第3章:シドニーの基礎知識 3.1.土地カンをつけよう 
2010年03月17日更新



★3.1.2. シドニー郊外(SUBURBS)





サバーブとは?

 前項で述べた都心部を中心にしてサバーブ(suburb)が広がっています。

 Suburbという単語は、日本人にはやや馴染みの薄い言葉ですが、現地に住むと頻繁に使いますので、この際覚えておかれるといいと思います。

 サバーブの意味は、大きく分けて二つあり、

@、郊外住宅地という意味  都心周辺に広がっている住宅地の意味です。人口の密集度によって、City(都心、CBD)→suburb(郊外住宅地)→ country/rural(田舎)という段階があり、サバーブは都会ほどビルが林立しているわけでもないが、田舎のように美しい田園や牧場が広がっているわけでもないという中間エリアであり、日本でいえばベッドタウンみたいな感じです。

 ただし!日本のように野放図に都市が広がっておらず、まだまだエリアの規制が厳しいこちらの場合、Cityと呼べるのは、ほんの猫の額のような一角に過ぎません。いわゆる「シドニー」といわれているエリアのうち、都心が占める面積割合は1%にも満たないでしょう。99%以上はサバーブです。東京でいえば、東京駅から丸の内一帯だけがシティで、あとは全部住宅地です。もう神田だろうが、虎ノ門だろうが、自由が丘や町田みたいな住宅地であり、3階建て以上を建てることすら禁じられているエリアが多いです。したがって、シティからちょっと離れただけで、ガラリと雰囲気が違います。これはシドニーに限らず西欧系の都市作り一般に言えることですが。

A、「町」という意味  単純に町という意味で、「東京にいました」「東京のどこに住んでたの?」「北千住というところです」という会話に出てくる、”どこ””北千住”に相当するものです。"I'm living in Sydney now."(今シドニーに住んでいるんです)というと、"which suburb?"(シドニーのどこに住んでるの?)と聞かれます。東京でいえば、蒲田、下北沢、深川、荻窪、赤羽、、あたりに相当するのがサバーブです。


シドニー郊外図
 シドニーのサバーブは、さらに大まかにグルーピングされます。日本でいえば、一つの都市の周囲を「城東地区」とかいって区分けします。京都だったら昔から洛西とか洛南とかいいますよね。そのようなものです。

シドニーの場合も10個以上のグループがあり、一応の位置関係は右の地図で書き込んでおきました。  しかし、取りあえず基礎となるのは、シティを中心としてその周辺の東西北です。

 シティの東側、面積的に少ないのですがボンダイなどがある海岸エリアをイースタン・サバーブ(Eastern Suburb)といいます。

シティの西側に広がるエリアは広大なウェスタン・サバーブ(Western Suburb)です。その中でもエリアによって色々な呼ばれ方をしますが、とりあえずはシティに近いInner Westが頻繁に登場すると思います。

 ハーバーブリッジを渡ったシティの北方を、なぜかNorth Shore(ノースショア=北部海岸)、といいます。ノーザンサバーブとはいいません。

 シドニーの南部ですが、これは確たるエリアも、言い方もありません。シティ直南(シティと空港の間)あたりをSouth Sydneyといい、空港よりも南、ボタニー湾の入り江よりも南のエリアを、Sydney Southという人もいますが、大抵の場合はサザーランドといいます。

 各地域のキャラクターをいうと、北部と東部が「山の手」地域で、西部が「下町」地区ということになっていて、選挙においても北部東部は保守系自由党が強く、西南部は労働党の指定席と相場が決まっているそうです。また、不動産の価格も概して北部と東部が高く、いわゆる豪邸が多いです。


 余談ですが、オーストラリア人は、階級社会である母国イギリスと違って平等意識が強く、結果的に日本人の総中流意識と似通っているとも言われます。そして、「みんな同じ」といいながら、細かいところで「格」をつけてしまうあたりも日本人に何となく似てるように思います。
 2年ほど前、新聞でシドニー各地域の人気ランキングが載ってましたが、このランキングがなんと全500位まであってかなり細かい。また必ずしも人気上位をすべて東北部が独占しているわけでもなく、交通の便が良いとか風景が美しいとか様々なポイントで順位が入り乱れているようです。それほどシリアスな調査でもなく面白半分に受け取られているようですが、外国人の目から見るとなかなかに興味深いものです。


北 部 郊 外 (North Shore)

