よくある質問と回答
10万円でシドニーに一ヶ月滞在できますか?
(97年4月22日)
(2006年3月01日改訂)
Q: シドニーで一ヶ月ほど滞在したいのですが、ギリギリ切り詰めれば(航空券代は別として)、幾らくらいでいけますか?10万円以下におさめることは可能でしょうか?もちろん、知人の援助などは一切ないものとして。
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A:
これは観光ビザなど現地での労働が禁止されているビザの場合と、ワーホリ、学生ビザ、永住権など現地での労働が認められている場合とで答えは変わってくるでしょう。
労働許可のあるビザの場合、働けばいいんだから話は簡単です。ワーホリさんの場合、賃金の安いジャパレスなどに勤めたとしても贅沢しなければトントン以上の収支で生活していくことが出来ます。だから「可能」です。
しかし、労働許可がない観光ビザの場合、理論的には「可能」ですが、あまりおススメはしません。
まず、話を分かりやすくするために”極論”を言います。話は簡単。野宿して、山の木の実など(ブッシュ・タッカーという)を食べていけばタダで一ヶ月でも一生でも生活できます。アボリジニーの人達はそうして4万年生活してきましたし、そういう伝統的なライフスタイルは尚あります。
あるいは、ライターと岩塩と小麦粉(ダンパーという食い物を作るため)とよく切れるナイフを持参してブッシュライフを送ることもできます。要するに映画「クロコダイル・ダンディ」流にやればいいわけですし、ああいう人は実在します。
これなら限りなくタダで生活できますね。だから、回答としては「可能」。しかし、あなたに可能かどうかは保証の限りではないし、超頑健な肉体と野生の知恵をもってなければまず行き倒れになるでしょう。
極論はそのくらいにして、言いたいのは、どの程度(or種類)の生活水準をお望みなのか、それによって予算は無料→1億円まで変わってくるということです。聞く人によって、その基準が結構マチマチなんですね。「一応そこそこ人間らしい生活ができればいい」という人もいれば、「当然、観光も含んで」と考えておられる人もいる。まず、自分では暗黙の前提にしている「水準」を明確にしてみましょう。何が必要で何が不要か。
本論に入る前にもう一点だけ。「海外は安い」というのは「神話」です。
理由は4つ。ひとつ、これだけ円安になったら、もうそんなに安くないということ。ここ10年以上のオーストラリアドルのレートですが、一番お得なときで1ドル59円まで下がってたこともあれば、1ドル100円前後まで上がったときもあります。直近数年は1ドル80円台で推移しています。60円台をリアルタイムに知っていた身としていえば、結構高いです。日本も昔は超円高時代があり、その頃は海外旅行もグッと安くなっていたわけですし、その頃に「海外は安い」という認識が広まり、それが未だに尾を引いているのだと思いますが、実際にはそれほどのこともないです。なお、もっとタイムスパンを広げてみれば、オーストラリアドル1ドル280円とか440円だった時代も昔にはあったそうですから(米ドルだった昔はドル360円時代があった)、それに比べればまだまだ円高ではあります。しかし、いっときのような「強い円」って感じではないです。
ふたつ、日本はデフレ状態だからピンとこないでしょうが、こっちでは低いけれどもインフレは着実に進行してるからこのギャップはさらに広がります。特に、オーストラリアは10年以上好景気が続き、バブル経済になってますので、ガンガンなんでも上がってます。また2005年以降の原油価格の高騰で徐々にきいてくるでしょう。公共交通機関や郵便料金の値上げもスゴイもので、一体リアルタイムに幾らなのかうっかりしてるとわからなくなります。現地のオーストラリア人にしてみれば、同じように給料もあがっているわけで、今や、オーストラリア人は日本人よりも金持ちです。
三つ目。オーストラリアの中ではシドニーは物価が高いといわれています。特に不動産価格が周辺地域の倍ほどします。だから宿も高くなる傾向にあります。これは東京の物価と地方の物価と同じ感覚で、ちょっと考えたらお分かりでしょうが。ただし、高いのは不動産価格であって、ガソリンなんかはシドニーが一番安いでしょうし、その他の食料品なんかもシドニーの方が安かったりします。逆に地方の方が流通コストがかかって高くなる場合もあるでしょう。その不動産についても、今ではシドニーが沈静化、値下がり傾向にあり、その他のエリアの方が伸びている傾向にあります。
四つ目。それでもこちらは生活費が安いですし、トータルして考えればオーストラリアで暮らすほうが安い。しかし、このメリットは旅行者にはあまり与えられないです。つまり、安くなる原因としては、冠婚葬祭費がない、つきあい酒の習慣がない、車検が26ドル、不動産仲介手数料が15ドル、健康保険料、被服費にそれほど見栄を張る必要がない、中古物品の流通市場が充実している、シェアという慣行がある、、、などなどそこらへんがポイントで、旅行してるだけならこれらの恩典はないです。その他、安くて質のいい店(やり方=バーゲン狙いなど)を知ってるという現地情報の精通度合でも積もればかなり違ってきます。
