ニッポンに行こう
−−現地の新聞/Sydney Morning Herald旅行欄より、日本観光旅行案内記事の翻訳紹介。
この新聞の日曜版(正確には土曜版)には、いつもTravel版があり、毎週世界の各地を紹介しているのですが、先日の3月15日版では日本特集でありました。
オーストラリア人が日本に旅行するにあたって、どこに行けばいいのか、どうすればいいのかということで、結構よく見ていてなかなか面白いです。「オーストラリアと違って日本は○○だから」という部分は裏を返せば「日本と違ってオーストラリアはこうだ」ということでもあります。
また、この案内では、日本に対する一般の「神話(誤解)」を解こうとしているわけですが、これも逆にいえば平均的なオーストラリア人の頭の中にある「日本像」というのがどういうものかが分かって面白いわけです。
例によって翻訳は素人が気分でやってますので、あまり固いこと言わんでくださいませ。では、どうぞ。
The Japan Mith
It's too expensive and too crowded.
You won't like the food
and you won't understand the language.
Really?
Anthony Dennis and Alexandra Brown explode
...The Japan Mith.
日本に関してあなたがこれまで耳にしたことは全て真実である−そして誤りでもある。すなわち−−、東京のリンゴ一個の値段は韓国の小型車くらい高く、コーヒー一杯の値段はおおよそGrand Hermitageグラス一杯分に匹敵し、空港までのタクシー料金はニュージーランドまでの航空運賃と同額である、などなど。
世界の人達は、日本のことを狂気の地であるかのように神秘化するのが大好きである。Japanというところは、生魚を食べるロボット達がひしめきあってる所で、家に帰るまでにあなたを破産に追い込むほど物価の高いところ、とてもじゃないがホリデーに行くような場所ではない。日本について知ってることは沢山あるけど、一度たりとも行こうと思ったりはしない国。あなたが、ビジネスの出張先としか日本をとらえていなくても、決して不思議なことではないだろう。
事実、毎年、日本を訪れる海外観光客の数はオーストラリアよりも少ない(95年に日本が受け入れたビジターの数は370万。オーストラリアは400万人である)。1996年に日本を訪れたオーストラリア人はたった8万人しかしないし、その4分の1はビジネス目的である。
しかし、あなたは日本を訪れるべきだ(must)。そこは矛盾に満ちた地であり、東洋と西洋がものの見事に混合している地でもあり、また経済成長を果たした巨大なハイテク玩具の地でもある。未来を遠望するために日本に行こう、そして過去をも見に行こう。
日本は世界のどの国よりも物質主義に全身浸っているが、同時に、何世紀にもわたって洗練された文化遺産を守り続けてもいる。ケバケバしいネオンとコンクリートのカーテンの向こう側に目を向ければ、古き日本の姿がそこかしこにあることが分かるだろう。
日本列島はスイスのような山国であり、食文化においてはフランスのライバルであり、消費文化においてはアメリカと肩を並べ、犯罪発生率は非常に低い(観光客にとっては幸いである)。そしてイタリアのように、四季折々の鮮烈の彩りは、全国各地の郷土色豊かな祭礼や食の祭典とともに楽しまれている。日本は、シドニーからは、香港やバンコクと同じく、比較的手軽に行ける距離にある(飛行機でわずか9時間半だ。時差も1時間しかない)。そして日本は、我国の最大の貿易相手である。日本ほどオーストラリアにとって緊密な結びつきをしている国も少ないし、それは日本にとっても同じだろう。
ところで、これがちょっと妙な出来事なのだが、いや、実に風変わりだと思うのだが、昨年大阪のオフィスビルで「世界トイレ展」が開かれた。それはフロア3階にわたって、トイレが堂々と陳列された。スェーデン製の貯水槽、フロリダからの水洗設備、ベルギー製の金かくしなどなど、、、、。
ともかく、だ。日本にまつわる様々な「神秘のベール」をとりはらっていこうではないか。
●神話その1:
物価が高すぎてとても日本なんかに行けないよ!という神話
たしかに、日本は安上がりに済む旅行先ではない。日本人だって自分達の物価が高すぎると思っている。しかし、かしこいトラベラーというものは、必ずしも定番の観光名所だけに固執するわけではないのだ。
