まず、最初から悲観的なことを申し上げなくてはならないのですが、現地での就職（＝労働ビザのスポンサーを見つけること）はかなり厳しいと考えておいた方がいいです。ご存知のようにオーストラリアの移民基準は厳しくなっています。更に、日本の景気悪化の影響を受けて、日本人対象の観光業界も厳しくなっています。こういった社会事情を反映して、現地で永住権のない人がビジネスビザをスポンサードしてもらえる可能性は非常に低くなっています。

　英語がネイティブレベルでない私たちは、最初はどうしても日本語を武器に就職することになるでしょう。そうなると日本人観光客を相手とする仕事（インバウンドのオペレーター、アウトバウンドのコンサルタント、ガイド等）になりがちです。現地の日本の旅行会社がスタッフを現地採用する場合に、判定材料として重視するのは、「英語力と、日本での旅行業界勤務経験」のようです。オーストラリアでツーリズムを勉強したかどうかよりも、日本の旅行業界の慣習を知っている人が現場では役立つと考えられているようです。学歴は「ないよりあった方がマシ」程度で、それより運とコネが勝負の分かれ目になります。

　ですから、もし日本での旅行業界経験がおありで、とにかくオーストラリアで就職することが目的なら、現地で改めて勉強する必要はないように思います。率直に申し上げますと、「そんなお金と時間をかけるなんて、勿体ない」というのが、個人的な感想です（^^*）。

　また、ガイドさんなら、それこそツーリズムを勉強しなくてもなれる可能性はあります。ただし、この１〜２年ガイドの需要は低迷しているようで、シドニーでガイドを新規採用している会社は、数えるくらいしかないと思います。また、ガイドといっても現地のインバウンドはコミッションビジネス化が進んでいますので、ガイディング業務よりもセールス業務のニーズが高まっています。セールスが得意な方ならいいのですが、いわゆる「ガイドさん」をイメージしていると、精神的にキツく感じられるやもしれません。

　もし、独立永住権を狙えるだけの職歴がおありなのでしたら、まずは永住権を取得すべきです。永住権があるのとないのでは、就職の機会は格段に違います。が、永住権を夢見る方のほとんどが「職歴＋年齢」で躓いてしまっているのが現状。もし英語ポイントが不足しているだけなら、頑張って勉強してください。英語ポイントは、「努力次第であがる唯一の判定基準」なのですから。「語学留学→専門学校での資格取得→ビジネスビザ狙いの就職活動」というコースよりも、ずっと実現可能性は高いと思います。



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　のっけからかなり悲観的なことを書きましたが、実際問題、現地での就職は「運」がかなり左右しますので、とにかくトライしてみることです。やはり熱意のある人はなんらかの方法で道を開いていっていますし。
　ただ、ツーリズムの専門学校に留学するにあたっては、「純粋にツーリズムに興味があるから勉強してみたい」ということならいいのですが、「現地での就職を期待→留学」という考え方ですと、卒業時に焦ったり、ガッカリされたり、辛い思いをされるかもしれず、その点がやや気にかかります。「ツーリズムの資格とって、現地就職！」というコースを頭の中で確定させずに、卒業後のことは、フレキシブルに考えておいた方がいいと思います。

　卒業は２〜３年先になるわけですから、その頃は世界がどうなってるのかも分かりません。2000年にはオリンピックもありますから、観光業界の需要は多少期待できるかもしれませんし、はたまた世界経済が破綻して観光どころじゃなくなっているやもしれません。それより、現地にいらしたら「ツーリズムより、これがやりたい！」といった具合にに、気持ちも変わるかもしれませんよ。私もシドニーに来る前は「こんなことしたい」とイメージしていた仕事というのがあったのですが、現地で生活している間にすっかり興味も失せてしまいました(^^*)。

　しっかり考えるべきことは考えなくてはならないけど、将来の不確定要素についてはいくら考えたって仕方ないので、自分の「やりたい！」と思う気持ちに素直に従って潔く行動しちゃった方がいいと思います。無責任なようですが、「将来のことは将来の自分に任せるぞ」という腹括りがあるかないかで、現地に来てからの精神的な苦悩・疲労度がだいぶ違うように思います。

　尚、「英語力養成」と「現地視察（生活事情、就職事情）」をかねて、半年くらい学生ビザで語学留学してみるというのは、いいアイデアだと思います。独立永住権取得の可能性を測りつつ、現地でのスポンサード探しにもチェレンジできます。どんな結果になるにせよ、英語力アップ＆異文化体験というお土産は付いてきます。あまり先のことを確定的に考えてしまうと、かえって精神的にキツくなってしまうので、「とりあえず、行ってみようか」でポンと来てしまった方が、あとあと展開が広がりやすいのではないかと、経験上思います。



