シドニー雑記帳








【番外編】留学現場からのメッセージ






     田村が論じている「オーストラリアの中高校生留学問題」ですが、直接の担当者として私(福島)からもお伝えしたいことがありますので、番外編として補足させていただきます。田村の書いている内容と一部重複する部分もあるかと思いますが、私はシドニー近郊への中高校生留学の現況に焦点を当てて述べていきます。




     まずは、「中高校生留学」について簡単に説明しておきます。中高校生の留学にもいろいろなタイプがありますが、ここで取り上げているのは、「フルフィー留学」、つまり、日本で中等教育を受ける代りに、外国の教育機関で同じ資格を得ようとするもので、実際にはほとんどの留学生が高校卒業までを目標としています。期間が限定されている交換留学制度や短期の体験留学などとは違い、現地の学校で現地生徒と同様に勉強し、現地生徒と同様の高校卒業試験を受けるというもので、期間も長ければ5〜6年にも及びますし、費用も年間2〜300万円かかります。

     この「フルフィー制度」についてもう少し説明しておきます。オーストラリアの教育機関が海外留学生を受け入れる際には「フルフィーペイ(授業料全額納入)」が条件となっています。現地のオーストラリア人の場合は、政府から教育費として学校に援助金が支払われるが、これを留学生のために使ってはならないというルールになっているわけです。ですから、中高校に限らず、大学であろうが、ビジネス学校であろうが、TAFE(専門学校)であろうが、どの教育機関に入るにしても留学生は全額納入、つまり現地学生よりもずっと高い授業料を支払わねばなりません。アメリカが治安の面で留学先国としての人気を落していることから、オーストラリア政府では、アジアから近距離にあること、治安が比較的よいことをプッシュして、留学産業による収益を期待しているのです。

     一方、地方自治体、民間の留学斡旋業者、あるいは日豪両国の学校によってアレンジされた「交換留学制度」の場合、学校推薦や審査過程が必要なので、必然的に比較的成績も優秀でしっかりしたタイプの子が選ばれます。それでも現地ではカルチャーショックに始まって、言葉による誤解、ホームシック、授業についていけない等のトラブルは頻発します。
     長期休暇を利用した「短期留学(体験留学などと呼ばれる)」は最もお手軽な異文化体験方法といえます。基本的に誰でも参加出来ますし、短期のことなので小さな問題こそあれ、異文化や英語に親しみつつ、ホリデー感覚で楽しむことができます。

     これらと「フルフィー留学」は全く性質が違います。上記2つの制度で参加した留学生は、現場ではいわば「お客様」という立場になりますが、フルフィー留学の場合、現地学生と同等に扱われるわけです。受け入れ側も留学生の世話にかまけている暇はないですから、日常生活から学校生活に至るまで全て一人で対処しなければならない。その上、学業においては、不自由な外国語ですべての教科を現地学生とともに学ばなければならないのですから、相当にハードであることは言うまでもありません。

     勿論、大学など高等教育機関にフルフィー留学している方は、自らの意志で真剣に勉学することを目的にやってきていますので、ほとんど問題はないのですが、中高校生で「フルフィー留学」を利用しようとする留学生の場合、トラブルが後を断ちません。というのは、日本の教育機関に馴染まず、なんらかの問題があって教育を継続することが出来ず、日本の学校に行く代り、ありは大検を受験する代りに、オーストラリアの学校で高校卒業資格まで取得しようという留学生がほとんどだからです。
     日本の教育もいろいろ批判されているように、必ずしもすべての学生に合うようなものとは言い難いですから、中には海外の教育システムの方が合っている子もいるでしょう。実際、日本では荒れていたのに、留学してから奮起して伸び伸び能力を伸ばしていった子もいます。しかし、9割以上の中高校留学生が途中で挫折していっているというのが残念ながら現実なのです。 




