1. Home
  2. 今週の一枚Essay
今週の1枚(06.06.12)




ESSAY 263/家探し物語 2006



 写真は、GlebeにあるYHA(ユースホステル)。その右隣にチラッと見えるのは、推定数億円の豪邸。



 ここ数年、ずっと家を探しています。といって購入ではありません。賃借物件です。シドニーの不動産は、これは何度もエッセイで述べてますが、メチャクチャ高いです。ちょっといいなと思ったらすぐに1億円を超えます。築30年の2DKのマンションが、平気で4-5000万円とかします。冗談じゃない!ってくらい高いです。数年前に日本に帰ったときに、日本の不動産のあまりの安さに「うわあ、買っちゃおっかなあ」とグラッときたくらいです(買うお金もないけど)。

 今の収入でそこそこの家を買おうと思ったら、都心からかなり離れた、それこそキャンベルタウンとか行かないと納得のいく一戸建ては無いかもしれません。しかも、ウチの場合は巨大な家が必要です。なんせAPLACの事務所兼ですから、皆にレクチャーしたり、皆さんがシェア探しをするだけのスペースは絶対必要。さらに、最大4人まで宿泊可能にしてますから、別途4部屋必要。そこへもってきてカミさんがアロマの販売をするための倉庫や出荷作業場、コンスタントにやっているレイキやキネシオロジーのセミナーやセッションのための部屋も必要です。なんだかんだいって6ベッドルームでもまだ手狭という話になっています。

 今の家はかなり巨大で、6ベッドルームにプラスして、かなり広めのラウンジ、サンルーム、第二ラウンジ、ランパスまでついてます。これでLane Coveというグレード感のあるロケーションで週525ドルは安いです。馬鹿安といってもいいです。既に住んで8年経過しますが、今度やっと初めての家賃値上げがありました(それでも550ドルになるだけ)。同じ家に長いこと住むのも飽きるので(もしかして僕の人生で歴代最長かもしれない)、早く移転したいなと思ってたのですが、なまじ今がお借り得なだけに、これといった代替候補物件がありませんでした。Lane Coveで550ドルで一戸建てという条件だったら、せいぜいが3ベッドルームでしょう。

 週払い&ドルでいってもピンとこないでしょうから、日本円に換算します。週500ドルというのは、月間に直すと大体2200ドルくらいです。5×4の2000ドルにならないのは、1ヶ月は28日ではありませんから(2月以外は)、30日とか31日で計算すると、ひと月で4週プラス0.3〜4週くらいになります。もっと正確に計算するなら、週レントを7日で割り、これに365日を掛け、さらに12月で割ることになります。今のウチは月払いですから、この計算方法で毎月払ってます。さて2200ドルというのは日本円で幾らかというと、今のオーストラリアドルのレートを85円だとすると18万7000円になります。月の家賃18万7000円です。かなり高いでしょう。これで3LDK一軒家ですからね。でも3LDKで週700とか800ドルクラスなんてボコボコありますから、家賃30万なんかザラってことになります。日本で30万払ったら結構いいところに住めますよ。いかに高いかおわかりでしょう。まあ、同じ3LDKでも居住環境や広さは段違いになりますけど(プールがついたり)。

 こんなクソ巨大な家にターゲットを絞り、しかも空港へのお迎えや学校めぐりに都合がいいように都心10キロ以内と限定して買おうとするなら、まず間違いなく億単位の買い物になります。そんなん、無理、無理、絶対無理!の世界で、だから借りるしかないです。月々これだけ家賃払うなら、小さい家でも買ってしまった方が得なのは分かるのですが、小さい家なら買ったところで使えないんですな。じゃあ、それは投資用物件として賃貸に出して家賃収入でローン返済を賄うという手もあります。しかしねー、こんな異常な不動産価格が将来的に続くのか?って懸念も大いにあります。実際、シドニーの不動産価格はここ1−2年伸び悩んでますし、下がってるところも多いです。これでもっとドカンと下がってくれたら考えないでもないけど、まだ下がりそうな気もする。というよりも、今の時点でも不動産価格が高すぎることが、経済活動を阻害したり、皆の生活を圧迫したり、所得格差を押し広げているという批判もあります。