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　尚、ツーリズムに進学を目指した場合の語学学校の選び方ですが、必ずしも専門学校の附属を選ぶ必要性はないと思います。IELTSテストで規定の水準に達していれば、どこの英語学校を出ていても受け入れてくれます。かえって「ビジネス学校はいいけど、附属の英語学校はいいかげんに運営されているみたい」といった評判を聞く学校もあるくらいです。その一方で、ビリーブルーみたいに自分んとこの専門学校に進学希望する学生のために、内容に応じた「ブリッジングコース」を作っているところもあって、あそこはオススメだったりします。

　基本的に、英語学校を選ぶ際の最低基準としては、「アカデミックコースを運営しているところ」ならいいでしょう。あとはロケーションとか学校の雰囲気など、生活上の指向性を重視された方がいいと思います（語学学校については「シドニー語学学校研究」をご参照ください）。

　申込手順としては、日本からビジネス学校の入学手続まで済ませてしまわずに、現地の語学学校に通う間に、あちこちビジネス学校を視察して回ったり、口コミ情報を入手したりして、決めるのがいいと思います。現地でのビザ更新は面倒だし手数料（300ドル程度）もかかりますけど、長いこと通う学校なら、自分の目で確認してから決めたいものでしょう。



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　APLaCのホームページでは、語学学校の情報のみ掲載していますが、その他の専門学校についての問い合わせにもお応えしています。語学学校のように徹底調査したわけではありませんが、現地の評判や視察に行った時の感想などはお伝えできます。



シドニーのツーリズム専門学校 　ツーリズムといえば、マンリーにあるInternational College of Tourism & Hotel Managementが有名です。海辺のリゾートムード漂う郊外、マンリーの高台にあるお城のような建物で、ツーリズムに関するあらゆるコースを運営しています。大学卒業資格にあたる Graduate Diplomaコースまで取得できるため、他専門学校もこの学校と提携し、卒業生が進学できるようにしていたりします。費用が高いことでも有名(^^;)。 　同じような傾向の有名どころとしては、ホテルマネジメント専門学校 Blue Mt Hotel Management があります。ブルーマウンテンにある敷地内に寮も完備されていて、全寮制。こちらも費用が非常に高いのですが（寮費込みで半年で16000ドル程度）、卒業後に関しては、長年の間に培ったコネクションを利用して就職斡旋できるのか、卒業生は世界各地で活躍しているようです。 　The Sydney Business and Travel Academyは、ツーリズムを専門にしている中規模の学校で（他コースも運営しているが、メインはツーリズムでしょう）、実践に即した内容を教えているようです。が、校内を視察した感想を率直に表現すると、あまりキビキビと勉学に励んでいる雰囲気ではない。現地学生が多いこともあるのでしょうが、ツーリズムを学ぶというより、「就職に有利なように資格を取っておこう」あるいは「現場で使うＰＣ操作に慣れておこう」といった実利志向が強いような気がします。実際、パートの学生さんもかなり占めているようですし、「卒業生の就職率はいい」と言うのですが、そのほとんどが現場職に就いています。 　これはこの学校に限ったことではないのですが、専門学校に来る地元学生というのは「大学には行けないから、なんか手に職でも付けとこうかな」というタイプの人が多いという傾向はあります。また、留学生にしてもオーストラリアに居るための学生ビザを取得することを主目的に授業料を払っている人もわりといますので、「勉強するぞ！」という意欲や躍動感に満ちている専門学校を探すのは、そう簡単なことではないのが実状です。 　そんな中、William Blue Hotel Managementは、やる気のある学生（特に留学生に勉強熱心で優秀な人が多い）が集まってきていて、内容も専門性が高く、教師陣も第一線で活躍中の人をリクルートしていますし、卒業生の就職先もマネジメントクラスからスタートしている場合が多く見られるなど、本気で勉強したい人にとってはオススメしたい学校だと思います。 　その他、ツーリズムだけではなく数々のコースを運営している大手総合ビジネス学校として、Williams College、Lorraine Martin College、Metropolitan College、Holms Collegeなどがあります。いずれも学校の評判としてはよいようですが、一般的にこういった総合専門学校の場合、政府が発行しているディプロマ、サティフィケイトなどのカリキュラムをそのまま買い取って教えているところがほとんどなんだそうです。つまり、自校オリジナルのカリキュラムを研究開発しているわけではなく、既存のカリキュラムに沿って授業が進められるという意味では、最低限の質は確保できるとしても、専門性の点でどこまで実践に役立つのか？という疑問は残るところです。 　こういった総合ビジネス学校の特色として、たくさんのコースを運営しているので、途中コース変更などが比較的しやすく、「どれを勉強しようかな」と迷っている人にはいいのですが、その反面、自分のやりたいことが固まっている人にとっては、トレーニングに必要な設備が十分ではなかったり、カリキュラム内容に深みがなかったり、先生に実務経験がなかったりといった不満は出てくるといった問題点が予想されます。 　ちなみに、Metropolitan College、 Williams Business Collegeはビジネスカレッジの老舗的存在。真面目に勉強する学生が集まる傾向にありますが、やはり勉強は相当ハードだと聞きます。





