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今週の1枚(04.03.09)
ESSAY 146/ これから50年の世界経済/中国 vs インド (新聞記事から)
写真はCampsieのショッピングセンター。マルチカルチャルしてます。
この先50年、世界地図はどのように変わっていくでしょうか?現在唯一の超大国であるアメリカ支配が今後50年続くのでしょうか。それともアメリカに強力なライバルが出現するのでしょうか?それは何処か?それはなぜか?そしてそうなるにあたっての障害事由はなにか。そして、この先50年、日本はどのようなポジションを目指すべきなのか。それはなぜか、そして可能か?
50年というのは、そう長い時間ではないです。これをお読みになってる人の多くは、50年後、まだ存命でおられるでしょう。また、50年後の世界といっても、49年目までは現状と同じで50年目にいきなりドカンと変わるのではなく、徐々に変わっていくでしょう。今から数年後においてもかなり様相は変わっているでしょう。いや、既に現在、そして過去においてもその変化は生じているでしょう。それほど遠い将来の話でもないし、それほど自分に関係ない話でもないと思います。特にまだ20代、30代の人にとっては、これからの人生のメインステージにモロに影響してくるでしょう。
だから大事な話なのですが、大事な話な割にはよく分かりません。先が見えないですよね。西対東の冷戦構造が壊れて、グローバルエコノミーの時代に入って、最初は Japan as No. 1とか、日本がニューリーダーになるとか言われてた時代も一瞬あったのですが、それもバブルがはじけてあっさりコケて、そこからはアメリカ一人勝ちになって、このまま行くかと思ったらイスラム社会の異なる価値観の衝突が生じ、世界はキリスト教的正義とイスラム的正義が南北問題とリンクしてゴチャゴチャになってきています。
ただ、そういった戦争とか喧嘩ドンパチ系の世界観だけで世の中見るのは片手落ちでしょう。もっともっと重要な変化はやっぱり経済だと思います。「なぜ戦争をするか」のもともとの根拠も、結局は「もっとメシが食いたい」「豊かになりたい」という経済的要因に基づくものです。帝国主義も「植民地を増やしていい暮らし」というところから始まってるし、ヒトラーが権力を握る背景も当時のドイツ社会の深刻な不況があったわけです。この経済要因を越える理由というのは、激しい宗教的情熱や過去の民族的なシガラミくらいでしょうが、それとて一部の熱狂的な層がやってるだけでしょう。僕ら一般庶民がモロに影響を受けるのは、やっぱり景気がいいとか、就職が厳しいという経済状況でしょう。今、自衛隊派遣やら、憲法改正やら、北朝鮮と喧嘩するとかしないとか言ってますが、それはそれで大事な問題だと思いますが、僕らにとって100倍切実なのは、やっぱり自分自身がクビになるかどうかであり、次の就職先が見つかるかどうかだと思います。
じゃあ、経済的に見て今後の世界はどうなるかというと、誰もが言うのが中国ですよね。まだまだ発展途上とは言え、恐ろしい勢いで成長し、いまやアメリカに対抗できるスーパーパワー候補といわれます。確かに、単純に人間の数だけいってもアメリカの5倍以上いますし、国土の広さもいい勝負、軍事力も将来的には底知れないところがありますから。
では、アメリカと中国の二極ゲームになるのか?というと、いや、一つ大きな国を見落としているぞ、インドがあるじゃないか?という
新聞記事がありました。シドニー・モーニング・ヘラルドというシドニー現地新聞の週末版(3月6日付)に”Battle of the giants”という記事が掲載されており、なかなか興味深かったのでご紹介します。いつまでリンクが有効かはわかりませんが、一応http://www.smh.com.au/articles/2004/03/05/1078464645783.htmlにありますので書いておきます。
こちらの語学学校に留学を考えてる人は、中級以上のクラスに入ったら、クラスの中で、あるいはオプションのカレント・アフェア(時事問題)などのクラスで、当たり前にこの種の議論をするでしょうから、英語でこういった議論ができるように(持論を持っておくように)予習しておかれるといいかと思います。
Battle of the giants
March 6, 2004
China is touted as the next economic and military superpower, but India may yet overtake it in the new global order, reports Hamish McDonald.