 実際、社会経済的に言えば、不動産価格は年収の3倍くらいが望ましいといわれます。市民の平均年収の3倍圏内にシドニーの物件の平均価格がおさまってるかというと、全然おさまってないです。5倍とか、へたしたら10倍とかになってると思います。異常なんですよね。この異常がなぜまかりとおっているかというと、皆さん投機狙いで買ってるからでしょう。いずれ値上がりするから、その売却益でローンを払えばいいやと。ローン金利よりも不動産の上昇率が高ければ、それは不動産に投資した方がいいですからね。しかし、社会経済設計からしたら、この値段は是正したい。是正したいと思ってる行政当局(連邦銀行とか)もあります。しかし、是正するということは、投機狙いで買っている多くの人々(過半数以上のシドニー市民)が大損するってことで、なかなかそれも難しい。それに不動産価格が上がったり、取引が活発になることで政府の税収も潤っていました。先般、NSW州の来年度予算が発表になりましたが、最初から大幅赤字予算を組んでます。ここ1年ほどの不動産価格&取引の伸び悩みから、政府に税収が入ってこないからです。でも、人口は増えるわ、交通渋滞は日々深刻になるわでインフラ予算を組まねばならない。こんな状況で、不動産がガーンと落ちたら目も当てられないって話になります。というわけで、オーストラリア、特にシドニーは高値宙ぶらりん状態になっています。

 しかし、これだけ不動産価格が上がっているにも関わらず、賃借料は売買価格ほどには上がってません。一昔前に比べればかなり値上がりしてますけど、それでも売買価格の2倍だの3倍だのという数字に比べれば伸び率は少ない。家賃には投機狙いという要素が存在しえず、需給バランスでいくしかないですから。なお、もっと値上がりしてないのがホームステイ料金。10年前だったら160ドルくらいだったのが今は230ドルくらいでしょう。もっともっと値上がりしてないのがシェア代。今でも平均150ドルくらいでしょう。そりゃシェアのくせに週300ドルとか400ドル代もありますが、100ドルを切る物件もちゃんとあります。10年前で120ドル平均くらいだったと思うから、そんなに上がってないです。

 ワーホリさんなどで、シェア代が高いという人もいますけど、3LDKのマンションが5000万円するという社会、不動産コストに関する限り日本の2倍以上するような社会で、週1万円かそこらで暮らせるというのは実はメチャクチャお得な話なんですよね。また、景気がよくなってるだけに、給料もよくなってます。最近のオージーは皆さん金持ちです。日本語しかダメでジャパレスなどで働いてるだけだったら10年前から給料は変わらないかもしれないけど、英語が出来るようになってローカルのカフェで働けばそれなりの給料をゲットできるはずです。英語力による「格差社会」は残酷なくらいハッキリしてきてるといえます。





 さて、そんなビッグ・ピクチャーはさておき、問題は僕らの家です。純粋経済的に考えたらこの安い家賃で継続していた方がいいのですが、赤字覚悟でも移りたいなと思っているのは、@いい加減に心機一転したいという定期的なリセット欲求、Aビジネス上のチャレンジがあるからです。

 @は読んでのとおりです。Aについては、こういうことです。今、僕は一括パックというサービスをメインに仕事をしてますが、これって自宅のゲストルームに皆さんが泊まりますので、部屋数の限界がビジネスの限界ってことになります。だんだん分かってきたのですが、何か知らないけど、来るときには集中豪雨のように人々は来ますが、来ないときは全然来ない。もう少しコンスタントになって欲しいのですが、そういうわけにもいかない。集中豪雨時期になると、部屋が足りないという問題も出てきます。しかも、カミさんのレイキとか3in1などのセミナーが入ってくるようになると、ますます部屋が足りなくなる。マレではありますが、やむなくお断りしたり、日程を変えて戴いたりしています。

