リストにはいってるような職に付いてたら真剣に考えるべきでしょう。

 なお、457改正とは違いますが、7月1日からこの種のゼネラルスキル移住の年齢が49歳から44歳に引き下げられます。189の帝王ビザもそうなります。しかし、実際関係ないんじゃないかな。ポイントテストの詳細を見ればわかるように、60点取る中には年齢点もあるわけで、最強は25-32歳の30点で、33歳になった時点で25点と5ポイント減額、さらに40歳を超えた時点で15点とさらに10ポイント減らされます。事実上、25-32歳レンジを越えたら難しくなり、40を超えたらほとんど無理な世界になると思います。

 なぜなら、オーストラリアで2年間百万以上払ってDiplomaとっても5点しか貰えないんですよ。40歳+金リスト職に日本で8年以上勤務+IELTS6点+日本の大卒の場合でも、トホホの45点としか取れない。オーストラリアで2年留学しても5点プラスじゃ意味ないでしょう。でも同じ条件で32歳までだったら60点でリーチかけられます。しかし一方で、32歳で8年以上の勤務経験というのは逆にそれが難しい。そしてそれだけ仕事バリバリやってる人がIELTS6点以上取れるか?といえば、それも難しい。そういった全体を考えてみたら、49歳とかいっても、これに関する限りはあまり意味がないと思います。だから低くしたんだと思うけど(実際に影響ないから)。なお、今述べた実情からもう一回「70点足切り」という凄まじさを考えてみてください。もうどんだけ〜!って。

 だもんで189(金リストのみ)というのは、「たまたま」諸条件がうまいこと合致した人だけの話で、多くの場合は、現地で下積みをやって成り上がってくる。そして、成り上がりの矢沢永吉パターンの場合の王道は、(学生ビザ→)457ビザ→ENS(雇用者指名永住権)コースです。そして、457はSSTビザと改称されても銀リストで2年いけるし、そのまま成り上がる「Temporary Residence Transition Stream」の場合はもうリスト関係ないです(457時点で審査されてるし)、Direct Entryという雇用者指名の場合は、前提になる現地雇用がないから関係するけど、それも銀リスト。

 だもんで矢沢パターンの場合は、基本銀リストで良い。そして銀リストが圧縮された今回の改正はどうなるか?ですよね、問題は。

銀リストの実際

 以下は推測で書きますよ。多分合ってると思うけど、ビザの専門業者でもない僕が現実に触れることもできないし、数多くいろいろな事例を見てるわけでもないですから。

 実際、銀リスト(今のCSOL、改正後のSTSOL)を見てると、うんざりするほど職種があります。600が400に減らされたからといって、それがどうした?ってくらいあります。似たような職種が山ほどある。

 そこで僕が思うのは二つのことです。現場系とホワイトカラー系。まず現場系ですが、本当にリアルな職業現場においては、こんなに細分化された職域でやってるってことは先ず無いと思うのです。実際の現場では「あれもこれも」で全部やらされているはずですよ。例えば自動車関係の修理だって、「Automotive Electrician」「Motor Mechanic (General)」「Diesel Motor Mechanic」「Motorcycle Mechanic」「Small Engine Mechanic」とか別れている。実際の町の修理工場だったら、全部ひっくるめてやってるのが多いでしょう?特に日本人の場合は勉強熱心だし隣接技術だったらやっちゃってると思うのですよ。またビジネス的にも、八百屋さんで「うちはナス専門です」なんてことがないように、「ウチでは扱ってないんですよ」があまりにも多かったら客を失うだけですから、なんでもやるでしょう。ビジネスチャンスなんだから。事故車の修理だって、まず板金(パネルビーター)やって、それから塗装(ペインター)になるんだけど、普通同じところでやるでしょう。板金が終わったら客は金払って自分の車引き出して、また塗装屋まで乗っていって修理に出して、、ってことはしないでしょ。それに板金やってても、簡単なチェックや修理くらいだったらやるでしょ。