Speeches at the Cardiff Breakfast Club don't usually reverberate much beyond Wales, but thanks to internet search engines and a neat turn of phrase, this one recently popped up on screens around Asia: With 3.5 million "functionally illiterate" people in its workforce - mostly young white males - Britain urgently needed to lift its skills, said the Confederation of British Industry chief, Digby Jones. "Then we can ensure that China won't eat our lunch and India won't eat our dinner."
カーディフ朝食会でのスピーチは、普通は地元のウェールズよりも外の世界に響き渡るようなことはないのだが、インターネットの検索エンジンと洒落た言い回しのおかげで、アジア周辺のスクリーンでしばしば見受けられるようになった。そのスピーチとは、「350万人にも達するという”まともに読み書きも出来ない労働力”-もっぱら若い白人男性を中心とする-を考えてみれば、イギリスは早急にスキルアップに努めねばならない」とイギリス産業連盟会長のDigby Jonesは激を飛ばした。「さもないと、我々のランチは中国に食われ、我々のディナーはインドに食べられてしまうだろう。」
Different numbers, but the same concern could apply in Australia and many other developed countries about the outsourcing of jobs to the world's two most populous countries.
統計的な数値はそれぞれ異るであろうが、同じ懸念はオーストラリアにだって当てはまるし、インドと中国という世界の二大人気国にアウトソーシングをしている他の先進国においても等しく当てはまりうる。
The warning also contains an implicit challenge to the now-common notion that China is hurtling towards a superpower status rivalling that of the US. Assuming that Jones's dinner is more substantial than his lunch, then this British employers' spokesman seems inclined to the growing school of thought that India may present the stronger challenge.
このスピーチは、中国こそがアメリカに対抗できる唯一のスーパーパワーになるだろうという現在通説的な見解に対する、暗黙の批判をも含む。ジョーンズ氏の夕食がランチよりもボリュームがあるとするならば、このイギリスの雇用者達のスポークスマンは、中国以上にインドこそが最も強力な台頭勢力であるという考え方に傾いているといえよう。
At present, China is racing ahead. Its economy has averaged 8 per cent plus growth for more than a decade, and hit 9.1 per cent last year when per capita income for its 1.3 billion people went over $US1000 ($1335) for the first time. The 900 million poor and under-employed people of China's villages mean the supply of cheap labour for industry won't run out for two or three decades. Goldman Sachs, a US investment bank, even fixes a year, 2031, for when China's economy catches up in size with the US.
現在、中国がレースの先頭を切っている。中国の経済成長率はここ10年で平均8%を越え、去年は9.1%にまで達し、13億に達する国民一人あたりの年間所得は初めて1000米ドルを超えた。中国の村々における900万人にも達する貧困層や失業者数を考えれば、あと2、30年は安価な労働力には不自由しないであろう。アメリカの投資銀行、ゴールドマン・サックスによると、中国経済がアメリカのそれと肩を並べるのは2031年になると、時期まで限定して予測している。
With foreign reserves of more than $US400 billion, China has the weight of money to pull in the technology it needs to move up the scale in civilian products and military equipment. Foreign investment inflow is running at $US53 billion a year, as against India's $US5 billion. Its torrent of exports and its ravenous appetite for inputs and raw materials are pulling Asian countries, including India, into a China-centred regional market that may become less dependent on exports to North America and Europe.
中国が保有する4000億ドルにも達する外貨準備高は、一般商品や軍備について必要な規模まで生産を増大するテクノロジーを導入するには十分なものがある。外国からの中国への投資高は年間530億ドルに達し、それはインドにおける50億ドルをはるかに引き離している。その凄まじい輸出の奔流と、投資と原材料を消化をしうる旺盛な食欲は、インドを含め、アジア諸国の経済を巻き込み、中国を中心とした地域経済圏を築き上げており、北米や欧州市場への輸出に頼らないより自立したものになりつつある。
Though India had almost-as-impressive growth of 8.5 per cent last year, two or three points of this were due to a rapid bounce back in its farm sector from a monsoon failure the year before. Its average growth rate has been about 6 per cent, meaning its 1.1 billion people - with half China's per capita income - are falling behind their Chinese counterparts. Its famous IT centres in Bangalore and Hyderabad are still what a Monash University expert of the Indian economy, Marika Vicziany, calls "islands of excellence surrounded by a sea of poverty".
