参考文献とリンク
4th.Dec.1996
21st.Aug.1997補
ガイドブック関連
生活関連
●地球の歩き方/オーストラリア編
−−−1680円/地球の歩き方編集室/ダイヤモンド社
今更解説は不要でしょう。なんだかんだ言っても情報量も多いし、とりあえず頼りになる一冊でしょう。
既に確固たる地位を確保しているので、僕ごときが何を言っても大丈夫だろうと安心して、敢えて二〜三難点を挙げます。
まず観光情報としてはいわゆる王道をいく「通説的見解」で、万遍なく書かれているので安心できるが、それ以上のものでもない。本来は旅行「者」の立場から実戦的に書かれていた筈であるのに、いろいろシガラミでもあるのか、いつしか旅行「社」の立場にも配慮してるようにも思われる。例えば、一定期間公共交通機関乗り放題のシドニーパスという割引チケットがあるが、3日券で60ドルもする。僕としては、たった3日でもとを取るだけ乗りこなすのは至難の技だと思うので生活体験マニュアルでもあまり勧めていないが、この本では「3日以上滞在する人には見逃せない」と記されている。そうですか?これに限らず、一般に「(肯定的な)紹介」に終始していて、利用者の立場から「これは詰まらんから止めた方がいい」とか、そこまでキツくなくてもメリットデメリットを公平に書くような「批評/批判」性が乏しいように思う。これをしないと既存の観光ガイドブックと変わらないと思われるのだが。
もう一点。これは学生時代から渡航経験14回、地球の歩き方の熱心な読者であった福島の弁である。昨年のタスマニア旅行の経験に基づいて、筆まめな彼女は投稿をしたのだが、今年度版(96〜97)の地球の歩き方を見て、ご立腹の様子である。詳しくは本人が後に書くかもしれないが、確かに彼女の情報は紙面に反映されていたかのようであるが、「読者からの投稿欄」ではなく本文中に書かれてしまっている。これは偶然編集部の方でも情報収集した結果かもしれないから何とも言えないが、その紹介の仕方もまた肯定的に過ぎる。昔はもっと読者からの投稿欄にネガティブな情報(もう二度と行くか!のような投稿)があって、それが結構生々しくて面白かったのだが、その類の投稿が一斉に姿を消した。「提灯記事」とまでは言わないが、見るもの聞くもの全て素晴らしいかのように書かれると、なんだかすごく嘘っぽく見える。なお、353頁記載の地名Bichenoの読み方は「ビチェーノ」ではなく「ビシーノ」である。それを読んだ我々が、現地で「ビチェーノ」と発音して全然通じず往生こいた挙句、地図を見せて「なんて読むんですか?」と聞いたからまず間違いないと思う。この点も投稿で指摘したのだが、今年度版でも訂正されていなかった。来年版はどうなっているのか、注目しましょう。
●個人旅行・オーストラリア
1880円/昭文社/isbn:4-398-11402-5
「個人旅行」という新しい(?)日本語がここのところ広く使われているようで、「脱パックツアー」のコンセプトのもと、この本も書かれたようです。打倒「地球の歩き方」ということでしょうか、「地球の歩き方」の方も前述のとおりガイドブック化してる昨今、両者の差はどんどん短くなってきてるようです。内容的には従来のガイドブックとあんまり変わらないが、違うのは冒頭の総論情報(電話のかけかた等の)が充実してる点であり、カラー写真をふんだんに取り入れ、レイアウトがきれいな分だけこの本の方がわかりやすいかもしれない。
しかし、各地の情報量は地球の歩き方の方がまだ詳細(でも視点は紋切り型だったりするが)。もっとも、滞在1週間程度ならばそんなに詳細なものが必要なのか?という問題もあり、だったら通常のガイドブックでも十分ではないかという気もする。まあ、書店で読み比べて下さい。