 ということは、日本における職業経験でも、現地における経験でも、あれこれやらされているんだろうから、隣接部分のどっかにひっかかるんじゃないか?ってことです。もうその業界が根こそぎ消滅してたら別ですけどね(それは注意すべきだけど)。だとすれば、FBの記事に地元の新聞の批判部分を抜粋したけど、「現場でやることは、ビザエージェントと相談して、職務内容などの記述と書類を、それらにあわせてちょこちょこっと変更するだけ」であると。だから政治的パーフォマンス以上のものではない、改革やってるふりをしてるだけって発表後24時間以内に批判されてるわけですわ。

 第二に、ホワイトカラー(現場系も)ですが、銀リストで「マネージャー」がつく職業が実に40以上あります。本格的な社長業も勿論ありますが、やれ「Hair or Beauty Salon Manager」、やれ 「Post Office Manager」、やれ「Fitness Centre Manager」とか業種別にあるし、「Customer Service Manager」なんてゼネラルなものもある。「Records Manager」なんか書類関係の整理をやってたら当たりそうです。左遷コースの「社史編纂室」なんかも入るかも(笑)。「Cafe or Restaurant Manager」もあるから、ジャパレスで玉ねぎの皮むきや皿洗いから入って、だんだんフライヤーになって、魚さばかせてもらって「cook」になり、さらにえらくなって「chef」になって、新規に店をオープンするからメインでやってみてって言われて「レストランマネージャー」になるとか。「Hotel or Motel Manager」もありますね。あとアドミニ=事務職=administratorもあります。「Contract Administrator」ってのがあって、要するに「契約準備係」で、秘書的な事務作業やってたら大体入るんじゃないですかね(あとは個別の業界審査)。

 そして、実際の現場を考えてみた場合、市場テスト(求人広告とか)、基金強制カンパとか数十万円の出費をしてまで、「あなたが欲しい」と言ってもらえるんだったら、もうかなり信用されてもいるし、それだけ雇用現場に食い込んで任されているはずです。逆に言えば、なんでもかんでもやらされている場合が多いと。またそこまで欲しいと言ってくれてるなら、書類の作成その他の雑務もやってくれるでしょうし、協力はしてくれるでしょう。逆にいくら職リストにドンピシャにはまっていようが、そこらへんを全然協力してくれないならリーチもかけられないです。

 以上の次第で、あんまり変わらないんじゃないかなーと。もともと600も職業リストがある事自体が噴飯物といいますか、非現実的なんだわ。実際の現場はそんなに細かく区分されてるわけじゃないし、特に外国人労働者を欲しているような現場は、鉄火場的、飯場的な感じで廻ってると思うのです。

 てか、本来、職場において「求められる人材」というのは「いい人」なんですよね。一山なんぼの作業員ならいざしらず、あるいは高度な専門職なら格別、多くの場合は、素直で、人間的に歪んでなくて、だから職場にも溶け込めて、職務熱心で、嘘をつかない「いい人」です。高度に細分化されている大企業だって、そのあたりが一番大きいでしょう。また細分化されてはいるものの、ある程度の「どうしても欲しい」って言われるレベル(人手ではなく人材)になるならばそこそこゼネラルな職務能力もいるでしょう。それら色々な細かな職責を統合させて円滑に進められるのには、それなりにしっかりした人格的な素材がいるでしょう。だから「いい人」。中小企業の現場では、もうそれ自体がいきなりゼネラルで、僕が入った事務所も法律専門知識の他に、パシリ雑務やら、現地調査やら、雇用担当やら、社員旅行の幹事やら、なんでもやらされました。高度な専門職ですらそうなんですから、普通の企業だったらもっとゴッタ煮的な毎日になるでしょう。リストとか職域だけで話が決まるほどメルヘンの世界で遊んでるわけじゃないですよ、現場は。

その他

対立利益と立法目的

 なんでもそうですが物事決めるときには、幾つかの対立する要求があります。労働ビザの規定の場合、一つはオーストラリアのビジネス界の要求です。しかし、ビジネスの要求だけに応えているわけにもいかないし、それが常に正しいわけでもない。極論すれば、雇用者としてはロボットのようにこき使える奴隷的な労働者が欲しいって部分もあるわけです。クソ低賃金で文句も言わずに黙々と働いてくれる人がサイコーだなーと、虫のいいことも考える。だから労働者保護のために最低年収に制限をかけたりするわけです。

