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Essay 975:キレそうな世界の皆さんと、ワクチン国境開放の国別一覧

 〜マウントしたがる強者と散在する大衆の反発
 〜GameStop株とロビンフッド事件が象徴するもの
 〜実は着々と進んでいるワクチンによる国境開放


2021年01月31日
 写真は、以前にスイス旅行したときのマッターホルン。夜明け前から待ち構えていると、頂上から曙光を浴びて黄金色(実際にはオレンジだが)に染まり、徐々に下に降りてくるという。
 あー、また旅行したいよー。世界中の皆がそう思ってるはずで、コロナ解除になったら凄まじいことになりそうな予感。


 


いくらでもある乱世の予感

 今年2021年は、なんかいろいろありそうですねー。もう満一歳を迎えるコロナちゃんも、なんだかんだ言いながら登校拒否を続ける子供みたいに埒があきません。「もう、いい加減にしてくれ」って声も出てきます。感染防止の立場からしても、あんだけ厳しいロックダウンやってるイギリスですら結果的に1年前とあんまり変わらんのに苛立つし、経済重視系からすれば、もう死ぬ、てか死んでる人も増えてきてるのに、これも「いい加減にしてくれ」って話です。

 それもあって世界的に政情不安が起きてます。まずアメリカが事実上二分裂しつつあるし、日本だって似たようなものでしょう。ほかにもヨーロッパではオランダで激しい暴動(過去40年で最大規模)が起きているし、今はフランスがまた燃えている(いつもだけど)、イタリア政府は崩壊状態だし、エストニアでは前政権の腐敗問題で政権が変わったばっかだし。思うに、皆のフラストレーションが溜まってるから、キレやすくなってるのかもしれません。

 オランダ全土に広がる暴動の報道記事。クリックするともとの記事にリンクしてます(以下の写真は全てそうしてます)。

 一方、今年こそバブル崩壊かという話もあります。毎年そんなこと言われてるから、本当のところはわからず、何を言っても結果論でしかないとは思いますが、バブルシャボン玉の大きさは恐怖すら感じるくらいでかくなってます。普通30センチ膨らませたらパチンと弾けるゴム風船が、1メートル以上の大きさに膨らんでもまだ弾けない。もうこのまま永遠に弾けないんじゃないのかなーとか思いつつも、そんなわけないだろって気もすごくする。

GameStopとロビンフッド事件が象徴するもの

 ご存知かどうか、GemeStopという株が、一般大衆投資家の「仕手」によって、空売りしていたヘッジファンドに一泡吹かせて数十億ドルの損をさせようとしたという話があります。蟻の軍団が巨象をやっつけるみたいな話ですが、Redittという日本の5ちゃんみたいな掲示板サイトがあり、その投資スレで、皆で示し合わせて、空売りしようとしたヘッジファンドの裏をかこうぜと。大衆というのは凄いもので、塵も積もれば山となるわけで、空売りして儲けようとしていたプロのヘッジファンドや投資家は大損こきました。ここまでが話の前半で、これまで株式市場といえば、プロや大金持ちが仕切っていて、一般投資家なんか結局はカモでしかなかったのを、SNSを使って一般投資家がまとまって仕手戦のようなことをやったのが歴史的に画期的な点です。カモが結集して大軍団になって逆襲してプロを食ってしまったという。こんなことは前代未聞です。

 #EatTheRichというハッシュタグがトレンド入りしてますが、「金持ちを食ってしまえ」という物騒なフレーズの本家はルソーらしく、「もし民衆が何も食べるものがないくらい困窮したら、そのときは金持ちを食ってしまえ」というところから来ているようです。


 ここから話の後半ですが、これ以上の損を防ぐために、ロビンフッドという株式売買用のアプリが、特定の銘柄についての売買を出来なくしてしまったのですね。これがまた世界から大批判を浴びていて、自由市場のくせになんで制約をカマすのか、富裕層やプロファンドが同じことをやっても何も言わないくせに、一般大衆がそれをやったらダメ出しするのか?と。日本的に言えば、上級国民がやったら許されることを、一般国民がやったらダメだと。これはあまりにも露骨な事例で、経済界や政界からも批判され、ロビンフッドは袋叩きにボコられてます。

