シドニー雑記帳
ホームステイ事情・2000/傾向と対策(後編)
リクエスト
ホームステイの申込書には、いろいろリクエストを聞いている欄があります。曰く、タバコは吸うか、子供はいた方がいいか、ペットはどうか、特別な食事制限が必要か(糖尿病など)、宗教上の制限はあるか(日本人はあんまり必要ないけど、断食する人とかいるし)、などなど。
沢山ありますけど、書いたからといってそのとおりになるとは限りません。手配する側も、数ある中から出来るだけ条件に近いところを探そうとしますが、全てのファミリーが部屋をカラにしてあなたの到着を待ってるわけではありませんから、そこは「空き状況」次第ということになります。
2〜3注意しておきます。
まずタバコですが、まず100%といっていいくらい屋内禁煙です。Outside OKという、外でなら吸っても良いというところで、半分くらいでしょうか。これはもうしょーがないですよね。僕もよく吸う方ですが、APLaCのゲストルームは禁煙にしてますもん。僕は気にしなくても、匂いが染み付いて、後から来る非喫煙の方が不快だったりしますから(不快を通り越して体調を崩すとかいう場合もあるでしょうし)。ですので、屋内喫煙OKみたいなところは、まず探しても無いです。あと、非喫煙者の場合、ホストファミリーも非喫煙者であることをリクエストするという逆のパターンもあります。これは結構かなえられるでしょう。
ペットですが、オーストラリアの家では殆どの場合ペットを飼ってます。ひどいアレルギーなどの場合を除いては、これも”Outside OK”あたり(屋内では飼ってない)で妥協する必要があると思います。なお、どうしても体質の関係から庭でも駄目な場合、もう他の条件を全部犠牲にしてもいいから、この一点だけは固守するようにしたらいいと思います。
家族構成ですが、これは例えば独り暮らしの家とか、大家族であるとか、シングルマザーであるとか、そこらへんのことですが、一般には子供が居た方がいいか居ない方がいいか?です。これは特に子供が好きだったり、幼児教育に興味がある人はここをリクエストしたらいいと思います。ただし、子供といっても18歳の子供もいますので、「小学生くらいの子供」という具合に細かに書くといいでしょう。子供がいてうるさい場合もあるし、居て救われる場合もあります。
なお家族構成もいろいろありますが、お父さんお母さんがいて子供がいて、、、という典型的なホームがベストかというと別にそんなこともないようです。両親共働きで、育児も加わってシンドイ家もあるでしょうし。シングルマザーの家は、それなりに苦労しているせいでしょうか、優しい人が多いような印象がありますが、もちろんこれもケースバーケース。「こうでなくては」というほど確固たるパターンもないです。
学校までの距離(通学時間)ですが、最初は僕も大変だろうから「30分以内」とか制限をつけてリクエストしたりしてましたが、最近ではそうも言い切れないなって思うようになってます。一つは、都心に近くて便利なほど、不動産価格が上がりますので、その分ローンだの財テクだのに追われ、ビジネスライクになる率が高いんじゃないか?とニラんでるからです。1時間以上かけて通うくらいになると、さすがにまだスレてない部分が残ってるようにも思います。
それと、あんまり近すぎるのも考え物だなって気もしてきました。最初は土地カンもないから、ステイ先と学校を往復するだけです。だから妙にバスで10分とか近くなってしまうと、それだけ世界が広がらないんですね。東部や西部に住んでる人でも、住んで3ヶ月、未だにハーバーブリッジを渡った事がないなんてのもザラです。だって行く必要ないですから。ところが1時間くらいかけて通ってると自分のテリトリーが広がるんです。シドニーの土地カンがぐっと広くなりますし、知識的にも現地の人に近くなってきます。どうせこの先シェア探しなどで、シドニーのあちこちを飛び回るようになりますが、そのときに役に立つのですね。