 一方、外国人労働者を入れるとその分、国内のオーストラリア人の雇用が減ります。外国人労働者を欲しがるのもオーストラリア人(雇用者)ならば、それで割りを食うのもオーストラリア人(被用者)であるわけで、そこはオーストラリア国内の労使問題です。そこで市場テスト(オーストラリア人の職を奪わない証明)を課する。

 オーストラリア人が嫌がって働かない職域(3Kとか、田舎だからイヤとか)、あるいは優秀なスキルを持ってる人そのものが少ない領域などに限って外国人労働者を入れましょうという話になります。ゆえに人材不足という大義名分が出てくる。また、地方永住権のほうが簡単に取れるという規定もある(村おこし支援みたいな)。

 一方、業界エゴもあります。基本みなが独立自営でやってるような専門職の場合(歯科医とか)、いくら足りないとかいって外国人をドカドカいれたら、自分らの競争が激化するからたまらない。だからギルド的に締め出そうという話もあるわけです。リストに載ってるからOKではなく、実際には、そのあとその職業スキルの査定を関連業界団体でやりますが、そのときその業界が受け入れる方向で動くのか、弾き出す方向で動くのかで、そのスキル審査の厳しさが変わってきます。形だけあるんだけど、実際にはあまりにも狭き門で事実上不可能って場合も考えられます。

 本当のことをいえば、そのあたりの業界の動向が一番大事なのかもしれません。でもって業界もまた一枚岩ではないですからね。どんどん外国人をいれて規模をデカくしたいと思ってる拡大経営志向の業者と、独立自営でやってる業者がいますけど、前者が会長や事務局長になったら受け入れる方向でやるでしょう。そのあたり、「去年の選挙で○さんが会長になってから、これまでの方針がガラリと変わって、外国人締め出しの方向にいってるんですよー」「だからスキル審査も年3回が1回に減らされたし、経験年数もこれまでの3年から5年に引き上げられた」とかいう話もあるかしらんのです。そのあたりは移民局のサイト見ててもわからんし、ビザのエージェントも各業界の内輪はわからんです。

違法ビザ

 さらに、VISA SCAMといわれる、ビザの違法行為があります。上に述べたように実体に規定(ビザ)が追いついてない、乖離があるなら、そのギャップを逆利用することもできます。つまり、実体がなくても形式的に書類さえ整えればビザが取れてしまうという、ビザ詐欺(SCAM)です。

 これはもうイタチごっこというか、後を絶たないでしょう。よくインド系が槍玉にあがってますが、ビザを取らせてやると持ちかけて、形だけのスポンサーに形だけの工場職場とかでっち上げて書類審査を通す。で、かわいそうな本人は高額の手数料を巻き上げられ、最低賃金以下の奴隷労働に従事させるという。まあ、蛇頭がやってるのを多少マイルドにしてるようなもので、こんなもん世界中いたるところでやってます。ありふれた行為。

 だから大丈夫か?というと、だからヤバいんですよね。オーストラリアは世界でもかなり遵法意識の強い国で、投票率100%に近いことでもわかるように、法律は実体を反映すべきだし、その法律で世の中を良くしていこうという意識が強い。行政機関も、効率性審査委員会で無駄だと査定されたら即時廃止されるし公務員の身分保障なんか無いです。だからこそ利権が根付く機会も少ないし、わりと職責に忠実に動こうとする(末端の能力は低いが)。そういう行政側の感覚でいえば、この種の違法SCAMは目の敵にされやすいし、実際、目の敵にしてます。移民局のサイトにわざわざVISA SCAMのページが用意されており、罰則も厳しい。チクリ大歓迎であらゆるチャネルでチクリ報告を受け付けている。