 この件に関してだけは、珍しくアメリカの民主党も共和党も意見が一致しているみたいで、やたら叩いてます。民主党は仲間じゃないのか?って気もしますが、多分彼らの中でも、金融経済の暴走を苦々しく思っているのでしょう。リーマンショックのときもさんざん迷惑かけて、反省したと思いきや、すぐに性懲りもなく同じように始めて、リーマンのとき以上のバクチ三昧になっているし。


 

 これはいろいろな意味で象徴的な出来事です。

(1)常に強いものが弱いものを搾取するという定番の公式が崩れた。ネットなどを使って弱いものが結集して強者になれることを示した。株価操縦はプロの専売特許ではなくなった。

(2)ロビンフッドの行為は、中立であるべき存在が強者に媚びてルールを捻じ曲げたという点で問題であり、これは、富裕と一般という単に金のあるなしではなく、封建社会みたいに身分システムのようになっていることを示しており、世の中が自由でも、平等でも、民主的でもなんでもないことを改めて示した。なんとなくそうだろうなーと思ってはいても、ここまでアカラサマにやられると腹が立つ

(3)またIT系がやらかした〜ビッグテックの価値の下落。
 ロビンフッドもアプリ会社なのでビッグテックの一部と言っていいでしょうが、すでにGAFAが露骨にエコヒイキをしまくっているのが世界的に批判を浴びてます。しかしそれに怯むことなくやっていて、最近では、あまりにもフォロワーが少なくて悲しいホワイトハウスを盛り上げるために、インスタグラムがそのへんのユーザを手当たりしだいに強制的にフォロワーにしてフォロワー数を盛っている(ユーザーはいくらフォロー解除しようとしてても出来ない)ことで、ユーザー達から怒りのコメントが押し寄せています。インスタグラムも何をネトサポみたいな情けないことをやってるんだ?そこまで堕ちたか?親会社がFacebookだから仕方ないのか、というくらいの落ちっぷりで、結局使いっぱしりにコキ使われてるだけだと思うけど、もう何やってんだかです。


(4)もともとコロナがなくても貧富格差の拡大傾向は天文学的なレベルにもまでいってたところ、コロナによってさらに悪化している。世界各国政府が景気対策でバラまいたお金が投資相場に流れ込むから、結果として金持ちはさらに金持ちになって、格差が激しく拡大してるから、世界の皆さんも堪忍袋の緒が切れかかってる感じがします。

 そこにGameStopという一般投資家の反逆があり、わずかではあるけど「一矢報いた」「快挙」のように感じていたのに、またぞろ掟破りで、なりふり構わずIT系(ロビンフッドというアプリ会社)が富裕強者に尻尾を振ってるから人々の怒りの火に油を注ぐような話になっている。

 油を注がれた一般投資家の皆さんは、ロビンフッドに裏切られてシクシク泣き寝入りしてるかと思うとさにあらず。全然諦めてなくて、またぞろ買い続け、結果的には上がったり下がったりを繰り返しつつ、また盛り返してきています。

 ここ一ヶ月のGameStop株の変動をみると、激しい「仕手戦」が繰り広げられてます。
 また、誰かがNY市の広告を借りて(1時間18ドルとか)、GME(GameStop)を買って値上がりさせるんだとアジってたりして、皆さんかなりムカついている感じ。


 で、先程1メートルくらいに恐怖的に膨らんだ風船バブルの話をしましたが、これまでプロ投資集団のゲームみたいなもので、ある程度は予定調和だったと思うのですが、今回のGameStop株事件で、一般大衆という予期せぬジョーカーのようなプレーヤーが出てきた。これが、もともといつ崩壊してもおかしくない市場の脆弱性をさらに脆くする可能性は大きいです。


 というように乱世を予想をさせるネタはいくらでもあるのですが、反面、正常化に向かう努力も行われています。地味すぎるので、あまりマスコミネタにはならないのですが、バランスを取る意味からも、今度はそちらにスポットライトを当ててみます。

