このコンテンツは、1990年代に中高生留学を調べていた時に作成したものです。以後、全く更新しておりませんので10年以上古いコンテンツです。今後も更新する予定はありません。

したがって、リアルタイムにこのとおりである保証はないし、それどころかまず「違う」と思ってください。

「古文書」的な意味しかないので、バッサリ全部削除しようとしましたが、敢えて残しておきます。
かなり詳しく調べましたので、現在においても尚も「参考」としての資料価値があるからです。
 いわゆるハウツーマニュアルとしては無価値ですが、ものの考え方、システムの成り立ち方という原理部分、あるいは日本人的に盲点になるような部分などは、そう変わるわけもないし、今でも十分通用します。ご自身であれこれ考えたり、調べたりする参考にはなると思います。




APLAC/STUDY IN AUSTRALIA 3-1A

第3章 オーストラリア留学生活の実態(1-A)

3−1.学校生活の実態(1)

〜日本との違いを把握する


留学生活の基本となる学校生活の実態を、日本の学校生活との違いに焦点を当てながら、次の【A】〜【E】の5つの分野に分けて説明します。

最後に実際の学校を想定しながら、各学校の特徴を比較検討してみます。(◆検討◆各学校の特徴)


【A】学業編

●丸暗記より、自分の頭で考えさせる教育

日本の高校ともなれば、大学受験に備えてとにかく予習・復習を繰り返すことで試験に出そうな部分を丸暗記していれば、ある程度は点数稼げるようなところがありますが、オーストラリアの教育では暗記することになんら価値を置いていません。記憶するより、自分の頭で考えて自分なりの意見を表明することに高い価値基準を置いているのです。その結果、大人になっても基本的な英単語のスペルを知らない人も結構多かったり、優れた学位を取得したエリートでも簡単な暗算が出来なかったりするので、どちらがいいとは一概に言えませんが、少なくとも暗記さえすればいい点が取れる日本の教育とは対極にあることは確かです。

ですから、これまで日本の学校で暗記ばかりさせられていた学生がオーストラリアに留学すると、戸惑うことも多いと思います。今までは「教科書に書いてあること」とそのまま回答すれば満点だったのに、ここではそれだけでは回答したことにならず、「で、あなたはどう思うの?」と突っ込まれるのです。こういった教育を受けてきたオーストラリア人のクラスメイトは各自はっきりとした意見を持っていますし、その意見を表現する能力も既に身につけているため、クラス内でディベート(議論)を始めると、その威勢のよさに圧倒されるかもしれません。最初はテンポの早さについていけないかもしれませんが、こういった議論に積極的に参加できるようになりたいものです。
宿題も単なる練習問題ではなく、教科書に載っていないことまで自力で調べあげて、小論文を書かせるようなももの出題されます。
授業や宿題だけでなく、試験でも論文形式の問題が多く、一夜漬けで暗記だけしても点数は稼げません。オーストラリアの教育は、常に物事に問題意識をもって自分で調べ、自分の頭で考えることができる人間を育てるのに適しているようです。

●授業内容は先生次第

教科書やおおまかな指導要領(Syllabus)はありますが、政府教育省のガイドラインに必ず従わねばならないことはなく、授業方法や教材などは先生個人の裁量に任されています。ですから、授業の善し悪しは、良くも悪くも先生の意欲、技術、工夫によるところが大きくなりますし、その先生との相性も影響します。ただ、傾向として言えるのは、最初に先生が学生たちに興味を沸かせるような問題提起をし、あとは各学生に積極的に参加させていくタイプの授業方法が多く見受けられ、日本の授業風景に比べると騒がしいくらい自由な発言が目立つことです。ただおとなしく静かに授業を聞いていさえすれば「授業態度良し」と評価される日本とは全く違い、欧米社会らしく、「自分の意見をきちんと表現できる能力」が強く求められます。

●塾はないが、宿題はある

日本ほど社会全体が教育熱心ではないので、進学準備のための塾のようなものはごく少数しか見当たりません。都心部では一部の教育熱心な親が家庭教師をつけていたりはしますが、普通の家庭では、家でまで親が「勉強しなさい」と口をすっぱくして言うことはなく、学生たちは放課後や週末には地元のクラブやスポーツなどをのびのび楽しんでいるようです。