 遵法意識が強いという意味では、世界的にみて日本人もオーストラリア人も似てるように思います。ほかの国の人はもっといい加減で、ビザのあれこれなんか「あんなもなあ」みたいにぞんざいに考えているフシがあります。だから現場にいくと真面目にやってるのが馬鹿みたいに感じられる局面は多々あると思いますが、オーストラリアそのものは日本人に感性が似てるので、僕らの感覚でヤバかったら、やっぱりオーストラリアでもヤバイと思うべきだと。2014年に移民局職員の腐敗によってビザ詐欺がおこなれて摘発されてますが、荒稼ぎしてインドに逃げ帰っちゃったので、詰めが甘い!と移民局が批判されてます。こういうのはムカつくだろうな、当局も。今年は、ドミノ・ピザがビザスポンサーで悪さしてるとかいって新聞沙汰になってます。

 これらは氷山の一角なのでしょうが、だから大丈夫にならない所が怖いと思う。というのは、いろんな事件記事を見てると、結構古い出来事が数年後に摘発されている点です。つまり、ほとぼりが冷めてない。これだけバレなければもう大丈夫だってことがない時限爆弾になってる。なんで見つかるのか?といえば、こういう組織的継続的な犯行というのは、一般に荒稼ぎして気が大きくなって、ビジネスを拡大してボロを出す場合が多い。長いことやってれば失敗もあるだろうし、また多くの場合は内部告発というか、カモられた客の苦情やチクリによって当局が動き出す場合が多い。継続的にやってれば不満を抱く客も多くなるし、それだけに摘発の危険も増える。そして、一旦見つかったら徹底的に調べ上げられて、過去の全てのビザがキャンセルされてしまう。それだけではなく首謀者は懲役10年までの罰則があるし、依頼者もまた無傷では済まないでしょう。

 今回、RSMSなどの地方系〜かんたん村おこし的ビザが、来年3月から厳しくなるのですが、村おこし需要は変わってないと思うところ、それが厳しくなるというのは、やっぱりこの種の詐欺やら違法行為を防ぐためだと思います。以前も、ビジネス学校で調理師コースをやって卒業すれば自動的に永住権が取れたときがあったのですが、結果的には廃止。なぜかというとシェフで永住権取るんだけど、取った後は誰もシェフで働かないから、人材不足は解消されない、意味ないかもって話です。そうなのよね、職業リストのバカバカしさはそこにあって、永住権取得とその後の稼働はあんまり関係ないのですね。で、その改正によって、簡単に取れまっせ〜でどかどか林立していたシェフコースのあるビジネス学校が倒産して、学生たちが路頭に迷いました。でもって授業料保障システムという素晴らしい消費者保護がオーストラリアにはあって、その割を食うのは無料で学生を引き受ける他の学校でした。それに懲りていろいろ改正もあったのですが、今回も地方系のビザがタイトになるということは、当局は当然このエリアについては監視の目を厳しくしているものだと思われます。問題意識があるからこその改正ですからね。今は、ビザのエージェントさんなど「最後のかきいれどき」的に、今ならまだ間に合う的に勧められるとは思いますし、真正に職を得られ、真正に申請(しゃれじゃないよ)できて、まだ間に合うならいいんですけど、多少はそういう背景事情も知っておられたほうがいいかもと思います。

 一般論としていえば、職のゲットには、(オーガニックな)出会い系と(組織的な)紹介系がありますが、紹介系(組織系)は気をつけろ、です。キチンとした人材斡旋業者だったらいいんだけど、胡散臭げなやつ。「世話してやる」ってやつ。二回目ワーホリのためのファームなんか可愛いレベルだけど、それも似てるかな。そんなにコンスタントに紹介できること自体が異常だとは思いませんか?そんなに外国人労働者を欲しがってるところが転がってるわけないでしょうに。それがコンスタントに出来るというのは、やっぱそれなりに「システム」が組まれていると思うべき。そのシステムが完全適法だったら問題ないですよ。でも、採用する側だって、まともな事業主だったら、まず人を見てから判断したいと思うでしょうし、なんでもかんでも受け入れるはずがないです。それを受け入れているということはどういうことか?その人が働いてくれるということ以外のベネフィットがどっかにあるからじゃないですか(キックバックもらえるとか、ピンはねできるとか)。一山なんぼ系だったらまだしも分かるけど、ビザに関係するくらい年収500万以上の仕事が、そうそうコンスタントに見つかるわけではない。