ワクチンによって国境を開けようとする国々

 ワクチンの安全性についての議論はさておきます。言い出したらいくらでもあるのですが、一方ではせっかくワクチンがあるのだから、それをテコにして良い方向に向かわせようという国際的な潮流もあります。つまりワクチンを射ったという証明があれば、国境を開き、観光客を復活させようという国々が出てきています。

 出典は一般メディアとしてはIndependent、あとは観光業界紙です。


 大体どれも似たような内容ですが、かいつまんで説明します。

Seychelles/セイシェル諸島

 ワクチン接種が開始され、予定によれば世界で最も早く18歳以上の国民の70%のワクチン接種を完了させる予定であり、そうなればワクチン接種済の証明ができた観光客は、ホテル検疫など面倒な義務はなく、自由に観光できるようにするそうです。

 段取り的には、世界のワクチン4種(Pfizer, AstraZeneca, Moderna and Janssen )を(2回)接種し、二回目の摂取から2週間以上経過したこと、プラス入国72時間以内の陰性証明が必要。この陰性証明は今でもどこでも(日本でも)必要なのですが、要はワクチン射って、抗体が出来てくる2週間を経過すればオッケーだと。

 セイシェル共和国のGDPにおける観光業の割合は65%もあり、観光がダメなら滅びるしかないくらいの危機感もあるから仕事は早いですよね。

 でもいいなー、セイシェル、行こうかな(笑)。ってか、オーストラリアから出してくれないんだよね(親の介護だといっても却下されたし。人づてに聞いた話では、奥さんの出産の立ち会いにいくといっても出国許可が却下されたという話もあり、もう国家という名の刑務所みたいで、何を考えているのかって感じ)。

ルーマニア/Romania

 ルーマニアもワクチン(条件で)国境開放するそうです。ただし例外は、ハイリスクな国から来る場合、検査で陽性になった場合、陽性者との直接接触者で、まあ当たり前なところで。

ルーマニアは感染が落ち着いてきているし、経済バランスをとるためにも必要だと。

ルーマニアの場合、二回目のワクチン接種のあとの待機期間は10日とされている。
どのワクチンだった認められるのかについては不明である。
このワクチン証明は、イギリスからの来訪者にも適用される予定(現在14日の検疫待機と48時間以内のネガ証明という厳しいのだが)。

アイスランド/Iceland

アイスランドも、ワクチンの証明さえあれば、到着時のテストとホテル待機は免除される予定。

ただし、ワクチン証明は、現在の渡航制限を上書きするものではないと強調している。つまり、あらかじめアイスランド政府より入国が認められている人だけに関するものであり、世界の誰でもOKというわけではない。アイスランドは、EEA諸国とスイスに対してのみ国境を開いている。イギリスは、このブリグジットによって第三国扱いになり、ワクチンの有無を問わず現在のところ入国できない。

ワクチン証明による入国緩和は、5月1日より行われる予定。

Cyprus/サイプラス(キプロス)

 エーゲ海のキプロス島も同じようなプランが出されています(予定では3月開始)。もっとも、キプロスの厚生省はまだクビを縦にふっておらず、確定したわけではない。


 その他の国々でも同じようなプランが検討されており、ブリュッセルのEU本部も前向きに検討。その間、Sagaという観光会社は、顧客に対してワクチン接種証明を出してもらうように計画している。
 もっとも、どのワクチンであっても、時期尚早すぎるのか、未だウイルス感染を予防したという証明はなされていない。

 どの国が次に続くかは、その国の接種率の高さ、観光業への依存度の高さなどの諸要因によって決まってくるだろう。


ギリシア/Greece

 ギリシャのミトソタキス首相は、EU諸国は観光業を盛り返すためにワクチン証明のスタンダーダイズ(共通規格の設定)をなすべきだと、1月12日付けでEU事務局に意見書を出している。確かに国によって入国OKとなるワクチン基準が違っていたら、混乱を招くし、観光業としても機会を逸する(ワクチン規格が違うお客さんを追い返さないとならなくなる)。

