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いわゆる「ビザ取り学校」と滞在延長方法論 (2)


1.ご利用は計画的に〜モラトリアム麻薬の功罪
2.ビザ取り学校の実際
3.それ以外の対案の検討



ビザ取り学校の実際

 僕自身リアルタイムに通ってないのでドンピシャとは言えませんが、10年以上外野でチラチラ見てたこと、以前一括パックでお世話したワーホリの方のその後の相談で一緒に学校巡りをして実際にあれこれ見学した経験から、「ま、こんな感じ」という大雑把なところを書きます。

 見てきたのはビザ取り学校ということで有名な某ビジネス学校です。名前出してもいいんだろうけど、話が微妙なんで伏せておきましょう。まあ、「いわゆる一つのビザ取り学校」的という感じで。どこも似たような感じだろうし。

 ビザ取り学校のポイントは、@いかに安いか、Aいかに授業が楽で働く時間が豊富にあるか、という二点に尽きると思います。

気になるお値段

 まずは気になるお値段ですけど、ビジネスコースが半年で2500ドルです。入学金が150ドル。これは時期により上下動するのでしょうが、半年2500ドルというのが大体の相場じゃないかと思います。これはリアルタイムで調べればすぐに分かると思いますよ。

 そして支払は3か月に一回で良く、つまり入学時に3か月分1750ドルと入学金(+OSHC=留学生用強制保険)など付属費用を払えば、学生ビザを取るためのCOE(入学許可証)を発行してくれます。まあ、お手軽ですよね。ビジネスコースも、半年だけのサーティフィケイト2から2年コースのディプロマコースまでありますが、2年コースでも最初3か月分出せば2年分のCOEをくれますから、ビザの費用は一回で済むからお得です。

 ただし、これだけではないです。

 隠れ費用としてはビザの手続き費用がかかります。これが、ビザの申請料が約550ドル、さらにOSHCが月あたり30ドルくらいだから半年で180ドル。さらに健康診断が必要とされた場合には、追加でもう2-300ドルくらいかかったりします。トータルで700〜1000ドルくらい嵩んでしまいます。

 もう一つはあとで述べる英語学校費用です。見逃されがちだけど、意外とこれがデカイ。

授業時間と拘束

 では時間の拘束はどうなっているかというと、大体週に4科目取ればいいだけです。授業時間は朝・昼・晩、つまりモーニングクラス、アフターヌーンクラス、イブニングクラスの3つあり、これが月曜日から土曜日の午後まで週17コマあり、その中から4つ選べば良い。時間割をみながら、月〜木のモーニングクラスだけ4つ取るとか、月曜日に集中して朝から晩まで3つ、連続して火曜日のモーニングを取ってしまえば、あとは一週間フリー!という取り方も出来ます。自分の仕事に合わせて取れるわけですね。自分が取りたい科目がそうそう都合良く配置されているかどうかは保証の限りではありませんが、そのへんはパズル感覚で。

 タームは6週間で、1年で8タームあります。あとの4週はクリスマスホリデー。これで合計52週(1年)です。しかし8ターム全部取らなくても良くて、年間2タームはホリデーとして使えます。つまり、クリスマスの4週を入れて合計16週間(4か月)ホリデーとして使えます。凄いですよね、年間4か月、3分の一は全く学校に行かなくても良いのですから。

 もう一回整理すると、年間6ターム=36週=8か月通学すれば良く、通学期間も月〜土の17コマ中4コマだけ出席すれば良いということです。1コマ3時間ですから週12時間、これが1ターム6週なので72時間、年間6タームなので432時間です。1年(24×365)8760時間中の432時間ですから、僅か5%ですね。1日平均1.2時間だけ学校に行っていれば良いという。すごいですね。

 こんなスカスカな授業日程で学生ビザが取れてしまうんだ?!と思うのですが、取れてしまうのです。だから皆さん利用する。ビザ取り学校とは良く言ったものです。

 但し、これだけ聞いて、「いいな、ビザ取り、、」と甘く考えてはいけません。上記のビザ&人生上のリスクはさておき、見た目ほど楽ではないですよ。そのあたりも書いておきます。

真面目にやったら意外とキツイ

 まず1日3コマ!とかいうけど、1コマ3時間です。3時間授業はキツいですよ。朝から晩までマジメに9時間受けたら虚脱状態になるでしょう。しかも、英語学校みたいに生徒が英語が出来ないことを前提にしたお優しいものではなく、完全ネィティブ向けです。TVの経済討論番組を延々3時間見させられ、しかも途中で当てられたりするので、真面目にやったらかなりハードです。

 それにアサインメント(宿題)もあります。週4コマというのは、これはビジネス学校だからそうなってるわけではなく、本格的な大学でもそうです。なぜかというと宿題が多い。毎回課題図書1−2冊を指定され、これを絶対に読まねばならない。またレポートもほぼ毎回書かされる。僕の知人の何人かもこちらの大学に行きましたが、まず英語でしんどい。一回聞いただけでは分からない。だから普通の講義とともに同じ講義が夜にあったらそれも聞く、テープに録音してさらにもう一回聞いてようやく何のことか分かるという。つまり週に3倍は聞かないとついていけない。これに課題文献やらかなりハイレベルのレポート(一般に日本の大学の卒論なんかより高い水準を求められる)があるから、睡眠時間削ってでも勉強しないとついていけない。週4コマというのはこれが4倍あるわけですから、週4コマが限界だと言われています。時々オージーでダブル・ディグリー(専攻を二つ)やってる人がいますが、これを2倍やるわけですから、相当頭がいい人が、かなり死に物狂いでやらないと無理でしょう。バケモノみたいなレベルですね。