日本人のシェアは、やはり日本人が多く住む、ボンダイ、ニュートラルベイ一帯、チャッツウッド等が多いですが、こんなところはほっておいても後でシェアで住む確率が多いです。だったら最初くらい、自分から進んで住まない、思い付かないようなところに、ポンと大海に投げ出されたように住んだ方が結果的には視野が広がっていいと思います。日本人は皆さん小奇麗なノースや東部が好きなのですが、最初からそこばっかりいると、あの庶民的で楽しい西部に住めなくなってしまうのですね。恐くなっちゃうんですよね。勿体無い。
また、オージーって、ノースなんかまるでマンガみたいにスノッブ(俗物)な人とか結構いたりして、エリアに対する虚栄心と偏見ってあったりしますから、あんまり言う事マに受けない方がいいです。「レッドファーン?絶対やめとけ!死んでもいいんか?」みたいに(^^*)。でも、レッドファーンなんかエリア広いし、ヤバいのはイヴリーST界隈だけだし(そこだけはマジに止めた方がいいです。まああんなとこシェアもステイも出ないでしょうけど)、アボリジニだって統計的には1〜2%しかいないんだけど、要するに誇張されたイメージですね。それにどっちかというと、リッチエリアのノース、東部の方が、リッチなだけに財テクに走ってる率は高いと思いますね。
あと、僕らのように「英語が苦手なアジア人」ってのは、社会構造においては、庶民以下の最下層に位置してる、ヒヨワな存在だったりします。大企業の金看板なり、経済力を取っ払ってしまえば、そうです。これ、時々勘違いしてる人がいたりしますが、こんなことは、住んでしばらくすれば判ることですが。だから、同じ庶民的なエリアの方が何をするのもやりやすいです。
僕らでも、RTAやメディケアとかの行政手続なんかは、近くのチャッツウッドなんか避けて、西部にいってやりますもんね。チャッツウッドのメディケアだったか、福島のダンナのラースが、「私達の税金をお前のような移民に施してやってる」みたいなイヤミを言われて大喧嘩してましたし、同じ事務所で、チャイニーズのおじいちゃんがカウンターで剣もホロロに追い返されているを僕も見たことがあります。あとRTAも、ノースシドニー支部だったか、学科試験を受けるのに予約しろとか馬鹿なこといってましたね。だからマリックビルとかファイブドックとか、カウンターの内も外も全員移民上がりみたいなところで手続したりしてます。うるさいことお互いに言わないから楽チンです。
リクエストについては、前述のようにリクエストしたからといって必ずしも叶うとは限りません。あくまで希望であって。ただし、斡旋する側でも、出来るだけ希望は叶えようとしますから、なるべく分かりやすく書くのがコツです。一つは優先順位を明確につけること。どっちでもいいことは、don't care, doesn't matterとかいってどんどん切り捨てていくことです。そして、優先順位を明確につけること。3つも4つも条件ズラズラ並べてたら、それはもうお互いに打ち消しあって何も書いてないのと同じになります。
そして、書く欄が無くても書いちゃう。
余白に書いたり、別紙やカバーレターに書いたりします。あるいはカウンターでは口頭で伝えたりします。
また、何故それをリクエストするかの理由をかいて説得力をつけること。例えば、「学校まで近くて、ペットはいなくて、優しい人で、子供はいた方がよくて、、」とか並べるよりも、「日本で幼児教育を勉強してたので、小さな子供いる家庭あるいは、幼児教育関係の仕事をしている家庭を希望します」とだけピシッと書いた方が、斡旋する側としてもわかりやすいんです。
ということは、逆にいえば自分がホームステイに何を求めるか、何を我慢するかを、かなりクールに分析して、把握しておくことです。「ホームステイは、当たりハズレがある」と呪文のように唱えてたって何も前進しません。自分にとっての「当たり」とは何なのか、明確に整理して言葉(英語)にして言えるように考えておく方がいいです。
コンプレイン/苦情