一点この本が群を抜いてるのは、地図。さすが地図の会社だけのことはあります。ここまでいくなら、もうひと押し、都心から10キロ圏内で細大漏らさず通りの名前をフォローしてある地図を巻末に折りたたんでほしかった。まあ現地で買えば5ドルだけど。それと、細かいことだが相変わらずGlebe(グリーブ)が「グレーブ」になってる。以前から出している同社のシドニー地図(ガイドブックではなく地図だけ)も、グレーブになってたし。でも本書90頁の地図上、フリー・マーケットの場所紹介としてはちゃんと「グリーブ・マーケット」となってる。ところが同じ地図上2センチ上方では、地名が「グレーブ」、「グレーブ島」「グレーブ島橋」になってる。惜しい。そうそう締め切りの関係で間に合わなかったのかもしれないけど、ルナ・パークはもう閉鎖されてます。理由は「付近の住民にうるさいから」。
●ぴあMAP/オーストラリア
1800円/ぴあ
別にわざわざ紹介するまでもないのですが、「ぴあ」です。写真の美しさ、レイアウトの巧さ、ツボをつく企画力、なんとなく役に立ちそうな気がしてつい買ってしまうんのですが、いまだかつて本当に役に立ったという記憶はない「ぴあ」です。恨みはないけど、だって本当にそうなんだもん。それでも買わせる商売上手。
この本も写真はキレイです。美しいです。でもそんだけ。きゃぴきゃぴシドニー3泊くらいならこれで十分とも言えるし、良くも悪くも日本の海外観光業を「おえ」となるほど力いっぱい体現してる本。金払ってパンフレット買ってるようなもんですね。
どうでもいいけど、シドニーの地図、ノースシドニーからミルソンズポイントまで地名の位置が1キロほどズレてます。この本「最新版」としか書いてないから(96年2月2刷)、現在店頭に出ているのが直ってるかどうか知らないけど、これは前述の「グレーブ」なんてかわいいミスではない。
●地球の暮らし方/オーストラリア編
−−−2200円/地球の歩き方編集室/ダイヤモンド社
この本はよく出来てます。オーストラリア編と言いながら殆ど「シドニー編」という気もするが、非常にきちんと整理され、しっかりした生活情報になっています。僕も「へえ、そうだったのか」と沢山教わりました。ぬかみそ臭い「生活の知恵」というよりは、社会科の教科書というか、百科事典のような趣がありますが、それがこの本の良さでもあるでしょう。実際一番役に立つのは、関連各所の住所などの客観情報。よく載ってます(レストラン情報などは「どうしてこの店なの?」というのも随分あるが、それは仕方ないでしょう)。
ただこれだけの情報では、最初に来た人、英語の不自由な人には尚しんどいかなと思われる部分もあり、だからそれはこちらでフォローしたいと思うわけです。
しかし、どうでもいいけど10名以上の分担執筆でありながら、皆文体が同じで、「地球の歩き方弁」ともいうべき独特の語り口になっているのは何故なのだろう。こう書くとウケるのかな。一遍僕もこういう文体で書いてみようか。「シドニーに着いたらまずシドニータワーにのぼってみよう。高さが○○○メートルもあるというから驚きだ。夕方には展望台のレストランでロマンチックなディナーを楽しむこともできる」「シドニーに着いたらまずAPLaCを訪ねてみよう。親切なスタッフがとっておきの情報を教えてくれるぞ。基礎力養成講座(3日250ドル)もおすすめだ」みたいな。
● DOMO(オーストラリア生活便利帳)−−−8ドル/もしもしページ/日本国内での総発売元、飛鳥出版
シドニー在住日本人ならまず知ってる、地元では超有名な一冊。これまでは「シドニー生活便利帳」というタイトルでオーストラリア各都市ごとの編集だったが、今年度版から合冊になり、タイトルもDOMOになった。オーストラリアで買うと8ドルだが、日本で買うと1800円(だったと思う)。
現地の人による、現地の人のための情報誌ということで、実際に役立つ度ではやはり一日の長がある。「地球の暮らし方」もよく出来ているのだが、どこまでいっても「日本にいる人向け」という限界を感じます。「住んでたけど知らなかった」「ふーん、そうだったのか」と読む分には面白いが、逆にいえば知らなくても生活に差し支えないような総論情報が多いということでもある。ライターさんは実によく調べておられるのだが、最終の編集段階で、現地のことをあんまり知らない人が適当のはしょって「きれいにまとめた」んじゃないかという印象が残る。現場で本当に必要になる細々とした情報はDOMOの方が遥かに詳しい。
