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2012年01月26日


体験談(4)WAえび漁船操業&魚介記録


ここでは私がえび漁師時代に底引き網で漁獲された生物の報告、食った魚貝類の食味の感想、考察を勝手に述べています。

@フリーマントル出港〜一回目の荷降ろし(Unloding)まで(24/MAY/2011〜4/JUN/2011)

○ニコルベイ(NICOL BAY)湾内

 この付近の中核都市カラサ(KARRATHA)。
 そこから北に10km離れた漁船とレジャーヨットが停泊する港(ハーバー)のデンピアー(Dampier)。
 その港より我々を乗せたエビの底引き網漁船SEA PEAL2号は出港した。夜中には漁のポイントに着き錨を下ろした。

 エビ漁は翌日早朝から始まった。

 船の冷凍庫をエビで満タン(MAX22t。実際は20tぐらいしか入らんと思う)にするまで漁を行うらしく、シーズン初めはエビがめちゃくちゃ獲れるらしい。そしてすぐに獲れなくなるらしい。その言葉通り一週間半でエビが18t獲れた。一日平均睡眠時間5時間。寝る時間以外は飯食いながらも働かされた。初日から海が荒れて船酔いしながらエビを箱詰めしていた。カラサより東に60kmほど離れたところにポツンとあるポイントサムソンという港へ寄港(寄港1回目)して荷降ろしと給油を行った。

 船底の冷凍庫から1箱10kgの冷凍エビを運びだす荷降ろしの作業が一番大変。冷凍庫にずっと入って一日で18t全部を運び出すので寒いしかなりしんどい。当日船長のブルースがバックパッカーと港で働くオージー達を雇わなかったらやばかった。

確認できた生物と食味

バナナプロウン(BANANA PRAWN)
主に我々はこのエビを獲っていた。計18t漁獲。エビを料理して食う時間がほとんどなかった。

タイガープロウン(TIGER PRAWN
計20kg漁獲。ウーリーとかでバナナプロウンの倍の値段(30$/kg)だったが、味はそんなに変わらんと思う。

その他砂地に生息している小魚、回遊魚の稚魚達
計60t程(エビの3倍程)漁獲。網を上げてエビとより分ける時には皆ほとんど死んでいる状態。全部海に捨てる。「根こそぎ」「皆殺し」の漁法底引き網。私達以外にも同じ場所に同じタイプのエビの底引き網漁船が4隻いた。シーズンが始まると皆一斉に一日中エビを獲りまくるのだろう。素人考えだがこんなに獲って生態系が壊れないか心配になる。魚達に申し訳がない。

モートン ベイ バグ(MORTON BAY BAG)
マンガ「美味しんぼ」にも書いていたが日本のアサヒエビにそっくり。刺身で食った。身があまい。計2kgぐらい漁獲。
ブルースイマークラブ(BLUE SWIMMER CRAB
でかい奴もそこそこ獲れる。エビをはさんで離さないためすげー仕事の邪魔。そこそこ捕れたが忙しすぎて食う暇がなかったので全部海に捨ててた。
ゴールデントレバリー
95cm、1個体のみ漁獲。ロウニンアジにそっくりでおいしそうなので後で食おうとキープしてたがクリスに 邪魔だ!って海に捨てられたので食ってない。
クイーンフィッシュ(QUEEN FISH
80〜100cm、4、5個体確認。刺身は普通味。たぶん次潜っててこいつに出会ってもスルーすると思う。
アナゴ?
 日本でいうアナゴかな?オーストラリアにもいるんだって感じ。
イルカの群れ
漁をしているときにいつも船の後ろをついてくる。網からこぼれる魚を食っているようだ。違う背ビレが2、3種類確認できたがイルカの種類については良く知らない。

A1回目荷降ろしから2回目荷降ろしまで(5/JUNE/2011〜19/JULY/2011)


○ニコルベイからポートヘッドランドの沖合い

 ポイントサムソンの港を出港してから5日程で4t程漁獲。
 その後はずっと海が荒れ続けてまったくエビが獲れない時期が続く。

 クリス曰くエビが集まる次の満月まで待つしかないとのこと。そういやトマトピッキングをしていた時も満月の翌日はトマトが一斉に赤く色づいていて収穫が大変だった。満月の光には何か謎があるのかもしれない。特に調べてはいない。
 しかし次の満月が来てもまったく獲れず。いつもクリスの言うことは当てにならない。

 仕事が無くて暇すぎる。
 魚突きをしようにも船はエビを探して朝から夜中まで延々走り続けるため不可能。ルアーで釣りをしようにも網が邪魔でできない。英文法の本2冊もすでに読み飽きた。北斗氏にフロイトの本を借りて読むが難しくて理解できない。一日中何もすることがない。このときがWH生活で一番つらかった記憶がある。結局12日間ずっと海の上をクルージング、というか仕事なしの三食昼寝付きの海上漁船内監禁生活。聞こえはいいが寝すぎて寝れないしマジで暇でつらかった。

