★どこからどこまでがシドニー?
シドニーはNSW(ニュー・サウス・ウェルス)州の州都ですが、どこからどこまでが「シドニー」なのかというと、これが意外と曖昧です。
住所表示や行政区画の意味で言えば、「Sydney」という地名が付けられているのは、極めて限られた都心部=郵便番号2000番の地域で、高層ビルが立て込んでいるタテ2キロ×ヨコ500メートル程度の一角=に過ぎません。
この限られた都心部を離れたら、住所表示上ではシドニーという文字は一切出てきません。日本でいえば、住所に正式に「東京」と名がつくのは丸の内一角程度の広さしかないようなものです。
これは、そもそも地方自治の行政区分の方法が日本と違うことにもとづくものでしょう。半ば独立国のような強大な自治権限を持つ「州」(国民の祝日も州によって違う)の下には、都道府県に相当する単位はなく、いきなり市町村になるというシンプルな構造になっています。
ややこしいのは、現地では、このシドニー周辺の広いエリアを総称して「シドニー」と言っており、逆に正真正銘のシドニーである筈のこの都心部は、通称「CBD」(=Central Business District、都心のビジネスエリア)と呼ばれたり、単に「シティ」「シティセンター」と呼ばれているだけです。つまり「小シドニー(狭義のシドニー)」と「大シドニー(広義のシドニー)」があるようなものですが、意識的にこれを区分して呼ぶときには、小シドニーを「Sydney
City(シドニーシティ)」、大シドニーを「Greater Sydney(シドニー周辺)/Sydney Suburb(シドニー郊外)」と呼ぶようです(区分地図帳などのタイトルなどにはそう書かれてます)。
ではどこまでがいわゆる(大)シドニーなのかというと、特にそういう行政区分や境界線があるわけではないようです。実際の生活感覚でいうと、「シドニー」というタイトルになってる電話帳、「シドニー」というタイトルの地図に掲載されている範囲、というのが最も妥当な線でしょう。しかし、これも良く見ると、場合によって境界がマチマチだったりします。もっと大雑把に定義せよと言うと、地元の人は『東側は太平洋、北と南はそれぞれ大きな国立自然公園、西側はブルーマウンテンの山岳地帯、これらに囲まれている地域をシドニーという』と説明する人もいますが、そんなところでしょう。
地元で「シドニー」といえばこの大シドニーを一般に指すようですが、基本的には相対的に文脈に応じて(いわば気分で)適当に使い分けているようです。例えば、「シドニー駅」という鉄道の駅は存在せず「セントラル・ステーション(中央駅)」と呼ばれているのに、同じ駅構内でも他の都市とを結ぶ長距離列車の発着ホームでは「シドニー駅」と呼ばれます。近郊をドライブしていると、「シドニーまで○○キロ」の道路標識を目にしますが、だいたい都心から5〜10キロ以遠では「シドニー」と表記されてますが、さらに近づくと「City」という表記に変わります。
大した問題でもなく、実際に困ることもないでしょうが、一点注意しておくとしたら、日本の住所表示の感覚で大きな「シドニー市」「シドニー県」のようなものを想像しているとアテが外れるということです。例えば、ホテルの住所をみたら全くシドニーという文字が登場しないのでよほど遠方のホテルかと誤解するなどです。
遠近を判断しようと思ったら、住所よりも、郵便番号が「20××」とフタケタ台であればかなり都心に近いと言えると思います(10キロ圏内)。但しこれも正確に距離に比例して番号が振られているわけでもなく、二桁台相互の距離関係は番号からは分かりません。また空港の郵便番号は2020ですが、道路ひとつ隔てていきなり2200番台になるなど、絶対なものではないです。ただし二桁台でありながら遠いということだけはないので、その限度では目安になります。
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