     3年前、柏木と私はシドニー市内にあるとある留学斡旋業を営む会社に勤務しており、中高校のフルフィー留学をサポートしていました。入学手続などの事務手続だけではなく、ガーディアン(保護者代理人)を引受け(18才未満の学生が留学するには現地ガーディアンが必須)、日常の身の回りのことから勉強のことに至るまで、ありとあらゆることで相談に乗り、あるいは指導していくという非常に神経を使う仕事です。問題が勃発するのは日常茶飯事ですが、結局行き着くのは「この子の将来を思えば、帰国させるべき」という結論。「もともと留学など無理だと分かっている子を、なぜこの会社はこうも簡単にホイホイと受け入れてしまうのか?」という疑問にぶつかりました。
    「留学の現実を知らせないで過大な期待を抱かせれば、莫大なお金と時間の無駄になる。それだけならまだしも、もともとその子(あるいは家庭)が抱えていた問題より大きくし、傷口を広げるだけ」という状態に陥るのです。留学斡旋業者の立場でいえば、あまり留学の現実を知らせずに留学を勧め、初期に一括で費用を徴収しておいて、挫折したら帰国させた方がビジネス的には儲かるのでしょうが。

     「これは日本に留学に関する情報が少なすぎるのが原因であろう。留学を考えている親と子供に、正しい情報を与えれば、本当に留学が適しているのか、どういう点に注意して留学先や業者選びをしたらいいのかも判断できるだろう」と、そう思いました。

     そこで退職後、NSW州内の留学事情の調査に着手し、シドニー近郊の留学生を受け入れている中高校を60校ほど訪問、留学担当者に直接取材し、95年10月頃このホームページでも無料掲載している「素顔のオーストラリア留学」を書き上げました。以来、数は多くはありませんが、中高校留学希望の方からの依頼を受け、学校選びのサポートをしてまいりました。

     当初、APLaCとしては情報提供だけのつもりでいたのですが、結局学校選びまでお手伝いしてしまうと、現地の知り合いのいない方の場合、現地後見人という形でなにかと依頼されることが多く、次第にスポット的に学校やホームステイ先の間に生じる問題や誤解を解決するお手伝いをするようになりました。更に、現地にいる留学生のカウンセラー役も引受けざるを得なくなり、学校やホームステイ先からは事実上のガーディアン(保護者代理人)とみなされ、事あるごとに呼び出され、あるいは必要であればこちらから訪問したりと、そういった仕事が次第に増えていきました。

     気が付いてみると、本来のAPLaCの業務であったはずの「情報サポート」からずっと離れて、「現地サポート」のみならず、「子供の教育」、ついには「親に対する説得/指導」までしなければならない、という事態に至りました。ほとんどのケースで、キーパーソンであるところの親と意見が合わず、手を退かねばならないという残念な結果になってしまったのは、田村も書いているとおりです。

     中高校生留学について情報サポートしようと思い立ったのは、情報が十分にない日本の留学希望者に対して、いい加減な対応をする現地の留学斡旋業者をこのままのさばらせておくわけにはいかない、という問題意識が発端でした。正確な情報を提供することによって、こうした悪質な業者の手にかからぬよう、注意を喚起したかったのです。

     誤解のないように申し上げておきますが、現地の留学斡旋業者の中にも、日々悩みながらも質の高い人間味のあるサポートを行おうと頑張っている方も多々おられます。しかし、その一方で金さえ積めば何でも引受けるような業者も存在しますし、そこまで悪質でないまでも、留学の現実を事前によく説明せず、「とにかく来れば何とかなるから」と甘い言葉で勧誘しておいて、現地で問題が起きると適当にあしらい、いよいよ手に追えなくなれば帰国させる(先払いした費用は返却しない)、といった対応をしている業者は結構あるようです。ビジネスとして留学斡旋を行っている以上、後者のようなケースはある程度やむを得ない側面もあるのですが、まだ未熟な思春期の子供の将来を預かる仕事をしていながら、こういう対応はあまりにも誠実さに欠けると我々は思うのです。

