留学生活の基本となる学校生活の実態を、日本の学校生活との違いに焦点を当てながら、次の【A】〜【E】の5つの分野に分けて説明します。
最後に実際の学校を想定しながら、各学校の特徴を比較検討してみます。(◆検討◆各学校の特徴)
【A】学業編 |
ですから、これまで日本の学校で暗記ばかりさせられていた学生がオーストラリアに留学すると、戸惑うことも多いと思います。今までは「教科書に書いてあること」とそのまま回答すれば満点だったのに、ここではそれだけでは回答したことにならず、「で、あなたはどう思うの?」と突っ込まれるのです。こういった教育を受けてきたオーストラリア人のクラスメイトは各自はっきりとした意見を持っていますし、その意見を表現する能力も既に身につけているため、クラス内でディベート(議論)を始めると、その威勢のよさに圧倒されるかもしれません。最初はテンポの早さについていけないかもしれませんが、こういった議論に積極的に参加できるようになりたいものです。
宿題も単なる練習問題ではなく、教科書に載っていないことまで自力で調べあげて、小論文を書かせるようなももの出題されます。
授業や宿題だけでなく、試験でも論文形式の問題が多く、一夜漬けで暗記だけしても点数は稼げません。オーストラリアの教育は、常に物事に問題意識をもって自分で調べ、自分の頭で考えることができる人間を育てるのに適しているようです。
但し、宿題は出ます(特にインテンシブ・スクールではかなり気合を入れて頑張らないと追いつけないくらいの宿題がでます)。量は学校にもよりますが、ある公立中・高校の書類には「宿題に費やす目安時間は、義務教育の7年生〜10年生で1日1〜2時間程度、HSC受験を控えた11〜12年生で1日3〜4時間」と示されています。それも、単純に答えを書き込めば済むような練習問題ばかりでなく、「○○という本を読んで、レポートすること」といった、自分の意見を求められる論文形式の宿題がよく出されます。英語でアサインメントといいますが、この論文形式の宿題は自分の意見を述べること、それを文章で表現することが苦手な学生にとっては、相当の負担になるでしょう。逆にいえば、日本の教育を通してはなかなか伸ばせない「自己表現能力」「文章表現力」を育成することができるはずです。
また、ほとんどの学校では宿題(家庭学習)について保護者が監督することを奨励しています。よい教育は学校と家庭との相互協力によって実現されるという考え方を反映して、保護者と連携をとった教育を実施するよう心がけているようです。たとえば、宿題日記(Homework Diary)を常に学生に携帯させ、学生が宿題の記録をつけると同時に、保護者がその宿題を監督したことを証明するサイン(書名)をし、それを学生が先生に提出するといったスタイルをとっている場合もあります。(留学生の場合にはこの保護者の役割は寮長やホストファミリーが担うことになります。)
ある学校で実際に出された課題(現代史)を見てみたい人は、ここをクリック。
1年後に470ドルのマウンテンバイクを買うためには、これから毎週いくらずつ貯金すべきでしょうか? ステップ1:この問題には割り算を利用すべきと判断する。 ステップ2:470割る52(52割る470ではない)。 ステップ3:だいたいの数値を予想する(暗算か筆算で)。450割る50は9。
ステップ5:この答えを、週あたり9.04ドルと解釈する。 ステップ6:「この回答は理屈にかなっているかな?
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また、野外授業が多いのも特徴のひとつです。日本でも社会科見学というものがありますが、社会科に限らず、科学、数学、地理など、さまざまな科目に関したテーマを追いかけて、近所の博物館や工場見学はもちろん、スーパーや公園に出掛けたりします。
また、同じ数学でも自分のレベルに応じて簡単な基礎数学の授業から高等数学まで各自で選択することができるのも特徴的です。歴史の授業も古代史から現代史、そして西洋史、アジア史に至るまで各自が勉強したいものを基本的に自由に選択できます。(但し、一部の成績優秀な学生を除いて、11年生時にはPreliminary Courseという準備科目を履修し、その科目の適正を校長が判断した上で12年生のHSC選択科目を決定するという手順を追います。)特に優秀な学生のために、得意科目を自習などを通して早めに修了させ(acceleration=いわゆる飛び級)、大学の授業に参加させる授業(Distinctive Course−宇宙学、哲学、比較文学から選択できる)や、TAFEの授業に参加できるジョイントコース(JSSTAFE Course)もあります。但し、オーストラリアでの大学進学を目指してHSCを受験する学生は、履修科目選択方法に一定の条件がかかってきます。
ニューサウスウェールズの教育を管轄するBoard of Studiesが定める基本選択科目と、HSC選択の際の条件についてさらに知りたい人はここをクリックして下さい。
また、高学年になるとワーク・エクスペリエンス(Work Experience)という授業が設けられるのも、オーストラリアの特徴のひとつです。これは、中等教育修了前に社会で労働体験をさせることを目的としたもので、学生は地元の職場に入り、一定期間無報酬で働きます。もちろん、職場探しも課題のひとつ。自力で自分のやりたい職場を探して、仕事に加わります。
この他に、他の学校で特別な科目を履修するオープン・ハイ(Open High)というシステムがあり、たとえば土曜日に特定の学校で日本人用の日本語授業が行われたりします。
これら多種多彩な科目から選択する際にはHSC(Higher School Certificateー高校卒業時に実施する一斉試験)に備えて様々な制約もありますが、それでもその選択肢幅の広さと自由度の高さは日本の高校のカリキュラムとは比べ物にならないでしょう。オーストラリアの大学への進学を考慮しなければ、更に自由に選択できます。日本の高校での単位認定を希望する方は、日本の在学校の先生とよく相談して選択した方がよいでしょう。
留学生の場合、最初は英語力の不足により思い通りの結果が得られないことがありますが、焦らず長い目で見て努力を継続させてください。また、特に授業態度については、日本と価値観が異なりますので注意してください。日本ではおとなしく先生の言うことを聞いてノートをとっていれば「授業態度−大変よい」と評価されますが、オーストラリアでは積極的に発言し、質問や意見をどんどん出し、グループワークでもリーダーシップをとっている学生が「授業態度がよい」と評価されます。
■インテンシブスクール校長から留学生保護者へのメッセージ留学生の親御さんは、留学当初、子供さんが慣れない現地での生活環境の中で、どれほど不安定な気持ちでいるかをよく考えた上で、アドバイスするよう心がけてください。特に日本で成績のよかった学生の親にありがちなことですが、留学直後の成績が芳しくないことに焦りを感じて、子供さんに不必要にプレッシャーをかけてしまうケースが見受けられます。留学直後は英語のハンディだけでなく、全く異なる環境に適応するだけでも大変なことなのですから、成績がよくないのも無理はありません。環境適応にしても英語習得にしても時間のかかる大偉業を成し遂げようとしているのですから、叱りつけるよりも長い目で見守るような気持ちで、勇気づけてあげてください。 |