 部屋数の限界が企業規模を限界付けるという構造は良くないぜよ、と思うわけですね。はるか以前に弁護士になりたての頃、「個人の労働力の限界が企業規模を限界付ける」という弁護士業務の構造的欠陥に気づいてしまったわけですが、今も似たような限界を感じているわけです。その昔は、半ば趣味的に、牧歌的にやってましたから、たまにお客さんが来たら、「やあ、いらっしゃい」と農村的風景の中でやってられたのですね。でも、続けていればなんだかんだで人は増えます。いつまでも農村的経営でもないなあって気分にもなります。しかし、同時に、いい意味での趣味性は貫きたい。そもそもオーストラリアに住むこと自体趣味みたいなものです。オーストラリアで仕事にキリキリするくらいなら日本に帰ります。気分良く日々暮らせないならオーストラリアにいる意味がないくらいに思ってますので。

 また今提供している一括パックというサービスの付加価値が低下するんだったら意味がないんですよ。この場合の付加価値というのは、究極的にはいかにオーストラリアに来た甲斐があったと言って貰うかであり、そのためには見知らぬ異国で一人ぼっちで戦っていけるだけの強さとスキルを皆さんに習得してもらうことだと思ってます。そこでは、どこまでサポートして、どこまで自立してやってもらうか、このギリギリの見極めが大事です。ここはあんまりシステマティックに出来ない、物凄く人間臭い部分で、その人の性格によって微妙にこのレシピーを変えてます。この点はかなり意識してやってますよね。

 また、性格だけはなく、偶然性も大きな要素になります。偶然というのは、例えばおっかなびっくりシェア探しの電話をかけるとしてですね、立て続けに何件もガチャ切りされたり、「英語もろくすっぽできないのか、やれやれ」と大袈裟に溜息つかれたり、「何言ってんだかわかんねーよ!」と怒鳴られて切られたりしたらへこみます。しかし、そこは優しいオーストラリア人のこと、何件が続けたら嘘みたいに優しい人に出会います。住所のスペルを20回繰り返して言ってくれる人とか、諦めそうになるのを「頑張れ、諦めちゃダメだ」と励ましてくれる人もいます。結構いるんですよ、こういう仏様みたいな人。で、偶然性というのは、最初にハードな体験をしちゃうと誰でもビビるし、最初にいい体験をすると誰でも自信がつきます。ですので、皆さんの進行状況を横目で見ながら、落ち込んでたら励ましたり、一緒に物件を見たり、食事まで気が廻らなかったらどっかに美味しいものを食べに連れて行ったり、それなりに気を使うわけですね。見てないようで、見てるという兼ね合いが難しいわけです。

 そのようなケアをするためには、確かに一緒に暮らしていた方がなにかと便利ではあります。シェア探しの電話なんか、夕方以降にかける場合が多いですし。しかし、今のLane Coveという立地と、住環境はどうだろうか?というと、うーん、ちょっとプロテクトし過ぎかな?って気もします。確かに、軽井沢のように緑も多くのどかな住宅地、近くに可愛らしい商店街もあるからいいんだけど、それだけに木立に囲まれた住居の一室で、その中は全部日本語環境というのは、ちょっとヌルいかもしれないなとも思うわけです。一人ぼっちでシェア探しに出撃するにはちょっとギャップがつらいかな、と。



 そこで考えたのは、もう自宅にゲストルームという発想は止めにして、宿泊は外部にする。そして自宅は純粋に事務所というか皆さんの「居場所」にする。そして、オススメの宿のある所から歩いて行ける範囲内に事務所を移すという発想です。もともとゲストルームなんてのは便宜のためにやってるだけで、本業でも何でもないわけですから。