     しかし、留学生を受け入れている学校を訪問していくうちに分かったことは、問題は斡旋業者だけにあるのではなく、学校側にも批判されるべき側面もあるということでした。調査対象としたシドニー近郊約60校は、すべて既に留学生を受け入れている学校です。が、ほとんどの学校には、留学生のための英語力を養成するため、あるいは精神不安定になりがちな留学初期のカウンセリングを請け負う特別な設備もスタッフもないなど、留学生受け入れ体制がお粗末なのです。なかには、留学生特有の問題に対する知識も理解も配慮もなく、単に経営不振を解消するため(留学生の学費は、現地学生の学費の2〜10倍)、留学生を受け入れ、問題が起きれば即刻退学にするだけ、という学校もあります。一度は留学生を受け入れてみたものの、留学生の世話の大変さに気付いて、受け入れを取りやめた学校もあります。調査した60校中、本当にオススメできる学校など、10校にも及びません。

     そのうちのオススメできる学校ですら、留学担当者は日々、留学生が引き起こす数々の問題対策に頭を悩ませ、心を痛めています。留学生の学費が高いといっても、留学生対策に費やすスタッフの時間と経費を換算すれば、学校経営という視点にたった場合、本当に採算合っているのか?と疑問に思うくらいです。

     どうしてこんなに学校側が苦労するのか?といえば、@もともと留学自体が大変困難な挑戦であること、に加え、Aオーストラリアに送り込まれてくる留学生の質が悪い、という現状を認めないわけにはいきません。
     留学生活は言葉が不自由なところへきて、異文化に溶け込んでいかねばならないわけですから、不安定な思春期の子供が成功する確率は非常に低い。相当精神的に成熟していて、留学に対するしっかりした目的意識を持っている子供でも難しい。それは、あなたが言葉の全く通じない異文化環境にいきなり入れられて、現地の人と同レベルの仕事を期待される状況でやっていく難しさを考えれば容易に推測できることと思います。
     そんな難しいことに挑戦しているだけではなく、挑戦している人間がその苦難に耐えられるだけの素養を持ち合わせていないケースが、残念なことに多く見受けられるのです。

     私たちは「素顔のオーストラリア留学」で「留学を成功させる条件」のひとつとして「親子関係・家庭環境が安定しており、親ばなれ・子ばなれが出来ていること」を挙げましたが、この条件をクリア出来ていないケースが多いことには改めて驚かされました。確かに、プレッシャーの多い定型的な日本の教育制度に合わなかった子が、こちらに来てから伸び伸び能力を開花させたケースもありますが、それはほんの一握りです。親子・家庭の問題がありながら、留学してきたケースでは、もう間違いなく当初の目的は成就できません。そりゃそうでしょう、親子・家庭の問題を抱えたまま、留学してきても何ら解決するわけないです。いや、事態は悪化する一方。物理的に離れてしまえば、親子のコミュニケーション量も減りますし、実際それを期待して「体よく留学」させてるのですから。家庭の問題を解決したくば、そばにいろ、と言いたい。

     これが「日本にいてもらっては世間体がよろしくないので、子供を海外に追いやる」といった姥捨てならぬ子捨てのようなケースならば、問題も見えやすいのですが(見えやすいからといって解決が簡単というわけでもないですが)、もっと実際はややこしいケースが多いのではないでしょうか? 本人たちは「親子関係・家庭環境なら安定してるよ」と思い込んでる、でもその実、見えにくい、そして大きな問題を抱えている、という。これは日本人に限らず、シドニーに多い韓国人、香港人留学生についても同じような傾向はあるようです。

     どんな家庭でも大小の差はあれ、多少の問題はあるでしょう。しかし、それを常に意識し、その問題に直面しているかどうかが分水嶺になると思います。いわゆる問題児は留学しても成功しにくいことは事実ですが、だからといって不登校児、イジメに遭っている子、或いはイジメている子、極端に自信のない子、極端に傷つきやすい子、こういう子供なら皆、留学してもダメということではありません。その問題の根本に親子(少なくとも親)が直面し、解決に向けようと努力しているかどうか、です。田村は「甘やかしすぎ」批判を取り上げていましたが、私には親の愛情不足、あるいは偏愛(「甘やかし」もこの一部だろうけど)という問題が気になります。