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　以下、参考までに、旅行業界に関する個人的な意見です。

　日本の旅行業界がドラスティックな業界再編成に取り組まない限り、あの旧態依然とした日本の旅行業界は遅かれ早かれ滅亡すると思います（もっとも、既に瀕死状態の会社もありますが）。業界内で働く人々の中には、個人レベル、会社レベルでなんとか改革しようと頑張っている方も多くおられるのですが、なにぶん大きなシステムそのものがネックになっているのですから、そう簡単には変えられません。そこで、皆さん頭抱えてる。

　「日本の旅行会社は現地でツーリズムを勉強したかどうかよりも、日本での業界経験を重視する」のは今もって現実ですが、ココが問題なのです。日本の旅行業界には、日本にしか通用しない独特の慣習があり、それがシステム化している。あれをやめて、次の展開を創造した会社だけが勝ち残るでしょう。

　その意味では、今、海外でツーリズムをしっかり勉強する意味はあると思うんです。今の日本の旅行業界がダメなら、じゃあどうしたらいいのか？ その回答を皆求めてます。即戦力としては日本での業務経験があることが重視されるとしても、その回答を本当に出せる（と客観的に認められる）人がいるなら、たとえ未経験でも喜んで雇うでしょう。

　景気が悪いのなんの言っても、海外に出たがる日本人がいなくなるってことはないでしょう。個人旅行が隆盛とはいっても、まったく一人でなにもかも出来る人はまだまだ少ない。どこかでサポートが必要なはずです。今、そして将来の日本人観光客のニーズを見越して、新たな業界システムを構築しなくてはならない。そのためには、どうしたらいいのか？

　そういう視点に立って、ツーリズムを勉強したら、なにかヒントが得られるかもしれませんね。就職のことで言うなら、こっちの学校出た後で、すぐに日本の旅行業界に就職するんでなくても、たとえば他国で経験積んで、それを切り札に売り込むなんてことも可能なはずです。

　近い将来、この業界は大きく変ると思います。そういう意味でも、ツーリズムに興味のある方には、「将来のことはフレキシブルに」とアドバイスしたいんです。

　「海外就職」という視点だけで考えると、語学やらスポンサードやらの壁が大きくてメゲてしまうかもしれないけど、たとえばの例としてこんな視点で考えると、また違って見えてくるんじゃないかな。大志をもって、頑張って戴きたいです。




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今週の一枚ESSAYより
　「”海外”という選択シリーズ」　過去回INDEX

ESSAY 452／（１） 〜これまで日本に暮していたベタな日本人がいきなり海外移住なんかしちゃっていいの？
ESSAY 453／（２） 〜日本離脱の理由、海外永住の理由
ESSAY 454／（３） 〜「日本人」をやめて、「あなた」に戻れ
ESSAY 455／（４） 〜参考文献／勇み足の早トチリ
ESSAY 456／（５） 〜「自然が豊か」ということの本当の意味　
ESSAY 457 ／ （6）〜赤の他人のあたたかさ
ESSAY 458／（７） 〜ナチュラルな「まっとー」さ〜他者への厚情と冒険心
ESSAY 459／（8） 〜淘汰圧としてのシステム
ESSAY 460／（9） 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか（１）
ESSAY 461／（10） 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか（2）
ESSAY 462／（11） 〜日本にいると世界が遮断されるように感じるのはなぜか　〜ぬくぬく”COSY"なガラパゴス
ESSAY 463／（12） 〜経済的理由、精神的理由、そして本能的理由

ESSAY 519／放射能→海外というトコロテン式思考について - Lesser of two evils principle