 オススメの宿があるエリアとして、僕のメガネにかなったのは二つ。グリーブ(Glebe)とキリビリ(Kirribilli)というエリアです。
 グリーブはYHA(ユースホステル)をはじめGlebe Village、Alishan, Wattle Houseほかバックパッカー系の宿が多いです。ゴージャスなB&Bもあります。キリビリも意外と知られていないのですが、海をはさんでオペラハウスの真向かい、首相官邸もあるという超高級地でありつつも、意外と安宿が多い。グリーブに比べるとキリビリの方が個室系ホステルが多いです。この2エリアは、シティに便利だけど、シティ臭さが無く、日本人の人口比率も低く、同時に治安的も安心という絶妙な立地にあります。他にもバッパーのメッカといえばキングスクロス(ポッツポイント)がありますけど、雰囲気&治安的にイマイチだし、地元ローカルの香りがしない。ニュータウンもビラボンといういいバッパーがあるけど、それだけで他に選択肢がない。ボンダイも意外といいバッパーがない。それに最初の拠点にするには、東に寄り過ぎてしまっていて、バランス良くシドニーが見渡せない。

 ローカル感あふれて、シドニー大学のお膝元の学生街で若い人も多く、美味しい店も多く、カルチャー的にも楽しく、ブロードウェイには巨大なショッピングセンターもある、、という意味ではグリーブがベストだと思ってます。僕がオーストラリアに来て一番最初に住んだのもグリーブですし、その後12年たっても未だに僕の中ではフェバリット・サバーブの地位を維持してます。単純にいいエリアなんですね。それに、グリーブ、ニュータウン、バルメイン、ライカードというのは、通称「カフェラッテ三角地帯」という、シドニーの最大のゴハンが安くて美味しいエリアです。カフェのレベルも高い。



   そのグリーブの分かりやすいところに、事務所(兼自宅)を置く。宿はYHAなどに泊まっていただく。YHAなんか日本語の予約サイトすら自前で持ってますからね。バッパーの場合、4人部屋、6人部屋が当たり前です(ドミトリー、通称ドミ)。当たり前だけど完全英語環境。まずそれで慣れろというか、「現地に来て英語が出来ないというのはどういうことか」という教育的効果はあります。現状では、家にこもってる限り英語なんか使わなくても済むし、家を出ても住宅街だからあんまり人にも会わない。その意味で、バッパーなどの宿、あるいはグリーブの街路を歩いてるだけで「外国に来た」的な実感はあるでしょう。バッパーも最初はツライ人もいるかもしれないけど、でもそれが現実だもんね。これを乗り越えていくしかないわけです。それに空港からホームステイ直行となると、いきなりもっと濃密な家族的英語環境になるわけで、それに比べればまだしも「宿」の方が人間関係にスカスカ感があって楽でしょう。

 で、6人部屋ドミの雑居房状態がガマンできないor恐い人は、別に個室もありますから、そっちにすればいいです。ただし、個室は高いです。YHAで4−5人部屋なら一泊25ドルあたりからありますが、YHAの個室はダブルで一泊70ドル(シングルはなし)。グリーブビレッジでシングル55ドル/週315ドル(でもドミなら一泊21ドルから)、Wattle houseで一泊65-75ドル、Alishanで一泊55ドルからです。2倍以上のお金を払って個室にしたいかどうかは本人の選択でしょう。

 ただ、ドミの雑居状態に関する基本的な二つの懸念点=つまり@所持品が取られるかどうか心配、A周囲100%ガイジンばっかりで居場所がない、という点はクリアするつもりです。つまり、すぐ近くにウチの事務所がありますから、取られて困るようなもの、嵩張るものなどはこちらで預かります。「居場所」問題ですが、一括パックで来られている間はいつでもウチの事務所に滞在してもらえるように開放しておきます。そこで僕が生活基礎のレクチャーをするとか、学校選びの相談をする他、勝手にやってきてもらってインターネットをしてシェア探しをするにせよ、シェアの電話をかけるにせよ、僕にアドバイスを求めるにせよ、最初の拠点にしてもらうと。半分独立、半分サポートのような感じになります。