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これらを踏まえて、本論に入ります。
一ヶ月の予算のうち、大きく@住居費(宿代)とA食費に分けます。月10万なら、各5万づつとして、ホテル代週120ドル程度(一泊17ドル見当)。食費一日16ドル見当になります。その他観光ツアーや交通費分は赤字覚悟というならば、この予算なら十分可能です。
宿ですが、バックパーカー系のアコモデーション(宿)ならば、4人部屋で15-20ドル前後であります。2段ベッドが二つくらいあって、そこに世界中の若者と一緒に寝泊まりするわけですね。そういうのが精神的にシンドイという人は、安い個室のホステルなんかもあります。この種の安宿は、時として失業者や生活保護を受けている人ばかりだったりしてちょっと雰囲気ツライ部分もあったりしますが、キリビリのA.A.Tremayneなんか週160ドルで、そこそこのグレードがあるのでいいとは思います。しかし、それでも週160ドルですから予算オーバーです。ただ、これが恋人同士とかになると、ダブルの部屋を割勘でいけますので、多少選択の余地は広がるでしょう。
ですので、全部コミで10万くらいの予算だったら、まずバッパーのドミトリー(相部屋)にしなさいってことですね。シドニーだって探せば週120ドル台のバッパーはありますし、田舎に行ったらもっと安いところもあるでしょう。シドニーのバッパーは数えたことないですけど、優に100軒は越えるでしょう。
シドニーに長期に住み、平均して一月10万円以下というのであれば、シェアを探されることをオススメします。これだったら週120ドル台でも普通にありますから。頑張れば、4週以下であっても入れてくれるところもあるでしょう。
ホームステイは、晩ゴハンつきで週230ドルというのが現在の相場でしょうから、これだけで予算オーバーですよね。
★2017年時点でいえば、バッパーはシティ近辺だったら週割やっても一泊30ドルくらいはするかと思います。むしろ週150ドル前後の激安シェアを探した方がいいと思います。もっともシェア探しそのものが大変なんですけど。旅慣れている人はカウチサーフィングとかできます。
一般ホテルやモーテルですが、これは10年前に比べてもバリバリ上がっています。シドニーだったら探すだけ無駄っぽいと思ったほうがいいでしょう。1泊300ドルクラスがゴロゴロあります。
余談ですが、そういえば自転車でオーストラリア一周した人がいて、この人は安く上げてましたね。お米をもってそこらへんで火を熾して炊いてましたし、殆ど野宿で済ませてましたから、1日1ドルもかからなかったといいます。もっとも、誰にでも出来ることではないですし、本当のこというとオーストラリアではキャンプエリア以外では野宿禁止です。
ワーホリさんのラウンドで、安いボロ車を借り、車中で泊まりながら旅をする人もいました。ときどき1泊5ドルくらいのキャラパー(キャラバンパーク)でシャワーを浴びたり、洗濯したりで。でも、レンタカーでこれをやってたらレンタカー代が嵩みますし、あんまり移動しちゃうと今度がガソリン代がかかります。長期スパンで、安いボロ車を選んで2000ドルくらいで買って、半年以上かけて一周して、そして最後に1ヶ月以上余裕をみてまた2000ドルくらいで売り払うというのが理想なんですけど、1ヶ月だけって場合のオプションではないでしょう。車の調達と売却でそのくらいかかってしまいますから。
なお、逆に、滞在期間が1週間だけとか、5日間だけでいいのであれば、シーズンオフの時期に安いパックツアーで来られた方がいいです。安いのを探せば飛行機代、ホテル代全部コミで10万円前後というのも出るでしょう。殆どホテル代なんか無料同然になりますから、それが一番トクだと思います。しかし、すぐに帰らないとならないです。
話変わって食事関係にいきます。
こちらは食料品は安いので、1日16ドル程度の食費ならば十分やっていけます。一食5ドル〜7ドル程度のテイクアウェイでもボリュームあるしバラエティ富んでるしで、悪くないです。「パンと牛乳だけ」で頑張るなら一日2ドルでいける。これにチキン丸焼き(一羽丸ごとで8ドル程度、美味)をつけても楽勝ですね。さらに、キッチン付き(ホステル系は共同キッチンがある)ならば、いろいろと安くて美味しい食材や食品はあります。こちらは農産物は確かに豊富ですし、野菜や乳製品が美味しいですから、普通にちゃんとサンドイッチを作るだけで結構イケます。
もちろん、おひとり様コース200ドルという日本懐石料理もありますし、ワイン一本200ドルという高級レストランもあります。そんな所にいってたらたちまち予算アウトになるでしょうが、食費は一番融通がきくってことです。食費で調整しながら、宿代に廻したり、観光交通費をひねり出したりということになるでしょう。
★これは2017年でもそれほど変わらないです。というか自炊をこまめにやれば十分いけると思いますよ。