但し、宿題は出ます(特にインテンシブ・スクールではかなり気合を入れて頑張らないと追いつけないくらいの宿題がでます)。量は学校にもよりますが、ある公立中・高校の書類には「宿題に費やす目安時間は、義務教育の7年生〜10年生で1日1〜2時間程度、HSC受験を控えた11〜12年生で1日3〜4時間」と示されています。それも、単純に答えを書き込めば済むような練習問題ばかりでなく、「○○という本を読んで、レポートすること」といった、自分の意見を求められる論文形式の宿題がよく出されます。英語でアサインメントといいますが、この論文形式の宿題は自分の意見を述べること、それを文章で表現することが苦手な学生にとっては、相当の負担になるでしょう。逆にいえば、日本の教育を通してはなかなか伸ばせない「自己表現能力」「文章表現力」を育成することができるはずです。

また、ほとんどの学校では宿題(家庭学習)について保護者が監督することを奨励しています。よい教育は学校と家庭との相互協力によって実現されるという考え方を反映して、保護者と連携をとった教育を実施するよう心がけているようです。たとえば、宿題日記(Homework Diary)を常に学生に携帯させ、学生が宿題の記録をつけると同時に、保護者がその宿題を監督したことを証明するサイン(書名)をし、それを学生が先生に提出するといったスタイルをとっている場合もあります。(留学生の場合にはこの保護者の役割は寮長やホストファミリーが担うことになります。)

ある学校で実際に出された課題(現代史)を見てみたい人は、ここをクリック。

●義務教育では、日常生活に即した実践的な学習内容

義務教育である7年生(中学1年にあたる)〜10年生(高校1年にあたる)までの授業内容は、次のような特徴があります。
    1)義務教育については、日常生活上必要なことを現実に即して教えている。
    2)日常生活の中に見当たる素朴な疑問を投げかけることにより、子供の自然 な興味を捉えるよう工夫されている。
    3)机の上での勉強にこだわらず、校外に出たり、グループワークを通して実践で学ばせようとする。

 Year 7〜10の期間に履修する科目は、英語・数学・科学を中心とし、オーストラリアの歴史・オーストラリアの地理・音楽・美術・体育・コンピューターそして外国語を勉強します。各科目の授業内容は基本的に日常生活に密着した学習内容なので、日本のカリキュラムに比べるとレベルは低く感じられますが、学習アプローチが実践的なので、興味を持ちながら楽しく勉強できるでしょう。
たとえば、7年生の数学ではこんな授業方法がとられています。

    [問題]
    1年後に470ドルのマウンテンバイクを買うためには、これから毎週いくらずつ貯金すべきでしょうか?
    ステップ1:この問題には割り算を利用すべきと判断する。
    ステップ2:470割る52(52割る470ではない)。
    ステップ3:だいたいの数値を予想する(暗算か筆算で)。450割る50は9。
        だから、答えはだいたい9になるだろう。
    ステップ4:計算機を使う。答えは9.03846154
    ステップ5:この答えを、週あたり9.04ドルと解釈する。
    ステップ6:「この回答は理屈にかなっているかな?
        うん、私の予想と同じくらいだ」と自身に問い掛ける。
    ステップ7:端数を切り捨てる必要があるかな?
        たとえば9.00ドルとか9.10ドルとか。
        来年までにマウンテンバイクは値上がりするかもしれないから、
    その可能性を加味すると、9.10ドルが妥当なセンでしょう。

470を450に置き換えておおよその回答を得るあたりの大胆さや、実際の回答は計算機で出し、その解釈を重んじるあたり、一見「あれ?」と思われるかもしれませんが、日常われわれ大人は無意識的にこういったプロセスを追って判断しているわけで、実に実践的な考え方といえます。このように義務教育課程では計算機を使うことで、面倒臭い計算で数学を嫌いになることを避けるなど、勉強を楽しませる工夫をこらしています。

また、野外授業が多いのも特徴のひとつです。日本でも社会科見学というものがありますが、社会科に限らず、科学、数学、地理など、さまざまな科目に関したテーマを追いかけて、近所の博物館や工場見学はもちろん、スーパーや公園に出掛けたりします。

●高学年では、幅広い科目から選択できる

Year 11, 12になると、高校卒業後の進路にあわせて各自が学習したい科目を選択します。Year 10までの日常生活に即した基本的な学習に比べると専門性も高く、急激に難しくなります。選択科目(Elective Subject)は、経済学やコンピューターサイエンスといった専門性の高いものばかりでなく、陶芸、写真、グラフィックデザインなど芸術関係の科目もありますし、リクリエーションや各国の料理、ダンス、ドラマ等を勉強する科目や、専門学校の授業に参加して単位を取得する科目など、多種多彩です。

