前項で宿泊施設の概要と相場を概観しましたが、さらに具体的に「どの宿」と決めるには、より詳細な情報を入手する必要があります。以下、主立つ情報源を見てみます。
その昔は刊行物という紙媒体がメインでしたが、インターネットの普及と充実によって、そのほとんどがネットによって取って代われるようになりました。これによって遠い海外の情報も格段に容易に入手できるようになりましたが、だからといって問題が解決したわけでもありませんし、紙媒体が無価値になったわけでもありません。
紙媒体の頃は、プロが編集し、また出版価値がある(売れる)という制約があったので、それなりに読みやすく、また良書であれば厳選された質の高い情報を得ることができました。しかし、ネットというのは誰でも情報を発信できますから、情報の絶対量が膨張し、しかもその質は非常に玉石混淆になります。
したがって調べる側としても、情報の海に溺れてしまわないように、それなりにクレバーに泳いでいかねばなりません。便利になったんだか、不便になったんだか分りませんけど、、、
以下、情報の種類とポイントをあげておきます。
大手旅行代理店、ブッキング専門業者
これはもう数十数百という単位ではきかないくらいムチャクチャ沢山あると思います。日系旅行会社の大手から、世界チェーン、さらにはオーストラリア、シドニーの地元まで、およそ全ての旅行関係業者が参加しているといっても言い過ぎではないでしょう。
単に旅行で2〜3泊するならこれで十分ですし、そもそも探すまでもなくパックツアーについてくるホテルで十分であるとも言えます。
しかし、ここでは「生活体験」、現地人のように外国の生活感を味わうという観点で書いてますので、いかにも観光旅行然としたホテルでは物足りないでしょう。また、多少変わったテイストのある宿を求められる方も多いでしょう。そうなると、この種の一般的な情報だけでは不足がちです。
ところでこの種の旅行業者さんの場合、ホテルとの間のいわゆるB to Bの商取引になり、それが大手になればなるほど情報の一括掲載というパターンになろうかとは思います。専門の鑑定人が一軒一軒自分で泊って慎重な評価を下すという感じではなく、ホテル側提供の情報をそのまま載せるという感じになるでしょう。ですのであれこれホテルの説明はあるとは思いますが、「評価」というほど切り込んだものは少ないと思われます。
何を長々書いているかというと、今調べてて分ったのですが、シドニーシティ直近にYホテル・シティサウスというのがあります。日本語で検索しても沢山出てくるのですね。お値段がリーズナブルで利便性が高いということです。クチコミ情報も大体がホテルの備品とかサービスに関するものが多い。だけど、ここってRedfernのEveleigh Stという、シドニーでも悪名高いエリア至近にあります。以前車でこの前を通ったところ、YWCAだったのですが、「うわ、すごいところにホテルを建てるなあ」とびっくりしました。こんなところ泊る人なんかいるんか?と思いきや、結構いたりして、それも日本人も多かったりします。
まあ、2004年の暴動騒ぎのあとは警察や政府のテコ入れでかなり治安も安定したとは言われてます。犯罪率も結構下がっては来ていますし、今やッシティの犯罪率の方が高いくらいでしょう。このホテルも大通りのクリーブランド・ストリートに面していて、直ちに何が起こるというものではないでしょうし、また起きてもいないのでしょう。僕も一般の治安過敏症にはかなり批判的な方ですし、別にこのホテルをクサすつもりはないし、運営する以上は安全にも気を使っておられるとは思います。また、こういう言い方をするから地域差別が無くならないわけだしね。でも、そういったポリティカリー・コレクトネス(政治的タテマエ)はさておき、率直に言って「安全か?」と言われたら、やっぱり「むむ」と口ごもります。少なくとも、夜間、最寄り駅のレッドーファーン駅から直線でEveleigh Stを抜けて歩いてくるのは止めた方がいいといいます。またレッドファーン云々を置いておいても、セントラル駅までの道のりがまた殺風景だし、店なんかろくすっぽないし、バスもあんまり走ってないし。
こんなの地元民だったら誰でも知ってると思うのだけど、なぜそういう常識的な情報がネットに載らないのか?という点です。まあ、「やや治安に問題があるエリアに近いが」などと宿紹介サイトで載せるわけにもいかないでしょうけど、だからこそ、その点がこういった一般紹介情報の弱点だと思うわけです。
しかし、このホテルについていうと、調べればYWCAファミリーであることは一目瞭然だし、定価で一泊1万円前後は、治安を抜きにして利便性だけで考えても安くはないと思います。もっと安くて便利なホテルは幾らでもあるでしょう。ただし、ここのブッキングコーナーをみると、直前になると値が半値くらいになる傾向があるようで、定価130ドルに対して60ドル台があったりして、そういうのはいいかもしれません。しかし、徹底して安値で済ませたいならバッパーの方がいいんじゃなかろか。あるいは、同じYWCAファミリーのYホテル・ハイドパークの方が立地の点ではずっと楽しいと思います。
※2017年現在、レッドファーンはもう危ないところではなくなったと言っていいと思います。ただ、それでも「なぜか載らない情報」という論点は生きていると思いますので削除しないで残しておきます。
政府観光局や地元の観光協会