 その後船の給油と食料補給のため3日間寄港(寄港2回目)することに。ここでアレックスがパプアニューギニアに仕事で行くということで船を降りた。かわいい爺さんだった。仕事しないけど。この時1回目の漁で捕れたエビの給料を$3000の小切手でもらった(※1)。


 この後から最初に比べるとだいぶ少ないが順調にエビが獲れだした。網に入っているのがエビより魚の方が多いため何回も底引き網を繰り返しながら一日400〜900kg程漁獲。シーズン初めの時とは違いかなり毎日暇だった。どれくらい暇かというと二人ともニンテンドーDSの英語版FFとドラクエを全クリできてしまうほど暇だった。3週間程で12t漁獲。

 ここで給油と食料補給のために1日だけ寄港(寄港3回目)。この時にまた$3000小切手でもらった(※2)。冷凍庫をフルにすべくもう一度出港するがまったく獲れず1週間ずっと暇だった。どれくらい暇かと言うと二人でニンテンドーDSを購入してマリオカートで対戦ゲームして遊ぶぐらい暇だった。結局ここでは獲れないので漁場をブルームの北に移すとのことでその準備と荷降ろしのため寄港(寄港4回目)。結局約一ヶ月半(45日)かけて計16t漁獲。

※1 1箱(10kg)につき一人$4もらえると聞いていたので1回目荷降ろしした分(18000kg×$4/10kg=$7200)はもらえると思っていた。残りの分はいつ支払われるのか確認すると通常会社(ブルースが雇われている)が全部エビを売るまで1ヶ月程かかると言われた。給料に関しては以前も何度かブルースに確認していた。そのときは「不安だったら書類でもなんでも書いてやるぞ、でもいまどき書類はナンセンスだぞ」と言われ話は終わっていた。

※2 この3回目に寄港する前日は給料が全て支払われるのか心配だった。翌日の寄港時に$3000やるといわれたがこの時点で約束の荷降ろしから1ヶ月は経っており全額$7200ではなく$6000しかもらえないということで不安になった。実は船に乗る時に二人ともTAXナンバーを聞かれただけで特に契約の書類等を交わしていなかったのだ。またこの状況で行くと最後に漁が終わった時に給料がもらえるのも1ヵ月後。船にいるときは良いが漁が終わってから給料がもらえなかった場合どうしたらよいのかという不安があった。ブルースは俺を信じろというが最悪の場合給料未払いを予感した私は田村さんに助けを求めるメールを送った。数時間後にすぐ田村さんからの返信があった。

 口約束でも何とか訴訟はおこせるらしく簡単な手書きの契約書類の作成方法、先日付けでの小切手を切ってもらう方法等を教えてもらった。手書きの書類の方が効果があるとの事で翌日の寄港時までに書類作成をして用意していた。寄港の当日に漁は今後も続くし今書類にサインを求めてブルースとの関係を悪化させるのは良くないと思い書類は使わなかった。
 この給料の件ではこの状況では自分達ではどうすることもできないと思っていたが田村さんの助言で解決への糸口が見えた。ちなみにカラサに行く前に車の件でも相談にのってもらった。お世話になりまくりです。ありがとうございました。
→体験談本編(2)末尾のメール相談実例を参照

確認できた生物と食味

バナナプロウン
 16t漁獲。ポートヘッドランド沖合いで獲れる奴はニコルベイの奴よりでかかった。外洋だからか?でかい分高く売れるらしい。生より火を通したほうがいっぱい食える。エビマヨネーズというようにマヨネーズがベストマッチ。チリソースも良い。でもやっぱ天ぷらが一番うまい。
タイガープロウン
 ポートヘッドランドの沖合いで全長30cm程のぶっとい奴がいた。1回の底引き網につき2、3匹は捕れた。計8kg程漁獲。1箱10kgの規格を満たしていないので売り物にはならないのか半分は私と北斗氏で巨大えびフライにして食った。残りはクリスが「銀行の窓口のガール達にあげるんだ」と言って持って行った。
ハンマーヘッドシャーク、メジロザメ、ブルーシャーク、カスザメ
主に30cm〜120cm、でかい奴で150cmぐらい。やっぱAUSはいっぱいサメがいる。あまりエビが獲れない時は長い時で2時間ぐらい底引きするので多い時はでかい奴が5、6体獲れる。エビ漁船はエビ以外獲ってはいけない為全部海にぶん投げてた。