 ハーバーブリッジを北に渡った地域全体(要するに入江の北側全部)が、ノース・ショア (North Shore)、あるいは単にノースと呼ばれている北部郊外です。なお、ハーバーブリッジには電車も通っているのですが、橋を渡って二つ目の駅も「ノース・シドニー駅」、この駅周辺の一帯の地名を「ノース・シドニー」と言います。混同しがちなので気をつけてください。

 North Shoreも、シティに近い方をLower North Shore といい、より北方をUpper North Shoreといいます。境目は曖昧なのですが、大体 Chatswoodあたりというか、トラベルパスという通勤用の定期券の一番シティに近いレッドパスの範囲内(10年4月以降はMy Muliti 1の範囲内)でハーバーブリッジを北の一角をLower North Shore というようです。Upper North Shoreはシティから離れているだけに、森林などの自然に恵まれ、豪邸が多く、また住民も伝統的な白人系オージーが多いです。奥座敷のようなものですね。

 シドニーは世界各国の移民がいて、チャイナタウンほどではないにせよ、それぞれの民族が多く集まってる町があるのですが、日本人の場合は海外赴任はあっても「移民」してくる人が少ないため、「日本人の町」というのは特にないです。それでも、一応ボンダイは学生さんが多く、ノースは駐在員や働いている人が多いといわれていました。最近はシティの一極集中でボンダイよりもシティに住む学生さんが多くなってきた傾向がありますが、企業駐在員さんなどは今でもノースが多いです。特に管理職的立場にある人は、より落ち着いたアッパーノースショアを好まれるようです。
 Lower North Shoreで日本人に馴染みのあるサバーブは、Neutral Bay, Crows Nest, Artarmon、Chatswoodであり、Upper North Shoreでは、Castle Cove, Castle Cragなどです。昔からある東京マートという日本のスーパーは、North Bridgeにあります。


 ノース方面の最大のビジネスエリアは、ハーバーブリッジを渡ってすぐのNorth Sydney駅周辺で、郊外というよりは「副都心」で、ビルが立ち並んでいるビジネスエリアでもあります。ノース第二のビジネスエリアはChatswoodになりますが、ここ10年ほどのChatswoodの発展は凄まじく、新路線(Epping Line)の開通もあいまって、いまでのNorth Sydneyを食ってノース第一の都市になっていると思います。Chatswoodは新興ベッドタウンのターミナル駅のような感じで、いかにも外国!というテイストには乏しいです。巨大なショッピングセンターが二つもあり、またチャイニーズも多く、北のチャイナタウンのような趣もあります。

 Upper Northは、シドニー郊外の北の玄関口ともいうべきHornsby(ホーンスビー)があり、これもChatswoodと性格が似ています。昔はHornsbyがシドニー郊外の北限でしたが、激しく膨張するシドニーはさらに北方のBerowraあたりまで宅地開発が進んでいます。このあたりになると、北東には広大なクーリンガイ国立公園があり、開発地から一歩はいると手つかずの自然が広がっています。


 ノース方面へのアクセスは、ハーバーブリッジを渡るか(電車、バス、車、徒歩なんでも渡れる)、サーキュラーキーからフェリーに乗るかです。ボンダイと並んでシドニー有数のビーチリゾートであるManly(マンリー)や、海を隔ててオペラハウスを臨む立地がユニークなタロンガ動物園(Taronga Zoo)もノースに位置し、フェリーを利用すると便利です。

 自動車でハーバーブリッジを渡る場合、ノンストップの高速道路状態になっており、橋を渡り終わってから行先に応じて車線が3〜5方面にバーッと分岐していきます。そのため事前に車線変更を終えて準備しておく必要があるのですが、これは道に慣れないうちはかなり難しい(しかも知らない地名の英語の標識なので、全部読み切れないでしょう)。出口を間違ってもそれほど大事に至りませんので(降りてから5分ほど迂回すれば取り返せる)無理しないように。
 またノースからシティに向かうときも、シティ西側行き、東側行き、トンネルと道が分岐していきます。バス専用レーンなどもあってややこしい上に、標識も必ずしも親切とは言い難いです。そこを100キロ近い高速で車線変更するのですから、慣れてないとよく間違えます。無理しないように。

 なお、中央分離帯がなく、通勤時間帯に合わせてのセンターライン可変方式になってますので注意。ハーバーブリッジを渡るのは有料(3ドル、ピークタイムは4ドル)ですが、これはノースからCBDに向かう場合に課せられ、逆にノースに向かう場合はタダです。