 これを逆に言えば、日本人が大好きな安全・安心・確実ベクトルでやってると自動的に地獄に落ちるかも、です。本来不安定で、不確実なものを、安全確実に出来るということ自体がなんかおかしいんですよ。どっか変なんだわ。「絶対合格する試験」みたいな。絶対合格するなら最初から試験なんか要らない。またそんなに簡単だったら誰も金払って斡旋してもらおうとは思わない。普通にやったら不可能なことを金払って確実にしてもらうという行為は、それだけに現実的に無理があるのであり、どっか変なんですよ。そして、その変な部分のメカニズムを百も承知で、自分でリスク背負ってやるならいいけど、「安心だわー」でやってたら、ヤバイんじゃないですかね?

 逆に出会い系、どっかでオーガニックに純粋に出会って、あるいは純粋にオーガニックな個人的紹介で、じゃあウチで働きますか?みたいな話になって、波長がしっくり噛み合ってって職の場合は、実体がありますから安心です。そこにたどり着くまでは激しく不安定だけど、行ってしまえばかなり安心。実際に、そこで申請する場合、微妙に書類が足りないとか、どっかでちょっと盛ったりするかもしれないけど、そんな一回ポッキリな下駄はかせ作業があとで問題になるとは思いにくいし、反復継続しないから、あとで摘発され芋づるになるというリスクも殆ど無いでしょう。高校で出席日数足りないけど下駄履かせて卒業させましたって可愛いレベルだろうし、そんなもんに目くじら立てる人はいないでしょう。

まとめ

 今回の改正、そんなナーバスに思う必要ないです。なぜなら、もろに影響を受ける人は既に申請ちょっと手前くらいまでいってる人でしょうし、そういう方々は依頼しているビザ代行士さんから、既に直接レクチャーを受けていると思います。こんなところで僕の拙い文章読んでることは無いと思う。

 まだ、そんな段階までたどり着いていない人の場合、麻雀でいえば配牌前後とか、ツモ2−3順目くらいだったら、実際にリーチかけるようになるまであと数年スパンかかると思います。ある程度方針固まっても、無犯罪証明とか卒業証明やら資格証明、過去の職歴証明それらの英文やら翻訳やら、書類揃えるだけでも一苦労です。さらに職種によっては業界指定の試験やら査定を受け、講習を受講し、、、そんなことやってるだけでかなり時間を食います。

 そして職業リストだって、7月に見直し、来年にまた見直し、、って、あれはビビットにオーストラリアの経済事情に即応してこそ意味があり、変わってこそ正義みたいなものですから、コロコロ変わるんですよ。変わらねばならないとすら言える。今時点であたふたしてても、実際に自分がやるときにどうなってるかは分からんです。年齢点についてもしかりで、前は45歳でちょっと前の改正で50になって、また45歳になってるわけで、また50になるかもしれない。

 何度も同じこと書きますけど、永住権十年戦争って僕はいいますが、取れそうだからやる、難しそうだからやらないという人には不向きだと思います。そんなの結果論。甲子園に出られそうだから野球をやる、出られそうもないならやらないとか言ってるようなもんで、大事なのは野球をやりたいか/やりたくないかでしょう。やりたいんだったらやればいいし、結果だけが気になるならやめるべし、です。

 それに甲子園に出たからといって一生安泰になれるわけでもなんでもないですからね。永住権も同じで、取れたからって安泰になるもんでもない。日々働かないとならないのは同じだし、自分の生きたい方向、やり方など基本コンセプトを常に考え、アンテナ広げて色々な体験を積み、新しい世界や新しい感動や楽しみを知り、生きていく広がりを得て、それに応じて臨機応変に引っ越したり、職場を変えたり、キャリアを変えたりってしていかなければならない。こちらの社会に生きていく以上、我慢と忍耐と一生安泰をバーター交換するという日本的な方法論はまるで通用しません。リングのボクサーのようにフットワーク良くしていかないとならない。さもないと、職を得たといっても寝耳に水ですぐにクビになるし(日本のような制限はない)、家を借りても家主の胸先三寸ですぐに出てけと言われる(これも日本ほど手厚い賃借権保障はない)。結婚しても半数以上は離婚するしね。