こちらはコンプレイン社会でありまして、日本に比べれば、ずっと多く文句を言う機会がありますし、積極的に言うようです。ホームステイにおいても例外ではなく、「これはおかしい」と思ったらコンプレインをしたらいいと思います。
ただし、コンプレインを「文句」「苦情」と日本語に訳して理解してしまっては、ちょっとハズすと思います。僕のみるところ、実はもっと根が深い。
一般に西欧社会は個人主義だと言われてますが、個人主義=自己中心的と捉えるのは大間違いであって、その本質は、「個人が個人として自立してること」「その自立を他人が侵さないこと」がキモだと思います。そこから派生してきて、個人は、自分のことは自分で出来るという完璧さが求められ、それが出来るようになったら、Mature(成熟した)という、ある意味では最大限の褒め言葉をもらうようになります。逆にそれが出来ない奴はImmature(未熟な)と半人前扱いされます。
あなたも自立した個人として扱われますが、それはあなたの周囲のこと全てについて、あなたが責任もって仕切らねばならないことを意味します。そして、あなたは自分の周囲に全てについて、あなた個人の意見を持っていることが当然のように期待されます。だから、こちらの人は、何かと気軽に意見を求めてきます。不動産を見に行って、今一つ気にいらなかったとしても、どこが気にいらないのか、何が駄目なのか、聞かれたりもしますし、また積極的に話したりもします。電話セールスを断わっても、why?とか聞かれて面食らったりもします。レストランに入れば、この料理のこの部分がエクセレントだとか語り合ってます。何に対しても自分の意見を持ち、それを表明することを妨げられない、という
カルチャーがあるわけですね。
コンプレインもその一環としてあるのだと思います。関係当事者として、言うべき事は言う権利があるだけではなく、どうかすると言う「義務」すらあるような感じです。皆で、意見を出し合い、戦わせ、その集積としてより良いものを作っていくんだという、早い話が「民主主義」ですが、これがもう、日本でいえば「義理人情」のように、普通の生活レベルのモラルのように染み付いているのだと思います。昨今批判のキビシイCity Railなどでも、毎日100本とかいうレベルのコンプレインが寄せられているようです。でも、コンプレインなんかしても、実際にその場の状況は良くならないわけで、短期的には無駄といえば無駄。それでもこれだけ多くのコンプレインをわざわざ手間暇かけてやっているのというのはなぜか。単なる怒りとか不満だけではなく、一種の義務感や使命感が混ざってないとやらないと思うのです。
本来他人にとって耳に快くないことを言うのですから、通常の場合以上に、理知的、論理的、説得的であることが要求されます。自分の見聞した事実、そこから探られる問題の所在、相手の立場への理解、さらに建設的な提言、これらがセットになって、論旨を明快に、時にユーモラスに、コンプレインを展開するわけです。西欧人だって文句言われればムカつきますから、ムカつかないように感情を抑える訓練、相手をムカつかせないような言い方など、かなりスキルが必要とされます。あるいは怒り狂う相手に一歩も引かずに立ち向かうという「根性」も必要とされます。
ところが、日本では事情は違います。「不満」や「苦情」と、単なる「悪態」や「捨ゼリフ」の差が曖昧です。そもそも個人としての自立を、ある意味では徹底的に妨害されながら育ってきますから、「意見を言う」こと自体がタブーだったりします。「オマエは俺に意見するのか?」という叱責のフレーズがあることからも分かるように、意見をいう自由が無かったりします。多くの日本人にとっては、説得的に意見を言うスキルを磨く機会が非常に少ないです。意見は、そのこと自体の正しさというよりは、「誰が言ったか」という立場的なもので優先順位が決まります。
だもんだから、意見を言う習慣がなくスキルもなく、常日頃から意見を準備しておくこともなく、ましてやコンプレインのようにネガティブな意見表明という高度なワザも中々持ちあわせてません。
