前回、前々回に続いてサンシャインコースト旅行記です。後日の皆様の観光案内になれば。
今回はメイン目的地であった
ヌーサ(Noosa)です。
なおGoogle Mapの出来の悪い日本語表示では、「ノーサ」などと書いてあったりしますが、「ヌーサ」です。というか、こんなんどうやって間違えるのだ?誰がやってるのだろう。多少なりともオーストラリアを知ってる日本人だったら、まず間違えないと思うのだけど。
ヌーサは今回の旅行の目的地だったわけですが、何しろ最終的な目的が「ヌーサでボケ〜っとする」ことであり、実際にもボケ〜っとしてきたので、それほどヌーサという町を探検したわけでもないし、あれこれご紹介するほど何を知ってるわけでもありません。大体の雰囲気と、いかに気持ちよくボケ〜としたかというのが今回の話の中心です。
ヌーサは、オーストラリアの中でも比較的有名な観光地ですが、昔から有名だったわけではなく、それどころか殆ど放置されていたようです。なんせ最初にキャプテンクックに発見されてから100年くらい誰も開拓せず、林業やゴールドラッシュ(オーストラリアにもあった)でプチ開拓が行われたけど、あまりの交通の便の悪さにパッとしないまま、寂れた漁村として推移していました。それが観光地として転身を始めたのはここ50年ほどのことで、本格的に開発が進んだのは70年台以降です。70年代初頭には6000人程度だった人口も、わずか10年で2倍以上の1万7000人になり、以後もの凄い勢いで増加していきます。90年初頭に3万人になり、現在では5万人を越えます。
70年代以降の発展というのは、前回のMontvilleでも、あるいは日本の高度成長&列島開発でも同じような経過を辿るのですが、ヌーサは土地成金的な乱開発については極めて慎重です。今となればこの種のエコ的アプローチは珍しくありませんが、町が急成長する70年代からやっていたというのは非凡な努力と言えるでしょう。ややもすると俗悪に流れがちなのをグッとこらえて、出来るだけ自然を残し、景観や雰囲気を良いものにしています。住民や役所が協力して、高層ビルや巨大なホテルを建造しないように建築規制を厳しく行い、未だにエリアの35%は国立公園や自然林のまま開発禁止にしています。このアンチ観光的な努力が報われ、ヌーサは、雰囲気の良い、落ち着いた高級リゾート地として有名になっていきます。
ヌーサは、同じQLD州にあるケアンズやゴールドコーストのような、いかにも”観光地”然というたたずまいはなく、観光地というよりは地方の高級住宅地って感じです。熱海というよりは鎌倉や葉山みたいな。運河掘ったり、マリーナ作ったり、相当に計画的にいじくっているのだけど、観光地っぽくしない。シドニーで言えば、ボンダイやマンリーではなく、そうですね、一回目に登場したカランドラをDee Whyに例えましたが、ヌーサはPalm Beachみたいな感じです。パームビーチよりは規模が大きく、外来者も多く、開けているけど、ゆったり感というか、高級感が似てます。
こう書くといかにも小じんまりとした小観光地を想像されるでしょうし、実際の印象もそうなのですが、だがしかし!ヌーサ地域のホテル(含むホリデーアパートメント等)の数はなんと90施設以上あります。また、ヌーサエリアを訪れる観光客数は、海外からの客(13万5000人)、国内(一泊以上)が85万5000人、国内(日帰り)が92万3000人、しめて191万人もいます(出典は
オーストラリア観光局の出しているエリア別観光統計ヌーサ編(PDFファイル))。わずか人口5万人の小さな町に年間190万人に外来者が訪れているわけで、人口比割合では38倍。比較の対象として日本の京都を例に挙げると(
京都市観光調査年報2008年版PDFより)、京都市の人口150万人に対して年間観光客は約5000万人で33倍ですので京都以上。しかも、京都の場合、宿泊客は4分の1に過ぎず、また宿泊平均日数も1.7泊でしかないのに対し、ヌーサの場合は宿泊客が半数以上で、平均宿泊日数は5日を超えます。つまりヌーサの方がはるかに観光客の存在感がデカい。にも関わらず、観光地然としたザワついた感じが少ないのは特筆に価するでしょう。