去年、インドは、同じくらい注目すべき8.5%の成長率を達成しているが、このうち2−3%は前年度の台風被害による農産業の一時的な落ち込みからの急激なリバウン分が含まれている。だから実際のところ、平均成長率は6%前後を推移しており、11億人のインド国民の年間所得は中国のそれの半分に過ぎない。バンガロールやハイデラバードの著名なIT産業のメッカも、モナシュ大学のインド経済のエキスパートであるMarika Vicziany氏によれば、「貧困の海に囲まれた優秀な島」に過ぎないという。
Indian visitors to China are almost driven to despair comparing the bright lights, ubiquitous mobile phones, freeways, vast container ports, and glittering airport terminals with what they experience at home: daily water and power cuts, crumbling roads, patchy phone services and clogged ports and rundown airports.
中国を訪れるインド人達は、中国の繁華街の活気、いたるところ氾濫している携帯電話、高速道路、巨大なコンテナ港湾、煌くエアポートの光、、、などを目の当たりにするにつけ、自国のものと比較して落ち込むという。インドのそれは、日常的に発生する断水や停電、ボロボロの道路、アチコチでほころびている電話網、混雑しすぎて機能麻痺している港湾、疲弊した空港だったりするのだ。
Yet there are strengths in India that may make it more advanced than China later in the century. If you read the Nobel Prize-winning economist Amartya Sen, it already is more advanced - if you assume individual freedom, rule of law and democracy are goals of development. As many Indians say, these are somewhat abstract benefits if you are a bonded labourer or a lower-caste villager terrorised by a landlord's musclemen.
しかし、100年単位で考える場合、インドには中国以上に優れている強さもある。ノーベル受賞経済学者のAmartya Sen氏の著作を読めば、インドは既に優越しつつあることがわかる-ただし、成長のゴールを、市民的自由、法の支配、そして民主主義の確立だとすればの話だが。多くのインド人が言うように、もしあなたが借財などで厳しく縛り付けられている労働者であったり、地主の暴力的支配を受けてる低いカーストの村人だったら、そんな利益は抽象的なお題目に過ぎない。
But these freedoms will help India move faster into the knowledge-based economy. Sen's well-known theory says democracy also prevents systemic crises and human disasters that can build up behind the information walls of repressive states - like the 30 million famine deaths caused by Mao Zedong's "Great Leap Forward" four decades ago.
しかし、こういった市民的自由は、今後インドが知識ベースの産業により急速に成長する基礎になりうるのである。有名なセンの法則によると、民主主義は、組織の崩壊や、抑圧的な政府の情報統制のもとに生じがちな巨大な人災を未然に防止しうるという - それは例えば40年前の毛沢東の”大躍進運動”によって3000万人が餓死するという事態などを想起されたい。
Couldn't happen now in China? As recently as 1995-96 the Chinese leadership stood by as 2 to 3 million people starved next door in its ally North Korea. Beijing knew about the famine, because it was feeding the North Korean army "to prevent a mutiny", says the US aid expert Andrew Natsios in his book The Great North Korean Famine. We still don't know the real extent of China's HIV/AIDS epidemic caused by an officially promoted blood collection drive in the mid-'90s.
そういったことは今の中国では起こりえないのであろうか?95,96年の最近まで、同盟国である北朝鮮で2-300万人が飢えているのを中国政府指導者は傍観していたのである。アメリカの援助活動の専門家であるAndrew Natsios氏の著作”The Great North Korean Famine”によると、北京政府は北朝鮮陸軍を「反乱を抑えるために」援助していたのであるから、同国の深刻な飢饉を知悉していたのである。また、90年代中ごろに公的に推進された採血(売血)によって拡大した筈のHIV(エイズ)患者が実際どの程度存在するのか我々は知らされていないのである。
The bright spots of both economies depend heavily on links with the US. India is plugged into Silicon Valley; China into the Wal-Mart. About 54 per cent of China's exports are made by foreign-controlled factories. In electro-mechanical exports, foreign-run enterprises make up 70 per cent. Local exporters face vicious competition, driving down export prices and wages.