最も両者の差が出るのは、DOMO巻末の(日本人向けの)職業別電話帳&広告部分。「暮らし方」にも一応ジャンルごとに店の紹介はしているのだが、いかんせん絶対数が少ないし、広告もない。なぜ現地の人がDOMOを持ってるかといえば、この職業別電話帳部分や広告が重宝するからでしょう(但し日本語が通じない業者も結構載ってるが)。
1997年8月に、最新版(97/98年版)が出ました。表紙は今度は緑色。値段は同じく8ドル。体裁は前回と同じ路線ですが、リビングページ(法規制など生活情報)など、益々カチッと充実してきてます。ただ個人的好みで言えば、あんまりカチッとしてなかった前々号(オーストラリア便利帳)の「レッドファーンイラストマップ」などのミニコミ的雰囲気や、シドニーバス路線図なども捨て難く、未だに昔の号を使ったりすることもあります。
●へいちゃらの海外生活マニュアル(ニッポン脱出委員会)
−−−1000円/造事務所編/情報センター出版局、ISBN:4-7958-2012-0
「ちょっと海外なんかで生活しちゃったりしてえ、、」のような若者向けのお気楽文体で損をしているというか、「そんなに甘いモンじゃないだろが」とツッコミを入れたくなるようなチャラ本のイメージがあるが、よ〜く読むと、実は的確なアドバイスが非常に多い。ワーホリその他実際に海外経験のある人々が実際の体験談をもとにまとめあげたものなのだろう、「現地食ばかりで体調を壊したときは卵かけご飯」「海外転出届けをしておかないと大損する」など地に足がついている。また、「行っちゃお〜」とお気楽に誘いながら、「そうは言っても〜」と甘い根性は通用しないと、ちゃんとツッコミをいれてバランスを取っている。
「海外」と一括りにしているので、各国の細かい情報はのぞむべくもなく、最大公約数的な
「心構え」「コツ」という抽象的な話になってしまうのは仕方のないところ。それより、最大公約数でありながらも、よくぞこれだけ実践的なスタイルを保ったものだと感心する。そして、「敵意がないことを示すためにニコッと笑うのは重要」など「そうそう」と同感する部分が多いのだが、これがオーストラリアだけでなく世界共通だったということが分かっただけでも自分にとっては収穫。
●地球の歩き方/オーストラリア ドライブ&ステイ
1580円/地球の歩き方編集室/ダイヤモンド社/ISBN:4-478-03392-7
オーストラリアでドライブを考えている人は、一冊持っておいても損はないでしょう。対象をドライブに限定しているだけに、レンタカーの借り方から、事故の処理までひととおり纏まっており、日本語で手に入るドライブ関係文献としては一番よくできているでしょう(というか他の類書がない)。
難をいえば、ドライブコースガイドやホテル紹介が250頁中160頁もあり、これが帯に短し襷に長し。例えば、シドニーのホテルなど1000軒以上あると思われるのにどうしてこの5軒だけ紹介するのか(誰もが認めるベスト5なんてものでは全然ないし)。ホテルガイドその他は別途書籍もあるではないか(それこそ地球の歩き方本編でもいい)。妙に中途半端に紹介することによって、「それしかない」かのような印象を与え、読み手の視野を限定しかねない。このことはドライブコースについても言える。格別素晴らしいコースが掲載されているわけでもない。そんな部分に頁を割くくらいなら、もっと前半の総論部分を充実させたり、他に必要な地域情報はあると思う。例えば、シドニーでいえばM1からM5まで5本の高速道路が走っているが、これとハーバーブリッジを含め料金が必要なのは3本だけで、しかも全部料金が違う。実際シドニーを走っていてやたら目に付くのは緑色の「M3」とかの標識だし、料金所も「釣り銭不可」の自動ゲートもあり、ここにコインを持たずに並ぼうものなら立往生しかねず、後ろから警笛鳴らされて初めての人はパニックになりかねない。必要な情報だと思うんだけどな。