 とはいいつつ、ギリシアのワクチン接種率は、世界的にいっても下位であり、100人あたりわずか1.7接種しかしていない。しかしギリシアの観光業依存度は高く、GDPの21.5%にも達する。ギリシアは、さきの夏時期にも、イギリス旅行者をフリーで迎え入れていた数少ない国の一つである。

レバノン/Lebanon

レバノンも、ワクチン証明があればホテル検疫を免除しようとしています。

ただし、96時間以内の陰性証明、そして到着後のテストでの陰性は求められます。


アラブ首長国連邦・UAE(United Arab Emirates)

UAEは、ワクチン接種率で世界2位にあり、人口百人あたり25.9接種を達成している。
UEA政府は、ワクチンを輸入するのではなく自ら開発し、Sinopharmというワクチンのライセンスをもっている。そして、途上国に無償で提供しはじめており、セイシェルには5万本送っている。


ドバイは、2020年段階でも非常に熱心に観光客の呼び戻しをはかっており、去年(2020年)の7月から検査陰性条件のほか、検疫待機期間も短縮している。イギリスからの観光客については、出国前96時間以内のネガ証明で良いことにしている。UAEの観光業の割合は10%ほどである。

直近の動きでは、UAEの航空会社(エミレーツ)はワクチンパスポートを開始。この"IATA Travel Pass"(International Air Transport Association)は、スマホのアプリという形になっているが、UAEは世界でも先駆けてこれを取り入れる国の一つである。UAEでは、まずドバイにおいて、この4月から新しい試みを開始する予定である。

イスラエル/Israel

イスラエルは、人口百人あたり44.8接種をしており、UAEを抑えて世界最速の普及率である。この3月までに800万人の国民のうち520万人の接種を達成する予定。

先週、"green booklet"(緑の手帳とでも訳すか)と呼ばれるワクチン接種証明を発表した。事実上、ワクチン(免疫)パスポートになるものだが、二回接種した人に与えられる。イスラエルは2種類のブックレットを考えており、検査陰性だけの場合は有効期限72時間のブックレットを、ワクチン一回接種の人の場合は無期限のブックレットである。これらのブックレットの所持によって、世界各国でワクチンパスポートとしての機能を果たすとしている。

イスラエル政府はこの日曜日(1月24日)に、国内の主要空港はあと最低一週間は閉じておき、変異体の流入を防ぎつつ、ワクチンの普及度を高める予定。
イスラエルにおける国境封鎖は、諸国に比べてそれほど経済に打撃を与えず、観光業のGDP比は6%ほどである。 

スペイン/Spain

EU諸国の中でも観光依存度の高いスペインは、ワクチン証明制度を支持している。

先月(20年12月)、Salvador Illa 厚生大臣は、ワクチン登録を企画し、誰が接種し、誰が拒否ったのを明らかにし、これを他の欧州諸国とシェアするというもの。もちろん個人情報については最大限のプロテクトを図りつつ、一般に公開されることはない。

スペインは、他の欧州諸国と似たようなワクチン接種率で、100人あたり2.6接種である。2020年夏の観光客ラッシュの際、観光業界は複雑極まるテストや検疫制度をいかにクリアさせるかに苦しめられた。Reyes Maroto通産観光大臣は、この1月22日に、我々の最大の目標は、2021年に観光業を平常化することであり、そのためには世界規模の安全な渡航システムを早急に作り上げることだ。旅行者に安心してもらうために、共通のフレームワークを作り上げねばならない」「この春の終わりには、そして来たるべき夏には、旅行先にスペインを選んでもらえるようにするのだ」と説いた。

スペインにとってイギリスからの旅行者は最大の顧客であるが、20年の夏には、イギリス旅行者がスペイン全土を訪問しつつ、帰国時に検疫待機を余儀なくされずに済んだのは、たったの3週間だけであった。

スペインGDPにおける観光業の割合は15%である。

エストニア/Estonia

20年10月、エストニアはWHOと契約を交わした。ワクチン記録を交換することによって国境を通過するための「デジタル免疫証明」の開発についての契約である。エストニアはフィンランドにも呼びかけて協同で開発をしている。エストニアのワクチン率は100人あたり1.9である。