以上を前提に、それでも「コンプレインせよ」と言います。なんたって、コンプレインすることを前提に世の中のシステムが出来てるのだから、郷に入れば郷に従えです。学校側も、良くないホストは出来るだけ排除したいと考えてますし。そこで、もう少しコンプレインするコツを挙げてみたいと思います。
★事前に確認・合意しておくこと
何も合意してないのに、「多分やってくれるだろう」という勝手な憶測でモノを考え、それが果たされなかったからといって「話が違う」と文句を言うのは、イマチュアです。最初に入居したときに、いろいろなホームルールをホストが言いますが、あれが一つの合意形成の場です。そこで、このルールは嫌だと思ったら、異議を言い、代案を出し、解決する事が望まれます。ヨーロピアンはそのへん言葉の障害も少ないこともあってハッキリしていて、最初の段階で「だったらヤメだ」で出ていってしまう人もいたりします。しかしながら、英語が不自由な身ではそこまで出来る人は少ない。だから、最初のリクエストがモノを言ってくるわけです。ただし、何でもかんでも書けばいいというものではないのは前述のとおり。
よく海外旅行のホテルで、予約していた部屋と違った場合フロントで文句言いますが、そのときに向こうが代案を出して「これでいいか?」と聞きます。このときに、「まあ今日のところはこれで引き下がってやるけど、貸し一つだからな」でOKをしますが、無条件のOKは全面同意を意味します。だから翌日になって何のディスカウントもしてくれない請求書を見てまた怒ったりするわけですが、そこで文句を言うのは too lateです。「貸し」という概念は、西欧社会でもないわけではないですが、初対面の人間でそんな暗黙の合意なんかできっこないです。文句言うなら、「OK、他に部屋も無いようだし、現実的にならなきゃならないことも分かる。その部屋でいいよ。ただし、部屋のグレードは確実に下がるのだから、その分30%デイスカウントして欲しい」という言うべきでしょう。さらに、こちらでは翌日になって当番が替わって「そんな話は聞いてない」でまた一悶着あるから、「ディスカウントを承諾してくれるなら、もうこの場で先に精算しておこう。あるいは、請求書に30%ディスカウントを明記して今切ってくれないか」とトドメを刺しておくとベターでしょう。
面倒臭いといえば非常に面倒臭いのですが、「自分のことは自分でやる」というのは「他人をアテにしない」ということで、非常に面倒臭いものです。もっとも、日本でも、ある程度ビジネス経験があったり、社会経験がある人だったら、この程度のことは誰でもやってると思いますけど。
★論旨は明快に、事実に基づくこと
「何となくヤダ」では、子供が駄々コネてるのと同じです。いたずらに軽蔑されるだけになります。
「いろいろ口うるさい」というのも、「いろいろ」では分かりませんから、具体的に列挙する必要があります。
あるいは「構ってくれない」というのも抽象的であって、もう少し具体的に展開しなければ分かりません。
これ中々難しいです。逆にいえば、「週190ドルと聞いていたのに、200ドル要求された」とか明確なもの以外、なんとなく曖昧なものになると、コンプレインしにくいし、あまりに漠然したものだと本来コンプレインの対象になりにくいと言えます。だから、それは受忍限度内とせねばならないものもあると思います。しかし、それでも納得いかない場合は、さらに次の段階にいきます。
★建設的な対案提示
100%こちらが正しいとは言いにくいような場合、相手に配慮し理解を示しつつ、第三の提言を行うようにして解決させます。