 ただ、あまりに立地が便利すぎると、オーストラリア社会に入っていけないお子ちゃま達の溜まり場になる恐れもあるので、程よいくらいに不便な立地がいいんですね。それなりにわざわざ行かないといけない、ちょっと面倒くさい距離感がいいと思ってます。しかし、こちらから出撃するには便利なところが良い。グリーブやキリビリは、この微妙なラインを衝いています。学校めぐりも楽になりますし、空港へお迎えに行くのも楽です。何が楽かというと、ハーバーブリッジを渡らなくても良いからです。ラッシュ時間帯はハーバーブリッジ、正確にはハーバーブリッジを渡る/渡ったあとの区間が地獄のように混みますから。ということは、皆さんがシェア探しに出かけたりするのも楽だということです。要するに機動性が高い。学校巡りなんか全部公共交通機関で行ってもいいくらいです。

 あと、ビジネス面でいえば、前述の「部屋数が企業規模を限界付ける」という制約を外したいですね。このままやっててもマンネリに陥りかねないし、いろいろ角度を変えてトライしていくべきかなって思ってます。プライベートの面でいうと、ズルズルベッタリの公私混同状態も、農村的状況の時期は良かったですけど、何週も続くとプライベートタイムがないだけに厳しくなってきます。本当は、僕もカミさんも自営やってるんだから、本宅一つにオフィス2つあってもおかしくはないです。でも、それだと家賃的にあまりに厳しいし、そこが厳しいとビジネスにおけるいい意味での趣味性が消えてしまって何のこっちゃになりますもん。



 というわけで、グリーブいいな、いつか住みたいなってずっと思ってるのですが、しかしグリーブがいいエリアだと思ってるのは僕だけではなく、地元のオーストラリア人もそう思ってるわけで、だから激戦地でもあります。不動産、高いあるね。レント(家賃)も高いあるよ。それに、シティ周辺になると、巨大な家ってのが無くなります。グリーブにもかなり巨大な家はありますが、これはもう英語でマンションと呼ぶような、買ったら3億円以上するような豪邸です。そもそも貸し物件として出ない(出ても借りられないけど)。

 事務所だけならワンベッドルームでも十分だけど、住居とコミにするとなると4ベッドルームでも足りないって話になります。ゲストルームをやめただけでは思ったほど縮小できない。一つはいつやってきてもOKという皆さんの居場所を提供しなきゃいけないでしょ、またカミさんがセミナーをやるのでその部屋がいるでしょ、僕とカミさんのオフィスがいるでしょ、カミさんのアロマやホメオパシーなどの倉庫や作業場がいるでしょ。特に倉庫はデリケートなもので、温度や湿度が適度でなければダメ、パソコンと一緒においておくと電磁波などの悪影響があるからダメってことになってるそうです。またゲストルーム廃止といっても完全廃止は難しいかもしれません。やっぱり泊まりたいって人もいるかもしれないし、緊急事態で泊めてあげることも出来た方がいいです。

 グリーブで4ベッドルーム以上の物件というのは、それを探すだけでも大変です。あったと思ったらすぐに700ドル、800ドルになってしまうという。安いと思うとやっぱりショボかったりする。それにグリーブだったらどこでも良いのではなく、やっぱりこのあたりに住みたいなというエリアはあります。また、Glebe Point Rd沿いに点在する宿泊施設からあまりに離れているのは考えものです。せいぜい歩いて10分から20分くらいが限界かなと思います。また同じ歩くにしても坂がきついのはダメとか(^_^)。

 じゃあ、キリビリエリアだったらあるか?というと、これがもっと無いです。あるとしたら超豪邸というのはグリーブに似てます。まあ、古くからあるシティ至近の高級住宅地という意味ではグリーブと同じですから、どうしても似通ってきてしまうのでしょうが。



 そこで出てきたのが、事務所・自宅分離プランです。
 二つに分けると通わないといけないし、保証金から光熱費から什器備品やインターネット接続までダブルで用意しなきゃいけないからかなり割高にはなるんだけど、「だって、無いものはしょーがないじゃん」ってことですよね。これはこれで真剣に考えなければならない。