と文句ばかり言ってるようですが、これまで類書のない領域でこれだけ万遍なく書けていること自体は十分推薦に値します。どんな本でも足りない部分はあるのであり、足りないと文句つけてる暇があったら知ってる奴が別途補充すればよろし。というわけで、生活マニュアル上級編でここらへんのことも書きます。
●ロングステイガイド
1700円/(財)ロングステイ財団編著/立花書房/ISBN:4-651-85550-4
本気で海外ロングステイをしようという方には必携。
全編広告ゼロの商業主義を一切カットした248頁は、海外生活適応度チェックや「なんのために行くか」など、心構えから段取り、世界各地の物価や基本情報が詰まっています。
リタイアした中高年層を主たる読者層におき、財団の活動経験をもとに書かれているのでしょう。とりわけ11人(組)のロングステイ体験談は、「行ってみなくちゃわからない」「観光ガイドには絶対に載ってない」感想で彩られており、参考になるでしょう。つまり「ここで困った」「これにはびっくりした」など日本にいては考え付かないような事柄がゾロゾロ出てくること、人によってステイ内容は全然違ってくるのだということ等です。全てがあらかじめセッティングされ予定調和の中で1から10まで完結する海外旅行とは一味も百味も違うということがなんとなく分かるのではないでしょうか。
ただ、オーストラリアが全13頁で終わりなど、全世界を対象としているだけに個別情報はさすがに圧縮されざるを得ない。それでも美辞麗句を排した13頁のなかに必要な概論はほぼ織り込まれていると思います。
なお、収録されているシドニーの2軒のアパートメントのうち、The Regents Apartmentsは現在建築(予定)現場となって閉鎖されてます。電話をかけて確認したところ、既にオーナーが手放して閉鎖されてるとのことです。もう一軒のHarbour Towers Cetury 21は、4階建てではなくもっと高い(20階近いか)、普通の分譲住宅でどこにも受付らしきものはありません。これも電話して問い合わせたところ、所有者のうち何軒かが不動産会社に管理委託をしており、不動産会社経由で賃貸してるとのこと。家賃その他はこの本の情報のとおりですが、かなり先まで埋まっているようで、部屋は見せてもらえませんでした。
●オーストラリア生活事典伊藤徳生著/白馬出版
1650円/ ISBN:4-8266-0216-2
1990年発刊なので、この類の本としては草分け的存在。僕もお世話になりました。改訂されているのかどうか不明ですが、情報が古くなってしまってること、装丁が地味なことを割り引いても、いまなおおススメ。というのは、一人の著者が全編書き下ろしており、個人的な体験や視点がふんだんに織り込まれているので、他書が無味乾燥なデーターBOXなのに比べて、オーストラリアの生活実感が一番よく伝わってくる。現場で本当に必要なのは、こういう等身大の視点だったりするし、他書が見逃している重要ポイントを突いていたりもする。また、読み物として読んでも面白いです。
比較するのもおこがましいですが、「生活体験マニュアル」に一番近いスタンスです。こういう個人的視点も織り込んだ本があと10種類くらい出てくると、深みと立体感のあるシドニー像が浮かび上がってくると思います。
なお、読者の方からメールを戴きまして、「オーストラリア生活辞典(白馬出版)は、出版活動停止のため、入手不能の解答が本屋から来ました」とのことです。情報、ありがとうございました。しかし、本というのはすぐに無くなってしまうもんですね。
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