 でもそんなの日本人=「無常観」を伝統的な精神風景としてもっている民族としては、むしろ馴染みやすくない?桜はパッと咲いてパッと散るからいいんだよなーって。ずっと咲いてたらありがたみないわという一期一会の発想はあるでしょうから、その民族がなんであんなに安定とか安心にこだわるのか、僕にはむしろ疑問です。戦後の一時的な高度成長による錯覚型の強迫観念だと思う。慣れてしまえば、この方が楽です。四季折々、変わるからこそ美しいと。

 何の話かといえば、永住権を取る前にあれこれスポンサードを探し、いい出会いを探し、少しづつ自分のコンセプトを煮詰め、また改良し、そうやって日々動き続けるわけですが、それは永住権を取った後も変わらんです。なーんにも変わらんと言ってもいい。まあビザ的な憂いは除去されますけど、人生のタスクはビザだけではない。結婚生活、育児、親の介護、、、他にも山ほどあります。また恐るべき速さで世界の経済が動いているから、自分の業界だって10年先はどうなってるかわからない。先週だったか、2050年には世界の年金不足が合算すれば2.5京(兆の上の単位)足りなくなるというレポートが出てましたけど、日本だけではないのよね。これだけ足りないということはシステム自体が端的に破綻してると思うべき。だから分からんのよね。

 そして、安全やら安心やらと引き換えに得るのはフリーダムであり自由です。不安を取るか、不満を取るかという究極の選択において、不満を取る人(不安定であっても自由に自分を表現したい)と思うならば、永住権ゲーム、やればいいと思います。不安を取る人(多少自分を殺してでも安定してたほうがいい人)にはオススメしません。エンジョイできないと思うから。

 思うに、永住権って、こっちでやっていけるくらいのマインドセットと技術経験が得られたら出してもらえるのでしょう。そのくらい出来なきゃこっちでやっていけねーよってことで、ある程度自分で考えて動いて勝機を掴んで、、ってことが出来るようになったら、「よーし、あがれー、明日から一軍のベンチに入れ」てな感じだと思います。それができないのにひょんなことから永住権取っちゃっても、あとが大変なだけでね。また、結果論的に取れなくても、それをやること(不安と戦いながらも思いっきり自分らしくトライしてみること)は、この先においてかなりのビジネス資源、人生資源になるでしょう。日本が生きづらくてこっちに来る人が多いですけど、その頃になったら、多分日本でもそんなに生き辛くはないと思う。そのための人生強化カリキュラムとして永住権ゲームが「教材」としてあるんだとすら僕は思います。

 先が見えない時代ですけど、見えないことで不安と恐怖にさいなまれるか、見えないことをもってチャンスがある、自由があると思えて燃えられるかでは、天地の差があります。特に中高年になったあと、「やることがなくなちゃった」的な状況でえらい差になって出てくるんじゃないですかね。

 以上です。



PS:ところでワーホリ35歳話はどうなったんだろう?これがオーストラリア名物の「放置プレイ」ってやつで、みなさんもこちらに来たら色々な局面で「ところで、あれはどうなったの?」的なスチュになるでしょう。あ、日本も同じか。

 ビザ改正の際は抜き打ち改正が多いので(政治的に意味あるときはメディア広報とかしますが)、やるなら今月中(来月=7月1日から予算新年度になるので)かなって気もします。が、今回だって4月19日とか「なぜ、その日が?」ってときにやってますしね。もしかして、観光産業の四半期レポートとか出て「こんなに伸びた!」とか自慢げに記者会見するときに、併せて「さらにワーホリも35歳にしてさらなる訪問者増加→増収を!」とか発表する機会を狙ってるとか?

 一応、移民局のサイトには、まだ35歳になるかもメッセージは残ってるので脈はあるとは思います。定期的にここを見て、この注意書きがひっそり消えたら、こっそり立ち消えってことなんでしょう。


 今週の漫画紹介シリーズは、長くなったので今回はお休みにします。次回(まだやる気?もちろん!)



これは雲のモコモコ感がいいです


このなんかジャングル的な、あるいは童話の挿絵的な感じが好きです



 文責:田村



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