以上、「1ヵ月10万円」は理論的には十分に可能です。
バックパッカーのように一人旅を考えておられる方は安心してください。
★2017年時点では、単にバッパーに泊まるだけではダメで、いいシェアを探しぬくとか、そのあたりの知恵とスキルとスキルは必要です。
むしろ山奥でもいいなら、WWOOFがあります。労働力とバーターでゴハンと寝場所が与えられるという住み込みボランティアです。有機栽培以外の場合は、HELPXというのがあり、これは都市部でもありますから、コマメに探すといいです。これが現実性高いですかね。
逆に「海外は安い」という古ぼけた神話にすがりついて「リッチなライフスタイルを満喫」なんて考えてる人は考え直した方がいいです。「オペラハウスを臨むコンドミニアムで昼下がりのティーを。夜は小粋なレストランでイタリア料理に舌鼓、これでたったの10万円」なんて思ってる人、まさかそこまで絵に描いたような社会経験に乏しい人はおらんと思いますが、多分頭に思い描いてるような生活を一ヶ月するとしたら、幾ら掛かるかなあ。100万じゃきかないかな、やり方一つで一人30万円で出来るかなあ。何を期待してるかにもよるけど。
冒頭で、月10万円は実現可能だけど「(バックパーカーズ系を除いて)オススメしない」と言ったのは以下のような理由からです。
大事なのは「一ヶ月シドニーに居て何すんの?」ということで、ゴハン食べて寝るだけの入院生活みたいなことをするなら、宿代と食事代で済みます。でも、宿代ケチれば、それなりに居心地は良くないから、一日中ベッドに寝転んでるわけにもいかない。で、どこかに出れば交通費も掛かる。商店街歩けば、つい買ってみたくなるものも出てくるでしょう。食べてみたいものも出てくるでしょう。バスに乗ってあちこち出歩いてみたくもなるでしょう。
でも、「何がなんでも月10万!」という具合に固執してしまうと、そういったアクティビティに制限が掛かります。宿にしても、転々として趣向の異なるものを味わうということも出来ない。レストラン食べ歩きもしにくい。
これらのことは、実際にそんなにお金掛かりません。バス10回回数券で13ドルちょいだし、ちょっと出て行けば海でも山でもあります。海辺なんか歩くのはタダです。そこらへんのスーパーで安い道具揃えて釣りも出来る。ゴルフ料金もグリーンフィーで20ドル代のところは幾らでもあります。乗馬のレッスンも1時間50ドル程度であるし、ラグビー見てもそこらへんの試合だったら10ドル代で入場券買える。美術館は入場料タダ。1冊1〜3ドルで売ってる古本屋も多い。あるいは、安いツアー、面白いツアーも沢山ありますし、ブルーマウンテンも自分で電車でいくなら往復20ドル台で済みます。
このように色々と面白いことも出来る。出来るのだけど全くのタダというわけにもいかない。予算にこだわるが余り、あとほんのちょっとのお金をケチってしまうのは非常に勿体ない話だと思うわけです。なにも40万50万持って来いと言ってるわけではなく、全部で10万のところを全部で15万、20万くらいちょっと多めに持ってくれば、随分と余裕も出てくるし、そこから積み上げるお金は使い方によれば非常に価値のあるものがチョイスできていいよ、と言ってるわけです。全体の量が増えれば、やりくりの方法も広がるでしょうし。結果として10万でおさまれば御の字というくらいのユトリは持っていた方がいいと思うのですけど。
大体、航空運賃だって、仮に格安で10万以下に押さえたって安くはないです。それと最低の宿・食費で10万として、これら約20万円くらいは「シドニーに一ヶ月存在するため」の「先行投資」のようなもので、そこまで投資しておきながら、そこで運転資金が尽きてしまっていては、結局損じゃないですか。かといって、なにも一回100ドル200ドルの高いツアーにガンガン参加せよと言ってるのではないです。シツコイようですが、その1ヶ月をあなたにとってどのように豊かなものにするかがまさに正念場であるということであり、この例では大体予算10万を超えだしたあたりからがポイントになっていくわけです。その「主戦場」に臨むにあたって、「とにかく安く」ということに縛られてしまっていては、安物買いの銭失いになりかねないリスクがあるということです。そこはよくお考えになっておいた方がいいと思います。
こうしてあれこれ考えてみると、「現地で働ける」というのは偉大なことです。ワーキングホリデーというビザがなぜ先進諸国を通じて発達したのかわかるような気がします。また学生ビザでも週20時間(23年7月から24時間=正確には「2週で48時間」)とはいえども働くことが出来るようにしたのは何故か?です。働くことが出来たら、不測の出費その他で途中で資金ショートをおこしても、その都度働いてなんとかクリアできることを意味します。しかし、働けなかったら、手持ちの資金が切れたらそれまでってことになります。もう国外退去するしかない。働けるということは、旅のバリエーションを無限にフレキシブルにしてくれます。
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