今週の1枚(00.10.02)
Olympic の風景(その5/近代五種編)
すっかり過去の話になっていますが、しつこくオリンピックです。
その1(聖火リレーとか開会式の街の様子など)。
その2(カヌー/カヤックの様子)。
その3(バドミントンの様子)。
その4(アーチェリーの様子)。
今週は、最終日に行なわれたModern Pentathlon/近代五種(女子)です。
近代五種というのも馴染みの薄い競技です。
射撃・フェンシング・水泳・馬術・長距離走の5種目で構成されるのですが、よく考えてみると「こんなの一人で全部出来る奴いるんか?」という気がしますね。
一人で沢山やるという意味ではトライアスロンに似てますが、トライアスロンは異様にしんどいのを別にすれば、水泳・自転車・長距離ですから、やろうと思ったら(いくら時間がかかってもいいのなら)、まあ殆ど誰にでも出来ます。日々のジョギングや水泳の延長線上にあるわけですから、あなたでも僕でも明日からやろうと思えば始められるという馴染みやすさがあります。
しかし、近代五種は、やろうと思ってもすぐに出来るもんじゃないです。水泳とランニングはいいとしても、射撃、フェンシング、馬術でしょう?どうやってこれ全部練習するのよ?
大体なんでこんな取り合わせになるのよ?といいますと、話は遡ってナポレオン時代までいきます。軍の斥候だったか伝令だったかの将校が、敵地を潜り抜け、時には銃撃戦を、ときには白刃を振るい、ときには川を泳ぎわたり、ときには近くの馬を借りて駆けてきたという実例に基づいてるそうです。だから、「近代」なんですね。「現代」ではない。なるほどあの時代の西欧の将校だったら全部マスターしてなきゃならんわけですね。
以前は5〜6日かけてやってたそうですが、アトランタからリストラされて、一日で全部やることになったそうです。超ハードじゃん、それ。また、女子の部は、シドニーから採用されたそうです。
この日も、朝の5時から射撃(エアピストル)が始まったそうです。その後フェンシング、水泳と続き、午後の馬術、ランニングになりました。僕らは午後の馬術&ランニングから見に行きました。
午後の会場は、オリンピックパークの中の野球場でした。
野球場のグラウンドに、馬術用の障害物が置かれています。
この馬術競技のすごいのは、どの馬に当たるか判らず、全くの初対面の馬を乗りこなさないとならないことです。普通、馬術でも競馬でも、馬と騎手はお互いに信頼関係を築いて、人馬一体になって競技にのぞむのですが、ここでは故事にならい、「ここは戦場。馬なんか選んでる暇はない。いきなり乗りこなせないと駄目」という、過酷なルールになってます。
写真下右端は、競技前に馬の紹介をやってるところです。馬はくじ引きで割り当てられ、午前中の成績に応じて、その時点のトップの選手と9位の選手、2位と10位、3位と11位の選手がそれぞれ同じ馬に乗ることになります。
全くの初対面の馬をいきなり乗りこなせ、しかも難しい障害物を飛び越せというのは、あまりにも無理があるので、とりあえず選手には、その馬に馴染む時間として、20分だけ与えられます。20分以内に、その馬のクセを見抜き、馬に言う事を聞かせないとならないわけです。
これ、素人考えからしても、かなり過酷だと思います。ちょっと馬に乗れる程度ではクリアできないんじゃないか。
写真下左端、選手入場です。外野フェンスの向こうで20分の調教をしたあと、一人づつ出番になると乗り込んでくるわけですね。
しかし、当然のことながら、そんなに簡単に乗りこなせるわけでは無いです。馬も、障害物の前でビビッて飛び越えないで避けちゃうし、殆どの選手が、ビビる馬をなだめながら何度も同じ障害物にトライしてました。
下は最大の難所の三連続ジャンプ。これには皆苦労してました。実際、落馬して選手も多かったですし、担架で運ばれていった選手もいました。写真右二枚は、落馬して医師に見てもらったり、退場を余儀無くされた選手。
それでも競技は続きます。
さすがにオリンピックまで出てくるだけあって、皆さんすごいです。
しかし思うけど、イギリスの貴族系とか、アメリカの西部とか、子供の頃から馬があって、ガンがあって、、、みたいな環境に育たないと、こんな競技なかなか出来ないですよね。東京や大阪あたりで、毎週乗馬やって、射撃やって、フェンシングやってる奴なんか、いるんだろうか?
馬術が終わったら、しばしの休憩を挟んでこんどは3キロの長距離走。
これまでの総合得点をもとに、第一位から順に走りはじめます。一位の選手との点差に応じて、その点差を秒換算し、スタート時間を遅らせていくそうです。だから、最終的な勝者決定はきわめて簡単。「一番早くゴールについた人が優勝」ということです。
写真右端は、出発を待つ選手達。写真中央は、順次スタートしていく模様。
野球場のグランドに、ウネウネと設けられたコースは一周1キロ。これを3周するわけですが、見てたら、もう誰が先頭でどこを走ってるのか分からなくなります。
ゴールの様子。1位と3位がイギリス、2位がアメリカ代表でした。
1日でケリがついてしまう競技の良さで、すぐに表彰式が行なわれました。
写真・文/田村
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