インド中国両国の経済の明るい面は、アメリカとの緊密な結びつきに基づく。インドの場合は、アメリカのシリコンバレーにプラグインされているし、中国の場合はウォルマート(アメリカの巨大なチェーンストア)だ。中国の輸出量の54%は外資系の工場によるものだし、外資が運営している企業は70%にも達する。地元の輸出業者は猛烈な価格競争に晒され、シビアなコストカットを迫られている。
"It's the difference between hardware and software," says one US trade official, explaining the attributes of China and India. Needless to say, the biggest profits in the knowledge economy are made by the Microsofts rather than the Fords. But that is not to say India is doing too badly in physical products, either.
アメリカのある通商官僚は、「これはソフトウェアとハードウェアの差です」と中国経済とインドのそれとの差を説明しようとする。言うまでも無く、知識産業による膨大な利潤というのは、フォード社ではなくマイクロソフト社によって獲得される。もっとも、だからといってインドの製造業がダメだと言っているわけではない。
Its pre-1991 economic planners shot the economy in the foot with rules like the one that reserved toys and luggage for "small-scale" enterprises - family craftsmen - stopping India from using light-manufacturing exports as an economic escalator like Japan in the '50s. But that is in the past.
91年以前においては、経済政策の立案者達はもっぱら次のような理論に拠っていた。すなわち、オモチャやカバンの製造業など零細企業-家庭の中の職人達の仕事に留まっていることが、インドが、50年代の日本のように軽製造業輸出をもって成長へのエスカレータとして利用するのを阻んでいるのだと、と。しかし、それはもう過去の話だ。
In sectors like cars and components, India is even with China, even ahead. China's first tentative car exports are a few hundred VW Polos assembled in Shanghai for Australia, and 20,000 Chinese-assembled Hyundais to Russia. Last year India's Tata group signed a five-year deal with Britain's Rover to ship it 170,000 Indica compact cars, designed and built in Pune.
自動車や部品産業のようなセクターにおいては、インドは中国と対等、いや中国をしのいでいるかもしれない。中国でも最初に試験的に行われた自動車の輸出は、上海で組み立てられ、オーストラリアに輸出されたフォルクスワーゲンPoloの数百台である。続いて、ロシアに輸出された韓国のヒュンダイ自動車の2万台がある。しかし、去年のインドのタータ・グループはイギリスのローバー社との間で、向こう5年間にわたりPuneでデザイン・製造される17万台の小型自動車を輸出するという契約にサインした。
With some distortions, Indian business houses survived the state-centred economic planning of the first three decades after independence in 1947, as did the vaisya (trade) castes with centuries of banking and commercial tradition. China's business classes were brutally purged after 1949. The tradition gives India a depth of management and marketing skills that China sorely lacks.
それなりの混乱はあったとはいえ、1947年のインド独立以降30年に及ぶ政府の中央集権的な経済政策の荒波の中を、インドの在来商人達は生き残ってきたのである--例えば数百年にも及ぶ銀行や商業の伝統をもつヴァイシャというカーストなどのように。一方、中国の在来の商人層は1949年以降荒っぽく放逐されてしまった。インドにおいては、伝統の力によってマネージメントやマーケティングスキルが深められているが、これらのスキルは中国においては欠落しているのである。
The raft of literary, cinematic and academic prizes won by Indians reflects the deep interpenetration of Indian and Western cultures, not matched in East Asia, which will serve India well in knowledge, entertainment and other creative sectors of the world economy. China is ahead in general literacy (90 per cent) but India's literacy rate (65 per cent) creeps up by about 10 percentage points every decade. Ever-stronger English and vernacular-language media build on this pool of readers. China's media remain constrained by party control.