 もっともこれは大学の場合です。こちらの大学は超ハードですから、うかつに留学なんか考えない方がいいと思ってます。留学エージェントみたいな仕事をしている僕がこんなことを言ってはいけないのでしょうけど、、でもねえ、それだけ努力するんだったら、今は格段に易しくなった司法試験の方が楽だと思いますけど。まあその分昔ほど収入面では恵まれなくなりましたが、それでも平均すれば外国の大学卒資格よりは生涯年収は良いでしょう。ですので、留学したかったら、本当に「勉強が好き!」という人向けです。もともと学問なんか浮世離れしたものなんだし、だからこそアカデミズムの自由と魅力があるわけなんだし、現世利益に結びつけて考えるのが「邪念」なのだと。西欧社会では学歴はキャリアに入らないし。

 で、大学→TAFE/ビジネス学校といくに従って、このレベルが緩和されていきます。カリキュラム的には似たようなものなんだけど、要求水準が違ってくる。3日徹夜して仕上げたレポートを、「全然ダメ!」でボツにされ、容赦なく不合格になる環境と、とりあえずそれらしき事をなんか書いて出しておけばいいのとでは、同じカリキュラムといっても楽さが全然違います。では、気になるビジネス学校はどのくらいキツいのか?と。

 大体おわかりでしょうが、ここが本気で大学並に厳しかったら、幾ら学費が安くても誰もビザ取り学校としては利用しないでしょう。このくらいというデジタルな表現は出来ませんが、まあ、「それなりに」ってことです。まあ、ここは学校により、また科目や講師によって違うでしょう。鬼みたいな先生もいるかもしれんし。ここでは「週4コマ授業」という言葉がもつ軽いイメージにあんまり振り回されない方がいいよと申し上げておきましょう。4コマ出るだけでも結構大変ですよ。そして一応宿題とかも出たりするので、そのあたりは心しておかれたらいいです。

 逆に言えば、ちょっと真剣に勉強してみたかったら安いだけに良い選択肢にはなります。本気でやるなら、もっとハイレベルのビジネス学校や大学をオススメしますが、そこまでの強い気持ちではなく、どんなもんだか一回真面目に見てみたいという程度でしたら。ビジネス学校といっても、授業はちゃんとやってますし、授業を覗いた感じでは皆さん真面目に聴講されていましたし。

 伝説的、イメージ的なビジネス学校だと、そもそも出席それ自体が甘く、週4コマといっても最後に1コマ出て、その週の出席簿に後からサインしておけばそれで出席OKとか。いわゆる「代返」みたいな「代サイン」もきくとか。宿題も別に出さなくてもいいとか、科目を落としたところで別に卒業することが目的ではないからいいんだ、とか。しかし、あまりにも露骨にやってたらマルサのような移民局の査察が入ります。そのあたりで誤魔化しているのが明瞭な学生、あるいは明らかに週20時間以上働いている学生は、問答無用で強制送還されます。聞いた話ですけど、自宅の寝込みを襲われてそのまま拉致同然に連行され、もう自宅には帰れずそのまま収容所→空港になるとか。まあ、確たる文献に基づいて書いているわけではないので、「おはなし」レベルですけど、そういう話はちょこちょこ聞きます。


※2023年7月以降、学生ビザの労働制限は、週24時間(正確には2週で48時間)になります。

最初に英語学校に通わされる〜経費倍増

 もう一点、あります。英語力です。
 これが大きな隠れ費用になって立ちはだかります。要注意です。

 大体、IELTSで5.5点、語学学校でレベル5(アッパーインター)までいけてたら(語学学校の証明書があれば) 、大体のビザ取りと言われるビジネス学校だったらストレートで入学させてくれます。しかし、このレベルはかなり高いですよ。ケンブリッジ試験狙えるレベルですからね。日本人の留学生・ワーホリでアッパーまで来れる人は少ない。

 まず入学前に英語の試験をやらされます。
 でもって、多くの日本人はここで落とされます。

 そして、大体は学校内部に英語学校を持っているので、そこで修行するように命じられます。英語の試験の出来如何でしょうが、通例3か月はやってこいと言われます。そして、その授業料がそこそこするわけですよ。週230ドルとか。

 それは一般の英語学校からしたらかなり安いけど、質を考えたらむしろ高いと思う。年中スペシャルをやってたりして週165ドルとかそのくらいで受けさせてくれるのですが、それですら高いと僕は思うし、それに12週とか受けたら軽く2000ドルくらいいっちゃうのですね。ビジネス学校はそこ(英語部分)で稼いでいるのだって言う人も居ますけど、半年2500ドルだと予算を立ててたら、いきなりこれが4500ドルとか倍近くにハネ上ってしまうわけです。

 まあ、その分滞在期間も延びるし、やるのは最初だけだから実質的に損はないのだという考え方もあるとは思います。でも、単に激安授業料だけ注目してたら、いきなり予算倍増という足下をすくわれることになるので注意しましょう。あと、ビジネス学校内にある英語学校ですが、特にビザ取りの場合ですが、その質は、それなりです。かなり、そう。

 ということで、2500ドル払えば半年滞在延長!と思っていても、実は英語学校分が2000ドルかかるわ、ビザ経費が1000ドル近くかかるわで、授業料と同額くらい他の費用がかかったりします。そこはあとで「げげ!」と思わないように、しっかり知っておきましょう。


→3.それ以外の対案の検討


1.ご利用は計画的に〜モラトリアム麻薬の功罪
2.ビザ取り学校の実際
3.それ以外の対案の検討
関連記事(2020年06月):IT系ビジネス学校の話(その1〜その3)
30歳過ぎてからオーストラリアのビジネス学校でIT系に行くというのは意味あんのか?という超リアルな視点から、永住権と帰国就職を両方にらみつつ、実際に学校見学をし、かつ現役バリバリのIT業の先輩からのアドバイスを。


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