第4章:宿泊
96年10月22日初稿、2010年04月09日更新

第4章:宿泊
4.3.エリア別概要



 宿泊施設の種類が分かったら、次はより具体的にどのエリアにどのような宿があって、料金相場はどのくらいなのか?を見ていきましょう。宿泊情報の入手方法は次項にまとめて述べるこことして、ここでは、大まかな料金相場と地域的特徴をスケッチしてみることにします。また、オーストラリアと日本との料金や条件の差なども併せて触れておきます。


宿泊料金−1人部屋と2人部屋
 日本の宿の場合、大体「一人あたり幾ら」という人単位で表示されるケースが多いですが、オーストラリアの場合、こちらの宿泊料金は「ひとり頭いくら(per person)」というより「1部屋いくら(per room)」で計算するのが主流です。つまり、同じ部屋を1人で泊まるのも2人で泊まるのも料金に殆ど差がありません(あったとしても10〜20%増し程度)。2人が3人に増えてもこれも10〜20%増し程度ですし、人数は大きな要素ではありません。

 また、なんでもカップル(夫婦)で行動する習慣がある西欧の場合、ダブルルームがスタンダードになっていたりします。逆に、シングルルームやツインが相対的に少ないです。「シングルルームなんか無い」というホテルも珍しくありません。都会になるほど、ビジネスユースなど「おひとりさま」ユースに配慮している場合が増えてきましたが、実際問題、ダブルの部屋とシングルの部屋でそれほど違いはなかったりします。シングルルームと銘打っていてるホテルの部屋でも普通にダブルベッドが置いてあったりするし、料金もダブルがシングルの2倍ってことはないです。

 宿泊人数が3人だった場合、3人収容できる部屋もありますし、3人で2部屋という取り方もできます。このあたりの人数感覚は日本のホテルというよりも、むしろ日本旅館の和室部屋の感覚に近いものがあります。

 結局、現実の問題は「ベッドが幾つあるか」です。仮に2人収容できてもベッドがダブルベッドだったら、カップルなどは良いですけど、単なる友達同士だったら「それはちょっと、、、」と思ったりもしますよね。その場合、ダブルベッド×1、シングルベッド×1の「3人部屋」を2人で利用することになり、結局3人部屋料金になってしまうことになります。またツインかダブルかの表示が不明瞭である場合、予約の際には「ベッド幾つ」をはっきりさせておくことをお勧めします。

 ところで、日本語で書かれている日本の観光ガイドブックやサイトでは、部屋料金を日本流に「お一人様幾ら」で書いてあるものがありますが、料金比較する場合には、換算比較する必要があるかどうか注意しておくべきでしょう。例えば「お一人様60ドル」と「一部屋100ドル」では、二人以上で泊るなら後者の方が安いことになります。ご家族で来られる場合、トータルとしてかなりの差になることもあります(またチャイルドコンセッション(子供割引)も注意しておくと良いでしょう。これでも計算が変わりますので)。

 また、ちょっと郊外のアパートメントやホリデー系のリゾートになると、宿泊人数ではなく、「部屋が幾つ」という数え方をします。日本のマンションの2LDKや3DKみたいなもので、2BR(ベッドルーム)という表示がなされ、キッチン+ラウンジ(リビング)+バス・トイレ+寝室数という感じになります。そして、最大収容人数が6人とか8人とか書かれています。多人数でワイワイやる場合、一人頭はかなり安くなりますよね。




都心部(CBD)



 都心部の宿泊施設の良さは何といっても交通の便でしょう。住所に「Sydney 2000(郵便番号)」と書いてあれば、オペラハウスやダーリングハーバーなど都心周辺の有名観光地には大抵歩いていけます。また、バスや鉄道のターミナルも集まっています。

 シドニーのシティの構造は、第三章の土地カン、CITY編n触れておきましたが、狭いシティエリアの北に行くほどオペラハウスやロックス、ハーバーブリッジなど観光名所が集まっており、観光系や5スター系のホテルはシティの北に多く集まっています。

逆に、シティの南(だいたいタウンホールから南)はダウンタウンの繁華街で、さらに南半分(地図でいえば下から4分の1)がチャイナタウンになっていることから、お値段もリーズナブルな宿が増えてきます。が、同時にクオリィティも比例して落ちてきます。シティの最南端にはセントラル駅があり、この周囲にも宿は多いのですが、いかにも中心地にあって便利なようですが、別にそう大して便利でもないです(「セントラル」という名前に騙されてはダメで、全然「セントラル」にはなく「南端駅」と呼ぶべき)。またクォリティがやや低め(でも安い)ホテルが多いです。ホテルに関して言えば、(例外もありつつも)「北高南低」だと思っておけばいいと思います。

 シティ北部の5つ星クラスの高級ホテルは、やっぱり安くても一泊2−3万円くらいはするでしょう。一泊20万円というスィートもあったりします。オペラハウスの真向かいにあるロックスのパークハイアットなど、今調べたら一番安くても600ドル台です。ただし、多くの場合一人でも二人でも同料金ですから、新婚旅行やカップルの場合、単純に頭割りにすれば半額になるので、そんなに手が届かないほど高いわけでもないです。不動産価格が東京の2倍くらいしているシドニーの実勢を考えれば、ホテル価格はむしろ割安とも言えます。