文学、映画、学問などの諸分野でインド人が多く受賞している事実は、インドが、北東アジアとではなく、西欧文化との間で深い相互浸透がなされてきたことを反映するものであり、この文化背景が、世界経済における知識、エンターテイメントその他創造的なセクターでのインド人の活躍を支えているのである。一般的な識字率でいえば中国の90%がインドの65%を大きくしのいでるが、インドにおいても10年ごとに10%づつ着実に識字率は伸びている。常に強固な影響力をもつ英語、あるいは地元の各種言語によるメディアが、これらの読者の海の中で形成されている。中国のメディアは、未だに党政府のコントール下におかれている。
Many foreign companies have been substantially Indianised, like ITC (ex-British American Tobacco) or Hindustan Lever, and Indian firms such as Tata, Reliance, Infosys, Wipro, Ranbaxy and Dr Reddy's Laboratories are reaching into global markets - and investing in China. It is hard to think of more than one or two Chinese corporate brands that register overseas.
多くの外資系企業、例えばITC社とか、ヒンダスタン・リバー社が相当程度インド化してしているし、インド企業であるタータ社、リライアンス社、インフォシス社、ワイプロ社、ランバクシー社、そしてレディー博士の実験室社(面白い名前ですな)などがグローバルマーケットに参入しているし、中国にも投資している。一方、世界レベルで有名な中国企業は、1つかふたつくらいしか思いつかない。
India's big banks have emerged with bad debt ratios averaging 10 per cent, compared with the 22 per cent admitted by China's big four state banks (and believed to be closer to 50 per cent). India's stockmarkets, opened under the British in the 19th century, have been thriving since the '80s with millions of individual investors and a range of funds. China's stockmarkets are minor sources of business capital, mostly used to palm off dud public sector enterprises to domestic savers who have few alternatives.
インドの大手銀行は不良債権比率が平均10%程度であるのに対し、中国の4大国営銀行のそれは自ら承認するところによると22%である(実際には50%近いとすら言われている)。インドの株式市場は、19世紀にイギリス支配の下で開設され、80年代以降、何百万人という個人投資家や様々な財源に支えられ栄えている。中国市場は、ビジネスの資本を集める場としては殆ど機能しておらず、大体が他に選択肢を持たない個人投資家にろくでもない民間企業の株を押し付けるためのものとして利用されている。
This relative strength of the Indian banks and capital markets, and the sophistication of its accountants, lawyers, financial analysts and regulators mean India is less vulnerable to the kind of huge financial crash that some analysts see coming in China.
このような銀行、資本市場、会計、弁護士、金融アナリスト、規制立案者などにおけるインドの相対的優位は、中国において将来予想されている大規模な金融破綻の局面において、インドは中国ほど大きな被害を被ることなく乗り切るであろうということを意味する。
In a recent article in the US journal Foreign Policy the MIT's Huang Yasheng and the Harvard Business School's Tarun Khanna argued that this puts a different slant on China's apparently greater success in luring foreign investment. Rather than showing strength, it was a factor of China's weakness in directing domestic savings to productive use. It certainly means that foreigners who invested in India have a better record of extracting profits.
USジャーナルの外交政策の誌上で、マサーチューセッツ工科大学のHuang Yasheng 氏とハーバードビジネススクールの Tarun Khanna 氏は、このような点は、外資を惹きつけることに大きな成功を収めている中国に対し、異なる角度からの分析を与えるものになるだろうと論じている。国内貯蓄を生産活動に費消している中国の方向性は、中国の強さを表すというよりもむしろその弱点として数えられるべきである。それは、海外投資家としては、インドに投資した方がより大きな利潤を上げられるということでもある。
Militarily, China is ahead in its ability to deliver nuclear weapons by missile. India's army is more skilled and better led. Its air force has better training, equipment and doctrines. Its navy is building the kind of missile-destroyer China still has to import from Russia. Its electronic intelligence capability is rated by the ANU expert Desmond Ball as far ahead, and unlikely to be overtaken because of China's authoritarian culture. Its satellites are better.