日本でなんとかリーズナブルな予算でやっていく「戦略」というのは極めてシンプルだ:他の平均的な日本人の行動を見習って、貴重なYENを賢く使うことだ。出発前にこのあたりのことをしっかり考えておけば、後々になってクレジットカードの引落額の恐怖におびえることもなくなる。
日本の至るところに、リーズナブルな値段の食べ物や飲み物があふれている。それはオーストラリアの物価感覚からしても決して高くはないのだ。外国人にとって、デパートの食堂などは、予算に頭を悩まさずに済む、頼りがいのある場所だ。殆どの都市のデパートには、広大なレストラン街があるし、場所によっては2フロアにまたがってひろがっている。
予算面でいえば、日本を訪れる外国人にとって、ランチメニューを見逃す手はない。非常にお値打ちなランチが食べられる。1000円も出せば、5〜6品もおかずのついた豪華なベントーボックスがあり、ミソスープもライスもついてくる。これが夜になると、この2〜3倍の値段は覚悟しなくてはならない。驚くほど洗練された東京でも最高クラスのフランス料理店であっても、ランチタイムには、3500円も出せばそこそこ堪能することが出来る。
日本アルプスの中にある、飛騨高山という小さくて美しい町では、cafe breakfast(日本の人は"morning"と呼んでいるようだが)が、様式化された形で出てくる:つまり、プラスチックのお盆にオレンジジュース、ゆで卵、バターとジャムの分厚いトースト、それにコーヒーだ。これでたったの5ドルである(訳者注:日本のモーニングセットは確かにお値打ちだと思う。乏しい経験で言わせてもらうならば、中部圏内のモーニングは特に豪華。中部地方では普通にコーヒー頼んでもピーナッツとか必ずなんか付いてくるし)。
日本人というのは、コーヒーに対して非常に生真面目というか、科学的でさえある。でも、それはそれでいいのではなかろうか。よりシックなお店では、コーヒー一杯が12ドルもする。近くにGagiiaがなくてもだ(注:Gaggiaが分からんので意味不明。原文は、though there's not a Gaggia within cooee." なお、in cooeeは、「目と鼻の先に」「すぐ近くに」という意味の言い回し)。一方では一杯2ドルというドトールコーヒーのようなチェーンもある(このチェーンは日本で一番安いと言っている)。
行く先々で満員電車に乗らねばならないなどという心配は無用である。確かに都心部はそうだが、ちょっと郊外に行けば結構ガラガラである。手足をゆっくり伸ばして、流れゆく車窓を時速300キロで楽しむことも出来る。しかしながら、重たい荷物はおいてきた方がいい。日本の駅というのは、その構造が近代的なのと同時に、長い長い階段と、わずかばかりのエレベーターやエスカレーターがあるだけだから。荷物を運ぶなら台車や車付きのスーツーケースは必須である。
新幹線は速く、価格はその効率性に見合っているだろう。最低1回は新幹線に乗ってみる価値はあるが、メインにはもっと安くてゆっくりした在来線を利用することをお勧めする。列車の旅では、プラットホームや車内で、安くてお値打ちな駅弁が食べられる。地下鉄やバスシステムは経済的で、日常的に利用するのに向いている。
なに、レンタカーを借りたいって?正気か?レンタカーやガソリン代は、私達がオーストラリアで払っている値段のざっと二倍はする。そして交通渋滞が待っている(注:2倍というのはちょっと大袈裟かもしれない。シドニーでいまリッター70セント前後、最近のレートで63円程度ですから)。
The MUST−SEE LIST
KYOTO:日本の全てが東京というわけではない。西暦794年から1868年までの日本の首都であった京都は、心地の良い、慎ましやかで、洗練された文化都市である。チェス盤のように整然とした通りを辿っていけば、第二次大戦の戦火に遭わずに済んだ、2000以上の社寺仏閣、歴史的建造物を訪れることは難しいことではないだろう。
KURASHIKI:外国人に好まれるもうひとつの目的地である、「小京都」。美しく保存されている昔の商家のエリア、川端に続く工芸品の店などが有名。
HIDA−TAKAYAMA:京都のようにデザインされた、小さな美しい町であり、岐阜県北部、日本アルプスの高地にある。涼しい気候と、藁葺き屋根の家、野外美術館、山から湧きでる清水。京都、東京からの列車の旅は山並みを縫って進む景観が楽しめる。
MOUNT FUJI:定番の日本のシンボル。Ululu(エアーズロックの正式名称)とは異なり、登らなくても、下から楽しめる。近くには麗しい湖が連なり、また野外彫刻美術館もある。