Noosaという名前は、この地に住んでいたアボリジニの言葉から由来しており、その意味は "shadows""shade"=影、陰ということで、おそらくは同地の豊かな森林で太陽の直射を避けるというような意味だったのでしょう。ここから意訳したのでしょうが、ヌーサのことを”隠れ家”、特に「大人の隠れ家」という形で言及されることもあります。もっとも、オーストラリアの歴史の初期において、サンシャインコーストやヌーサは、逃亡した流刑囚人がよく隠れていたエリアらしく、文字通り隠れ家になっていたこともあるようです。いずれにせよ、明るく開けた交通の要所ではなく、孤立して、静かで、自然が豊かというイメージは共通してます。
←左にGoogle地図を利用してヌーサの概要図を作りました。クリックすると簡単な解説があります。
まず、海に向って三角型に突き出した広大な
Noosa Narional Parkがあります。
その北西側に、内陸に切れ込んでいくNoosa Riverがあり、Noosa Riverの河口付近が、
Noosa Headsというメインエリアになります。日本語的にはヌーサヘッドといいますが、本当は”Heads"という複数形になりますので、英語で言うときは「ヌーサヘッズ」ですので注意。
地図上黄色の地点がヌーサヘッドの町の中心地で、黄色地点のすぐ上、外洋に面してビーチが続きますが、そこがヌーサのメインの海水浴場になり、ビーチと並行して走る
Hastings St(ヘイスティングス)がヌーサのメインストリートになります。ヌーサ観光の中心地といっていいでしょう。
ヌーサリバー沿いに上流(左)に進むと、川沿いにNoosa Parade、さらにGympie Terraceという通りがあり、地図上緑色の地点、
Noosaville(ヌーサヴィル)というエリアに至ります。ヌーサヘッドとヌーサヴィルの間のエリアを
Noosa Soundと呼ぶ場合もあります。この黄色と緑を結んだ一帯に旅行者用のホテル、リゾート施設が集まっています。
黄色地点の真南(真下)にある赤地点あたりが
Noosa Junctionで、ここは地元民用のショッピングモールになっており、コールズなどのスーパーもあります。
目を転じて三角形のヌーサ国立公園の東&南には、長い長い海岸線が続き、北から順次、Sunshine Beach, Sunrise Beach, Castaway Beach, Marcus Beach, Peregian Beach, Coolum Beachと続きます。このあたりは核となる大きな町もなく、のんびりしたローカルビーチで、ゆっくりのんびりビーチ遊びをしたいなら、こちらの方が良いかも知れません。
ヌーサヘッドの右下のカメラ印のところが展望台です。絶景ですが、急峻な丘を登るので、車がないとしんどいかも。
ヌーサに南に大きく広がるのがWeyba湖で、今回は湖畔のロッジに滞在しました。あくまで「ぼけ〜」っとするため、多少人里離れた方が良いだろうと思ったからです。
ところでヌーサエリアの地名ですが、結構ゴチャゴチャに使われているので、分かりにくかったです。今でもよく分からないのですが、「ヌーサヘッド」という概念も、ヌーサ地域を総称してヌーサヘッドという場合もあれば(最広義)、ヌーサジャンクションやヌーササウンドを含めてヌーサヘッドという場合もあるし(広義)、Hastings Stなど中心観光地付近だけを指して言う場合もあります(狭義)。Google地図では、どうも広義の意味で使っているようで、ヌーサジャンクションの位置に「Noosa Heads」と置いてます。ちなみにGoogle Mapでは、Munna Pointが大きく記されてますが、それほどメジャーな地名でもないと思います。
ヌーサヘッド、Hastings St界隈
写真でどれだけ雰囲気が分かるか心もとないのですが、前にも書いたようにビーチ観光地というよりは、高級住宅・リゾート地というオモムキが強いです。
↑上の写真はいずれもメインのHastings Stの風景です。斜面を利用した高級マンション(中央)、さらにインフォメーションセンターにドドドと置かれていたエステやマッサージ系パンフレット(右)などで何となく雰囲気がわかるでしょうか?
