ニッポンに行こう(その2)
−−現地の新聞/Sydney Morning Herald旅行欄より、日本観光旅行案内記事の翻訳紹介。
●神話その4:
日本語なんか喋れないから、どこにも行けないよ!という神話
日本の圧倒的多数の人は英語を喋らない、と言い切ってしまってもいいだろう。しかし、駅のホームで困った顔をして立ったり、地図を広げていたらいい。必ず、熱心な英語学生が、彼らのスキルを磨くために話し掛けてくるから(注:ほお、立場が違うから分からないけど、そんなもんなんですかね)。
あなたに日本語を喋ることを期待してる日本人なんか殆どいない。もし、少しばかり努力して、テープや会話集を勉強して、カタコトの日本語でもいいから言ってごらん。ほとんど熱狂的なまでに喜んでもらえるだろう。
神戸の喫茶店で、初老の紳士が私達に話し掛けてきた。「失礼ですが、お読みになっているのはタイム誌ですか?」と。そして、コーヒーカップごしに話は進み、日本海でのロシアの廃棄物の不法投棄についての議論、さらには彼のオーストラリア人の英語の先生について話は及んだのだった。
東京にはそこそこ英語で書かれた標識があるが、これが地方に行くと殆ど見当たらない。だから、地方に出掛けるのはかなりのチャレンジでもある。しかし絶望することはない。多くの主要駅では、英語の喋れるスタッフが配置されているし、彼らの英語力は、我々が地元オーストラリアの観光局に配置しているスタッフの日本語よりもずっと流暢だったりするのだ。
あなたが奇妙な身振り手振りで頑張らねばならない地方に旅立つ前に、紀伊国屋書店を訪れるといいだろう。ここには、あらゆる種類の英書が置かれている。ある地方では、ボランティアのガイドサービスが行われており、うまくすれば日本の家に招待されるかもしれない。あるいは、もっと大胆に、ガイドさんをディナーに誘ったりして、その地方の話などをいろいろ聞いてみるのもいいだろう。
TAKE HOME A PIECE OF JAPAN
★洗練された文房具店は、カード、ラッピングペーパー、鉛筆、ノートおたくの人には居心地のいい場になるだろう。
★多くのデパートの1階は、宝石、スカーフ、腕時計、そして日本扇子などが、色とりどりに、また新旧デザインを織り混ぜ売られている。
★東急ハンズは、脳を持ったRemoである(Remoって何だ?)。世界で最もワイルドで、想像力を刺激するデパート。全国大都市に支店がある。自社ブランドの手頃な値段で品質のいい小物、台所用品、洗面用品、服飾、文房具、書籍などなど。
★デパートの上の方のフロアでは、日本製の台所用品、箸、お盆、漆塗のティーカップ、木製のもの焼物など様々に趣向を凝らしたものがフロア全面に広がっている。しばしば西洋製陶器よりは小振り。丁寧に包装してくれるので、発送するのに便利。
★寺や神社の前には、門前町の商店街がある。キッチュなものもあれば、芸術的な一品もある。
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●神話その5:
Tokyoというのは、映画「ブレード・ランナー」に出てくるような所なんだろう?!という神話
君がハリソン・フォードのことを言っているなら、それは正しいと言わなければならない。なんだかしらないが、ハリソンフォードは東京の町の至る所に「いる」。地下鉄や通りの巨大な広告版で、巨額のギャラのために、節操もなく地元製品の売り出しに一役買っている。その意味ではメル・ギブソンも同じだ。
ところで、「東京=ブレードランナー」という図式は、「オーストラリア=大通りにカンガルーがピョンピョン飛んでいる」というくらい、好んで使われるミスコンセプトだ。東京の一画は、他の世界的な大都市と同じく未来的ではあるが、他の地域も全て同じなわけではない。日本人は豊かだが住宅環境は貧しいというが、東京でも、新宿や渋谷というビジネスやショッピングの中心街を通り抜ければ、驚くほど多くの数の、木々に満ちた閑静な住宅街や美しい公園が広がっている。そこは、パリのようになりたいという意欲を感じさせる国際都市であり、表参道の並木道のCafeを通りゆけば、あたかも「東京のシャンゼリゼ通り」を擬したかのように思える。決して豊富というほどではないが、自然は確かに存在する。あなたがその気になりさえすれば、必ず見つかるだろう。東京は広がりゆく、活発な都市ではあるけれど、それに飽きたなら、東京からわずか電車で二時間でのどかなカントリーや富士山に行けるのだ。
