シドニー雑記帳【StudioZERO】
ニュージーランド見聞録
058/074 GEG00343 福島麻紀子 □ニュージーランド見聞録
(13)92/08/03 01:03
ニュージーランドは新しい国です。
これは私の勝手な思い込みですが、たぶん、地球上の歴史から鑑みると、だいぶ後になって出来た陸地なんじゃないかな。なんか土地そのものが、そういう雰囲気醸しだしてるんです。どこがどういうふうにって実証なんか出来ないんですけど、なんか、そんな感じしました。
★18世紀にイギリス人が渡ってくるまでは、ここにはポリネシア系統のマオリと呼ばれる民族が住んでいたそうです。でも、彼らもこの島に渡って来たのは、そう遠い昔のことではないそうで、今から1200年前に、タヒチとかハワイとかからカヌーに乗って渡って来たと言われてるそうです。
ポリネシアの人々は、カヌーを使って海を航行し、新しい土地を求めていました。南の島々は、土地が肥えていないため耕作に向いていません。だから、人口が増えたり、飢饉が起こると、移動を余儀なくされるのです。それで否応なしに、カヌーの技術が発達したんだそうです。
こうしてカヌーで航行していたマオリの祖先は、南太平洋を航行中に長くたなびく白い雲を発見したんです。
『アオテアロア』・・・マオリの人々はこの土地をこう呼びます。
『アオ』=雲『テア』=白い『ロア』=長い
長い航海の途上、この白く長くたなびく雲を見つけたマオリの人々は、そこに大きな島があることを経験的に知り、狂気乱舞したことでしょう。実際、肥沃な生活に適した土地がありました。
★さて、マオリは1200年前と1000年前の2回に渡って、この土地に移住してきたとされています。西洋人が入ってくるのは、それから1000年近くもたってからのことです。
1764年(だったかな?記憶に自信なし)、イギリス人のキャプテン・ジェームズ・クックがノースアイランドの東、ギズボーンに漂着します。確か、一緒に航海してたニックという名の少年が、ギズボーの港に突き出た白い岸壁の岬を発見したそうで、この岬は『Nick'sPoint』と呼ばれています。
ところで、このギズボーンという街は、世界で最も早く陽が登る市になるわけで、といっても、日の出時間が早いってんじゃなくて、要するに日付変更線の西側の一番近くにある市、という意味ですね。だもんで、2001年1月1日の21世紀最初の日の出を見るためのフェスティバルが企画されており、今から2000年12月31日の宿の予約いっぱいとか。ほんとかね?
話逸れました。
そういうわけで、クックに発見されたこの島は、イギリスのZEALANDに似てたからなのかどうだか知らないけど、とにかくNEWZEALANNDと名付けられました。こういうやり方って世界各地の旧イギリス植民地で応用されてますね。ニューヨークとか、ニュージャージーとか、ニューオーリンズとか、なんでも『ニュー』付けて済ませてますね。日本にも「新○○」って地名ありますけど、やっぱり基本的に移住経験ないですから、日本の新○○と、欧米人のNEW○○ってのは、籠められてる想いが違うんでしょうね。
あ、また話逸れました。
そういうわけで、ニュージーランドは、土地が肥沃だし、たくさんあるし、気候はいいし、で、とってもいい島だったわけです。そんでイギリスはじめ、ヨーロッパの方々はここへ移住してきました。今や人口の8割がアングロサクソン系です。先住していたマオリ民族はたった1割になってしまいました。
★で、ここで人々は何をしたか、というと。
これだけの豊富な肥沃な土壌を生かさない手はない、というわけで、まずは農業。そして、どこまでも広がる草原を利用しての畜産業。ちなみに、いっぱい羊いますけど、この数って、人口より多いわけです。どんくらい多いかっていうと、人口=300万人、羊=6000万頭で、人間の20倍の数ですね。ちょっとすごい数ですよね。
ところで、農業人口と、畜産人口とどっちが多いと思います? これはやっぱり農業なんですね。どうもイメージにあるような羊飼いってのは、本当に少数らしいです。なんたって、一人の羊飼いの所有羊数は3千頭から1万頭といいますから、平均6千頭として、すごく大雑把だけど、6000万÷6000=1万...という計算しちゃうと、人口300万人のうち、憧れの羊飼いはたった1万人しかいないってことになります。
★はい。ここらで羊の基礎知識のお時間です。っつっても、聞きかじり、それも慣れない英語での説明だったもんで、どこまで正確なもんかわかりかねますが、なかなか面白い羊話をたくさん仕入れてきたもんで、これを披露せずにはいられない...。ガセネタ覚悟で聴いてね。
一括りに羊と言いましても、目的に応じて、また環境に応じていろんな種類の羊を飼うわけです。
ニュージーランドの羊は、大別すると2種類になるみたい。