ノコギリザメ
 いるとこではめちゃくちゃいっぱい網にかかる。ノコギリの部分が網にひっかかっていて取れなくて大変。ひっかかってると漁ができないのでノコギリを本物の鋸で切られてた。この後もいっぱい網に架かるのでナイフで彼等のノコギリを切ることに。切る時に目があう。罪悪感が増すので目を見ない方がよい。

マロウェイ(MULLOWAY
 日本のニベという魚に似ている。でかい奴で100〜130cm。でかすぎるためか全然うまくなかった。計10匹程漁獲。おいしくなので全部海にぶん投げてた。
バラマンディ(BARRAMUNDI
 日本でいう幻の古代魚アカメ。こっちの奴の目は金色で生物学的には別種だそうだ。95〜110cmの3個体のみ、一回の網で3個体同時に漁獲。ソテーにして食った。マロウェイとは違い身に味があった。クリスからその日に食えなかった魚は海に捨てろと言われていたので残りのバラマンディを海にぶん投げていたら船長のブルースに怒られた。クリスの言う事はマジ当てにならん。
フラットヘッド(FRATHEAD)
  日本でいうマゴチ。最大50cmを漁獲。
フラウンダー(FLOUNDER)
 ヒラメとカレイの区別がついてないのかも。最大50cmのヒラメと最大40cmのカレイを漁獲。
ロブスター(CRAY FISH
 計2個体のみ漁獲。蒸して食った。モートンベイバグと似た味というか同じ味。私はカニの方が好き。クリスが船室で料理してたらエビアレルギーのブルースに怒られてた。
モートン ベイ バグ
 最大25cmの個体を確認。計3kgぐらい?北斗氏がほとんど全部食べた。
ブルースイマークラブ、セイントクラブ?
 毎日3、4体は良型が獲れる。セイントクラブの方がうまいがほとんど捕れない。

ストーンフィッシュ(オニオコゼ)、ウミヘビ、コビア(ゴンズイ)
危険な奴ら。エビに混ざって獲れてくるためやっかいだ。刺されると死ぬぞとクリスが毎回言ってくる。
確かにすぐ病院には行けないので刺されたらやばいかも。
その他砂地の小魚、回遊魚の稚魚達
計160t程(エビの10倍程)漁獲。全部海に捨てる。このころから魚に申し訳ないという気持ちも麻痺してくる。
コバンザメ?
クリスはパラミシアって言ってた。頭部には吸盤がついててにゅるにゅるしててキモい。
イルカの群れ
やっぱり毎日着いてくる。腹がいっぱいになってうれしいのかたまにジャンプして遊んでる。
海鵜
イルカと一緒に潜って網からこぼれる魚を食ってる。たまにアグレッシブすぎた奴の死体が網にかかってる。
ウミガメ
40cmくらい。計2個体漁獲。やさしく海にぶん投げてた。


B2回目荷降ろしから3回目荷降ろしまで

○キンブリー(KINBLRY)〜ポートヘッドランド(26/JULY/2011〜)

 キンブリーでは1ヶ月以上の漁を予定しており、エビの取れ高しだいではダーウィンにまで行くことになるそうなので私の車をブルースの妹宅に預かってもらった。

 この漁には2回目の荷降ろしを手伝ってくれていたバックパッカーでフランス人のマットが船に乗ることに。イケメン小顔の細身で長身のフランス人。こりゃ9割の女は落ちるよなとか北斗氏と男のひがみ話をしていた。話してみるとタイでダイビングのインストラクターをやっていたそうだ。これでさらに0.5割増しに。このとき北斗氏は2WHビザがなかなか下りず、もしビザが下りなかったら船を降りろとブルースから言われていた。北斗氏がビザが取れなかった時の代わりとしてブルースがマットを雇ったのだろう。

 約一週間の寄港の後ブルームの東のキンブリーの沖合いへ向かうことに。NorthWA8つのナショナルパークのある一帯をキンブリーナショナルパークというらしい。ブルース曰く漁師やホエールウォッチング船しか行かない秘境のような場所で鯨のサンクチュアリらしい。来年からは鯨保護の目的で漁船が入れなくなるそうだ。確かに毎日鯨を見た。以前ここで海に木が浮いていると思ったらクロコダイルが浮いていたとか聞いていて「クロコダイルだ!」とか騒いでたので船室から飛び出して見に行くとただの木だった。その後少し期待していたが特に何もなかった。海から陸見ても景色は全部一緒に見えるのだ。

 結局ここでもエビが全く獲れなくて暇だった。どれくらい暇かというとパソコン買って旅の詳細な記録を残せるくらい暇だった。ブルースの友人の漁師で30年間ここで漁をしているがこんなに獲れないのは始めてらしいとブルースが言っていた。結局12日間また仕事なしの三食昼寝付きの監禁生活だった。