Don't make a fool of Japan
★箸:身振りのときの小道具にしたり、指揮棒につかったり、ドラムのスティックに使わないこと。箸が使えないなら、出発前に練習しておこう。
★注文:メインディッシュに入る前にスープが来ることを期待してはならない。和食の場合、伝統的に、スープはあとから出てくるのだ。
★熱い蕎麦やうどんを食べるときは、舌を火傷しないために、ふーふーいって食べよう。
★スリッパ:トイレのスリッパをトイレ以外ではかないように。気付かないかもしれないが、大抵の場合、良く見ると”toilet”と書かれているので分かる。
★移動:ラッシュアワーに出歩かないこと、特に東京では。それを見物したいというなら別だけど。朝10時から夕方5時まで間、ないし夜が良い。
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●神話その6:
ホテルはどれも高額だし、おまけに部屋は狭い!という神話
いわゆる「ホテル」に関してはそれは正しい。日本にあるインターナショナルホテルは、確かに高いし、魅力や個性に欠ける部分がある。
京都で我々は一泊150ドルのホテル(それはまぁまぁ許せるホテルの中では一番安いと思われる)に宿泊した。そこにはエレベーターもないし部屋はえらく狭かった。次回には、もっと頑張って探してみたいと思うが、もし予算オーバーを懸念するならば、実際問題、ホテルに関しては避けた方が良さそうだ。それとホテルに泊るなら、ホテル内のクリーニングサービスを使うのは止めた方がいい。一歩外に出れば、コインランドリーが沢山ある。
JNTO(Japan National Tourist Organisaiton)では、頼りになる、日本全国の安くて清潔で快適な宿のリストを発行している。それらの宿の多くは、温かくもてなしてくれる気持ちの良い日本人夫婦によって経営されており、たどたどしい英語の人もいれば流暢な人もいる。
日本の宿では、あの居心地の良いタタミ・マットは、いつも外国人に提供されているわけでもないらしい。格式ある旅館では、外人さんお断りとしているところも多いようだ。これは決して公に表示されていないのだけれど(注:これは僕としては聞いたことないのだけど、そうなんでしょうか?こういうある種の「差別」が、自分がされてみないと中々その存在に気付かないものなだけに、良く分かりません)。
最近人気が高まっているのは、よりリーズナブルな民宿、つまりホームステイである。それは、日本の人達の手際よく調理される家庭の味を楽しむことが出来るチャンスでもある。
旅先では、"Anne of Green Grabes"(「赤毛のアン」)に気をつけているといい。あの、カナダ産のカエデ・シロップの子供向けの古典のことだ(注:原文は、"In your travels, beware Anne Of Green Grabes, the maple syrupy Canadian children's classic"で、カナダ国旗のカエデと、カエデシロップのように甘ったるくてお子様向けの、という意味の掛け言葉かと思います)。これは未だによくわからないのだが、どうして日本の人々の間ではこの小説だけがかくも愛されているのか、殆ど国民的強迫観念になりつつあるような気すらする。我々が、日本アルプスにある"Pension Anne-Shirley"という宿に泊ったとき、全面的にこの物語のテーマに沿って作られたこの殿堂の中で、登場人物役を演じさせられる羽目になってしまった−−というような出来事はついぞ起きなかったのではあるが。
(注:最後の部分はヒネリがキツくてよう分からんのですが、要するに、英語圏の人からみれば、どうして日本の山里に突如として「赤毛のアンの家」みたいな突拍子もないペンションが出現するのか?、世界的にみれば数限りなくある子供向けの小説の中で、どうしてこの話だけが突出して日本でウケているのか?、非常に奇妙に映ったということでしょう。
多分、僕らがオーストラリアの砂漠地帯を旅行していたら、100%オージーが経営する「浦島太郎の館」「桃太郎ホテル」のようなモーテルが突如として出現したような感じなのかもしれない。確かに、「なぜっ?!」と思うだろう。気持ちは分かりますね。