このデジタル証明が将来的にワクチンパスポートになるかどうかの明らかではないが、1月14日に行われたWHOの委員会では、旅行リスクの減少のための手段して、ワクチン接種は外すわけにはいかないだろうと語られている。

デンマーク/Denmark

デンマークも、人々の自由な移動のためにワクチン証明の開発に取り組んでいる。デンマークの接種率は100人あたり3.6接種である。

ポーランド/Poland

ポーランドの場合、観光業のGDP比は4.5%に過ぎないのであるが、最近、ワクチンパスポートの導入を表明した。Anna Golawska 厚生副大臣は、ワクチンを2回接種したポーランド国民は、誰でもQRコードによるダウンロードという形でワクチン証明にアクセス出来るようにするとした。現在までのポーランドの接種率は100人あたり1.3接種である。

ハンガリー/Hungary

ハンガリー政府も、入国者に対してアプリでのワクチン証明を求めるだろうと言っている。市民に対し、彼らがコロナ対策(ワクチン)を完了していることの証明を付与すべき必要性は、世界中で増えてきている。

ハンガリーのPeter Szijjarto外務大臣は、EU事務局のワクチン手続の動きの恐ろしいほどの遅さを批判して、「ブリュッセル事務局の昨年末と年頭の所信では、EU諸国に速やかにワクチンが行き渡り、種々の制約はどんどん緩和されることになっているハズなのに、そうなっていないではないか。これはEU事務局の怠慢である。」

ハンガリーの接種率は1.6%、GDPに占める観光業の割合は8.5%である。

ベルギー/Belgium

ベルギーの接種率は1.5%。ベルギー政府もEU内、あるいは世界に通用するワクチン証明を支持している。
しかしながら、国の為政者は、ワクチンのデーターベース化には反対である。そのデーターを使用する目的と、データーをどのようにシェアするかの方法が曖昧であり、またデーターを国が保有する期間が長過ぎるという。個人情報保護の権利に干渉することは明白である。
この見解は、EUの情報保護局のWojciech Wiewiorowski長官も同意しており、ワクチンパスポートはあまりにも「やりすぎ(extream)」だと述べている。

付記

 以上、欧州各国や中東などでは着々とワクチン接種証明を条件に、ホテル検疫を撤廃し、多くの海外観光客を呼びこもうとしている国々がたくさんあります。

 それをするかどうかは、その国の感染事情と観光業の重要性によるでしょう。

 ところで、世界の観光業比率はどうなってるの?というと、こういうのがありました。インバウンド業界系のサイトにあったものです。


 オーストラリアは観光依存度10.8%であり、日本は7%です。
 そして、上の諸国をもう一度見ていくと、セイシェル65%、ギリシャ21.5%、UAEが10%、イスラエル6%、スペイン15%、ハンガリー8.5%です。UAEとオーストラリアが似たようなもので、日本とイスラエル、ハンガリーがまた似たようなものです。

 一方ワクチン接種率は、イスラエルが世界一で、全人口の44%で3月まで60%にする予定。次がドバイのあるUAEで25.9%。ギリシャは少なくて1.7、スペイン2.6、エストニア1.9、デンマーク3.6、ポーランド1.3、ハンガリー1.6、ベルギー1.5です。

 感染状況をいえば、欧州各国に比べてみれば、日本やオーストラリアはほとんどゼロといってもいいくらい少ないです。もう桁が全然違う。

 自国の感染が少なく+観光依存度がそこそこあるなら、国境開放に関する何らかの合理的な方法をやっており、ワクチンの頒布も粛々と進めていくのだから、日本もオーストラリアもなんらかの国境開放の合理策を実行寸前レベルまで煮詰め、かつ国内のワクチン頒布を進めていってもおかしくないです。