NARA:より小さく、よりのどかで、より閑静な京都。日本文化の中枢からも近く、多くの寺、玉砂利の径、おとなしい鹿が闊歩する市街地、広がる庭園。ノスタルジックな佇まいの奈良ホテルは、少なくとも一泊はすべき。
HOT SPRING:北海道、本州、九州南部。究極の風呂。数え切れないほど湯治施設がある。
TSUKIJI FISH MARKET:魚愛好家または好奇心旺盛の方は、この世界最大の(卸)魚市場へどうぞ。朝4時にセリは始まるので、早起きの人にも魅力。
THE JAPAN ALPS:そこはもう一面山の世界。都会の喧騒を離れ、秋の絢爛、冬のスキー、春のハイキングが楽しめる。
THE JAPAN SEA COAST:もう一つの日本の顔。静かな田舎の村々、ひろがる白い海岸、緑豊かな平地。
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●神話その2:
日本は何処いっても人ゴミだらけで、とてもリラックスしたホリデーという感じじゃあないよ!という神話
世界の人達は、日本=東京だと思っていて、日本全国どこ行っても東京と同じようなものだと思っている(もっとも東京だってあなたが思ってるほどヒドイ所ではないけど)。多分あなたのイメージというのは、開放された空間というものがまったくなく、センチ単位で戦後経済復興がツナミのように押し寄せているという、閉所恐怖症患者の悪夢のようなものだろう。
東京、大阪などの大都市は、確かにもっとも混雑が激しい所ではある。折り重なるような高速道路の立体交差と、新幹線の高架(神はここに地震が起きることを禁じたようだ)。しかし、それと同時に、あなたは、日本人が大都会の中心に憩いのスペースを作り出すエキスパートであることを知るだろう。街角の喧騒をシャットアウトするため、殆どのCafeやレストランは通りに直接面するような窓を配置しない(注:そうかなあ。結構面してるような気もするけど。でも、まあ、確かにオーストラリアに比べれば、外部から遮断された構造の店は多いかもしれませんね。ビルの一室とか穴蔵的な店とか)。
東京では、シドニーよりも沢山の大通りがある(正確に数えたわけではないのだが)。原宿と代々木の間にある、明治神宮公園を歩くといい。砂利道の脇の深い森。涼しくて、緑豊かで、ジョギングにはもってこいの場所だし、木造りの神殿では散歩や物思いに耽ることができる。
そして、京都のような都市もあることを忘れてはいけない。京都はメルボルンのようにゆったりとした町で、観光客お気に入りの町だ。東京よりもアピールするものはある。
大都市にいつまでも長居してないで、地方に足を向けよう。日本の田舎というものは、山と木々に恵まれている。
●神話その3:
生魚なんか食えないから、日本に行ったら餓死しちゃうよ!という神話
落ち着け!日本には寿司以外にも食べる物は山ほどある。オーストラリアと違って、日本のレストランは専門店が多い。ちょっと見て歩くだけで、実に沢山の種類の食べ物があることに心惹かれるだろう。またそれらは地域や季節の変化に伴って大きく変わるのだ。
秋には(おそらく日本を訪れるベストシーズンだと思うが)、栗や、様々な種類のキノコ、鮭などが旬になる。日本の人達は、北海道のカニを自慢するだろうし、広島の牡蠣を、博多のラーメン・ヌードルを勧めるだろう。この多彩な食物によって、京都での食事は、東京のそれとは大きく異なってくる。それは単に値段だけの問題ではない。京都−−そこは千以上の社寺の本山を擁し、仏教の伝統によって発展したベジタリアンフードも盛んである。
寿司(これはオーストラリアの寿司よりもずっと高額だ)は、もともと東京が発祥の地である。日本の何処に行っても寿司屋はあるのだけど、東京ほど沢山あるわけではない。
もしこれらのどの食事も貴方のお気に召さなかったとしても、まだ手はある。日本人はイタリア料理と中国料理の大の愛好家でもあるのだ。ただし、日本流のスタイルと配膳にアレンジされてはいるけれども。喫茶店やベーカリーショップは、どの町にもあるし、都会にはそれこそ至るところにあり、比較的安価なサンドイッチなどを食べることができる。ただし、日本人というのは、頑固なまでに白い食パンが好きなようだが(注:言われてみれば日本の食パンというのは何故か殆どが白ですね)。
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