軍事面においては、中国は核ミサイル等に配備においてインドに勝っている。インド陸軍はその調練度において中国よりも勝っている。インド空軍は、訓練、装備、軍律において優れているし、海軍は、中国が未だにロシアから輸入している対ミサイル兵器を自国で製造している。ANU(オーストラリア国立大学)のDesmond Ball氏によると、インドの電子諜報能力は中国よりもはるかに勝っており、おそらく権威主義的体質を持っている中国に追い抜かされることはないだろうと予測している。また、衛星設備も優れている。
Demographics may favour India's economy. Thanks to the one-child policy forced on the Han majority for near three decades, China has a rapidly ageing population whose over-60 component will rise from 10 per cent now to 30 per cent by 2050, placing a huge demand on welfare. India, which has avoided forced family planning except during Indira Gandhi's emergency rule in 1975-77, will have a much younger population for decades longer.
人口問題に関していえば、インドの方が経済発展に資するであろう。およそ30年にもわたる漢民族の一人っ子政策によって、中国の人口は急速に高齢化している-現在10%である60歳以上の人口は2050年までには30%にはねあがり、福祉関係予算への強大な圧力になってあらわれるであろう。インドについては、インディラ・ガンジー政権のときに1975-77年に緊急措置として行われたときを除けばこのような出生制限政策は取らなかったので、数十年後においてはるかに若年層の多い人口構成になるだろう。
Long-term predictions, of course, have a way of looking way out within a few years. Only 25 years ago, the West was galvanised by books called Japan as Number One and The Emerging Japanese Superstate. Japan was the next superpower, set to overtake a self-indulgent, lawyer-ridden US.
もちろん、このような長期展望というのは、わずか数年にして見直しを迫られることもありうる。今から25年前、西欧諸国は「Japan as Number One」「The Emerging Japanese Superstate」などの書物に激しい衝撃を受けた。日本こそが次の世代の超大国になり、惰眠をむさぼって、なんでもかんでも弁護士が支配しているアメリカに取って代わろうとしていると。
In recent years Japan has looked like an Asian version of Italy: fine cuisine and fashion, maker of highly desirable consumer objects, population set to decline rapidly, revolving-door weak governments, wishy-washy foreign policy. Then, just when it seemed to need a huge external shock, it has regained strong growth - from China.
しかし、ここ最近においては、日本はまるでアジアのイタリアのように見える。美食やファッションを追い求め、高度に趣味性の高い消費アイテムを生産し、人口は急激に減少に向かおうとしており、政府首脳の顔ぶれはコロコロと変わり、外交政策はウジウジしていて要領を得ない。そして、日本において海外からの強烈なショックが必要とされているまさに今、日本は中国から再び活力を得ようとしている。
Aside from the potential crunches from its financial bubbles and redundant investments, China has an inherent contradiction between the kind of advanced market economy it wants to build and its political system which may result in convulsions long before parity with the US is achieved.
バブル経済やダブついた投資資金における潜在的な破綻の危険はさておくとしても、中国が望んでいる先進的経済市場の性質と、中国の政治システムの間における中国固有の矛盾は、アメリカ経済と肩を並べるよりもはるか手前の段階でどうしようもなく露呈してしまうからもしれない。
India has its obscurantist forces, busy terrorising religious minorities and rewriting curricula to portray a mythical Hindu golden age as historical truth, which may extend their grip on national institutions and damage the country's vital intellectual fabric, its greatest strength.
インドにも頑迷な勢力がいる、それは盛んにテロ活動を行う宗教色の強い少数派であり、神秘的なヒンドゥー教の黄金の時代を歴史的真実として指導要領を書き換えようとする動きであったりするわけで、これらの動きが、国家機関の実権を握ったり、インドの最も優れた強さである活発な知識活動を阻害する恐れはある。
Another caveat is that behind scenarios of Asian ascendancy there is an implicit notion that the West, or the US in particular, is losing its creative drive or splurging its wealth. After the Japan boom, it turned out those divisive, time-wasting lawyers were useful in defining and defending intellectual property rights - the goods of the knowledge economy. Spoilt kids in Palo Alto garages thought up new game and work applications which made more profit than the Asian-made disc-drives they ran on.