 なお、エリアの呼称としては、Manly以北をNorthern Beachesと呼び、Manlyほど大きくはないですが、より静かでローカルに愛されているビーチ群があります。クーリンガイ公園との境目当たりをHawkesbury(ホークスベリー)といいます。また、ノースの北西側にも新興住宅地が伸びており、このあたりはHills District(ヒルズ・ディストリクト)といいます。サバーブの名前に"Hill"がつくものが多いからです。日本のベッドタウンに「丘」が付くのが多い(百合ヶ丘、ひばりケ丘)のと似ていて面白いです。

東 部 郊 外 (Eastern Suberb)

 東部郊外(イースタンサバーブ)は、@シティを真横にスライドさせていったエリアと、A南東(地図で右下)におりていくエリアとその海岸沿いとに大別されるでしょう。
 @はノース以上に伝統的な富裕エリアです。City直近のPotts Point(Kings Corss)というオーストラリアには珍しい歌舞伎町のような歓楽街のすぐ裏手から、Elizabeth Bay、Darling Point、Double Bay、Point Piper、Rose Bay、Vaucluseと奥に伸びていきます。ハリウッドスターの豪邸や、どこそこの屋敷が数十億円で売買されたとか話題になるのもこのエリアです。

 Aはもう少しとっつきやすい、みんなのビーチエリアです。まず都心からやってくる電車の終着駅Bondi Junction(ボンダイジャンクション)が東部最大の中心商業地であり、そこから2キロほど離れたボンダイビーチは観光地としても、地元のレジャーの場としても有名です。しかしビーチはボンダイの専売特許ではなく、Bronti(ブロンティ), Coogee(クージー), Maroubra(マルーブラ)と美しい海岸は広がっています。サーフィンをやるならBondiよりもむしろMaroubraの方がメッカです。


 Bondi Junctionの3キロ南にはNSW大学があり、その周辺は学生さんが多く住むRandwick、Kensington, Kingsfordというエリアが広がっています。

 ボンダイとシティの中間に位置するのが、Paddington(パディントン)です。大抵のガイドブックに紹介されていますが、特徴は3点あって、@テラスハウスが有名な「お洒落な芸術家の町」、Aマディグラという祭典で有名な、シドニーの同性愛者達の町、B週末にはパディントンマーケットというフリーマーケットが開かれるなどでしょう。もともとはシティ周辺の下町エリアであり、一時期スラム街だったことあり、それがゆえに貧乏アーティストが集まってアーティストの街になったという発展過程を辿ります。いろいろな要素が混じり合った面白い街です。同じようなテイストは、西部のGlebeやNewtownにも見られます。


 西 部 郊 外 (Western Subuerb)

 エリアの広さで言うとシドニー西部(西北、西南部を含む)が最も広く、そして漠然としています。
 北部は進むにつれてクーリンガイ(Ku-Ring-Gai)国立公園が、南部はボタニー湾やロイヤル国立公園、東部は海岸線という具合に地形によってエリアが限定されるのですが、西部は都心から60キロ先のブルーマウンテン山岳地帯まで広がっています。またキャンベラに向う南南西エリアもどんどん開発されているので、ますます茫漠としたエリアになってます。あまりに広いので、シティ直近10キロ程度をInner Westと呼ぶなど、ある程度部分的な呼称はあります。

 地域が広いだけに収集がつかないのですが、電車の終着駅/急行停車、乗換駅として頭に入れておくと便利かなと思われるものとして、Campbelltown、Bankstown、Penrith、Parramatta、Liverpool、Strathfield, Blacktownなどを挙げておきます。もっとも憶えきれるものでもないでしょうし、電車に乗ったりレンタカーで西部方面に出かけるときに事前に地図を見てあたりをつけておく程度で良いかと思われます。


 北や東が富裕エリアなのに対して、西は庶民エリアです。物価が安く、交通機関も整備されている(お金持ちは電車なんか乗らない)ので、世界中から集まった移民達が住み、シドニーを一大マルチカルチャルエリアにしており、サバーブが違うとガラリと雰囲気が変わり、奥行きがあって、濃いエリアです。それだけに面白いです。

 オーストラリアの移民は、初期の開拓時代を除けば、第二次大戦後オーストラリアが積極的に移民を受け入れた頃から始まり、イタリア、ギリシャ、東欧諸国がまず入り、パレスチナ難民、ベトナム難民にはじまる最近のアジア系移民の流れがありますが、移民してきた人々は、当初、言葉の苦労もあり、高所得など望むべくもない。したがって生活費の安い地域に寄り添って住むことになり、結果として西部地域は民族ゴチャ混ぜ状態になっていったということです。