 この後ポートヘッドランドに戻るということでそこへ向かっている最中にいきなりブルースから北斗氏に船を下りろとの指示が出た。ポートヘッドランドには町はなくマインニングサイトと空港はあるみたいだった。ネットでパース行きの航空券を購入し、港に着いて彼をひとり残し翌日からまたエビ漁が再開した(※3)。

 ポートヘッドランドからニコルベイ、またポートヘッドランドに戻りほとんどエビが獲れない日が続き一週間後ポイントサムソン港に寄港した時にマットが船を降りた。腰が痛くて仕事を続けるのが無理なので以前この港でしていた仕事(たしか1ヶ月$6000だったかな?)にもどるらしい。エビも獲れてないし、ブルースにうまいことのせられたフランス人のイケメン30歳、シャイだしヨーロピアンぽくない奴だった。マットが船を下りた1週間後、漁のシーズンが終わったとの事で私もデンピアー港で船を下りた。

※3 北斗氏が船を下りる前に我々の手書きの契約書類にブルースのサインをもらおうと思っていたが彼はすでに契約書類を三枚作成してくれていて私と北斗氏とブルースの三人ともその書類三枚にサインしてそれぞれが書類を持つことになった。これまで私達は彼に給料の件について何度も話をもちかけて心配しているそぶりを見せていた。それとブルースは漁の間ずっと魚探とにらめっこでキッチンには来ないため彼の朝飯と昼飯をコーヒー付きで出していた。これらの効果があったのかもしれない。


今後WAで漁師をしたいと思っている人へ


北斗氏情報によると
○ジェラルトン Geralton(パースの北400kmの港町)
・イセエビ漁のシーズンは4月と10月の二回。
・イセエビ漁船では65kgの鉄と木でできたイセエビの仕掛けを膝上まで持ち上げて船の縁から海に落とす作業があるらしい。海はむちゃくちゃ荒れるときもあるらしく彼は船酔いしないのだがエサの腐ったサバが臭過ぎて吐いたことがあるそうだ。
・日帰り漁で朝から昼過ぎまでの6時間労働。BPからフィッシングハーバーまで2、3km離れているが彼は毎日徒歩で通っていた。3週間でTAXひかれて$8000ドル(だったかな?)稼いだそうだ。元々船で働いていたデックハンドのヨーロピアンがケガで仕事ができなくなり、その代わりとして彼が働けていたそうです。

○フリーマントル Fremantle(パースから南30kmの港町)
 フィッシングハーバーは市内から南へ1km程の所。私たちの船以外のプロウントローラー(エビの底引き網船)も3,4隻ありました。またそれ以外の漁師も探せばいると思います。私達が乗っていたエビ漁船は私が下りた後パプアニューギニアに行ったらしくもういないと思います。船長のブルースは来年2012年はフリーマントル近海で日帰りのエビ漁をすると言っていました。2012年3、4月頃の漁のシーズン前にフィッシングハーバーに行ったら彼がいるかも。状況変わってたらすいません。

私自身漁師の仕事を探したこともあります。バンバリーの港で働く人達に聞き込みしていたら「ここにいってみたら?」と言われました。

○ダンズボロ Dunsborough  (バッセルトンの西の別荘地)
バッセルトンからダンズボロへ行く道の途中にプロのフィッシャーマンが集まる場所?があるまでは聞き込みでわかったのですがファームジョブが見つかったのでそれ以降は探していません。

○オーガスタ Augusta(パース南西部で最南端の町) 港町なのかどうかも未確認。


関係ないけど我等のデックボス"野生児クリス"の紹介 〜日本にこんな45歳いない〜

・クリスチャンである。
・45歳なのに私と北斗氏より全然腕力がある。
・元NZアーミーだからか朝一からきびきび動く。
・昔はアルコール依存症で酒に酔っては喧嘩ばかりしていたそうだ。そのせいで前歯が一本ない。
・アル中克服した代わりに一日10杯は砂糖とミルクたっぷりのコーヒーを飲む。仕事のときは彼のコーヒーを毎回4,5杯は作らされる。
・ヌーテラ(チョコクリーム)とジャムをいつもスプーンでビンから直接食う。
・昼飯作ったので食べる?と聞くと「後で」というがいつも食わずに捨てる。でもスパゲッティは食う。
・漁で得体の知れない物体が獲れるとそれを人に投げつけて反応を楽しむ癖がある。
・網に頭を突っ込んで抜けなくなって暴れているサメに対し5、6発パンチをくらわせ、グロッキーになっているところをネットからはずし海にぶん投げるという技を持っている。
・私が仕事でヘマしてもフォローしてくれるしいい奴だ。




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