 でもうそうなるとですね、まあ現状の550ドルは無理として、半分ヤケクソで仮に800ドルまで出すとしても、オフィスに2BRあたりのフラットを300ドル、自宅を4BRの一軒家を500ドルと予算配分しても、ろくな物件がないです。「ひー」って感じですよ。あんまりオフィスと自宅が離れていると、通うだけでシンドイので、そのしんどさは事務所に詰める時間の減少となって現われ、ひいては皆さんのお世話が不十分になる恐れがあります。ゆえに近いほうがいい、、、んですけど、なかなか厳しい。まあ、物件それ自体としてはあるんですよ。住めれば何でもいいんだったら、この予算で収まります。しかし、人間40代を過ぎるとうるさくなりまして、それなりの「テイスト」が欲しくなります。「味わいのある家」がいいなと。クソ贅沢なことを抜かすようになるわけですね。

 でも、こちらの家って本当に面白くて、やたらテイストのある家もあれば、全然テイストがない家もあります。そのバラエティの豊富さは、到底日本の家屋の比ではないです。なんせ築年数なんか余り誰も問題にしてないし、古いほうがむしろ好ましくさえあります。それだけキチンとメンテナンスをするということであり、数億円以上の豪邸は殆どが築数十年のヴィンテージ物だと思われます。要するに日銀の建物とか、鹿鳴館とか迎賓館を想像してもらえればいいわけですね。あれらも築百年クラスでしょう?まあ、そんな超弩級物件はさておき、レンタル物件であっても、ガッシリした煉瓦造りで、窓はステンドグラス、天井にはレリーフが施され、マントルピースがあって、、という風格のある家もあります。かと思うと、造りはチャチなんだけど窓一面海とか森とか眺望が素晴らしい物件もあります。はたまたやたら広くて楽しそうなリビングがあったり、昼下がりに居眠りをしたくなる温室のようなサンルームがあったり、庭が良かったりします。今の家も、造り的にはシャビー(安っぽい)な一面もあるのだけど、殆どブッシュのような庭や、やたらだだっ広いフローリングのリビングなど、それなりにテイストはあります。テイストといっても、別にゴージャスである必要はなく、その家に個性があり、その個性を気に入るかどうかですね。なんせ自宅で仕事をするような場合、家が気に食わないと24時間全部不愉快ですから、それなり重要な要素だったりします。しかし、予算が低いとこのあたりのティストが薄らいでいってしまったりするわけです。辛いなあ。



   そこで、「よし、いっそのこと遠く離れてもいいから、広くてテイストのある家を、、、」とか思って探したりもします。が、これも無い。リンドフィールドとか、かなりテイスト溢れる家々が多くて好みだったのですけど、4BRクラスで軽く800ドルはいきますよね。もっと北に進んで、ピンブルとかタマラマあたりまで行けばそれなりにあったりしますけど、今度はさすがに遠い。空港までお出迎えなんて気楽にやってられる距離ではない。年々激しくなる交通渋滞を考えると益々厳しい。グリーブとかキリビリに事務所を設けたとしても、そこまで往復するのが面倒。夜更けまで皆さんとお話してたら、もう帰るのが鬱陶しくなって結局事務所に寝泊りするようになってしまう。まあ、そういう生活もいいっちゃいいのかもしれませんけど、幾らテイストがあっても、住まなかったら意味が無いって気もしますよね。

 そんなこんなで、いっそのこと西の奥の方はどうだろうとか、気分を変えてクージーなどの海沿いに出てみるとか、色々考え、探したりしています。バーウッドに嘘みたいな豪邸が800ドル代で出てたりして、かなりグラッときましたけど、バーウッド拠点での展開が読めなかったので泣く泣く流しました。現在の家でも探すのに半年以上、都合100軒以上見ましたが、今回は探し始めてすでに数年、見た物件の数も百軒なんてもんじゃないです。あらゆる可能性を考えて、あれこれ見ています。