オーストラリア政府レベル、各州観光局、各エリア、そして町や村レベル、何層にもわたって観光情報サイトを作ってますし、そこでアコモデーション(宿)のコーナーがあります。総じて言うと、作っている組織が上位になるほどそのサイトは美しい写真を散りばめ、WEBデザインの粋を尽したようなファンシーなサイトになる傾向がありますが、それだけにイメージ優先というか内容が薄いような気がします。多少の例外はありつつも、あーんまり使えないですね。総花的というか、ホテルの数も限られているし、その情報もわりと一般的なものに留まっています。どっちかというと、エリア全体の観光情報を知るとか、広域地図をダウンロードするとか、そういうゼネラルな使い方の方がいいかなって気がします。
ところが主体がより範囲の狭い地元ローカルになればなるほど、デザインもダサくなるのですが、それだけに情報もソリッドになる傾向があります。というか、あまりにも小さな村くらいだと、トップページだけであとは全部工事中というご愛敬のようなサイトもあり、そのあたりはマチマチですけど。
NSW州の観光局のHPは
Visit NSWですが、ここで宿を検索すると、非常に美しいHPなんだけど、でもあんまり使えません。きれいなだけ。範囲がでかいものは、どうしても総花的になってしまうのですよ。
範囲を狭めて、例えば
ブルーマウンテンの地元観光協会のページに行き、アコモデーションのページにいって宿のリストを探し、さらに個別に書かれているホテルそのものサイトに行ったほうが詳細がわかります。
これがさらにブルーマウンテンよりも多少知名度の低いエリアになると、例えばイルカやホエールウォッチングで有名なPort Stephens(スティーブンスと読む)になると、
こんな感じです。ここまでくると、宿紹介も分りやすくなります。
一般論でいいますと、こういうのって元締めが広告料をとってやってたりしますから、広告料を沢山払ったところが当然フィーチャーされるわけです。でもそれって消費者サイドからしたら、泊まる価値があるかどうかとは別の原理ですからね。すごーくいい宿があって、常にリピーターで満員という状態だったら、わざわざお金出して広告なんか出さないでしょう?そこは日本と同じです。また、範囲がでかい巨大な組織ほど広告料が高いですからね。
サードパーティの宿紹介情報
一つは、地域の観光局や市町村主催の観光サイトと平行して、民間企業がその地域の観光情報サイトをやっているようなケースです。これも沢山あります。例えば前述のブルーマウンテンの観光局のサイトに平行して、
bluemountains.com.auというサイトもあります。ドメイン名も公共を意味するgovとかorgではなくcomになってます。
もう一つは、「日本の名旅館100選」のような本で、地域ではなくトピック別に選別・編集してある本やサイトです。以前はDowsonsとかあったのですが、最近はあんまり見かけなくなりました。単に僕が探し切れてないのかもしれないけど、Dowsonsのサイトも見てみましたが、それほどユニークな選別をしているわけでもなさそうですね。
たまたま見つけたのは
Beautifull Accommodationという特選宿サイトです。ここはシドニーでもRusselsやTricket'sも載ってるし、なにより後で述べるパース方面の僕らの泊ったオススメ宿もちゃんとフォローされていて、「お、やるじゃん」という感じです。写真が綺麗ですよね。
そのなかで、
Tripadvisorはクチコミが豊富でオススメです。
宿情報だけではなく色々な観光情報が得られますし、その効能は僕自身、サンシャインコーストのヌーサに旅行したときに実感しました(詳しくは
サンシャインコースト・ヌーサ旅行記を参照)。
シドニーの宿情報のページは、
シドニー ホテル - 口コミランキングにあります。その昔は1位にシンプソンズが来ているあたりGood Choiceです。あそこはいいですもんね。このサイトの何がオススメかというと、クチコミ数の絶対量が破格に豊富(シンプソンズだけでも230件のクチコミがある)だけでなく、それが全世界の全言語でのランキングだということです。日本語(日本人)だけのクチコミだとどうしても偏りがありますし、日本人は滅多に行かないけど実はすごく良いところをミスってしまう傾向がありますが、世界共通でクチコミがあり、英語はおろかイタリア語とかフランス語などのクチコミが載ってます。全然理解できないクチコミもありますが、判断の客観性という意味では良いです。シドニーのホテルやB&Bをざーっと見てみましたけど、細かな順位は趣味だと思いますが、載るべきところが載ってます。日本人だけのクチコミだったら漏らしてしまうようなところがちゃんと載ってます。
それに日本人のコメントよりも英語のコメントの方がダメなものはダメとハッキリ言いますから読んでて面白いです。もっとも、それだけに毀誉褒貶が激しく、Aさんは激賞、Bさんはボロカスという具合に評価がバラバラに分かれ、結局何を信じればいいのかわからなくなりますが、それが本当のクチコミというものでしょう。
もっともTripAdvisorも成功しすぎて、最近では水準落ちてる気がします。難しいんですけどね、情報がある程度ないとダメなんだけど、ありすぎると玉石混交になってしまって、くだらないレビューも沢山読まされて結局わからないという。
宿本家のHP
これに加えてその宿泊施設の本家のサイトがあります。