<タイプA> 平らな草原、街の近くで育つ羊
これは、食肉用だそうです。だからよく肥やすんですね。羊肉といえば『ラム』です。が、しかし、それだけじゃない。ラムというのは生後6か月〜1年までのものだそうで、1年すぎた、いわば、熟成羊肉のことを『ファゴット』じゃない、これは楽器じゃん、『フォゴット』といって、これが高価なもんらしいです。んでもって、もっと大人になってから殺されたやつが『マトン』。
ところで、羊の歳の識別方法って知ってます? これが、『歯』なんですね。羊は一年に2本づつ歯が増えていくそうで、5年目までに10本の歯が揃います。6年目からは歯は増えないので、そっから先は歯の汚れ具合とか見てるんかどーか知らないけど、とにかく5才までは、誰でも識別できるわけです。
そんで、ラム肉は子供の羊ですよね。つまり生まれた羊は、ほとんど1年とたたずに殺されるという....。雄は例外なく全員殺される。雌は15%ほどを残して、殺される。この残り15%は、子供を産むためだけの道具として機能するわけで、なんか虚しいというか、切ないというか...。といいつつ、しっかりラムステーキ食べてきたけど。そんで、いよいよ子も産めない体になると、いよいよ『マトン』になるのね。
雄は全部殺されるって言ったけど、じゃ、種はどうするわけ?ってギモンですよね? なんと、いいタネを持ってる雄を売る『種羊専門の羊飼い』ってのがいるんですって。そんで、発情期になると、この専門の羊飼いから買ってきた種羊一頭が、そのオーナーが持ってる全雌羊と強制SEXさせられるんですね。
こりゃ、試練でしょう。だって、1対6000ですよ、だんな。一度に6000人の女と出来ますか?...とにかくすごい精力なわけです。で、この種羊は種付けだけ終えると『疲労困憊』『精も根も尽き果てる』とはこのことを言うのでしょうね、これだけのために生まれて、そして死んでしまうという....。虚しいですね、切ないですね。
こうした羊たちの悲惨な人生じゃないか、羊生のおかげで、私たちはおいしいラム肉を食べることが出来るわけです。
<タイプB> 高原・山岳地帯にいる羊
こちらの羊は、食用ではなく、羊毛、そうです、ウール原料になる羊なんです。どうやら、ウール用よりも食肉用の方がビジネスとしては実入りがいいらしいですね。山岳地帯では食肉用を育てたくても、できないらしいんです。気温があたたかくないし、よく運動できるもんで、肉が付かないのね。で、ウールになる羊たちは、一山単位で放牧されてて野性の羊として生活してます。んー、心なしかこっちの羊の方がのびのびしてて、幸せそうです。
山岳地帯の羊さんのお話は、よく聞けなかったので知らないのですが、年に何回か、毛を剃ってあげるくらいで、あんまりメンテナンスも必要なさそうな気がしたんですけど。どうなんかなあ?
上記のお話、羊のバイヤーをやってるおじさまに伺ったのですが、このおじさま、とってもダンディでルックスがいいばかりでなく、羊の扱いを見てると、いやあ〜、貫祿あってかっこいいのです。そんなわけで、私、すっかり羊飼いに惚れ込んでしまって、「羊飼いの奥さんになる!」とほざいていたわけです。しかし、「掃除も料理も出来ないアンタが、羊飼いの奥さんになどなれるものか!」とさんざん非難を浴びてしまいました...。
★羊の話はこれくらいにして....
その他、ニュージーランドのいいとこ!
とにかく食品が安い、うまい!
野菜、果物はもちろん、肉、魚介類なんかも、日本の3分の1から4分の1くらいの市価ですね。どれも新鮮でおいしいことは言うまでもないし。
こんなに自然に恵まれてるので、人がおおらか。人がいい。
けっこう観光化も進んでしまってるんですけど、これが媚を感じさせない、自然を生かした観光化なので、観光地だいっきらいの私も、抵抗感じずに過ごせました。
ニュージーランドというと、羊のいる草原のイメージでしょうけど、この国には様々な自然の姿があるんですね。今回は時間がなくて、あちこち見て回れなかったけど(そりゃ仕事だから当然だわな)、例えばフィヨルドとか、氷河とか、ジャングルとか、雪山とかね、本当にいろんな様相を楽しめるらしいです。
また、アドベンチャー関係も充実していて、ボートでの急流下りとか、セスナ機に乗っての氷河観光とか、鯨ウォッチングとか、トローリングとか、マオリ民族の生活拝見とか、いろいろあるみたいです。
とにかく、今度はプライベートで訪れたい国です。
まあ、仕事で行ってこれだけ楽しめれば、本望だけど...ね。
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初出:97/11/22(福島)
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