 こういった特定の民族の多いサバーブをEthnic communitiesと呼んだりしますが、地元のガイドブックで「ビザなしで行ける世界旅行」と形容し、実際にもツアーバスが出てたりします。各地域に比較的集まっている各民族の分布は、Wikipedia他の資料によると下記の通り。もっとも時の経過とともにこういったコテコテ傾向も変わりつつあります。

Ashfield 中国系(特に上海人 シドニーのリトル上海)
Auburn  トルコ系、ハザラ系(アフガニスタン中部の山岳地帯およびイランとパキスタンの一部に住むモンゴル系民族)
Bankstown  レバノン系、ベトナム系
Blacktown 周辺 フィリピン系
Bondi ユダヤ系
Cabramatta  もっぱらベトナム系だが、ラオス系、中国系(漢民族)
Campsie 韓国系、中国系
Chatswood 香港系中国系
Earlwood/Brighton-Le-Sands  ギリシャ系
Eastwood 韓国、中国本土(広東系、北京系)
Fairfield  混在エリア(アッシリア系(アルメニア、シリア)、旧ユーゴスラビア系、ベトナム、イタリア、ヒスパニック)
Homebush  スリランカ、南インド系
Hurstville  中国系
Kingsford  インドネシア系
Lakemba レバノン系、エジプト系(シドニーのムスリム(回教徒)の中心地)
Leichhardt/Haberfield  イタリア系(シドニーのリトルイタリア)
Liverpool  セルビア系
Manly  北欧系
Marrickville ギリシア系、ベトナム系
Mount Kuring-gai  ポーランド系
Northbridge 日系
Petersham ポルトガル系
Rockdale マケドニア系
Pendle Hill マルタ系
St Ives  南アフリカ、ユダヤ系
Strathfield  韓国、上海系
Waverley ロシア系
Willoughby アルメニア系


 また、必ずしもウェストに集中しているわけではなく、ノースやイースタンサバーブにもちらほら点在しています。もっとも、NorthBridgeが日本人系と分別されているように、単に東京マートがあるから日本人をよく見かけ、そう思ってるだけという部分もあります。実際には別のところに住んでいるけど、良く集まる店があるとか、その民族の○○人会の本部があるからとか、そういう理由になってるものもあるでしょう。


 都心近くの Inner West ですが、この地域にはシドニー大学があり、大学の北東側地域にGlebe(グリーブ)、南西側にNewtown(ニュータウン)があります。いずれも学生や若者の多い地域で、変わった格好をして歩いている人も多い、ボヘミアンでカジュアルな一帯です。前述のようにオックスフォードストリートやパディントンに似ています。

 味音痴と揶揄されるアングロサクソン系(英国、米国、要するに英語喋ってる人達)とは格段の味覚を持っている世界各民族がいるので、「シドニーの食は西にあり」という感じです。安くて美味しくて、本格的。NewtownやBalmainはそのメッカのような所ですが、より本格的に味わいたかったら、それぞれの”本拠地”にいくと更に安くて本格的です。シティ近辺のDarlinghurstあたりもかなりいいセンいってたりするのですが、同時にバブリーなだけなチャラくて高いだけの店も混在しています。もっともその傾向はNewtownやLeichhardtにも浸透しており、その隣のまだ商業主義に毒されていないエリア、例えばNewtownの隣のロックの町Enmore、Leichhardtの隣のHerberfieldなどが地味に良かったりします。


 なお、庶民エリアの悪いイメージとしては、低所得者階級が多いことから、町に潤いが乏しく、治安が悪いという点が思い浮かぶでしょう。しかし、低所得といっても相対的なもので、特にインナーウェストは2DKの中古マンションでも6000万円くらいは軽くしますし、グリーブなんか2−3億物件が転がってます。東京の神田を「伝統的に江戸っ子のメッカで庶民の町」といってるようなものですね。3000万円台で一戸建てに住もうと思ったら、ホーンスビー以北やブルーマウンテン山麓あたりを探しましょう。

 治安については語学学校研究/現地生活治安の章で詳述しましたが、(RedfernのThe Blockを除けば)圧倒的に治安が悪いのはシティです。繁華街なんだから当たり前ですけど。なお、トピック的に「悪名高い」西部のエリアを二つ紹介します

 まずRedfern(レッドファーン)ですが、西部といっても、セントラル駅から一つ目の都心そのもの地区で、セントラル駅と同じく全ての列車が必ず停車する一大ジャンクションでほとんどシティと呼んでもいいくらいの距離にあります。