 しかし、結局は気に入った物件があるかどうかなんですね。エリアとか、条件とか色々な法則性やパターンを考えたりするのですが、良い物件に当らないと、「この路線はダメかあ」と思っちゃうし、良い物件、「惜しい!」という物件に当ると「おお、この方向性は脈があるかも」と思えてしまったりします。だから、けっこう偶然に翻弄されている部分もあります。個性豊かなオーストラリアの家屋群は、パターン化思考を拒否する難しさと、楽しさがあります。楽しいんだけど、決めきれない。

 うーむ、どうなることやらと思いつつ、過去にも同じようなことを書いたなと思い出しました。今の家に引っ越すまでの状況を綴った「家探し挫折物語」/シドニー雑記帳97年12月です。あの頃も大変だったのね。しかし、当時の家賃ってやっぱり安いわ。週500ドルくらいで結構いい物件ありましたもんね。

 それもこれも不動産の異常高騰によるもので、くっそー、バブルに浮かれてるんじゃねーよ>オージーって気分にもなります。もう、政府が税収不足で困ろうが、大多数のオージーが破産しようが、バブル崩壊してくれいってスサんだ気持ちにもなります。



   しかし、「もうちょっと」とか言いながら、家賃が今の1・5倍とかになったらやっていけるのだろうか?という不安も当然あります。不安どころか、「ダメに決まってるじゃん」って気もします。理屈で考えたらそうなります。趣味性云々とかにこだわって、皆さんからは一銭も貰ってないわけですから(ゲストルーム代は別だけど)、家賃が上がったらどうのではなく、今現在でも廻ってるのが不思議なくらいですわ、はっははは。

 しかし、この種の心配はしていても始まらないって部分もあります。心配レベルでいえば、一番最初に永住権取って「さあ、これからどうしよ?」と言ってた頃のほうが遙かに状況は深刻だったもんね。なんのアテもなかったわけだし。それに、今の前はニュータウンの週280ドル家賃を二人で折半していたのが、今の家に移ってきたときは525ドルを4人等分になったわけです。それが一人減り、二人減りで、結局今僕一人で全部払ってるわけで、単純計算で一気に家賃負担が4倍になったわけですけど、それでも何とかなってるもんね。

 曰く言いがたい、感覚的な物言いになりますけど、お金というのは守っていると入ってこなくて、ドーンと減らすとその分入ってくるような気がします。「お金は使わないと入ってこない」というのは昔から言いますが、そういうことってあるのかもしれんです。今でも、なんか不思議にゲストルームの部屋数が足りるようにお客さんが来るのですね。ああ、もう満杯だなあってところで止まる。「これ以上来てくれると大変だ」という意識が、なんかしらんけどオーラやバリアになってホームページから発散されるのかもしれません。それはまあ冗談にしても、そう思いたくなるような不思議な現象が実際には起きるのですね。だから、部屋数というキャパの限界を取り去ってみたらどうなるんだろう?っていう興味はありますね。

 まあ、やたら使えばいいってもんじゃないのは勿論ですけど、「吐き出さないと入ってこない」というのは真理なんじゃないかって気がします。占いなどでもよくそう言う言い回しがありますし。対象は別にお金に限らないと思うのですが、技術にしろ、知識にしろ、勿体無がって出し惜しみをしているとダメなんでしょうね。気前良くバンバン出していくことによって、流動性のダイナミズムが活発になっていくのでしょう。経済なんかでもそうですよね。皆がビビってタンス預金に走ると、誰もお金を使いたがらないから景気がさらに冷える、景気が冷えるから廻りまわってタンス預金をしていた人も失業してしまう。これを、ビビりながらも皆でガンガンお金を使うようになると景気が良くなる、だから失業している人も再就職でき、その人がまたお金を使うようになり、さらに景気がよくなり、、、って、そういう循環はあるのでしょう。

 だから、今回の家探しも、あれこれ無数に理由はあるのですが、最も核心にあるのは、ちょっと動いてみよう、動かしてみようって部分なのかもしれないです。



文責:田村