 でも全然やってないね。日豪ともにワクチン接種率はゼロです。国境開放についての具体的見通しは、オーストラリアの場合はホテル検疫の場所と人手確保という初歩的な事務レベルで限界にきて、そこから何も進んでない。日本の場合は、国境は比較的開けようとするし、検疫や措置もゆるいんだけど、そのゆるさが逆に批判を浴びている。

 それの是非はそれぞれ意見があるでしょうが、ここで言いたいのは、日豪だけみてると世界の感覚から取り残されるんじゃないかってことです。

 オーストラリアはなまじ辺境地にあるから国境を閉めればそれでOKというイージーな立地であり、それがゆえに現在日々の感染者ゼロ記録更新中という桃源郷のような状況になってますが、それが逆に仇になって、ヤドカリのような自閉症的なものになっている。教育産業、観光産業、そして無駄に中国と喧嘩したことで農業系が被害をこうむっているけど、そこさえ見なかったら感染ゼロの楽しい毎日です。本当は、国の産業5本柱のうちの2.5本くらいが壊れかけているので、数年スパンでみたらめちゃくちゃヤバいんですけど、とりあえずの日々は落ち着いているから、「惰眠を貪っている」かのような状況です。

 それもあって、世界で起きているような、強者のマウンティングと弱者の反発という荒っぽくも時代に即した化学反応がいまいち起きてないし、メディアの筆もぬるすぎる。一方、ワクチン万歳国のくせに、いざ副作用が聞こえてくると先延ばしにするし、国境に関する具体案もない。ならばJobKeeperという救済策を延長するかと言えば、QLD州知事から要請があったのに、「生意気」だといって、それだけは絶対にしないと言いきっている。


 共通して言えるのは、「何もしない」ということです。最初のJobKeeperという妙手を打ったのはいいけど、そのあとの1年、殆ど何もしてないといっていい。生活困窮者がだいぶ出てきているのに、大学をはじめ教育産業はマジに潰れそう、観光産業はもうかなり崖っぷちなのに、てか既に潰れたりクビになった人も大量にいるのに「なにもしない」。国境を開くためのあれこれの準備も「なにもしない」。今まではワクチンができるまでの我慢だとか言ってたのに、ワクチンが出来たら躊躇って、これまた「何もしない」。要は何もしないんですよね。

 なぜか?というのはわかります。今が頂点だからです。国内新規感染者ゼロが続いている状態なら、そこそこ経済は回復はしますよ。前が悲惨だったけに数値的には凄まじい伸びのように見えますよ。万事順調っぽくも見えるでしょう。でも、すこしでも動くと、例えば国境を開くと不可避的にまた新しい感染者が出るから、それが自分のマイナス点のように見えるから怖くてできないんでしょう?ワクチンだって、不安要素を押し切って断行して、それで被害者がでたら自分のせいにになるから、それも恐い。つまりは、自己保身でしかない。自己保身を優先するから何も出来ない。

 だけどそんな小康状態なんか一時的なことで、長期的にいえば、観光と教育という二大成長産業、そして移民によって支えられている構造からして、将来的にはまた南太平洋のぱっとしない貧困国、コアラとカンガルーだけが取り柄の国に成り下がっていくリスクは大きい。一旦転落しはじめたら優秀な移民もこなくなるから、加速度的にダメになりますよ。僕自身、こんなアホな状況でみすみす国が衰退していくなら、もうそろそろ住む国を変えようかなって思ったりするくらいです。丁度90年代の日本を見てて、「こりゃ落ちぶれていくだけだな」と日本に見切りをつけたのと同じ匂いがするのですよ。平和ボケして、必要なことを行う胆力がなくなってきてる。ま、でも、社会制度や、人々の気質、そして自然、そこらへんは満点に近いので捨てるには惜しいのですけどね。ほんと政治経済だけがダメね。

 その意味でいえば、激しく荒れ狂っているアメリカやらヨーロッパは、まだ脈があります。対立するところはちゃんと対立するし、戦おうとする気力があるし、手探りのなかでも前に進めていこうという意思も行為もありますからね。日豪の数十から数百倍の感染者を出しながらも、それを切り回せるような医療体制をなんとかかんとか構築し、休業補償もそれなりにやり、ちょっと収まったらすぐに国境を開放し、昨夏はヨーロッパ中で旅行ブームになった。それがもとでまた感染がぶり返したんだけど、それでも観光業は一時的にでも潤ったでしょう。七転び八起き的にやっている。