「確かに部屋も奇麗だし、掃除も洗濯もしてもらっています。おまけに食事もおいしい。それは非常に感謝しています。しかし、私はもともと日常での会話を学びたくてステイしました。それは最初のリクエストのところにも明記した筈です。ところがホストは子供の世話と仕事に忙しく、いつも忙しなく立ち働いていて、私としてもゆっくり話をする時間がないのが実状です。私は何も彼らを非難しているのではありません。私も家庭と子供を持てば同じように忙しく動くでしょう。当然のことです。しかし、問題は、現状では私の初期の目的が果たされないということです。3週間経過してもまるで果たされていないと言っていいと思います。彼らにこれ以上の時間を割けというのは、現実的ではないと思われます。そこで、別のステイ先を紹介していただけないでしょうか。無料で。それが無理ならディスカウントで。次のステイ先は、距離など細かな条件はさておき、ゆっくりしたライフスタイルの家を希望します。もちろんすぐには無理でしょうから、1週間の猶予を差し上げます。私の提案はそれほど法外なものとは思ってないのですが、いかがでしょうか」
これを全部スラスラ喋れとは言いません。無理だったら紙に書いて文書にしたらいいと思います。完璧でなくてもいいから、意味が通じる英文で。辞書を使っても、時間かけてもいいから、この程度の英文は書けるように。何なら今この場で書いてください。一回自分で書いたり喋ったりしてみると、かなり身に馴染んできますよ。練習あるのみ。
★妥協上手/落とし所
対案提示と重複しますが、こちらの要求が100%通らなくても、それは全然不思議じゃないです。交渉を始める前に、相手の状況を考えて、「これだったら相手も納得するだろう」と思われるような解決案を2〜3用意しておきます。いわゆる「落とし所」です。「ひどいじゃないか」と一歩も譲らずギャンギャン吠えても、犬が吠えてるんじゃないんだから、話は先に進みません。
交渉上手かどうかは、いかに妙案となる対案を思い付けるかどうか、その企画力構想力によってる部分が大です。「なるほど巧いこと考えるもんだな、よし、それでいこ」と相手に思ってもらえるように。
それと、「これは幾ら交渉しても無理だな」と思えるような場合、これはカチンと壁にぶつかるから分かると思いますが、状況的に不可能という場合もありますから(相手にその決裁権限がないとか)、その場合はあっさり笑って引き下がった方がいいです。またこの次もあるんだし、リーズナブルな人間、決して無茶を言うような人間ではないという印象を与えておいた方が後々の為にもいいです。「無茶言う人間」というレッテル貼られたら、以後あなたが何言っても、「やれやれ、又あいつがなんか言ってるぜ」とばかりに取り合ってもらえなくなりますし。
★right personをつかむこと
一般にオーストラリアではヒラの人間に権限を与えず、マネージャーに広い権限を与えている場合が多いです。日本では、ヒラであっても、出来るだけ満足いくような解決を図ろうとしますが、こちらは自分の権限外の場合、「知らん」とかいって突き放したり、適当な思い付きを言ったりします。これでは話が全然進みません。その代わり、ライトパーソンをつかんだ場合、日本だったら1年かかることが5分で出来たりもします。日本では、前例がどーのとか、さらに上司の決済をとかムニャムニャ言うような場面でも、こっちがびっくりするほど融通をきかせてくれます。マネージャーの権限が大きいし、マネージャーには相当有能で決断力のある人物が配されているのでしょう。
またマネージャーでなくても、「この職場はこの人で持ってる」という有能な人がいます。こーゆー人の有能さは、日本の感覚からいってもかなり有能です。何度FAXを送っても梨のツブテであり、電話で約束しても全然やってくれない人がいるような所でも、別の人だったら、メール送ったら3時間以内に返事が返ってきて刻々と報告してくれたりもします。こういう人がライトパーソンなわけですね。
段々、ホームステイの交渉というよりは、弁護士の交渉講座や、ビジネス講座みたいになってきました。
しかしですね、この程度のことだったら、日本で社会人3年やってたら身についてる筈です。気の効いた高校生でも、この程度はできます。だもんで、ワーホリさんで24〜5歳で、これ出来なかったら(勿論完璧に出来なくてもいいけど)、今まで日本で何やってたんじゃい?ということになります。でも、出来なくたっていいです。これから学べばいいだけですから。
