大切なことは、その学生に合った教育環境を提供すること。
日向でよく育つ植物がある一方で、日陰の方が適した植物があるのと同様に、人間にもそれぞれ、成長に適した環境があるものです。その教育環境の選択肢は日本国内だけで考えるならば、国公立か私立かという限られた選択肢はあるものの、世界レベルで見れば、日本の教育制度は大量生産用に規格化された大工場のように統一・整備されており、学校による教育環境の差異はそう大きなものではないでしょう。
この教育環境の選択肢を広げるべく、世界に目を向けてみると、そのバリエーションの中から各個性に合った教育環境が選択できるはずです。
特に、オーストラリアは一般的に、個性を重視した教育に定評があり、学校の特徴も多種多彩なため、教育環境の選択肢が比較的多く用意されています。たとえば、同じオーストラリアの学校でも、大学進学を目標として受験対策に力を入れている学校もある一方で、自由な雰囲気の中で各自の得意分野を伸ばそうという方針の学校もあります。そういった豊富なバリエーションの中から、その学生の成長に適した環境を選択することができるのです。
実際、日本ではあまり成績もよくなく自信もなかった学生が、オーストラリアに留学してから、自信を得て、自発的に学習意欲を燃やし、将来への夢を膨らませながら、留学生活を楽しんでいるケースも多くあるのです。その一方で、環境選択を誤ったことで、日本にいた時以上に自信を失い、ホームシックなどで精神的に病んでしまうケースもあります。安易に留学を決めてしまう前に、現状における自己分析、あるいは親御さんから見たお子さんの現状分析が非常に大切ですし、それを前提に留学目的を確認し、最適な教育環境を見つけるために最善の努力をすべきと思います。
また、将来どのような分野に進学したいのか、どのようなことを学びたいのか、どのような人生を歩みたいのか等によっても選択方法は変わってくるでしょう。たとえば、日本に一般に通ってきた成功観「一流高校→一流大学→官僚もしくは大企業に就職」という、いわゆるエリートコースをお望みの方には、高校卒業までを見越した長期間の留学はあまりお勧めしません。もちろん、オーストラリアの高校を卒業した後、ケンブリッジやハーバードなど世界の名門大学に入学することも可能ではありますし、海外の大学を卒業した後に日本の一流といわれる大学院に入ることもできます。しかし、日本の大学への進学をお考えであれば、オーストラリアの中・高校に留学しても、英語力が伸びるとか、貴重な異文化体験ができるというメリットはあったとしても、日本の厳しい大学受験の壁を乗り越えるという目標に関しては、なんら貢献しないでしょう。多少の英語力向上と、異文化体験を目的とする留学であれば、1年間の交換留学制度や夏休みなどを利用した短期留学が適しています。
日本社会も大きく変化しています。
バブル経済も崩壊し、その清算が進む中で企業では大規模なリストラが行われ、日本でもっとも安定した地位を確保していた官僚についても批判も強まる中で、「一流大学さえ出れば、将来は安泰」といった一昔前の社会通念が通用する時代ではなくなりました。世界を例にとっても、これまで世界の登竜門と言われてきたハーバードやオックスフォード大学を卒業した超エリートですら、安泰な人生を歩んでいける保証はありません。これからは、ますます国際化が進み、日本もこういった世界の潮流に呑まれていくことでしょう。
こうした時代背景からも、若いうちに一人で海外へ出、日本の教育の枠では教えられない「世界の現実」を知り、本当の国際感覚と自立心を養っておくことが、長い目でみた場合、何よりの武器となるはずです。
以下の章でオーストラリアの教育制度や留学生活の実態をご紹介しますので、これらの情報をもとに、あなたに最も適した環境を探してみてください。