 恐いイメージは、昔から、アボリジニーの人々が比較的多く住み、仕事もせずにアルコール依存になった人々が徘徊しているという地域だということですが、(ちょっと古いけど)統計によればこのレッドファーンのアボリジニーの人口は僅か1.1%に過ぎないそうですし(Sydney Morning Herald,28th February. 1990、Rathi Hardjono著“White Tribe of Asia”P27より)、実際に歩いていて不都合にあったことはないです。特にそう言われなければ特に気づかないでしょうし、その類の風景なら、オーストラリア北部(中央部のアリススプリングスやケアンズの町中など)の方が遙かに頻繁に見受けられます。なおレッドファーンは皮革製品(靴など)の工場直売の店が多いので買物客も多いです。

 ただし、レッドファーンの中でもEveleigh Streetという通りやその周辺の通称The Blockと言われる地域は、確かに雰囲気も異様ですし、この一角に関してはイメージだけではなく、真剣にNo-Go-Zoneです(駅の上の陸橋状の道路の北側=都心方面の一角)。
 カブラマッタ(Cabramatta)は、90年代にはシドニーの犯罪都市として騒がれました。ベトナム系(+中国系)移民のコミュニティーだというだけでなく、ファイブティー(5T)と呼ばれるベトナム系犯罪組織が暗躍して麻薬取引をしていると言われており、94年にはマフィア撲滅の最先頭に立っていた地元の議員が路上で射殺されるという事件も発生したり、防犯用監視カメラを町中に設置したり、マスコミを賑わすことが多く有名になってるわけです。前述の人気ランキングでは堂々の500位最下位に輝いてしまいました。

 しかし、その後、警察の重点的取り締まりが続き、21世紀にはいってからカブラマッタという地名はトンと聞かなくなりました。まあ、危ないと言われていた頃でも、実際に行ってみれば「郊外のチャイナタウン」という感じで、駅周辺のディープで面白い商店街を除けば、のどかな郊外の住宅地です。日中であれば、別に歩いていて危険を感じるというようなこともないし、全員がアジア系というものでもありません。

 ちなみにキングスクロスも麻薬売買は日常茶飯事ですが、カブラマッタが「卸取引」だとすれば、キングスクロスは「小売・最終消費地」にようなものだと思います。プロが密室で取引しているエリアと、末端ユーザーがそこらへんでラリってるエリアと、「どっちが恐いか?」と言われたら微妙でしょうね。なお、これだけ警察が意地になって取り締まっていたカブラマッタですから、利害に敏感なその種の組織がいつまでもそこでビジネスをしてるかどうかも疑問です。




南 部 郊 外


南部ですが、さきに述べたように、南部を明確に表わす言葉もエリアもないのが実情です。

 シティと空港の中間あたりSouth Sydneyということがあります。ここは工場や倉庫が建ち並ぶエリアだったのですが、不動産高騰により工場は郊外に転出し、その跡地に日本みたいなピカピカな新築マンションが林立しています。しかし、一角だけ強引に開発しているだけで、十分な商店街が広がってるわけでもなく、妙にうら寂しい街路も多く、なんともチグハグなエリアになりつつあります。空港周辺からさらにボタニーあたりになると、まだこういう無理矢理開発が伸びてないので昔のサバーブの佇まいを残しています。

 空港よりもっと南、ボタニー湾の入り江よりもさらに南のエリアをSoutherland(サザーランド)といいます。ここまで降りてくると、またUpper North Shoreと同じく、シドニーの奥座敷になり、住民の白人度は一気にUPしていきます。


 以上、東西南北を見てみましたが、実際には、ある程度こちらの生活や風景に慣れてからでないと、それほどクッキリと違いが見えるものでも無いでしょう。僕も来た当初はどこを見ても「単なるオーストラリアの風景」にしか映らず、「どこが違うの?」と思いました。現在でも(典型的な風景ならまだしも)そこらへんの通りの写真を一枚見せられて「西部か東部か当てろ」と言われたら全然判別つかないと思います。96年にこれを最初に書いたときそう思いましたが、十数年暮した今もそう思います。それは、東京や大阪周辺の普通の住宅地の写真を見せて「どこだ?」と言われても分らないのと一緒です。




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 なお、サバーブの各解説はやりだしたら泥沼的に面白いので適当にはっしょってますが、もうちょっと詳しく知りたい人、写真を見たい人は、

 シドニーサバーブ&生活解説写真集 サバーブ編

 シェア探しや家探しなどシティから半径10キロ圏内のエリアを知りたい人は

 シェア探し入門/サバーブ別解説 

 をご覧下さい。

 →オマケとして、シェア探し用に作ったシドニー各サバーブのガイドマップをつけておきます。



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