それでも更に突っ込んで、公立vs私立という軸で差異を指摘するなら、
また、一口に私立といっても様々な学校があります。
費用は@が最も安く、A、Bの順に高くなる傾向にあります。この費用を反映してか、@カソリックのシステミックは庶民的な雰囲気の学校が多く、宗教に関しても比較的寛容で留学生受入にも積極的なのに対し、Bアングリカン系の学校は裕福なイギリス移民の師弟により占められているという傾向があります。
また、HSCの試験結果も費用に比例しており、裕福な家庭の師弟ほど学業成績がよい、という一般的傾向は見られます。が、必ずしも費用の高い学校が高い学業成績を収めているというわけでもありません。たとえば、HSCのトップ5000人(全体の10%にあたる)のうち、約半数は公立校の学生です。
しかし、何度も繰り返しますが、こういったグループ分けでは語りきれないほど「オーストラリアの学校は、各学校の特色が豊かである」という事実をお忘れなく。公立・私立という枠組みにこだわらず、留学生にぴったり合った環境を選択するよう努力なさった方が賢明です。(但し、事実上、公立校への編入学は限定されている。詳細は第2章 2−3参照のこと)
また、共学vs男女別学という視点で考えた場合にも、特にどちらがよいとか悪いとか決めようもありません。基本的には本人の性格と希望に従って選択すればよいのではないかと思います。但し、公立校は通常共学、カソリック系、アングリカン系の私立校には男女別学が多い(共学校はほとんどが新設校か、近年合併した学校)という特色があります。
ところで、オーストラリアの教育者の間では「中・高校生に関しては男女別教育の方が望ましいのか、それとも共学の方が望ましいのか」という議論が盛んです。共学支持派は年々増加する傾向にあるようですが、男女別学支持派も「男女別学の方が学業的に成功する確率が高い」という調査結果をもとに論戦しています。これは思春期の男女が同じ教室にいると、異性の目を気にして余計なことに神経を使い、本業の勉学に集中しにくいという見解。特に、理数系の科目に関しては女子が男子に遠慮して、伸び伸び力を発揮しにくくなるという研究結果が発表され、共学校でも「理数系科目は男女別クラス編成であること」をウリにしていたりします。
また、自然環境にも恵まれていた方が学業に専念できてよいでしょう。オーストラリアは都会でも街中に緑があふれており、都心から1時間も車で走れば、野生のカンガルーやコアラが生活しているような大自然のふところに突入してしまいますので、この点においてはオーストラリア国じゅうどこでも問題はないでしょう。
シドニー郊外エリアについてコメントするなら、北部、東部はイギリス系の比較的裕福な家庭が多く、南西部は移民して間もない家庭が多いという傾向はあります。また、都心に近い学校ほど不動産価格の関係から敷地が狭く、こじんまりした学校が多い一方、南西部には自然に囲まれた広い敷地を有効活用した学校が多くあります。
気候について。オーストラリアは一般に「温暖な気候」と言われていますが、巨大な大陸ですので、北は年中暑い熱帯ですし、最南端のタスマニアは北海道の緯度にあたる寒い地域です。また、同じニューサウスウェールズ州でも、州都のシドニーは温帯ではありますが日本に比べると、まるで春と秋の2シーズンしかないように感じられるほど1年を通して過ごしやすい気候ですが、一方、やや内陸部に入ると夏は乾燥して暑く、冬は氷点下まで気温が下がるような地域もあります。ですから、留学先を決定する際には、その特定地域の気候についても、よく調べた方がよいでしょう。気候が温暖でなくとも学業に差し障りはありませんが、たとえば水泳をやりたい学生がタスマニアに行っても泳ぐチャンスは限られますし、逆にスキーをやりたい学生が亜熱帯のケアンズに留学しても、スキー旅行代は日本にいる時以上にかさんでしまうことになります。
しかし、それを一方的に信じる前に、この目で見て実状を確認してはいかがでしょうか。できれば留学を決める前に保護者ともども現地の学校を視察されることをお勧めします。信頼できる留学斡旋業者や在住の知り合いの方に事前にアレンジしてもらって、興味のある学校を訪問し、校長と面談したり、授業を見学したり、在校生や近所の人から話を聞いたりして、雰囲気をつかむのが一番よいと思います。それでも学校というものは入ってみて初めて分かる部分がありますから、合わないこともありえますが、できる限りの努力は事前にしておくべきと思います。そして、万一その学校が合わなければ、また現地から評判を聞いたり、同様に現地視察を通して研究し、気に入った学校に転校すればよいのです。
では、何年生から留学するとよいでしょうか。基本的には「留学したい」と決断した時が留学時と考えればよいと思います。オーストラリアの大学への進学を目標に留学するなら、高校1年生を終える前に留学した方がHSCテスト受験準備の面から有利といえますが、それよりも「留学したい」という意欲を優先すべきでしょう。高校3年生から留学を決断した場合、英語力養成と同時にHSC受験準備で2年ほど余計にかかるかもしれませんが、それでも「遅すぎる」ということはありません。高校を卒業(あるいは中退)して、30才でオーストラリアの高校に留学し、大学まで進学している人もいるのです。
但し、英語力について考慮するなら、全くの初歩は日本語で説明された方が効率もよいので、できれば中学1〜2年生までは日本の学校で留学準備を整えた方がよいかもしれません。但し、中学生の場合、親元を離れて異国で一人でやっていくのは、かなり大変なので、よほど意欲のある学生でなければお勧めできません。留学初期だけでも親同伴で現地生活をするのであれば、その限りではありませんが。
また、言うまでもありませんが、予算が十分にあるかどうか確認してください。留学中に予想外にお金がかかってしまい、途中帰国せざるをえなくなるという事態は避けたいものです。