前回にも書きましたが、土産物屋など観光系の店は皆無といっていいくらいで(捜したけど見つからなかった)、その代りエステや高級ブティック、レストランが軒を連ねています。但し、Hastings Stもそれほど長くはなく、10分も歩いたら終わっちゃいます。
↑Hastings Stのすぐ上(北)、徒歩30秒で海水浴場になります(写真左)。さすがによく賑わってました。オーストラリアのローカルビーチ基準でいえば、これだけ人がいたらかなり賑わってる方です。
ビーチ沿いに河口の先端 (Hastings Stの西端からClaude Batten Drと名前が変わり、その終端まで行く)と、中々眺めの良い河口風景が望めます。
写真右は、そこから振り返って海水浴場方向を見ています。
のんびり旅行のコンセプトは要するに「食っちゃ寝」ですから、食べ物には気合が入ります。まずは、Hastings St界隈を物色して、よさげなイタリアンレストランに入りました。どこだったかな、
Ma Mensaだったと思います。
雰囲気はなかなか良く、サービスも良かったのですが、味は、うーん、今ひとつかな。HPに掲げてあるメニューと記憶とを突き合わせると、”Crispy Duck leg with beetroot, hazelnut and goat.s cheese with vincotto”(31.9ドル)というと、ピザは”Prosciutto, caramelized onion, smoked tomato & rocket”(25.9ドル)というのを食べたと思うのですが、ダックは辛めのソースの味が強い上に一本調子だから飽きが来る感じ、ピザは、なんというか普通。ドウのクリスプ感がもうちょい欲しかったし、プロシュート(生ハム)は塩辛いものだけど、塩辛さだけが浮いているというか、、、。まあ、僕らが贅沢ぶっこいてるだけで、これでも十分美味しいのだろうし、イタリア料理屋としては水準いってるのでしょうけど。
ただ、この経験に懲りて、ちゃんとリサーチしてから行くべしと思い、カミさんのiPhoneのTripdvisorでその晩あれこれ読んだりしてました。もっとも、
Tripadvisorでこの店を見ても、最高!という人と最悪という人がいてよう分からんのではあるけど。
Noosaville, Gympie Terrace
ヌーサヴィル、特にヌーサ川に沿ったGympie Terrace界隈は、川遊び用の貸しボート屋さんや、宿泊施設、レストランが並ぶエリアですが、ヌーサヘッドみたいな華やぎは少なく、落ち着いたのどかな感じです。しかし、レストランの数でいえば、Hasting Stよりもずっと多いように思います。
昨夜来から宿題となったリサーチであれこれ物色し、「ふむ、ここは」と思って翌日のランチに入ったのが、Noosavilleの
Blue Angelというレストランでした。このレストランが大当たりで、感動モノに美味しかったです。
各店の前に掲げられている(オーストラリアのレストランは大概そう)メニューを見てると、この店のものがダントツにユニークというか、興味を惹かれました。食べたのは、正確には覚えていないけど、HPのメニューでそれらしきものを選ぶと、"Crispy pork belly, crab and green papaya salad roast chilli, palm sugar and lime dressing, peanuts and mint ($22)"と"Slow cooked Petuna ocean trout with fried corn filled Padron peppers smoked eggplant puree and roast baby Roma tomatoes ($29)"、それにサラダとして"Gympie green beans, smoked bacon, Dijon cream ($8)"でした。長たらしくてすまん。
最初のポークベリーは、要するに豚の三枚肉で豚の角煮などで使う肉です。これをカリカリに揚げて和えた野菜類(カニ肉やグリーンパパイヤ、パームシュガーなど)に乗せてるもの。正直、ポークベリーそのものは味が殆どなくクリスピーな食感のみを楽しむ感じですが、特筆すべきはその土台で、パパイアやらパームシュガーやら何がなんだかよく分からないのだけど、美味しい。もうどれもこれも美味しい。オーシャントラウト(鱒)の方は更に美味しく、ナスのピューレーにせよ、中が詰まったシシトウの天ぷらみたいなものにせよ、味が深かったです。サラダも同じで、、、要するに、何がどう美味しいのかよく分からんし、食材すらもよく分からないのだけど、それが非常に吟味された素材で、上手に味付けされているということだけはよく分かるという美味しさです。美味しいのと同時に楽しかったです。ただのインゲンをわざわざGympieと名前を冠するように、この店は地元の産物をとても重視しているようです。