Star Ratings(星の格付け)
ファイブスター(5つ星)やスリースタープラス(3つ星半)など、西欧ではホテルの評価がなされており(スターレイティング)、ミシュラン等が有名ですが、オーストラリアでも一般に行われており、大体「★★★★☆」(4つ星半)などの記号で示されます。

 しかし、判断する機関も一つではありませんし、個人的な感想を言わせて貰うと、あくまで「参考程度」に留めておくべきかとも思います。あなたの主観で判断すれば評価が逆転することもあるでしょうし(例えば、部屋の調度やレセプションが豪勢であるとか、屋上にプール施設がある5つ星よりも、質素であっても清潔で広々とした部屋の3つ星の方が好ましいなど)、実際、料金を見てても3つ星が5つ星より高いこともあります。なお各機関で一応の基準や定義が示されており、また宿舎の種類(ホテルかアパートメントかコテージかなど)によって星の意味が違っていますので、気になる方はその定義までチェックしておかれると良いでしょう。

 なお、高級ホテルやアパートメントに泊る場合、客室料金が「ハーバービュー」かどうかで違いますが、どうせ泊るならハーバービューの方をお薦めしたいです。もちろん各ホテル各部屋によって違うでしょうが、シドニー湾は世界三大美港と言われるだけあって美しいですし、単なる「高層ビルの一室」で終わるか、これを見るかの差は、設定されている料金差以上にあるように僕は思います。まあ、好みですけどね。ハーバービューあるいはオーシャンビューと呼ばれる絶景方面ではない場合を何と表現するかですが、ここが各ホテルともネーミングに苦心してます。よくあるのがシティ・ビューであったり、ディストリクト・ビューというよく分らん名称になってたりする場合もあります。部屋のタイプを見比べて見たら分ると思いますけど。

 あと、ホテルの設備(ファシリティ)ですが、お風呂好きなあなたの場合、バスタブがちゃんとあるかもチェックしておかれるといいです。こちらはシャワーを好みますから、バスタブは必ずしも標準装備ではないです。

 シティの宿の全てが「ホテル」というわけではありません。自炊の出来るアパートメントタイプ(コンドミニアムかウィークリーマンションのような自炊も出来る部屋貸し)も結構多いです。また、お値段重視のバックパッカー宿もあります。ただし、シティという特性上、ペンションや民宿に相当するアットホームなB&B系はありませんし、モーテルもないです(敷地をとる駐車場を作ってる余裕がない)。


 都心部での宿泊は、「お金があったら楽しいだろうな」「都会生活が好きな人にはいいだろうな」と言えます。
 都心部には高級レストランやブランド系のショップもあるし、パブやナイトクラブも軒を連ねてます。何でもあるだけに便利です。ただ、何をするにも総じて価格は高いし、自然が身近にあるわけでもないのは都会の宿命です。数泊だけして定番の見所を潰そうという人、高級ホテルの洗練された感覚が好きな人、都会の面白さを追求したい人には向いているでしょうが、「海の近くでのんびり過ごしたい」「オーストラリアのローカルの生活感覚を楽しみたい」「リーズナブルに済ませたいという人」には不向きかなと思います。


近郊(サバーブ)

 都心部からちょっと離れた近郊住宅地域に目を移します。近郊住宅地といっても、ここでは、電車やバスで20〜30分、タクシーで2-3000円程度、半径10キロ以内程度の地域を対象とします(更に遠方にも宿泊施設は広がっています)。

 「近郊住宅地」というと、多摩地区や所沢あたりのベッドタウンを連想されるかもしれませんが、実際のところ東京駅からせいぜい渋谷区、杉並区以内の距離で、都会の便利さと住宅地の閑静な環境を兼ね備えた地域です。都心部が基本的にホテル中心なのに対して、この地域になると多様な宿があります(逆に超高級ホテルはなくなりますが)。東西南北ほぼ万遍なくモーテルはありますし、東部や北部海岸沿いにはビーチリゾート系統の宿があります。また、普通の住宅をそのまま宿用に改装した民宿系=B&Bもちらほら見受けられます。

 サバーブの宿の面白さは、宿そのものが個性豊かになるとともに、サバーブそれ自体も個性豊かになることです。二重の意味で面白いので、生活体験を志される方にはオススメです。

 なお、各サバーブの個性を語り出したら何頁あっても足りません。大まかには第三章土地カン・サバーブ編をご覧になって下さい。

 思いっきり端折って説明すると、
 @、シティへの利便性を尚も考えるならば、シティからほんのちょっと離れたエリアがいいでしょう。Potts Pointは繁華街キングスクロスでもありますが、駅周辺を過ぎたら意外と高級住宅地になります。またバックパッカー宿や一般宿のメッカでもあります(かつて日航ホテルがあったくらいです)。ダーリングハースト、パディントンや、サリーヒリズのクラウンストリートあたりはわりとお洒落でセンスのいいエリア。ピアモントにはカジノがあり、アルティモはチャイナタウンとUTS(シドニー工科大学)のお膝元エリアです。チッペンデールも一歩中に入ると下町風情が残ってます。