また、同じ数学でも自分のレベルに応じて簡単な基礎数学の授業から高等数学まで各自で選択することができるのも特徴的です。歴史の授業も古代史から現代史、そして西洋史、アジア史に至るまで各自が勉強したいものを基本的に自由に選択できます。(但し、一部の成績優秀な学生を除いて、11年生時にはPreliminary Courseという準備科目を履修し、その科目の適正を校長が判断した上で12年生のHSC選択科目を決定するという手順を追います。)特に優秀な学生のために、得意科目を自習などを通して早めに修了させ(acceleration=いわゆる飛び級)、大学の授業に参加させる授業(Distinctive Course−宇宙学、哲学、比較文学から選択できる)や、TAFEの授業に参加できるジョイントコース(JSSTAFE Course)もあります。但し、オーストラリアでの大学進学を目指してHSCを受験する学生は、履修科目選択方法に一定の条件がかかってきます。

ニューサウスウェールズの教育を管轄するBoard of Studiesが定める基本選択科目と、HSC選択の際の条件についてさらに知りたい人はここをクリックして下さい。

●学習方法も多種多彩

御存知のようにオーストラリアは大きな大陸ですので、人口がまばらな田舎のエリアでも学生が希望する科目を勉強できるように、サテライト・スタディ(Satellite Study−コンピューターや通信衛星を利用した通信教育のようなもの)も発達しています。たとえば、その学校に地学の専任教師がいなくても、また地学を学びたい学生が自分以外に誰もいなくても、サテライト・スタディにより学習することができ、他の科目と同様に単位を取得することができるのです。

また、高学年になるとワーク・エクスペリエンス(Work Experience)という授業が設けられるのも、オーストラリアの特徴のひとつです。これは、中等教育修了前に社会で労働体験をさせることを目的としたもので、学生は地元の職場に入り、一定期間無報酬で働きます。もちろん、職場探しも課題のひとつ。自力で自分のやりたい職場を探して、仕事に加わります。

この他に、他の学校で特別な科目を履修するオープン・ハイ(Open High)というシステムがあり、たとえば土曜日に特定の学校で日本人用の日本語授業が行われたりします。
これら多種多彩な科目から選択する際にはHSC(Higher School Certificateー高校卒業時に実施する一斉試験)に備えて様々な制約もありますが、それでもその選択肢幅の広さと自由度の高さは日本の高校のカリキュラムとは比べ物にならないでしょう。オーストラリアの大学への進学を考慮しなければ、更に自由に選択できます。日本の高校での単位認定を希望する方は、日本の在学校の先生とよく相談して選択した方がよいでしょう。

●成績評価について

各学期末に成績票(School Report)が渡されます(郵送されることが多い)。成績は、日頃の授業態度、グループワーク(グループ単位で行う課題)、宿題の提出率、学期末試験の結果を総合して算出されます。学期始まりに各科目の学習内容とねらいを提示した書類を配付されますが、同時に成績の算出方法が明示されていることもありますので、参考にしてください。たとえば、授業態度30%、グループワーク20%、宿題20%、試験30%といった割合で評定されます。成績の表示方法はAからEまでの5段階評価、各段階とも+や−マークをつけて、「A+」とか「B−」のように表示されることもあり、この場合は同じAでも3段階に分けられることになり、総合で15段階評価になります。

留学生の場合、最初は英語力の不足により思い通りの結果が得られないことがありますが、焦らず長い目で見て努力を継続させてください。また、特に授業態度については、日本と価値観が異なりますので注意してください。日本ではおとなしく先生の言うことを聞いてノートをとっていれば「授業態度−大変よい」と評価されますが、オーストラリアでは積極的に発言し、質問や意見をどんどん出し、グループワークでもリーダーシップをとっている学生が「授業態度がよい」と評価されます。


■インテンシブスクール校長から留学生保護者へのメッセージ

留学生の親御さんは、留学当初、子供さんが慣れない現地での生活環境の中で、どれほど不安定な気持ちでいるかをよく考えた上で、アドバイスするよう心がけてください。特に日本で成績のよかった学生の親にありがちなことですが、留学直後の成績が芳しくないことに焦りを感じて、子供さんに不必要にプレッシャーをかけてしまうケースが見受けられます。留学直後は英語のハンディだけでなく、全く異なる環境に適応するだけでも大変なことなのですから、成績がよくないのも無理はありません。環境適応にしても英語習得にしても時間のかかる大偉業を成し遂げようとしているのですから、叱りつけるよりも長い目で見守るような気持ちで、勇気づけてあげてください。




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