「留学」といえども、ひとつの「進学」であることに変わりありません。自分が行く学校について、きちんと知った上で検討したいと思うのはごく当然のことです。同じ地域の学校に進学する場合、その学校の学費や入学難易度だけでなく、校風や評判なども、調べるまでもなく耳に入ってくるでしょう。学校まで足を運べば校舎施設、登下校する在学生の様子も見られます。ところが留学ともなると、場所が遠いだけに、そうそう簡単に情報は入手できませんし、自分の目で確認することもままなりません。なかには自力でとことん情報収集をして学校選択から手続きまでしている方もいるでしょうが、通常は留学斡旋業者など関係機関が提供するガイドラインに頼らざるをえないのが実状ではないでしょうか。
いまや、中・高校生の留学を扱う斡旋業者は大小すべて合わせれば数百とも言われています。長年の事業経験を活かして、懇切丁寧な説明と的確な現地サポートをしている良心的な業者もいる一方で、業者の都合に合わせて部分的にしか現地の情報を示さず、必ずしも留学生にとってベストとは言いがたい学校を紹介したり、不必要に高額な費用を請求しているケースもままあります。また留学前の準備・心構えについての説明、現地でのサポートシステムなどが不適当なため、現地へ来てからのトラブルも頻発しています。営業である以上広告的色彩で語られることもある程度は止むを得ないのかもしれませんが、実際に留学先で失望感や不安感にさいなまれたり、最悪の場合には留学断念・途中帰国という事態すら生じていることも知っておくべきでしょう。留学には本人の強い目的意識と、家族の理解・協力が不可欠ですが、そもそもの出発点が誤っていた場合、どんなに本人・親が努力しようとも成功することは非常に難しくなります。
こうした残念な事態を引き起こしている原因を突き詰めれば、「絶対的な情報不足」に尽きると思われます。必要な情報が正しく伝えられないために、「外国のことはよく分からないから」と綿密な検討・納得のいく選択を諦めてはいないでしょうか。また、地域内の進学に比べて、抽象的に「留学」の一言で大雑把に括って考えてはいないでしょうか。繰り返しになりますが、留学といっても学校所在地が国内か国外の違いだけで、「進学」であることに本質的に変わりはないはずです。せっかくの留学を水泡に帰さないためにも、また、より実り多いものにするためにも、留学前に「正確で豊富な情報」を把握することが大切です。
そこで、本書では現地オーストラリアにて中・高校生留学プログラムを実際に手がけた経験から、日本に誤って伝えられている情報、まったく伝えられてない大切な情報をも網羅し、より正確でより詳細な情報をできるだけ多く提供できるよう編集しました。取材過程では、曖昧な噂に惑わされないよう、事実を徹底解析するため、州の教育省をはじめ、実際に受入先となる学校へ一校一校足を運び、留学受入担当者から詳しく話を伺ってきました。これだけ詳細に渡る日本語情報は、おそらく現存しないでしょう。
本気で留学を考える中・高校生とその家族が、ありのままの素顔を知った上で、最も適した留学プラン、ひいては人生プランを設計する際、これらの情報が「頼りになる片腕」として活躍できることを願います。