 日本も同じ、というかオーストラリアとは違った形ですけど、似たような感じでダメ。政治的に前に進もう、しんどくても乗り越えようという方向性も示してないし(五輪とか利権ばっか)、何のために何をするのかという段取りも論理もなければ、それを構築しようという意思もない。そして救済しようという意志はさらに無い。「給付金支給は絶対しない」とそこだけやたら明瞭で、それはオーストラリアの休業補償の延長は絶対しないとそこだけ明瞭なのと同じです。助ける気はないと。そこはハッキリしている。じゃあなんかやるのか?といえば、やらない、そこも同じ。

 もっとも逆説的な意味で、日本の方がマシな部分もありますけどね。それは日本には「アジア的混沌」がある点ですけど、それを書き出すとまた別の話になるので、このあたりで。

ところでワクチンについて

 なお、ワクチン証明ですけど、当然のことながらワクチンに対する懸念はあります。僕だってあります。だからワクチン条件で国境開放がいいのかどうかと言われたら、微妙ですよね。だけど、世の中には、ワクチンを射って欲しいと思ってる人もいるわけだし、数から言えばそっちの方が圧倒的に多い。オーストラリアの子供のワクチン率など95%だといいますから。それに比べれば日本人の方が懐疑的ですけど、全員が懐疑的なわけでもない。

 別に意思統一する必要なんかないと思うのですよ。ワクチンのリスクは承知しているが、そのリスク査定をどの程度にするかはその人の価値観ですからね。それはお互い干渉しあわない方が良いでしょ?好き好きでいいと。で、ワクチンを射った人が7割なり8割なりになれば、集団免疫になっていくから、射ってない人もその恩恵に預かれるわけだし。また射たないことによってどっかの国に入れないとかいう不利益は、まあ仕方のないことでしょう。永遠に続くわけでもなし、数年もすれば終わってしまうでしょうし。

 僕自身、何もなければ射つ気にはならないです。もともとコロナなんか純粋確率的に大したことないと思ってるし。思ってるというか、僕の場合、事実そうだからです。僕は今60になってますが、図々しく平均寿命よりも長く生きて90で死ぬとして、あと30年。日数にして、365×30=10950日です。明日僕が死ぬ確率を単純に均していけば、10950分の1であり、概算でいえば1万分の1です。一方コロナの死者は日本でもまだ1万もいってないでしょ?人口1.24億の1万以下だから、1万分の1以下です。だからコロナで死ぬ確率と、僕が普通に明日死ぬ確率は似たようなものだということです。後者(明日普通に死ぬ確率)は、当然ひっかぶらないといけないわけで、誰にだってあります。その程度のリスクは当然にかぶっているわけで、それと同程度のリスクだったら大したことないだろってことです。ちなみに、今30歳のあなただったら2万分の1ですよね。だけど30歳がコロナで死ぬ確率は60よりもずっと低いでしょうから、これも似たようなものじゃないですか。

 だもんで、そんな確率のリスクのために、ワクチン副作用というまたリスクのあることをやっても、あんまり意味があるとは思えないってことです。面倒くさいし。

 ほんでも、親の介護やら必要があれば、速攻射ちます。それを条件にすれば簡単に行ったり来たりできるなら、そっちのメリットの方が大きいですからね。もちろん副作用のリスクも、あるいはなんか変なものを盛られるリスクも承知の上です。生きるというのはリスクを犯すことだし、それによって得られるものがあるならそちらを取ります。でも、まあ、それは個々人の話。

 話を戻すと、世界ではいろいろ皆さん活発にやっているということで、日豪のようにもっさりしたところにおると、その感覚が鈍ってくる気がします。視野を外に転じて、息吹のようなものを感じておかないとなにかが眠ってしまいそうで、その方がリスキーな気がします。



 こうやって徐々に朝の日差しが下におりてくる。


文責:田村


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