世界チェーンの大手ホテルのゴージャスなHPから、田舎のB&Bの素朴なものまで千差万別ですが、予約される前に一度は見ておかれるといいと思います。特にB&B系は個性豊かな宿が多いですから、WEB技術の巧拙ではなく、宿本来のテイストみたいなものに着目されるといいです。また、一般のブッキングサイトには紹介されていない細かな情報が書かれている場合も多いです。もっとも、田舎のおっちゃん、おばちゃんが経営してますので、「インターネットのことは分らん」といって業者さんに丸投げしたり、PCオタクの甥っ子に作ってもらったりしてたりしますから、出来はマチマチ。しかも、業者系の場合はプロの仕事としてソツがない分、その宿本来のテイストが抜け落ちてしまったりするので難しいところですね。
例えば、パース近く(といっても900キロくらい離れているが)エスペランスとというところで泊ったB&Bはとても良かったのですが、僕らが泊った実際の感じ(
パース旅行編)と、
宿のHPを見比べてみると、同じ宿とは思えないくらい印象が違ったりします。というか本家のHPは何も語ってないに等しいです。こういう場合は、逆の宿名でGoogleで検索して、他のサイトが紹介しているのを片端から見ていくといいです。
なお、オーストラリアのことはGoogle Australiaで検索した方がヒット率は高いです。
www.google.com.auです。
個々の宿だけではなく、チェーン展開をしているモーテル、たとえば(
Best Western、
Budget Motel Chainは全国の加盟店を小冊子にしてまとめたものもあります。あるいはオーストラリア全土でアパートメントの展開をしている
Medina、バックパッカー系だったら
YHAオーストラリアのサイトなどがあります。
長期滞在用アパートメント系の探し方
さて、ここで長期滞在用アパートメントの探し方を独立して特集します。
なぜならこの種の施設は、それ専用の宿泊施設としてある場合だけではなく、「普通のマンションの一室を貸す」というウィークリーマンション、不動産賃貸的な要素が強い場合もあるので、一般の宿とは多少事情を異にしているからです。
また、長期滞在用のアパートメントの場合、よく「Min Stay: 5 nights 」などのミニマムステイ条件(最低5泊以上しなくてはならない)がかかっていますので、ご注意ください。
宿泊施設ブッキングサービス系
沢山のサイトがあがってきますが、まずは宿のブッキング系サイトを見ていきましょう。これは宿泊施設を紹介、予約代行をする旅行代理店のようなサイトです。
例えばWotifというサイトで、シドニー&アパートメント」という条件で検索した結果は
ココにあります。80件以上のアパートメントが対象になっています。これだけあれば良いでしょう。
他には、
booking com
などの一般ブッキング系サイト、2017年現在ブッキングコムが有名ですけど、過去20年くらい見てると、ほんと栄枯盛衰すぐに変わりますから。
sydney serviced apartments net
というアパートメントに特化したサイト、
あるいは、
Google MapでServiced Apartmentで検索したもの無数にあります。
これらのサイトで良さげに思えるアパートメントが見つかったら、今度はこのアパートメントの名称で再び検索をかけるといいです。そのアパートメントの本家のホームページや、他の人のクチコミなども上がってきますから、立体的に調べられるでしょう。
不動産の短期賃貸系
建物それ自体が宿泊施設というのではなく、普通の分譲マンションの一室だけをサービスドアパートメントとして提供している場合があります。部屋のオーナーが、一般の賃貸物件として貸し出すのではなく、旅行者用の短期のものとして市場に出している場合です。こういったケースでは、その部屋の斡旋は、旅行代理店というよりも不動産業者の仲介斡旋という形に近くなります。
シドニー最大の不動産検索サイトは、賃貸物件やシェア探しなどで地元ではお馴染みのDomain.comですが、ホリデー用宿泊施設に特化した姉妹サイトとして、
Stayzがあります。今検索してみたら、物件数はシドニーだけで900件にも達するのですが、それだけにアパートメントに限らずB&Bやホテルなどおよそ旅行者対象の全てが入ってきます。
ウィークリーマンションみたいに、観光施設ではなく「普通のオージーの住んでるマンションに普通に住みたい」と思われる方は、上にバーッと出てくる施設の名称・住所に注目してみてください。名称が「○○コテージ」「○○アパートメント」となってるのはそれ専用の施設ですが、単純に「○○ストリート」あるいは「21/153 Geroge St(ジョージストリートの153番目の建物の21号室)」と住所だけになってるのは普通のマンションである可能性が高いです。
もちろん、これに尽きるものではありません。いま、パーッと調べたらとりあえず出てきたのがこれだったというだけのことです。ネットがショボいころは情報の絶対量が乏しくて大変でしたが、今は情報がありすぎてしまって大変です。
Airbnb
それに2010年以降、Airbnbという世界シェアシステムが登場してきたので、だいぶ話も変わってきたと思います。Airbnbは民泊で、民宿よりももっと素人っぽいのですけど、それだけにホストの顔がよくわかり、地元の人との交流を考える人には向いています。
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