エラそげなこというなら、20代でここらへんのことをドツき廻されて叩き込まれてると、後々すごく財産になります。僕も散々ボコボコにされました。大体年食ってそれなりにエラそにしてる奴は、若いときボコボコにされて、トイレでピーピー泣いてたりしてるもんです(^^*)。これを学ばないまま年食っちゃうと、器の小さなオッサン、オバハンになっちゃうよ。目先のセコい利益に一喜一憂して、1000円値切ったけど、1000万円は見逃し三振してしまうという(というかチャンスにも気づかない)。そうなっちゃうと、ハッキリ言ってかなり手遅れです。
解約
通例のホームステイの場合、延長するにせよ出て行くにせよ「2週間前ノーティス」というシキタリになってるところが多いです。2週間前に言えば(あるいは2週間分上積みして)、ステイ終了を告げるわけです。延長も、「4月○日までの契約ですが、もう1週間延長できますか」と2週間前に言えということです。
ただし、これはある程度の目安でありまして、ホストとの合意があれば何でも出来ます。急に今週末に出ることになったとしても、2週間分だけではなく1週間分だけでいいよと言ってくれるホストもあるでしょうし。そこはケースバイケース。ただし、今日出て行くといって今日までの費用でOKということは、まずないと考えていたらいいでしょう。2週間分は覚悟しておくこと。それを超えて「3ヶ月契約したんだから3ヶ月払え」というところも無いわけではないでしょうが、これはそれほど聞いたことはないです。大体2週間という一応の目処で動いているようです。
なお延長も無制限に出来るものでもないです。空いてたらOKだろうし、大抵の場合は2週間前に空いてたりしますのでOKになりますが、旅行の計画があるとか、親が病気とか不慮の事態もあるでしょう。あるいは、「あなたとはもう暮したくない」というホストの意向もあるでしょう。
ところで、2週間後から新しい学生が入ってくる予定になっていて、現在の学生が延長を希望したら、バッティングすることになりますが、この場合の選択権は一般にはホストにあるようです。つまり、「この人ちょっとシンドイから出ていってもらおうか」とするか、「非常にいい人だから、知らない新しい人がくるよりも居てもらった方がいい」とするかはホスト次第だということです。
裏技
ホームステイ斡旋料(100〜170ドル)を払わず、しかもある程度具体的にホストがどういう人か判っていて、ホームステイをする裏技(別に「裏」ではないけど)があります。
それは「友達に紹介してもらう」方法です。
学校に行けば、沢山ホームステイに行ってる友達が出来るでしょう。ステイ先の話(悪口が多いだろうが(^^*))も沢山出てくるでしょう。そのなかで、「ウチはいいよ」「ウチはこういう感じ」という話を聞いて、「いいな」と思ったら、紹介してもらうわけです。勿論、今一杯だったら無理ですが、友達の後釜という手もありますし、あるいは部屋が空いてるときもあるでしょう。
より確実を期すには、遊びにいって立地や家や人となりを見て、それでOKだったら、「実は私もアコモデーションを探しているんだけど」で切り出す、と。ホストだって、誰が入ってくるか判らないという漠然とした不安があるのは、こっちと一緒です。またホストにしてみれば、学生を紹介するのが学校だろうが業者だろうが、どこでも一緒です。ですので、実物(つまりアナタのこと)に実際に会って、「いい人そうだな」と思ってもらって、それで部屋が空いてたらOKしてくれる筈です。これだったら斡旋してもらうわけではないので、斡旋料はタダになります。
問題は、学校に行って、友達作って、ステイ先に入り込むまで時間が掛かると言うことであり、それまで家なき子でどう凌ぐかということです。
でも、最初はバックパッカーのドミトリーで頑張るという方法もあるでしょう。もっと現実的なのは、シェアが中々見つからないのでステイを延長したい、でもこのホストはもうイヤだ(ないしは延長不可だった)、でももう一件紹介してもらえばまた紹介料がかかる、というときに使える方法だと思います。