     こういう親は子供を「ちゃんと愛していない」んだと思わざるをえません。そりゃ、子供のことは可愛がってますし、心配もしています。でも、愛し方がなんか違う。親の役割は「子供が社会人として(欲を言えば、より幸せに)生きていけるように育てること」だと思うのですが、そのために努力するのが、親に出来る唯一の愛情表現じゃないかと思うのですが、「本当に子供の将来を考えているのか? 本当に子供を愛してるのか?」と疑いたくなるような親がいます。子供は親のペットじゃないし、愛情の捌け口でもない。ましてや親の世間体を保つための道具でもない。

     こういう親って自分自身がきちんと愛されて育って来なかったのではないでしょうか? そして愛し愛されるという夫婦関係が築けていないのではないでしょうか? どうしてこんな現象が増えてきたのか、たぶん社会的歴史的な背景があってのことなのでしょうが(そういや、唯物主義が先行した1950〜60年代に育ってきたベビーブーマー世代が今、中高校生の親になってますね)、原因はともあれ、今の日本って「愛情危機」に陥ってるんじゃないですか?

     これまでお世話をしてきた子供たちには、私なりに誠意を尽くして接してきたつもりし、付き合っているうちに愛情も湧いてきます。随分キツイことも言いましたし、ひどいことも言われましたが、なぜか私はその子に腹がたつことはなかったです。それは私が他人だからなのかもしれませんが、まだ10代なのだからこれからいかようにも変わっていけるだろうと、その可能性に期待していたせいだと思います。しかし、いつも私が愕然とさせられるのは、親の対応です。な〜んにもわかってない、問題の根本を直視しようとしない親には辟易し、怒りすら覚えます。最終的には、親にとっても子にとっても、耳の痛い指摘ばかりするので、煙たがられて離れていく、或いはこちらから見込ナシと見切ることになるのですが。

     ある留学生のお世話を辞めると決める前後には、いつも毎晩のようにその子の夢を見ます。起きてる間も、ほとんど一日じゅうその子のことばかり考えています。理性的には「確かにあの親じゃこれ以上留学続けても意味ないわ」とは判断できるものの、ここで私が手を引いたら事態はますます悪化していくことは目に見えてる。どんなに帰国勧告をしたところで、親は「帰ってきて欲しくない」わけですから、無意味な留学生活は続けられるわけですし、望ましくない方向に転落していくのも時間の問題です。かといってこのまま納得のいかない留学の「サポート」をするのは、どうしても道義に反する。絶対に帰らせるべきなのに、帰らせるだけの権限はない。こういったジレンマで悩んでいる現地の教育関係者は沢山おられます。学校や留学斡旋会社だけでなく、ガーディアン(保護者代理人)役を仰せつかった人、ホームステイ先の人達などなど、留学生に関わっている人達は皆それぞれに心を痛めています。ある意味では親以上にその子の将来のことを思い、なんとか手助けしたいと願い、でも限界を認めざるをえない。絶望的な気持ちになります。

     こういう子供を留学させてる親は、こちらがサポートを止めるといえば、次から次へと代理人を探そうとします。社会的地位や社内での立場を利用して、NOとは言えない立場の人(現地支社に赴任している部下とか)に現地後見人を依頼しようとしている、と聞いた時にはサイコーに腹立ちました。他人の迷惑すら考えられないほどアホなんでしょうか? そこまでしてまで体よく留学させておきたいなら、「それなりの業者」を選択すべきです。そういう救いのない親子を対象にビジネスしてる「金さえ積めば名前だけは貸してあげる」という業者だって、ちゃんと居ます。無関係な人まで巻き込むなよ。あんたの子供だけじゃないんだよ、迷惑するのは。

     良心的に留学斡旋、あるいは現地語学学校等を営んでいる方なら、こういったジレンマ体験沢山お持ちでしょう。そんなケースに遭遇する度に「こんなことやってて意味あんのかなあ」と自問自答されていることでしょう。それでも留学生を扱うのは、「稀には成功するケースがあるから」なのでしょう。100人中99人がダメでも、たった一人でも留学を契機に開花していくところに関与できたなら、それはやる意味あると思えるかもしれません。しかし、あまりにもダメなケースが多すぎる。もう現地の学校から留学斡旋業者まで含めて構造的な問題になってる。