で、最後に感動したのがデザートのアフォガト。エスプレッソのキツいコーヒーとアイスクリームを直接混ぜ合わせるだけというシンプルなデザートだけど、それだけにコーヒーやアイスクリームがダメだったらどうしようもないという。これがなんと14ドルもするのだけど、”Liqueur affogato with home-made Prune & Armagnac ice cream"と書いてあることに偽りはなく、アルマニャック(ブランデー)の染みこんだアイスクリームが激ウマなうえ、自家製プルーンがまた美味しく、それにコクのあるエスプレッソと、さらにこれでもかというくらいアルマニャックがついてくるという。ブランデーの値段だけでも14ドルいくんじゃないかと思うくらいの気前の良さ。二人でシェアして食べましたが、一人で食べたら酔っぱらって、しばらくは運転できないでしょう。
↑写真中央がアルマニャックたっぷりのアフォガト、写真右はレストランの席からヌーサ川ののんびり風景を眺める。
ところで、あとでHPを調べたら、ここのシェフの紹介がありました。イギリス人でまだ若そうなのだけど、フランスの有名店でみっちり修行するわ、シドニーのリッツカールトン、ジャマイカ、USAなどで働いたあと、2006年からヌーサで自分のお店を開いたそうです。途中で世界一周旅行もしてるし、ダイナミックな人生だわ。HPの写真で、サーブしてくれたメチャクチャ愛想のいいお姉さんが奥様であることもわかりました。
ヌーサで一番感動したのはこの店かも知れません。
知らせてくれたTripadvisorには、お礼かたがた、
長いレビューをシコシコ書いて投稿してあります。
ナショナルパーク、展望台
広大なヌーサ・ナショナル・パークは、ハイキングやバードウォッチングの他、野生のコアラがいるので有名です。
詳細は管轄するQLD州政府サイトの
ココにあります。MAPは、PDFファイルで
ココにありました。インフォメーションセンターに行けば同じものが貰えます。Hastings Stにも一般的なセンターがありますし、そこから連なるPark Rdの終端にもナショナルパークのインフォメーションセンターがあります。
ここも結構眺めがいいです→右の写真
再三書いていますように、今回は「のんびり、ボケ〜」目的でしたので、ナショナルパークはインフォメーションセンターあたりまで行っただけです。でも、広大なエリアだし、昔から手つかずの自然だし、絶景スポット沢山ありそうだし、コアラいるし、で、時間がたっぷりあったら山歩きもいいよなあ、と思いました。
Laguna Lookoutという展望台へは、ナショナルパークの入り口からBayview Rdを登っていくか、あるいはNoosa Junctionに通じる道(Noosa Dr)からViewland Drを左折して行く二通りの道があります。ただし、僕が行ったとき、前者は頂上付近が立ち入り禁止になっていたのでUターンせざるを得ませんでした。前者の方が距離は短い分、歩いたら泣きたくなるくらい坂が急です。
←その代り展望台では、ヌーサを一望に見下ろせる絶景ビューが待ってます。
Noosa Junction
Hastings Stから1キロほどで地元民用のショッピングモール、ヌーサジャンクションに行けます。ただし直線距離は大したことないのですが、全部上り坂なんですね。車だったらいいけど、歩いていくのはホネかも。
「地元民用」といっても、こちらの観光客は自炊設備も整ってるホリデーアパートメント系の長期滞在者も多いでしょうから、ビジターも多く利用するでしょう。現に僕らも買い出しに行ったし。
ここで初めて日本人の留学生?ワーホリさん?らしき人を見かけました。2−3人で話している横を通り抜けただけなのですが、日本語が聞こえて「おや」と思いました。シドニーとは全く違ってアジア人自体が珍しいし。今回のサンシャインコースト旅行で、空港を除けば、日本人と接近遭遇したのは、この数秒間だけです。
東部のんびりローカルビーチ
ヌーサの東海岸は、太平洋に面してローカルビーチが延々と続きます。
車でずーっと走っていったのですが、ほんとオーストラリア・スタンダードのローカルビーチです。同時に日本の田舎みたいな感じでもあり、交通量も激しくないし、核となるような巨大な町があるわけでもないし、ちょっと走っちゃ小さい町がありーの、街道沿いに郊外店があり
ーので、うららかな陽射しの下、眠気を催すような平和なたたずまいです。
ビーチも一つだけ見ましたが、ごらんの通り(↓)、いい感じでスコーンと何にもないです。
外洋に面しているだけに、サーフィン系にはこちらのビーチの方がいいし、またゆっくりのんびり出来ます。
↑写真右は、海辺近くの公園で、地元の子供達がキックボードで遊んでました。中々上手で、クルリとバク転をキメてましたね。僕が子供の頃はこんな気の利いたギアはなく、ひたすら子供自転車。モトクロスのコースのような、起伏の激しい造成現場を見つけては、自転車ごとジャンプしたり、すっ転んだりしてました。子供はアブナイことが大好きなんですよね。あ、子供に限らんか。
えーと、これであと泊った宿を紹介して終わろうとしたのですが、いつものことですが長くなってしまったので、次回に伸ばします。
宿の紹介なんかどうでもいいっちゃどうでもいいんですけど、ヌーサがどうしたという地域情報ではなく、「気持ちの良い昼寝をするためだけに大枚叩いて旅行にいく」というコンセプトと実際についてちょっと書いてみたいので。