参考文献とリンク


4th.Dec.1996

参考文献/日本語文献その2

その他


●オーストラリア英語辞典(森本勉編) −−−3100円/大修館書店/ISBN:4-469-04136-X
    オーストラリア英語の日本語による辞書。労作。単なるスラング集だけでなく、現地では皆知ってる基本概念(組織の略称や有名な商品)、およびその解説、ひいてはオーストラリア国歌の楽譜までフォローしてある。オーストラリアを知らない日本人のためのものであるから、オーストラリア人の為のスラング辞典を翻訳したものとはわけが違う。全ての単語に例文が載っているのも親切。

    ただし、これ一冊でオーストラリ英語全てが間に合うべくもなく、他のオーストラリア口語俗語辞典との併用が望まれる。それでもやはり活字情報に限界はあり(幾ら調べても載ってない言い回しは山ほどある)、一番いいのはオーストラリア人に「どういう意味なの?」と聞くこと。しかし、そうそう四六時中聞けるものでもないし、「後で聞こう」と思ってもすぐに忘れてしまうのが通例だったりするから、やはり辞書も必要。




●「日本人をやめる方法」
    「これ面白いよ」と他人にあげてしまって既に手元にないので、記憶だけで書きます。著者はオーストラリア、ラ・トローブ大学教授の杉本良夫さん(だったと思う)。まだ、オーストラリアに行くことも、海外に出ることも夢想だにしてなかった時期に、なにげに古本屋で買った一冊です。当時は、社会批評本として読んでいたのですが、同時に「ほお、オーストラリアというのはそういう所なのか」「海外に暮らすというのはそういうことなのか」と教えて貰いました。海外に行こうと思ったとき、目的地について何となく「オーストラリアがいいなあ」と思ったのは、多分過去にこの本を読んだからでしょう。(tetsさんからメールいただき、この本の出版社は「ほんの木社」だそうです。ありがとうございました)。

    「海外=アメリカ」の日本人の世界観の歪みや、「一にも二にもとにかく英語。面倒がらずに辞書を引くこと」など、お説教がましくなく自分の体験を語っていて、海外に暮らすにあたって最もベーシックで貴重な示唆に富む本だと思います。他にも「オーストラリア6000日」など著書が多数あったと記憶してます。オーストラリアに来る気がない人にもお薦めします。

    後日注釈:↑上を書いたのは97年段階で、「記憶によれば」とかいい加減な記述が多いのですが、あの頃はネットはようやくあるけどコンテンツが壊滅的になかった頃の話です。時代的価値があるので(^_^)、そのまま残しておきます。今はガンガン調べられるので、リンク一本張っておきます。ココです。
     10年以上経過して、それでも記憶に残り続けているのは杉本さんの著作ですし、オススメするのも同じです。





●概説オーストラリア史
関根政美ほか4名著/有斐閣選書・有斐閣/ISBN:4−641−18104−7
    きちんとオーストラリアを理解したい人向き。教科書のようにスクゥエアに記述されておりますし、大学の講義のテキスト向き。その分硬いし「楽しく読める」というわけではないでしょう。

    ただ、巻頭の「はしがき」には、「オーストラリアの「出来すぎた」イメージを打破し、むしろオーストラリアに興味のない人に読んでもらいたく、多面的に紹介しようと努力しました」となっていて、この努力に対し単に「スクェアな本」というだけの紹介ではフェアではないかもしれません。ただ個人的には、オーストラリアにある程度住んだ今の方が、興味深く読めます。最初はどうしてもガイド本とか個人の体験記とかの方がとっつきやすいし消化しやすいのですが、ある程度してくると、もう少しキチッと知りたくなります。例えば、統計資料であるとか、「結局ウィットラム政権は何をしたのか」とか、そこらへんがわからないと、新聞の論説やTV番組見てもよう分からんのですね。日本でいえば「55年体制」について全く無知だったら、「どうして今こうなってるか」が分からんでしょうし。