 A、下北沢やお茶の水のようなカルチャー的な面白さを楽しまれるならば、ニュータウンとグリーブがいいです。シドニー大学を挟んで南北に位置するこれらは学生街とマルチカルチャルな面白さが詰まってます。

 B、さらにローカルな生活感と各移民の色が町々で異なる面白さを堪能されたかったら、西エリアのサバーブがいいです。物価も安めですし、時折ディープな町があったりして面白いです。

 C、緑の豊かさと垢抜けた感じをお求めでしたらノースがいいでしょう。

 D、海!というビーチカルチャーをお探しでしたら、イースタンサバーブのビーチ沿い(ボンダイ〜クージー〜マルーブラ)、あるいはマンリー以北が良いです。特にマンリーは、ビーチリゾートのメッカですので、海沿いコンドミニアム系のアパートメント物件が多いです。

 お値段ですけど、シティのホテルに泊ることを考えたら総じて安いです。一泊100ドル代でそこそこのグレードの宿も多いです。特にB&B系は、スタイリッシュで近代的なシティホテルとはまた別のゴージャス感があります。神戸北野の異人館のようなビクトリアン建築様式の、いわゆる「洋館!」って感じのものもあります。天井が高く、部屋も広く、アンティークの家具がありつつも、一泊二人で200ドル以下であります。100ドル以下ですらそこそこあります。

 サービスドアパートメントは満遍なくありますが、週で1000ドルも出したらそこそこの物件にあたるでしょう。一見高そうですが7日で割れば一泊1万円ちょいですし、4人まで収用可能だったりしますから、一人頭一泊2500円で目の前が海!というマンションを借りられるわけですから、リーズナブルだとは思います。

 サバーブまで広げると、シティのホテルからは、数もバラエティも爆発的に増えますから、次章の述べる宿泊施設の探し方を参考にしつつ、「へえ、こんな宿があるんだ」と楽しんでください。良い宿は沢山あります。



カントリー(地方)


 「カントリー」といっても厳密な定義があるわけではなく、ここでは「都市部から数十キロないし数百キロ離れた地域で、シドニーの人が休日などに日帰りないし一泊以上の予定でドライブに行くようなエリア」と漠然と捉えて話を進めます。有名なところでは、ブドウ畑やワイナリー(ワイン醸造所)の広がるハンターバレー、広大な山岳地帯のブルーマウンテン、北部海岸沿いのセントラルコーストやニューカッスル、さらに遠方の地域などです。首都キャンベラもシドニーの南方300〜400キロの距離にあるので一つの選択肢になるでしょう。またスノーウィマウンテンという地域では冬場になるとスキー客で賑わいます。

 特徴としては、周囲の自然環境を活かしたリゾート施設が比較的目立ちます。また開拓民時代の雰囲気を残した大草原の一軒家のような宿もありますし、一般に都会に比べれば純然たるホテル形式よりも素朴な民宿タイプ(ゲストハウスやB&B)が多いと言えましょう。また、コテージやホリディユニットなどの貸別荘系も多いですし、豊かな自然環境の中での「長期滞在」も有力な選択肢になるでしょう。

 なお、もちろん、いわゆる「高級リゾート」系の施設もあります(ゴールドコーストやウィットサンデー諸島などクイーンズランド州に多いですが)。これも好みの問題で、ホテルと同じですが「高級になるほど無国籍風になる法則」で、日本のリゾート施設と大差ないか、あるいはバブルの洗礼を受けた日本人の目にはむしろ感銘が薄いかもしれません。もっとも、馴染みがある分安心できるでしょうし、設備も整っているでしょう。普通の民宿系統やモーテルが一泊2人で$100前後からあるのに対して、高級リゾートの方が料金は高めです(但し、民宿系であっても、特に有名だったり人気のある宿はいいお値段がしますが)。

 なお、このエリアに出かけるときは大体レンタカー利用になろうか思われますが、ガソリンと食料に気をつけて下さい。NSW州だけの面積でも日本の2倍以上ありますし、地図ではすぐ近くに見えても軽く東京―大阪間くらいの距離はありますから、地図の縮尺をキチンとチェックしておいて下さい。オーストラリア中央部の大砂漠地帯に比べれば、シドニー近郊は遥かにましですが、それでも向こう数十キロ、ガソリンスタンドも町もないというエリアもあるでしょう。また、地図で見ると大きな町のようで、行ってみたら民家が数軒並んでいるだけということもあり、そうなると晩御飯にありつけない不安も出てきます。宿泊施設の中あるいは周囲にレストランがあるかどうか聞いておくと良いでしょう。普通はあるでしょうが、コテージのような一軒家の場合は、自分で調理するしかないので、途中の町で食料の調達をしておく必要があります。



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