アジアの興隆というシナリオに隠されたもう一つの警鐘は、西欧諸国、とりわけアメリカにおいて、創造性を失い、これまで蓄えた富を散財してしまうということだ。日本ブームの後、理屈っぽくて時間ばっかり空費すると言われた弁護士達が、実は知的所有権を定義づけたり守ったりするのに有効であるということがわかってきた-知価産業である。Palo Alt(カルフォルニア州にある地名)のガレージに巣くう甘やかされた子供達が、新しいゲームやソフトウェアを考え出してきたし、これらのソフトは、それらを読み出すアジア製のディスクドライブ(パソコン)本体よりもなおも利潤が大きかったのである。
Europe may be tired and old, but the US is continually renewing itself by immigration and its culture of expansion, exploration and innovation. Some demographic studies see high US fertility rates and immigration pushing the population from 281 million to between 400 million and 550 million by 2050. We may have seen only the beginnings of US ascendancy.
欧州は疲れ、老いてきているのかもしれないが、アメリカは、常に移民を受け入れることによって自らを刷新させてきたし、文化の壁を押し広げ、新天地を目指し、新しい発明を成し遂げてきた。人口に関するいくつかの研究によると、アメリカの高い出生率と大量な移民受け入れは、現在2億8100万人の人口を、2050年までに4億から5億人にまで押し上げるかもしれないと指摘している。その意味で、アメリカの時代は実はまだ始まったばかりなのかもしれない。
Finally, the idea of power rivalry applying to the US and China and/or India derives from the Cold War contest between two nuclear superpowers with relatively few economic linkages between them. China and India have strong and growing dependency on trade and investment flows with the US. Neither has any missionary zeal to spread its doctrine to the US, though the reverse is not necessarily true.
最後に、アメリカと中国(そして/あるいは)インドとの大国同士のライバル的図式は、ほとんど経済交流のなかった二大核大国(米ソ)の対立の図式から来ている。しかし、(ソ連と違って)中国もインドも、アメリカとの間で、投資や貿易について強いそして発展しつつある依存関係があるのである。また中国もインドも、自らの政治体制の正当性をアメリカに浸透させようなどという考えは全く抱いていない。もっとも、その逆は必ずしも真ではないが(アメリカの方がアメリカ的価値観を浸透させようとはしているようだが)。
China has nationalists and military hotheads who look forward to a showdown that regains Taiwan and puts the rest of East Asia in a submissive state. But barring an independence bid by Taiwan, they are under firm restraint by economy-minded political leaders. Nor would Japan or a reunified Korea return to imperial vassal status. India is deepening military engagement with the US, protecting Iraq-bound US supply ships through the Malacca Strait and exercising as far afield as Alaska with US forces.
中国においても国粋主義者や軍国主義者はおり、彼らはいつの日か台湾を併合し、それ以外の東アジア諸国を隷属国として従えようと思っている。しかし、台湾の独立投票を防ぎながらも、中国首脳陣は目下のところもっぱら経済発展に心を奪われており、これら軍国者達の活動は固く制約されている。日本や、南北統一を果たした韓国が、再び封建的な帝国主義国になるという見込みも少ない。一方インドは、アメリカとの軍事提携を深める傾向にあり、イラクに向かうアメリカの輸送船がマラッカ海峡を通過するのを護衛し、アラスカという遠方地においてもアメリカと共同で軍事演習を行っている。
Nonetheless, it suggests the world, and Australia's region in particular, will see remarkable shifts in economic power over the next half-century. Australia would be well advised to place money on India and China in terms of investing in specialist studies, business and professional connections, welcoming their visitors and appreciating their migrant communities.