もう一つ隠れた問題点としては、その友達が自分よりずっと英語が上手かったりなんかして、その友達だからこそホストと上手くやっていけたりして、それが自分になったら、何かと友達と比較されて(してないけどされてるような気がして)
かえってツラかったというケースも聞いたことがあります(^^*)。
以上、いろいろステイについて書いてきました。
幻滅を感じる人もいるでしょうし、却って面白くなったという人もいるでしょう。
全編を通じて申し上げたいのは、ホームステイという特殊な夢幻的な空間があるのではなく、現実社会の現実の一断面であるということです。現実は厳しいけど、現実は夢よりも豊饒であったりもします。
オトギの国のホームステイを夢想してる人には、この現実は時として寒々しいかもしれませんが、ひとつ見方を変えれば、ありとあらゆる現実社会へのドアが用意されている空間でもありますし、登竜門でもあります。
それは、家族間の人間関係、子供の躾、夫婦の愛情表現、嫁姑の関係、仕事への取り組み方、人生の悩み、家計の問題、何に金を使って何に使わないかの基準、移民の人々のバックグランドカルチャー、TVはどのくらい見るのか、Mとか+18とか番組に指定されてる放送コードを結構守ってるのかどうか、家具や調度、その趣味、、、、その気になってみれば、生きた教材の宝庫であり、本を百冊読むより遥かに膨大な情報の集積だったりします。
そういったことを、単に物珍しい見物ではなく、真正面から見つめていけば、それは単に「オーストラリア人の生活」だけではなく、普遍的な「人間が生活すること」にまで辿り着くでしょう。人間に対する洞察も深まるでしょうし、あなた自身もまた深まっていくと思います。
本当のことを言えば、来ていきなりステイするのではなく、英語力も最大につけて、オーストラリアのカルチャーもそれなりに身につけてきた、滞在期間の最後の方にステイした方が実りは多かったりすると思います。しかし、まあ、人間弱いもので、最初は緊張してるし何でもする覚悟があるのですが、段々楽な方向へ楽な方向へと流れていきますから、やっぱりシェアとは独り暮らしとかそっちの方向に行っちゃうんですよね。
僕なんかも一軒屋借りて、楽っちゃ楽チンなんですけど、それだけに意識をトンガらせておかないと新しい知識が入ってこないし、成長もしないから恐いなと思ってます。5年おっても分からんことは山ほどあるし、興味の焦点は、「こいつら一体何考えてるんだろう?」という、オーストラリア人の生活であり社会だったりします。
なんでそんなもんに興味があるかというと、やっぱり自分に跳ね返ってくるからです。
例えば、彼らのピクニックに対する気合の入れ方、取り組み方なんか見てると、「なるほどあそこまで気合入れると楽しいわけね」と分かるわけですし、自分のライフスタイルも広がります。これは些細な一例ですが、そんなことは沢山あります。知らず知らずのうちに自分に取り込まれていってるものも沢山あるでしょう。
ホームステイやシェアに当たりハズレがあるといっても、長い目で見たら、そこでの快適さというのはその場限りのものであります。しかし、オーストラリア人の、もっと広く言えば”他人”の、「やり方」を見聞して、それによって自分の幅が広がっていく事は、その場限りではない、一生モンの快適さを築く大事な要素になっていくのだと思います。そういう視点にたてば、ポジティブにせよネガティブにせよ、この世で参考にならないものなんか無いですから、全部アタリなんだと思います。要は経験を血肉に出来るかどうか、その消化能力なんだろうなって気もします。
まあ、人事を尽して天命を待つということで、天命とはすなわち「現実」なのでしょう。
現実を前に、逃げず、ビビらず、退き下がらず。だって、現実以外の何処にも行く所はないんですもん。
2000年 04月06日:田村
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