CASE NOTE
●アンセット航空では、日本5日間パック(ツインルーム)を1449ドルで発売中。カンタス航空の運賃は1637ドルから。
●日本に入国するのにはビザが必要。シドニーの日本領事館で発給してもらえる。最低4日前から申し込んでおくこと。有効期間は90日。
●カンタスでは、7日、14日、21日用の、日本の列車パスを発行。また、全国各地のホテルへのEasy Stay Hotel Passも発売中.
●必読書:Travel Companion(Japan National Tourist Organisationにて無料で配布。最も有益な入門書のひとつ)。The Japanese Inn Groupのパンフレット、JNTO Ryokan Guideも必携。The Lonely Planet Travel Survival Kit は総合的な案内書。
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Don't leave home without them...
●手を拭くためのハンカチ:必ずしも日本のトイレにはタオルやドライヤーが常備されてるわけではない。
●トイレットペーパーがないときの為のポケットティッシュ:道を歩けば広告用のティッシュがいくらでも手に入る。
●簡単に脱げる靴:寺やひとの家を訪問したときのために。
●トラベラーズチェックと現金:日本のATM機はクレジットカードを受け付けないので。
●日本語会話集:緊急事態に備えて
●軽い荷物と携帯用台車:長い長い地下鉄連絡通路のために
●ソックスやストッキング:靴を脱いだとき素足を晒したくなければ
●オーストラリアベースのテレホンカード:割高な電話料金を避けるために
●あなたの名刺(出張旅行でなくても)
●赤チン:あなたが長身だったばあい、高さの判断を誤っておでこをぶつけた時のために。
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Word's and phrases to practise
●Sumimasen:誰かの注意をひくときには"Excuse me"という意味になり、誰かに道をゆずってもらったときは"Thank you"という意味に、そして他人の足を踏んでしまった場合などシンプルに"Sorry”という意味に使える。
●Arigato::Thank you
●Wakarimasen:"I don't understand"
●Nihongo ga.....:"I don't understand Japanese."
michi ga....:"I don't know the way."
●Kekko desu:"I don't need/want"の丁寧な言い方
●Suki desu :"I like it/that/them."
●Onegai shimasu:何か買いたかったり食べたい物を指差しながらこの言葉を言えばいい。あるいは、タクシーに乗ったとき、行きたい場所を地図で示してこの言葉を言う。
●Atsui desu ne:”It's hot, isn't it" スタンダードな挨拶文句。
●Chekku puriizu : "The bill(Check) Please"(注:日本人の普通の英語の発音だと彼らにはこう聞こえるということでしょう)。
●Makete kudasai:”Pleae give me a discount"(交渉が通用する大阪でしかきかないかもしれないけど)
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以上です。お疲れさまでした。
最後に一点気付いたのですが、この案内、あなた一人(ないし小人数のグループ)だけで旅行することを当然の前提として書かれてますね。「他の誰も助けてくれない」という前提で「こうするといいよ」といろいろアドバイスしている。要するにいま流行の個人旅行ということですが、いちいち「個人旅行」などと銘打たないわけで、旅行といえば個人旅行なのでしょう。
翻訳文責:田村(1997年5月31日)
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