    ミクロとマクロの関係といいますか、「僕の知ってるオーストラリア人はこう言った」というミクロ情報もすごくライブで貴重なのですが、ときにはマクロ的に俯瞰しとかないと、バランス悪くなるのかなという気もします。その意味では、著者の思惑とは反するかもしれませんが、「オーストラリアのことをある程度知ってると思ってる人」にむしろお勧めなのかもしれません。88年初版ですが、改訂版が出ているかどうかは分かりません。







●オーストラリア解剖
永井浩著/晶文社/ISBN:4-7949-3724-5
    もっぱらオーストラリアのマルチカルチャリズムに焦点を当てて書かれたのが本書。毎日新聞外信部の著者が90年3月から12月までのラトローブ大学客員研究員時代での経験をもとに書かれた。この短い期間によくもまあと思うくらい、学校、公共機関、マスコミなどのさまざまな現場の報告がなされています。ミクロとマクロがほどよくミックスされている好著だと思います。

    マルチカルチャリズムはよく言われますが、「オーストラリアでは世界の人々が仲良く暮らしています」という表現以上に、具体的に政府の施策はどうなってるとか、現場ではどのように配慮されているかについてまで踏みこんで書いているものは少ない(このAPLaCでも抽象的な域に留まってて全然駄目です)。その点、この本はよく書けていて参考になるでしょう。

    ちなみに、川崎市関係者が視察旅行にシドニーを訪れた際、たまたまAPLaCの柏木が通訳として駆り出されたのですが、視察の目的は、近年住民が多国籍化している同市での今後の行政のヒントということです。 これから日本もマルチカルチャルに(方向性としては)なっていくのでしょうが、理念を唱えたあとは現場での地味な作業の積み重ねが待っているのでしょう。




●もっと知りたいオーストラリア
中野不二男ほか10名共著/弘文堂/ISBN:4-335-51030-6
    マルチカルチャリズムから、国際経済競争力、ライフスタイル、アボリジニ、都市計画、女性、科学技術、大学教育、対日関係、労働組合、福祉・医療、税制に至るまで、総括的かつ平易に説かれています。全体像を掴むにはいい本だと思いますし、11人が書いてますので、誰かの主観的視点に偏ることもないです。

    このあたりの本は、オーストラリアに来る前後に買って読んでたのですが、その後日々の生活に流され書いてある内容も殆ど忘れてしまっていて、いま改めて文献リストを作るためにパラパラと読み直してみると、すごく面白かったりします。ある程度現場でイメージを掴んでから、これら概説書を読んだ方がいいのかもしれません。



●オーストラリア人の常識(How to be normal in Australia)
R・ボートラング著/柏瀬省吾訳/大学教育出版/ISBN-4-924400-60-2
    本来英語文献に入れてもいいのですが、日本語訳が出てるので日本語文献に入れます。
    ヨーロッパからオーストラリアにやってきた著者が、ユーモアとスパイスたっぷりに描く「オーストラリア人像」です。3部作で他にも2編あるそうです。オーストラリアでは、「ぐぐ、鋭すぎる」と皆笑いながらもギクリとさせられてるらしく結構有名な本らしいです。実際、この本に怒ってる人もいるらしく、怒るくらいなんだから、やっぱり鋭いのではないか、と。

    読んでみるとそこそこ可笑しく、鋭いなあと思う部分もあるのですが、正直に言うとよく分かりません。これはもう(言葉の壁もないであろう)同じヨーロッパ人、西洋人だから、「他の西洋人とは違うオーストラリア人の特徴」が見えるのであって、僕らはどうしても「オーストラリア人」を見るとき、同時に「西洋人」「外国人」としても見てますので違いがよくわからない。彼らは「紺色」「藍色」「群青色」の違いが分かるのかもしれないけど、僕には分からん。

    この類のユーモア本は日本語に訳すのは至難の業だと思うのですが、訳すのには苦労されたことでしょう。英語原文のもつ、畳み掛けながらフットワークは軽いというユーモア文体を、無理矢理日本語にするとどうしても重くなったり「濃すぎ」たり、ひねりすぎてて却ってシラけたりもする。多分日本の俳句を英訳するのと一脈通じているのでしょう。


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