     すなわち、「問題のある子が留学を希望する→留学斡旋業者が安易に請け負う→いい加減なケアしかしない学校に送り込む→大人の目の届かないところでルーズな生活が日常化する→退学処分を受ける→それでも留学を継続させたいので、金儲けだけが目当のいい加減な留学斡旋業者に依頼する→もっといい加減な学校に送り込む→もっと生活は乱れ、やがてドラッグ、売春等の世界に転落していく・・・」という具合に、どこまでも悪循環していく転落ルートが少なくともシドニーでは既に出来上がっているのです。この顛末はどうなるか?というと、ドラッグや窃盗など違法行為に手を出して刑務所行き(オーストラリアの法律で裁かれるからなかなか出所させてもらえない上、こちらの少年刑務所は監守の質が悪いという)、行方不明、売春組織(シドニー市内には香港やベトナムのマフィア組織が根を張ってる)という、取り返しのつかない事態まで行き着くわけです。

     ここまで転落すれば、さすがの親も目覚めるのでしょうが、それじゃあ手遅れでしょう。生命の危機に関わっているのです。「なぜもっと手前で目覚めないの?!」と、本当に苛立ちますし、子供が可哀相でなりません。

     「素顔のオーストラリア留学」を書いた頃には、留学成功への条件が整っている子ならば、留学する意味は大いにあると信じていましたが、こういった現状を目の当たりにするにつけ、やはり中高校生の海外留学は勧めるべきではないのでは?という結論に達しつつあります。留学したいなら、1年間なり期限限定の交換留学制度や、短期の体験留学を利用した方がいいです。あるいは高校を卒業し、人格形成が出来てからでも遅くはありません。高校卒業資格取得が目的ならば、日本国内で大検に挑戦した方がよほど効率的でしょう。特に、転落への悪循環ルートが出来あがってしまっているシドニー近郊への中高校留学は勧められません。おそらくはシドニーに限らず、世界のどこでも英語圏の都市ならば、多かれ少なかれ似たような状況でしょう。

     留学目的意識がしっかりとあって、家庭になんら問題のない子ならば成功する可能性はありますが、「家庭になんら問題のない」という定義が曖昧だし、「問題がない」と思い込んでるところに問題があるケースが多いので、こういう条件設定は無駄である、と認めざるを得ません。

     日本の学校でうまくいかず、海外留学を考えている方は、実行に移す前に現状うまくいっていない理由をよく分析してください。教育あるいは心理カウンセラーに相談するという方法も効果的でしょう。そして、留学生活の厳しさとリスクをよく知ってください。親御さんと物理的に離れることによって、問題解決への道が遠のくばかりではなく、そのリスクは生命の危機にまで及ぶのです。そのリスクを負ってまで、留学させなければならない理由がありますか? 留学以外の方法は本当にないのですか? 本当に治癒すべきなのは、お子さんではなく、親御さん自身なんじゃないですか?

     あなたの身の廻りに中高校生で海外留学(交換留学や短期留学ではなく、高校卒業までを見越した長期留学)を考えている人がいたら、この現実を少しでも伝えてあげてください。他人の子供を叱る大人が減ったと同時に、他人のことに口出ししなさすぎる風潮も気になります。昔のように「お節介おばさん」は少なくなりましたが、的外れなお節介は迷惑であるにせよ、もう一歩突っ込んで相手の話を聞いた上で「それなら、こんな話を聞いたことがある」と伝えるくらいの関与はあってもいいと思います。

     また、オーストラリア在住の方で「子供を留学させるのにガーディアンが必要だから、名前だけ貸してくれ」と依頼された方もおられると思いますが、その子のガーディアン役として本気でその親子に関わる気がないのなら、断わるべきです。これ以上、目的から外れた意味のない留学を増やさないために、出来ることからはじめていってください。

     日本社会に蔓延する「子供をきちんと育てられない親」についての議論は田村が展開しているので譲りますが、「留学をもって問題をすり替えないこと」、これだけは現場の声として強く伝えたいです。


1998年06月14日:福島麻紀子

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