しかしながら、これまで述べてきた中国とインドの台頭は、世界において、また地理的条件を考えればオーストラリアにおいて特に、この先半世紀における世界経済において顕著なシフトが起こりうることを予想させる。オーストラリアとしては、インドや中国に対し、専門家の育成や、ビジネスや専門技術の国際交流を育成するという観点から資本投下すべきであろうし、インドや中国からの訪問者や歓迎し、オーストラリア内における彼らのコミュニティを大切にすべきであろう。
以上です。これ以上僕ごときが何をコメントすることもないのですが、ちょっと感想を。
中国の次はインドとか、IT産業に強いとか言われているのは知っていましたけど、あまりこれまでまとめて考えてみたことは無かっただけに勉強になりました。
インドというと、ターバン巻いたオジサンがインドカレー作ってて、ガンジス川に死体が浮いてて、サイババとかスピリチャルワールドが展開されていて世捨て人的にハマってしまった日本人も沢山住んでて、そうかと思うとカシミールで戦争してたり、、というイメージがあったりするわけですけど(あなたには無いかもしれないが)、考えてみればインドというのはイギリスなんですよね。オランダ、フランス、次いでイギリスが支配を確立し、イギリスの文化やシステムがある程度浸透しているのでしょう。インド独立の果たしたガンジーもロンドンに留学した弁護士だったわけだし、インドの公用語の一つ(沢山あるけど)は英語だし。また、記事にもあったようにインド人の芸術系の人は結構いるのでしょう。ケイト・ブランシェット(ちなみにこの人はメルボルンの人です)の出世作「エリザベス」のシェカール・カプール 監督は確かインド人だったと思うし、インド映画って好きな人は好きみたいですしね。
こういった西欧文化のバックボーンというのが、西欧式の資本主義の発達においては有用な基礎になり、その点で中国よりも有利なのだというのは、なるほどねと思いました。考えて見れば、神戸の異人館の所有者はインド人が多いそうですし、インド商人というのは世界のあちこちにいますもんね。
オーストラリアに来てわかったのですが、やっぱり日本にいるときはナチュラルにアメリカナイズされて世界を見ていたんだなって。オーストラリアはコモンウェルス(英連邦)の国で、やっぱりイギリスの影響が強い。「コモンウェルス」という言葉も、こちらに来て「まだ、そんなこと言ってるんだ」と驚きました。生きた言葉として使われているのですね。だから、オーストラリアと親しく付き合ってる国や、趣味やスポーツが共通する国というのは、同じくイギリス系の国なんですね。インド、スリランカ、南アフリカ、ジンバブエなどなど。クリケットの試合なんかでは、しょっちゅう対インド戦とかやってます。オーストラリアの首相が、よくアフリカに飛んで紛争国の調停とかやってますが、あれもコモンウェルスの組内の寄り合いみたいなものなんですね。日本にいるときは、このようなイギリスを基軸とした世界風景というのが見えませんでした。おそらくフランスに住めば、フランスを基軸とした世界風景が見えると思いますし、スペインや南米に住めばスペイン・ポルトガル的世界が広がっているのでしょう。
記事中、日本が「アジアのイタリアみたい」という部分は笑ってしまいました。なるほどね、イタリアね。でも、イタリア人ほどエピキュリアン的に人生を謳歌してないと思うけどな。ただ、ハタから見てたら、グルメだし、ファッションにうるさいし、首相はコロコロ変わるし、外交政策もウィシーワッシー(wishy-washy=ウジウジして優柔不断という意味)だし、イタリアに見えるのでしょうかね?
それと言われてみれば中国も先行き不安要素が多いです。そもそも共産主義でありながら資本主義という一国二制度がどこまで続くものやら?という気はします。メディアも全然自由じゃないし、政府内部の運営の不透明さというのは残ります。上海あたりの経済発展をみてると、東京やニューヨークを既に追い抜いているような感じがしますが、同時に「ものすごく巨大で、ものすごく成功した北朝鮮」みたいなブキミさはあるように思います。そういう意味では、宗教対立が激しく、常にドンパチやってて不安定なようなインドの方が、むしろ紛争の所在がミエミエなだけにわかりやすいという気がします。中国の場合は共産党内での暗闘で誰が勝つかという密室内でことが進みそうですし。
ところで、ふと気が付けば中国人もインド人も周囲に沢山います。僕の住んでるLane Coveというエリアは、インド人をよく見かけますし、ガソリンスタンドやスーパーでレジ打ちのバイトのお兄ちゃんもインドからの留学生ってパターンが多いです。近くのCrows Nestのレストラン街もインド料理屋が多いですね。やたらインド料理屋があります。一方、隣町のChatswoodには中国人が沢山住んでます。わりと金回りの良さそうな、ベンツ乗り回しているおばちゃん風のチャイニーズが多いですね。「ふーむ、中国とインドかあ」と遠い目をして、はるか彼方のことを考えていたりしたら、実は今現在も半ば囲まれて暮らしてたりするのでした。
文責:田村
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